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ニュース 医療介護最新ニュース 2021/06/08

#くも膜下出血#再出血#応用知識

くも膜下出血 杉山拓先生(北海道大学病院脳神経外科)寳金清博先生(北海道大学脳神経外科名誉教授)解説

介護のみらいラボ編集部コメント

くも膜下出血(SAH)は、50~70歳代に多く、女性に多い傾向があると言われる致死的な病態です。再出血と遅発性脳血管攣縮が発症後に転帰を悪化させる因子であり、特に再出血はきわめて高率に転帰を悪化させます。
再出血は発症早期(発症後24時間以内)に多いとされており、より迅速な対応が必要となります。今回はそんなくも膜下出血の治療に関して、杉山拓氏(北海道大学病院脳神経外科)と寳金清博氏(北海道大学脳神経外科名誉教授)が詳しく説明しています。

くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)は,外傷や炎症,その他の脳血管奇形などの結果として生じることもあるが,通常は脳動脈瘤が破裂した結果として生じるものを指す。破裂動脈瘤は,部位別には前交通動脈瘤,内頸動脈-後交通動脈瘤,中大脳動脈瘤が多い。50~70歳代に多く,女性に多い傾向がある。迅速な対応が必要な,致死的な病態である。

▶診断のポイント

労作時に突然発症する頭痛・嘔吐および意識障害が最も典型的な症状であり,項部硬直を伴う。重症例は心肺停止状態になる場合もある。発症時の意識障害の程度は最も転帰に相関する因子であり,これによる重症度分類が広く用いられている。modified World Federation of Neurosurgical Societies(m-WFNS)分類を表に示す。

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SAHが疑われた場合,初期診療の後,速やかに頭部CTを撮像し,これを診断する(図)。SAHと診断された場合,速やかに破裂脳動脈瘤を検出する必要があり,CT angiography(CTA)や選択的脳血管撮影(DSA)などを実施する。

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▶私の治療方針・処方の組み立て方

再出血と遅発性脳血管攣縮が発症後に転帰を悪化させる因子であり,特に再出血はきわめて高率に転帰を悪化させる。再出血は,発症早期(発症後24時間以内)に多いとされ,迅速な対応が必要である。初期診療では血圧管理や鎮痛・鎮静を速やかに開始し,可及的速やかに再出血予防のための外科的処置を行うのが原則である。術後も,遅発性脳血管攣縮などの治療を約2週間継続して実施するのが通常である。
専門的判断が必要であり,小規模医療機関は,初期診療後に大規模医療機関へ患者を速やかに転送すべきである。転送中も血圧管理や鎮痛・鎮静が必要であり,医師の同乗が望ましい。

▶治療の実際

【初期治療】

初期治療の目的は再出血の予防と頭蓋内圧の管理と全身状態の改善であり,重症例では,心肺蘇生などの必要救命処置,呼吸・循環の管理をまず実施する。痙攣が生じた場合は抗痙攣薬を投与する。
十分な鎮痛・鎮静・降圧を実施する。降圧目標値として,収縮期血圧160mmHg未満にすることが推奨されている。

一手目ペルジピン®注(ニカルジピン)1回1~2mg(静注,適宜追加),ドルミカム®注(ミダゾラム)1回0.03mg/kg(静注,適宜追加),プリンペラン®注(メトクロプラミド)1回10 mg(静注),オメプラール®注(オメプラゾール)1回20mg(静注)併用

二手目〈処方変更〉ペルジピン®注(ニカルジピン)2~10μg/kg/分(持続静注),ソセゴン®注(ペンタゾシン)1回7.5~15.0mg(静注または筋注,1日30~60mgまで)併用

【外科的治療】

外科的治療には,開頭手術と血管内治療がある。搬入時深昏睡の最重症例および発症後72時間を既に経過して脳血管攣縮を生じている場合などを除き,再出血の予防のため,いずれかの治療を早期(発症後72時間以内)に実施する。
治療法は,脳血管外科医と脳血管内治療の専門医により,動脈瘤の形態・部位・年齢などを総合的に考慮し選択する。

〈開頭手術〉

開頭手術は,原則的に脳動脈瘤頸部クリッピング術が行われる。困難な場合には,トラッピング術や親動脈近位部閉塞術などが実施され,必要に応じてバイパス術を併用する。いずれも困難な場合には,動脈瘤被包術を行う場合もある。

〈血管内手術〉

原則的に,瘤内コイル塞栓術が行われる。時にステントなどの補助手段の併用も行い,高い塞栓率をめざす。瘤内塞栓術が困難な場合,親動脈閉塞術が考慮されることもある。

【遅発性脳血管攣縮治療】

遅発性脳血管攣縮は,SAH発症後第4~14病日に発症する脳主幹動脈の可逆性の狭窄であり,25~30%近い症例に発症する。脳梗塞を生じると不可逆的合併症となり,転帰に影響する。早期発見のために,この期間は神経所見の変化を継続して監視し続ける。
適宜補助的な診断法として,経頭蓋ドプラー,MRI/MRA,CTAやSPECTなどを行い,確定診断はDSAで行う。

〈予防〉

早期開頭手術の場合,脳槽ドレナージを留置して,脳槽内の血腫の早期除去を行う。血管内手術が選択された場合でも腰椎ドレナージなどを留置することがある。予防的治療としては,ファスジルの静脈内全身投与を行い,出血傾向,術後創部などに問題がなければオザグレルナトリウムの投与を行う。

一手目エリル®注(ファスジル)1回30mg 1日2~3回(点滴静注)

二手目〈一手目に追加〉キサンボン®S注(オザグレルナトリウム)1日80mg(24時間持続静注)

〈治療〉

症候性脳血管攣縮を発症した場合には,triple H(hypervolemia, hemodilution, hypertention)療法やhyperdynamic療法,血管内治療を考慮する。

一手目へスパンダー®注(ヒドロキシエチルデンプン70000)1回500mL 1日1~2回滴静注)

二手目〈一手目に追加〉ドブトレックス®注(ドブタミン)3~5μg/kg/分(点滴静注)

三手目〈二手目に追加〉血管内治療としての選択的動注療法〔エリル®注(ファスジル)1回30~60mg(動注),パパベリン塩酸塩注(パパベリン)1回40~80mg(動注)〕
これらは効果時間が短く,時に投与を繰り返す必要がある。

四手目 〈三手目に追加〉経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty:PTA)
より効果的・持続的であるが,血管解離などの合併症も生じうる。

▶偶発症・合併症への対応

【全身管理】

SAHに合併する発熱・貧血・高血糖は転帰不良因子であり,適宜対応が必要である。
中枢性塩類喪失症候群(cerebral salt wasting syndrome:CSWS)や抗利尿ホルモン分泌異常症候群(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone:SIADH)を発症し,低ナトリウム血症を認めることが多い。病態に応じて速やかに是正する必要がある。

【水頭症】

慢性期には,10~37%の頻度で,認知機能低下・歩行障害・尿失禁などの症候を伴う水頭症が発症する。脳室腹腔シャント術,腰椎腹腔シャント術などの外科的治療を行う。

【最重症例への対応】

発症時,既に脳幹機能停止などの最重症例の場合,原則的に外科治療を含めた治療適応は乏しい。しかし,脳室内血腫や急性水頭症合併例は,脳室ドレナージ・脳圧降下薬投与などを行い,意識レベルの改善があるかどうかを評価する価値はある。改善が認められた場合には,治療適応を再度考慮する。

【来院時,既に脳血管攣縮を生じている場合への対応】

脳血管攣縮期が過ぎるのを待機してから開頭治療を実施する場合もあるが,脳血管内手術の場合には早期治療が可能である。

【脳動脈瘤多発例への対応】

通常は,CTによる血腫の分布から破裂脳動脈瘤を判断することが可能である。未破裂脳動脈瘤に関しては,治療終了後に再度治療を検討するか,経過観察するかを判断してもよい。同時に治療が可能であれば,一度の手術で可能な限り併発瘤も処置する。

【参考資料】
▶ 日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン[追補2019]委員会, 編:脳卒中治療ガイドライン2015
[追補2019]. 協和企画, 2019.
杉山 拓(北海道大学病院脳神経外科)
寳金清博(北海道大学脳神経外科名誉教授)

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出典:Web医事新報

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