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ニュース 医療介護最新ニュース 2021/02/22

肘関節脱臼[私の治療]

肘関節脱臼[私の治療].jpg

介護のみらいラボ編集部コメント

高齢者でも子どもでも、よくあるケガのひとつが脱臼。
JCHO大阪病院整形外科 診療統括部長の島田幸造先生が、肩関節の次に特に症例が多い肘関節の脱臼について、解説します。サッと読むだけでも現場で役に立つ知識が身に付きます。
脱臼はケガしてすぐなら関節をはめ戻すのもやりやすく、時間がたつと腫れてきてしまって困難、靭帯を傷つけてしまっている場合には、いったんちゃんとした位置に戻っても徐々に亜脱臼していくことがあるから定期的なチェックが必要、などです。 ご利用者のケガのほか、自分や家族のけがの時も役立ちそうな知識です。

肘関節は上腕骨,尺骨,橈骨の3つの骨から構成されるが,肘関節脱臼はその中で上腕骨に対して前腕,すなわち尺骨と橈骨が一体となって脱臼する病態を指し,腕尺関節に対して橈骨が脱臼する橈骨頭脱臼(モンテジア脱臼骨折を含む)とは区別される。成人では肩関節についで肘関節に脱臼が多く,骨折を伴うことも多い。骨折を伴う脱臼(複雑脱臼)では,不安定性や易脱臼性を生じることが多い。

 

▶診断のポイント

 【受傷機転】

肘伸展位で手をつき,過伸展を強制されて起こる後方脱臼と,側方ストレスにより靱帯損傷を伴って起こる側方脱臼が多い。

 【合併症】

内側および外側の側副靱帯損傷や,尺骨鉤状突起骨折・橈骨頭骨折など骨傷,尺骨神経障害などの合併症がしばしば認められる。合併症を見逃すと関節不安定症や拘縮,神経障害による機能低下をきたすため,その鑑別は重要である。

 

▶私の治療方針

受傷直後では整復は容易であるが,時間とともに肘は腫脹して整復が困難となり,時に全身麻酔下の整復を要する。骨傷を伴わない単純な脱臼では,整復後良好な整復位を外固定で2週間程度維持すれば,比較的予後は良好である。しかし,重度の靱帯損傷や関節周囲の骨折を合併する場合には,外固定されていても良好な整復位が保持できず徐々に亜脱臼を呈することが多い。その場合には躊躇せず手術による整復固定を行う。①内側側副靱帯損傷と前腕屈筋・回内筋群の断裂を合併して著明な外反動揺性を呈する例,②尺骨鉤状突起骨折を伴い後方に亜脱臼を呈する例,③橈骨頭が粉砕し,肘関節が冠状面で外反方向にずれて橈骨頭骨片が転位する例,④外側尺側側副靱帯(LUCL)が弛緩して腕尺関節が橈骨頭とともに後外側に回旋転位する例〔後外側不安定症(posterolateral rotatory instability:PLRI)〕,などがそれにあたる1)。

受傷から3週(できれば2週)以内に屈伸運動を始めることが,機能回復の上では重要である。整復後に関節内に骨片が介在することもあり,これらに関する診断と評価が重要である。X線像は単純の2方向に加え,痛みのない範囲で内外反や回内外での動態撮影,また骨傷を伴う場合にはCT,軟部組織損傷にはMRIが有用である。

ただし,不安定性を残したままの早期可動域訓練は,関節の適合性を損なうことにつながり,特に不安定な骨傷を合併する場合は運動訓練を急いではいけない。また,脱臼後には肘関節周囲に異所性骨化をきたすことがあり,この場合に強い受動可動域訓練を行うと増悪して,さらに可動域が悪くなることがある。これらを考慮して,後療法の進め方を決める必要がある。

 

▶治療の実際

 【単純脱臼(骨傷を伴わない・simple dislocation)】

基本的には保存療法。整復後に内外反方向の不安定性を評価し,上述のように重度の軟部組織損傷を伴う顕著な不安定性(gross instability)を呈する場合には手術を考慮するが,そうでなければ外固定を行い,定期的にフォローをしてその都度関節の不安定性を再評価し,不安定性が改善しない場合には手術を考慮する。

一手目:保存療法

整復後肘関節屈曲60~90°,前腕中間位または軽度回内位でギプスシャーレによる2週間外固定。その間,1週目に不安定性を再評価し,問題なければヒンジ装具の採型をしておく。受傷2週後に完成したヒンジ装具を装着させて屈伸運動を開始し,回内外運動も適宜加える。

二手目 :〈受傷時初めから軟部組織損傷を合併して強いgross instabilityを呈する,または保存療法1週目にも明らかに不安定性が残存する場合〉観血的に靱帯や筋膜など軟部組織の修復

術後の外固定は2週以内とし,可及的早期から理学療法士などの保護下に可動域訓練を開始する。

三手目 :〈治療数カ月を経てもなお不安定性が残存する場合〉腱移植による靱帯再建術

四手目 :〈治療数カ月を経てもなお拘縮が残存する場合〉鏡視下または直視下の関節授動術

靱帯再建術,関節授動術ともに施行にあたっては,その時点までに関節の脱臼位を良好な整復位に戻しておくことが原則である。

 【複雑脱臼(骨傷を伴う・complex dislocation)】

脱臼に伴う骨折の多くは関節内骨折であり,関節面の整復は必須である。関節面が粉砕した場合,骨片を整復し適合を得ることが可動域を回復するのに重要である。また,上腕骨内側上顆と尺骨鉤状突起の尺側面(鉤状結節)は内側側副靱帯の,上腕骨外側上顆は外側側副靱帯の付着部であり,同部の裂離骨折はそれぞれの靱帯の機能不全による不安定性をきたす。したがって,転位の大きい上腕骨の内側上顆・外側上顆骨折や尺骨鉤状突起骨折は基本的に観血的接合術の適応となる。
また,小児では未骨化の軟骨成分を含むことを常に念頭に置き,事前のX線はじめ,関節造影やCT,MRIなど画像所見を十分に吟味して,軟骨損傷やその関節内への嵌頓等の合併を予想しておくことも重要である。

一手目 :〈骨折片が小さく整復位が保持できる場合〉保存療法

1週ごとにチェックするのは単純脱臼と同様であるが,より注意深く不安定性を評価する。

二手目 :〈骨軟骨片の嵌頓が考えられる場合〉観血的整復

整復位をとれないときには,関節内に骨軟骨片が嵌頓していることが考えられ,観血的整復が必要。時には関節鏡も有用である。整復位がとれても保持できない場合,靱帯損傷や付着部の骨折が疑われ,その修復を行う。
不安定型脱臼骨折では,まず骨折を整復して安定した良好な関節面の適合を回復させる。骨折片の観血的整復固定とその保持を最優先する。後療法は,可能なら術後2週頃からヒンジブレース装着下の可動域訓練を指導するが,骨傷がある場合には無理に早期運動は励行しない。必要であれば3週間を超えて外固定を行い,結果的に不安定性を残した場合には靱帯再建術で,拘縮を残した場合には拘縮解離(授動)術で対処する。

 【terrible triad injury(脱臼+尺骨鉤状突起骨折+橈骨頭骨折,図)】

肘関節複雑脱臼の中で,脱臼と尺骨鉤状突起骨折,橈骨頭骨折の3者の合併損傷は機能予後が悪いことから,特にterrible triad injuryと呼ばれる2)。鉤状突起に付着する前方関節包や内側側副靱帯の機能不全,さらに受傷時の外力が強く靱帯損傷もしばしば合併していて,前述の複雑脱臼の手順で治療を行っても整復位の維持が困難なことが多い。

一手目 :骨折の整復固定

尺骨鉤状突起と橈骨頭,上腕骨外側上顆など,関節の安定性に重要な部分を接合する。橈骨頭粉砕が強い場合には,人工橈骨頭置換も検討してよい。

二手目 :〈一手目に追加〉靱帯・軟部組織の修復

外側側副靱帯,内側側副靱帯,断裂した筋肉などの修復を行う。

三手目 :〈二手目に追加〉関節の適合を維持するために,ヒンジ型創外固定器の装着

上記の修復を行っても整復位が保てないときには,肘関節を整復位に創外固定する。ヒンジ型創外固定器では,早期運動が可能である。

【文献】
1) O'Driscoll SW, et al:J Bone Joint Surg Am. 1991;73(3):440-6.
2) Ring D, et al:J Bone Joint Surg Am. 2002;844(4):547-51.

島田幸造(JCHO大阪病院整形外科診療統括部長/主任部長)

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出典:Web医事新報

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