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ニュース 医療介護最新ニュース 2021/07/12

#アレルギー#治療法

植物アレルギー[私の治療]はらだ皮膚科クリニック 原田晋院長

介護のみらいラボ編集部コメント

いわゆる「植物アレルギー」によって生じる症状は、「即時型アレルギー症状」と「遅延型アレルギー症状」の2つに大別されます。即時型アレルギーの代表的疾患は、スギやヒノキなどでおなじみの「花粉アレルギー」であり、遅延型アレルギーによる代表的な症状はウルシなどによる「接触皮膚炎」となります。今回は原田晋先生(はらだ皮膚科クリニック院長)が、各アレルギーに即した診断のポイント、治療方針や処方の組み立て方などを解説しています。

植物アレルギーにより生じる症状は,①即時型アレルギー症状,②遅延型アレルギー症状,に大別される。

▶診断のポイント

【即時型アレルギー】

植物による即時型アレルギーの代表的疾患は,いわゆる「花粉アレルギー」である。一般的な花粉アレルゲンとしてはスギやヒノキが挙げられるが,それ以外にも春季にはハンノキ,シラカンバ,オオバヤシャブシなど,夏季にはカモガヤ,オオアワガエリなどのイネ科花粉,秋季にはヨモギ,ブタクサなどのキク科花粉に対する感作によりアレルギー症状が誘発され,真冬の一時期以外にはいずれの季節にも花粉アレルギーは生じうる。臨床症状は通常鼻炎や結膜炎症状をきたすが,時には眼瞼などを中心に接触蕁麻疹を繰り返すことにより皮膚炎症状を発症する場合もある。

【遅延型アレルギー】

植物に対する遅延型アレルギーによる代表的な症状は接触皮膚炎である。よく知られた感作源となる植物アレルゲンとしては,①ウルシ,ハゼノキなどのウルシオール,②マンゴーのマンゴール,③ギンナン,イチョウのギンゴール酸,ビロボール,④サクラソウのプリミン,⑤キク科植物(キク,マーガレット,ヒマワリなど)のセスキテルペンラクトン類などが挙げられる1

ただし,植物により発生した接触皮膚炎がすべてアレルギーの機序に基づく訳ではない。一例を挙げると,イラクサ科植物の茎や葉には多数の刺毛が密生しており,その中にヒスタミンやアセチルコリンなどの化学伝達物質が含まれているため,接触によって刺激性接触皮膚炎を起こしうる。そのため,植物による接触皮膚炎を発症した場合には,その反応がアレルギー性なのか,刺激性なのかに関して正確な診断を行う必要がある。

▶私の治療方針・処方の組み立て方

【即時型アレルギー】

即時型アレルギーによる花粉症に対しては,まず内服薬の処方を考慮する。花粉アレルギーに対して適応を有する内服薬には,①第2世代抗ヒスタミン薬,②ケミカルメディエーター遊離抑制薬,③抗ロイコトリエン薬,④Th2サイトカイン阻害薬,⑤抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬,などがあるが,このうち第2世代抗ヒスタミン薬が第一選択薬となる。また鼻閉症状が強い場合には,抗ロイコトリエン薬の併用を考慮する。その他,主たる症状が鼻炎,結膜炎,皮膚炎のいずれであるかに応じて,点鼻薬,点眼薬,外用薬を併用する。

またスギ花粉アレルギーの場合に限られるが,症状が重篤な場合には,舌下免疫療法も適応となる。舌下免疫療法とは,スギ花粉から抽出した抗原薬〔シダトレン®(標準化スギ花粉エキス)〕を舌下に1~2分間保持した後に飲み込む操作を1日1回継続することによって,脱感作を誘導する治療法である。しかし,治療効果が認められるまでに通常数年を要するとの問題点も存在している。

【遅延型アレルギー】

遅延型アレルギーによる接触皮膚炎の場合には,まずステロイド外用薬を処方する。比較的重篤な皮疹をきたす場合が多いため,顔面などの特定の部位を除いて,strongestまたはvery strongに属する強いランクのステロイド外用薬の使用が推奨される。さらに,かゆみが非常に強く無意識で搔破して皮疹の悪化をきたす場合が多いため,抗ヒスタミン内服薬も併用する。また,特にウルシによる接触皮膚炎などの際にはとりわけ炎症反応が強いため,ステロイド外用薬のみならず,短期間のステロイド内服薬の併用も考慮に値する。

▶治療の実際

【即時型アレルギー】

花粉アレルギーに対しては,まずは予防も含めた第2世代抗ヒスタミン薬の長期的な投与を行う。

一手目 :アレロック®5mg錠(オロパタジン)1回1錠1日2回(朝食後・就寝前)

〈鼻炎症状に対して〉

鼻炎症状に対しては,抗ヒスタミン薬よりもステロイド点鼻薬を優先的に使用する。また,鼻閉症状が強い場合には抗ロイコトリエン薬の内服を併用する。

二手目 :〈一手目に追加〉アラミスト®27.5μg点鼻液(フルチカゾンフランカルボン酸)1回2噴霧1日1回

三手目 :〈一手目および二手目に追加〉シングレア®10mg錠(モンテルカスト)1回1錠1日1回(就寝前)

〈結膜炎症状に対して〉

通常,抗アレルギー点眼液を処方し,難治例にはステロイド点眼液を併用する。

二手目 :〈一手目に追加〉アレジオン®LX 0.1%点眼液(エピナスチン)1回1滴1日2回

三手目 :〈一手目および二手目に追加〉フルメトロン®0.1%点眼液(フルオロメトロン)1回1~2滴1日2~4回

〈皮膚炎症状に対して〉

花粉症皮膚炎は通常顔面に限局するため,使用するステロイド外用薬はmedium~mildクラスにとどめるべきである。

二手目 :〈一手目に追加〉キンダベート®0.05%軟膏(クロベタゾン)1日2~3回(塗布)

【遅延型アレルギー】

植物による接触皮膚炎は重篤な症状をきたす場合が多いため,顔面以外にはvery strong~strongestクラスの強いランクのステロイド外用薬を使用する。かゆみが強い場合にはさらに抗アレルギー薬,重症例にはステロイド内服薬の併用を考慮する。

一手目 :ダイアコート®0.05%軟膏(ジフロラゾン)1日2~3回(塗布)

二手目 :〈一手目に追加〉アレロック®5mg錠(オロパタジン)1回1錠1日2回(朝食後・就寝前)

三手目 :〈一手目および二手目に追加〉リンデロン®0.5mg錠(ベタメタゾン)1回2錠1日1回(朝食後)

【文献】
1) 夏秋 優:日皮会誌. 2011;121(10):2043-8.
原田 晋(はらだ皮膚科クリニック院長)

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出典:Web医事新報

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