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仕事・スキル 介護資格 2022/10/04

#国家試験#社会福祉士#社会福祉士試験

社会福祉士の合格率が低い5つの理由と試験勉強のコツ

文/金杉宏敬 4_1221.jpg

文:金杉宏敬(社会福祉士)

社会福祉士は高齢者や障がいのある方から相談を受け、助言・指導を行うことが主の業務とされています。今後、団塊世代が75歳の後期高齢者となり、本格的な高齢社会に突入する「2025年問題」が間近に控えているなかで、いつでも気軽に相談ができる窓口増えています。それに伴い、今後も需要の増加が見込まれる社会福祉士は、人気資格の1つとなっています。

社会福祉士に合格するためにも、合格率が低い理由と、乗り越えるべき対策を考えてみたいと思います。

1.介護福祉士、精神保健福祉士との合格率の比較

2022年(令和4年)2月に実施された第34回社会福祉士国家試験では、受験者数34,563人に対して合格者数10,742人、合格率は31.1%でした。

介護福祉士は過去5年間の合格率が70%以上、精神保健福祉士は60%以上を占めているのに対して、社会福祉士は例年30%前後と、ほかの2資格と比べて低い合格率となっています。

2.社会福祉士の合格率が低い5つの理由

社会福祉士の合格率が低い理由はいくつか考えられますが、主に次の5つが挙げられます。
①出題科目が多い・範囲が広い
②問題の難易度が高い
③十分な勉強時間を確保できない
④モチベーションの維持が難しい
⑤自信がない中で試験当日を迎えてしまい実力を発揮できない
以下で、具体的な理由を解説します。

①出題科目が多い・範囲が広い

社会福祉士国家試験の科目は共通科目と専門科目があり、19科目(18科目群)と科目数が多く、出題範囲が広いことが特徴です。
合格基準は次の2つの条件を満たした者としています。

a.問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者
b.aを満たした者のうち、18科目群すべてにおいて得点があった者

配点は1問1点の150点満点であるため、90点前後が合否の基準となります。「b」の条件により各科目で最低1点は得点を取らなければならず、苦手科目を得意科目でカバーすることができません。そのため全科目をまんべんなく学習する必要があります。

また、多くの科目は各科目7問から10問の出題です。しかし、科目「相談援助の理論と方法」のみ21問が出題され、他科目の3倍程度となっています。この問題数から、相談援助に関する知識は社会福祉士の最重要な知識であることが読み取れます。
この科目では確実に点数が稼げないと、合格も難しくなってしまいます。

②問題の難易度が高い

過去問題を見ていただければわかりますが、語句の暗記や表面的な理解では正解につながりにくいのも、合格率が低い原因の1つといえます。

科目には社会福祉士として必要な専門的知識から各制度の理解、相談援助についてなど、各科目ごとに特徴があります。知識の詰め込みで正解を得られる科目もありますが、本質的な意味を理解していないとなかなか解答できない問題があるのも事実です。

③十分な勉強時間を確保できない

社会福祉士の国家試験合格には、約300時間の勉強が必要といわれています。
短期間に多くの勉強時間を確保できる方はよいのですが、働きながら試験勉強をする方は特に計画的に勉強方法を考える必要があります。

1日にまとまった時間を確保できない方は、移動中の電車内や少しの空き時間を活用しながら、勉強時間をつくり出す工夫が必要です。

④モチベーションの維持が難しい

多くの国家試験の中で、19科目もの広い範囲が出題される試験はそう多くありません。そのため19科目中、苦手な科目や不慣れな科目が1つや2つ必ずあると思います。また科目数の多さから、どこから手をつけたらいいか迷ってしまい、学習する気が起きないという方も少なくありません。

まず大切なことは「意欲」です。しっかりとした学習計画を立てながら試験日が迫ってきても焦らないような計画が必要になると思います。また学習期間は長期に及びます。コツコツと勉強時間を確保しながらも少し休憩する期間を設けるなど、余裕を持った計画立てが重要です。

⑤自信がない中で試験当日を迎えてしまい実力を発揮できない

先ほど勉強で大切なことは「意欲」と伝えましたが、もう1つ大切なことは「自信」です。

科目数の多さや出題範囲の広さから、どんなに勉強しても完璧に理解できたということはないと思います。それくらい学習範囲が広いです。そのため、なかなか自信がもてないことも、合格率が低い理由の1つと考えられます。

社会福祉士国家試験の合格基準は約6割の正解率ですので、裏を返せば4割は不正解でもよいのです。いい意味で割り切りも必要です。

自信がなく試験に臨むと必要以上に緊張してしまい、前日までは覚えていた知識が出てこない、という体験を過去の試験で経験された方もいるのではないでしょうか。試験前日まで努力をしてやり切った気持ちで試験当日を迎えることが大切です。

3.社会福祉士試験に一発合格するための勉強法【経験談】

4割近くが不正解で不合格を覚悟

私は第18回国家試験を受験し、1回目の試験で合格できました。試験後に点数を確認したところぎりぎり6割超えでした。合格発表前に模範解答で正誤チェックを行いましたが、✕の数があまりに多く(4割程度✕がつくと、こんなにも間違っているのかと合格できる気がしませんでした)、不合格だろうなと思ったことを記憶しています。

試験日から逆算し1年前から勉強開始

先ほど述べたように、社会福祉士国家試験合格には約300時間の勉強が必要といわれています。そのため、余裕を持って1年前から試験勉強を始めました。

試験日までを逆算して、1年間の試験勉強対策を立てました。といっても、365日毎日勉強したわけではありませんが、平日は2時間程度は参考書と向き合っていました(しかしエンジンがかかるのに数十分はかかるため、実際の勉強時間は1時間半程度だったでしょうか)。

初めての受験の場合、「どの程度勉強したら合格できるのか」がなかなかイメージできません(2回目以降の受験の方は、前回の学習量で取れた点数を物差しにできるため、イメージしやすいと思います)。

そのため、やみくもな勉強方法になりがちですが、その学習方法だと努力に限界が生じてやる気が続きません。ですので、適宜過去問を解きながら、自分がどのくらい内容を理解し、試験で点数が取れるレベルに達しているかを確認しながら進めていました。

多くの時間を費やし勉強したにも関わらず、過去問でまったく点数が取れなかったときはショックでした。そのような小さなショックは常にあり、「諦めたい気持ち」と「頑張って試験合格を目指す気持ち」が表裏一体となっていました。

勉強するなかでつかんだコツ

覚える知識は膨大にあります。しかし大切なことは、曖昧な知識をたくさん覚えることではなく、確実な知識を1つひとつ積み重ねていくことだと思います。要は「量より質」が重要になります。

このことに気づいてからは焦らず目の前にある課題を一歩ずつ習得することを意識しました。学習した知識はそのままでは忘れてしまいます。そのため、反復して学習することで知識の定着を図っていきました。

インプットができたらアウトプットです。具体的には、覚えたことをノートに書いていきました。「書いて覚える」は触覚と視覚を使った暗記の方法で賛否両論あるようですが、私にとっては非常に効果的で毎回実践していました。

まとめ.合格後の明るい未来をイメージして

学習する前に、まずは全体像を把握するために全科目にざっと目を通し試験概要を理解することが重要です。
「どれくらいの量をどのようなペースで進めなければならないか」「どの科目に重点を置いて取り組んだらよいか(これは皆さんの得手不得手によってさまざまだと思います)」を大まかに把握し計画を立てます。

計画をしっかり立てることで、諦めそうになったりモチベーションが下がったりしたときでも、自分自身で立てた計画を再確認して軌道修正することが可能になります。

また、試験勉強期間は長丁場です。勉強期間中に、全体の何割程度を終えているかを常に把握しながら学習することも大切になります。

冒頭でも述べたように、社会福祉士は高齢者や障がい者関連の職場のみならず、医療機関や児童・母子関係、行政、成年後見制度など、社会福祉士が活躍できる環境は数多くあり、今後も増えていくことが予想されます。

社会福祉士として活躍するめには、まず国家試験に合格することが最大の目標となります。試験勉強期間中は苦しいときも多く、犠牲にしなければならないことも多々あるかと思います。しかし合格後の明るい未来をイメージすればモチベーションも上がります。頑張ってぜひ合格を勝ち取ってほしいと思います。

関連記事
2022年「社会福祉士国家試験(第34回)」合格発表|合格者数や合格率、合格後の手続きについて

参考:
【社会福祉士国家試験の受験者・合格者の推移】
【介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移】
【精神保健福祉士国家試験の受験者・合格者の推移】

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金杉宏敬

社会福祉士

20代後半に一般企業から福祉業界へ転身。特別養護老人ホーム勤務を経て2006年に社会福祉士資格を取得。その後、地域包括支援センターにて高齢者を対象とした相談員として約10年勤務。2016年に個人事務所「かなすぎ社会福祉士事務所」を立ち上げ、現在に至る。

金杉宏敬の執筆・監修記事

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