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ニュース 医療介護最新ニュース 2020/11/05

「大腸がん検診に年齢上限は必要か?」関東中央病院光学医療診療科部長 医師 渡邉一宏さん解説

介護のみらいラボ編集部コメント

現在対策型大腸がん検診の便潜血検査は年齢無制限で行われていますが、将来1次検診から内視鏡検診が受けられるようになる見込みです。しかし対策型大腸内視鏡検診も年齢無制限でやってもいいのでしょうか? 関東中央病院光学医療診療科部長 渡邉一宏さんが高齢者の大腸内視鏡検査時における合併症や死亡事例とその割合をもとに解説します。

日本の便潜血検査(対策型大腸がん検診)は40歳から年齢無制限で行われている。今後は大腸がん撲滅のために対策型大腸内視鏡検診の導入も期待されており(松田尚久,他:Gastroenterrol Endosc. 2020;62 suppl. 3:2564-73.)、私も同感である。つまり現在の2次大腸内視鏡検診を条件付きで1次検診から受けられる様になる。ただ年齢上限なしで85〜90歳、さらに90歳以上の超高齢者も大腸内視鏡検診を安全に受けられるのだろうか? 折しも2020年8月「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期において高齢者が最善の医療およびケアを受けるための日本老年医学会からの提言」が示され、年齢による差別(エイジズム)反対とされた。確かにCOVID-19以外でも高齢者との理由で大腸内視鏡検査希望者や有症状者(血便など)を排除はしてはいけない。さらに70代でも自ら高齢者だからと初めから検査を諦める人もいる。古くから日本では、費用対効果を重視する米国よりも、高齢者の切り捨てになると年齢上限の議論自体が拒絶される風潮もある。

しかし、高齢者の大腸内視鏡検査は、検査自体に限らず前処置や関連薬剤を含めて偶発症の発生が圧倒的に多くなると知られており、最新の論文でも2020年JAMA誌で、カナダ・オンタリオ州における医療データベースから大腸内視鏡を受けた3万8069人を対象に調査した結果、75歳以上の合併症は50〜74歳に対して2.3倍にもなるとの報告がある(C-Calo N,et al:JAMA Netw Open. 2020;3:e208958)。また前処置において日本の「大腸内視鏡検査等の前処置に関わる死亡事例の分析」(医療事故の再発防止に向けた提言第10号. 医療事故調査・支援センター. 2020年3月)では、提示12例のうち5例が80歳以上である。このことからも例えば、現在は年齢無制限の日本でも、無症状スクリーニング検査は米国のように85歳までを上限か、あるいは90歳までか、加えてPerformance Status(PS)3以上の2次検診は内視鏡検査ではなく非侵襲的画像検査にするか等、仮に平均寿命が100歳になるのであれば、その都度改訂するのはどうか。現場の判断に任せきるのではなく、国策としてある程度の無症状スクリーニング大腸検診の年齢上限の指標は必要と考える。

渡邉一宏(公立学校共済組合関東中央病院光学医療診療科部長)[内視鏡医療における地域貢献]

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出典:Web医事新報

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