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ニュース 医療介護最新ニュース 2020/12/08

気道異物[私の治療]青梅市立総合病院 横山美貴

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介護のみらいラボ編集部コメント

誤嚥、窒息は小児でも高齢者でも多い事故です。青梅市立総合病院の横山美貴先生が解説します。
まず、のどに物が詰まったと思われる際は、膝の上に頭を低くしてうつぶせに寝かせ、背面を強くたたく。気管に異物が固定されると、一時的に状態が回復したように見えることもあるので、何を食べたのかの確認が欠かせないなど、基本的な対応も学べます。

▶気道異物[私の治療]青梅市立総合病院 横山美貴先生解説

声門前後で咽頭・喉頭異物と気管・気管支異物にわけられる。気道が1本しかない部位(喉頭,声門・気管)では窒息の危険があり,至急適切な処置を要する。

▶診断のポイント

気管支異物では,誤吸引時ひどかった咳も異物が気管支に固定されるといったん落ちついてみえることがある。聴診上患側肺の換気低下や胸部X線写真所見(吸気・呼気時に撮影しチェックバルブとなっている患側肺に容積変化がない,呼気時にしぼまない)などから本疾患が疑われる場合,母親に患児にピーナッツなどを与えたことはないか等,具体的で詳細な問診が必要となる。

▶私の治療方針

1~2歳の幼児は何でもつかんで口に持ってくる。男児に多い(70%)1)。

【咽頭・喉頭異物】
窒息の場合にはその場にいる人がとにかく処置を開始する。少ないながら換気がみられる場合には,そのまま静かに寝かせ救急要請をする。

【気管・気管支異物】
気管異物は症状や理学所見に乏しいことが多い反面,異物が移動して声門に嵌頓する危険性が高く,注意を要する。気管支異物症例とともに異物摘出術が可能な専門施設に搬送する。途中,救急車の振動や児の啼泣などで異物が移動し喚気不良となる場合に備え,必ず医師が同乗する。窒息をきたした際には,盲目的に異物を主気管支まで落とし片肺ででも換気せざるをえない。

▶治療の実際

【摘除術】
〈咽頭・喉頭異物〉
何かのどに詰まらせて息をしていないとの連絡を受けた場合には,膝にうつぶせで頭を低くして寝かせ,背部を強く叩くよう指示する。呼気で異物を吹き出させる。幼児には腹部突き上げ法〔ハイムリック(ヒ)法〕も行うが,急には難しい。呼吸が回復しない場合には心肺蘇生(口-口人工呼吸,心臓マッサージ)を指示し,救急隊の到着を待つ。到着後は100%酸素でマスク換気をしながら喉頭展開をし,可能ならマギール鉗子などで異物を摘除する。
異物が喉頭蓋と舌根部にはさまっている場合などでは,上記叩打法で除去できないことがある。時間的余裕があり診療体制がとれるときには,摘除術は全身麻酔下に行う。声門や声門下で操作した場合は,術後の浮腫を考慮し一晩気管内挿管管理をすることもある。

〈気管・気管支異物〉
全身麻酔下に硬性気管支鏡(硬性鏡)を用いて異物を摘除する。気管支異物ならば緊急処置までは必要ない。硬性気管支ファイバースコープMVE-VB250(町田製作所)は,スコープ一体型で先端外径7mm×5mm,側孔を通して換気しながらの処置が可能となっている(図)。大きめの側孔には各種異物鉗子や吸引管が挿入できる。ただし,現在既に製造終了となっているため,新規にはカールストルツ社製のものしか使用できない(観察用スコープとスコープつき異物鉗子を入れ替えて使用する,吸引は盲目的に行う,異物鉗子が小さいなどやや使い勝手がよくない)。なお,ラリンジアルマスク下にチャンネルつき軟性気管支ファイバースコープを使用する方法は,チャンネル径が細く十分な鉗子の挿入や吸引ができない,処置中スコープ径分の気道閉塞状態となるなど,推奨されない。

前処置:誤吸引してから時間が経つと異物周囲に肉芽ができ,摘除時粘膜出血しやすくなる。また,異物がナッツ類の場合,その油分が嵌頓部末梢に化学性炎症を起こすため,事前に抗菌薬〔ユナシン®-S注(アンピシリン/スルバクタム)150mg/kg/日を3回に分けて静注〕とステロイド〔ソル・メドロール®注(メチルプレドニゾロンコハク酸)1回1mg/kg 1日3回(静注)〕を投与する。肉芽の縮小などにより術前に自然喀出されることもあり,処置説明の際に言及しておくとよい。
異物除去術:術者,器具を渡すなどの介助者,患児の頭を支える者,麻酔科医が最低必要となる。モニター画面は異物の嵌頓している側(患側)に置く。まず,通常の気管内挿管を行い,軟性気管支ファイバースコープで異物の嵌頓場所,状態を確認する。次に,頭部の寝台をはずして頭を落とし,硬性鏡がまっすぐ挿管できる体位をとる。喉頭展開をしてもらったまま術者が硬性鏡を挿管し,患側主気管支がまっすぐになるよう頭を患側の反対に向けゆっくり硬性鏡を進めていく。吸引し視野を確保したのち異物鉗子で異物を把持する。先端部のスコープと側孔出口の位置がわずかにずれているのに留意し,硬性鏡の位置を調節する。この間側孔は開放となるため,換気量は低下する。異物がつかめたら硬性鏡近くまで引き寄せ硬性鏡と一緒に引き抜く。対側(健側)の主気管支や声門下に落とさないよう注意する。小児の場合,短時間で声門下に浮腫をきたすため,操作回数や時間は最小限にするよう全員が心がける。硬性鏡挿管が3回以上となったら,一晩通常の挿管管理をすることも検討する。術後の処置も行う〔デカドロン®注(デキサメタゾンリン酸)1回0.15mg/kg(単回静注),前述の抗菌薬静注,ボスミン®外用液0.1%(アドレナリン)を10倍希釈して1回1~3mL吸入を併用〕。
異物が左上葉支にあるときなど硬性鏡では届かない場合には,ラリンジアルマスク下に吸引チューブ内に細径の軟性気管支ファイバースコープを通してそのまま異物まで近づき,スコープを抜いたあと吸引をかけ,異物を移動させる試みをすることもある。

【予防・啓蒙】
気道異物の処置は上記のように大変なものとなる。予防やその啓蒙が最も重要である。
幼児の咽頭にすっぽりはまるようなもの(菓子類,おもちゃ,日用品など何でも)は幼児の手が届かないよう整理する。また,1~2歳の幼児にはピーナッツ,豆まきの大豆,枝豆などのマメ類は与えない。ピーナッツ入りのせんべいを兄弟と食べていて誤吸引した例もある。

たばこの誤飲で救急外来を受診した際など,機会あるごとに自宅で窒息が起こったときの対処(背部叩打法,心肺蘇生法)まで話せるとよい。

【文献】
1) 石立誠人:小児外科. 2018;50(7):745-8.
横山美貴(青梅市立総合病院小児科)

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出典:Web医事新報

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