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ニュース 医療介護最新ニュース 2021/03/17

筋クランプ(こむら返り)[私の治療]筑波大学医学医療系神経内科学准教授 石井一弘先生

介護のみらいラボ編集部コメント

夜中に「足がつった!」と、のたうち回るこむら返り(筋クランプ)。多くの方が経験したことのある状態だと思います。しかし、医師も認める治療法となると、正確に知っている人は少ないのではないでしょうか?
そこで、筑波大学の石井先生の解説を取り上げてみました。
薬を使わない方法としては、ストレッチ、散歩、保温で、本文中にストレッチ方法が説明されています。
また、軽い場合の薬は芍薬甘草湯,ビタミンB群剤やマグネシウム製剤などを考えると石井先生は言います。高齢者向け、妊婦向け、肝硬変の人向け、通常の薬が効かなかった場合などケースによって分けて解説されており、とても分かりやすいです。

筋クランプ(こむら返り)は突然に生じる,不随意で有痛性の筋収縮で腓腹筋に最も多くみられる。健常人の90%以上が経験している。最も頻繁に認められる生理的なこむら返りは,夜間睡眠時に腓腹筋に非対称性に生ずる激烈な痛みを伴う筋収縮である。健常者でも過度な運動,脱水や熱中症などが誘因になることがある。また,妊婦,高齢者,透析患者や肝硬変患者で,特に夜間に筋クランプが起こりやすい。

▶診断のポイント

激痛を伴う筋収縮と硬化で安静時または運動時に起き,数分程度で改善する。腓腹筋に起こる場合,筋肉の最も短縮したときに起こり,随意的に短縮させることでも誘発される。疼痛が残ることが多い。攣縮している筋肉を伸展させて発作を止めることができる。(激しい)運動中にのみ起こる場合,何時間も続く場合や激痛でない場合は,他の疾患や他の疾患に関連した筋痙攣類似症状を考える。

▶私の治療方針・処方の組み立て方

非薬物療法としての対症療法が主で,まず,筋クランプの解除方法を患者に指導し,次に誘因を聴取し,それを避けることを指示する。筋クランプの解除方法は,筋クランプを生じている筋を伸展させることで,速やかに回復させることが可能である。筋クランプの予防法として,散歩,ストレッチ,マッサージ,局所の保温が推奨される。ストレッチは,アキレス腱から下腿後面を伸ばすよう指導し,1回10~30秒を数回,それを1日2~4回実施する。筋クランプが頻回に起こり,睡眠障害やQOLの低下をまねいている場合は内服治療が必要となる。

健常者では基本的に運動やストレッチを指導する。頻度が高い場合は芍薬甘草湯,ビタミンB群剤やマグネシウム製剤を使用する。マグネシウム製剤は酸化マグネシウムでも代用可能である。高齢者では,夜間の下肢筋クランプが問題になる。就眠前の芍薬甘草湯を試みる。ビタミンB群剤やマグネシウム製剤も有効な場合があるが,高マグネシウム血症による不整脈に注意する。

妊婦では下腿の静脈還流が悪くなるために筋クランプが起こりやすい。児への影響が少ないマグネシウム製剤やビタミンB群剤が推奨される。慢性腎不全や透析患者にみられる筋クランプは,透析中や透析後に起こることが多く,芍薬甘草湯が有用である。改善が認められないときは,メキシレチン,ガバペンチン,カルバマゼピンを使用する場合もある。

慢性肝炎,肝硬変患者では夜間の筋クランプがみられ,芍薬甘草湯が有効である。また,タウリンは保険適用外ではあるが,高いエビデンスで効果が証明されており,使用を試みてもよい。ガバペンチン,カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム),メキシレチン,カルバマゼピンを使用する場合もある。

神経筋疾患など筋クランプの原因疾患がある場合や,糖尿病や慢性腎不全,肝硬変など基礎疾患を有する場合は,原疾患の治療も同時に行う。薬剤性筋クランプが疑われる場合は原因薬剤を減量・中止する。原因薬剤としてスタチン,降圧薬(利尿薬,β遮断薬など),抗精神病薬などがある。

▶治療の実際

海外ではエビデンスレベルが高い治療薬であっても,わが国では保険適用外の治療薬がある。

 【健常者】

基本的には保存療法。整復後に内外反方向の不安定性を評価し,上述のように重度の軟部組織損傷を伴う顕著な不安定性(gross instability)を呈する場合には手術を考慮するが,そうでなければ外固定を行い,定期的にフォローをしてその都度関節の不安定性を再評価し,不安定性が改善しない場合には手術を考慮する。

一手目:〈夜間の筋クランプに対して〉ツムラ芍薬甘草湯エキス®(芍薬甘草湯)1回2.5g 1日1回(就寝前),または1回2.5g 1日3回(毎食間)

二手目 :〈一手目に追加,または処方変更〉硫酸マグネシウムまたはマグコロール®P散(クエン酸マグネシウム)1回300~900mg 1日2回(朝・夕食後)

三手目 :〈二手目に追加,または処方変更〉ビタメジン®B50配合カプセル(ベンフォチアミン/ビタミンB6/ビタミンB12)1回1カプセル1日2回(朝・夕食後)

靱帯再建術,関節授動術ともに施行にあたっては,その時点までに関節の脱臼位を良好な整復位に戻しておくことが原則である。

 【高齢者】

一手目 :〈夜間の筋クランプに対して〉ツムラ芍薬甘草湯エキス®(芍薬甘草湯)1回2.5g 1日1回(就寝前)

二手目 :〈一手目に追加,または処方変更〉ビタメジン®B50配合カプセル(ベンフォチアミン/ビタミンB6/ビタミンB12)1回1カプセル1日2回(朝・夕食後)

三手目 :〈二手目に追加,または処方変更〉硫酸マグネシウムまたはマグコロール®P散(クエン酸マグネシウム)1回300~900mg 1日2回(朝・夕食後)

 【妊婦】

一手目 :硫酸マグネシウムまたはマグコロール®P散(クエン酸マグネシウム)1回300~900mg 1日2回(朝・夕食後)

二手目 :〈一手目に追加,または処方変更〉ビタメジン®B50配合カプセル(ベンフォチアミン/ビタミンB6/ビタミンB12)1回1カプセル1日2回(朝・夕食後)

 【透析患者】

一手目 :ツムラ芍薬甘草湯エキス®(芍薬甘草湯)1回2.5g 1日3回(毎食間),夜間のみ起こる筋痙攣に対しては,芍薬甘草湯1回2.5g 1日1回(就寝前)

二手目 :〈一手目に追加,または処方変更〉ビタメジン®B50配合カプセル(ベンフォチアミン/ビタミンB6/ビタミンB12)1回1カプセル1日2回(朝・夕食後)

 【肝硬変患者】

一手目 :〈夜間の筋クランプに対して〉ツムラ芍薬甘草湯エキス®(芍薬甘草湯)1回2.5g 1日1回(就寝前)

二手目 :〈一手目に追加,または処方変更〉タウリン98%「大正」散(タウリン)1回1g 1日2回(朝・夕食後)(保険適用外)

 【コントロール不良:上記治療が無効の場合】

一手目 :ガバペン®錠(ガバペンチン)初回1回100~200 mg 1日3回(毎食後),維持量1回200~500mg 1日3回(毎食後)

二手目 :〈処方変更〉ヘルベッサー®30mg錠(ジルチアゼム)1回1錠1日3回(毎食後)

三手目 :〈処方変更〉メキシチール®100mgカプセル(メキシレチン)1回1カプセル1日3回(毎食後)

【参考資料】

▶ Swash M, et al:Eur J Neurol. 2019;26(2):214-21.

▶ Katzberg HD:J Neurol. 2015;262(8):1814-21.

石井一弘(筑波大学医学医療系神経内科学准教授)

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出典:Web医事新報

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