#2024年度介護保険制度改正#介護保険部会#後期高齢者医療制度#社会保障審議会・介護保険部会
【結城康博】次の介護保険制度改正、最大の焦点は利用者負担引き上げ 2割拡大なら介護崩壊も
《 淑徳大学・結城康博教授 》
2022年3月24日、次の2024年度の介護保険制度改正に向けた議論を行う社会保障審議会・介護保険部会が再開された。筆者も2015年まで介護保険部会の委員を務めていた経験から、次期制度改正は大きな節目となるのではないかと考える。【結城康博】
論点のポイントは、これまで継続審議とされてきた、(1)ケアマネジメント自己負担の導入?(2)自己負担2割負担層の拡充?(3)一部、要介護1・2の訪問介護、通所介護の総合事業化? といった3点だ。そして、その中でも最大のトピックは2割自己負担層の拡充であろう。現行、単身世帯で年収280万円を超えると自己負担2割となるが、そのカットラインが下がるか否かである。
筆者は、今年10月から新たに2割負担が新設される後期高齢者医療制度(経過措置はあるものの)の仕組みが踏襲され、単身世帯で年収200万円以上の層が1割から2割となるラインあたりが焦点となると予測する。なお、これによって75歳以上の約370万人が2割負担の対象となる(3割負担は約130万人)。
筆者の予想が外れて欲しいが、仮に介護保険でも年収200万円以上が1割から2割へのラインとして設定されたならば、一部のケースで介護崩壊と言うべき事態も招きかねない。
確かに、高額介護サービス費制度(*)があるが、一定の範囲内で介護保険サービスの自己負担が2倍に跳ね上がるのだ。そうなれば、ヘルパー、デイサービス、福祉用具など生活に不可欠なサービスを、少し無理をしてでも「利用控え」せざるを得ない要介護者も生じるだろう。いくら年収200万円以上とはいえ、医療・介護の支払いが2倍となれば家計は相当苦しくなるはずだ。
(*)高額介護サービス費制度は、利用者のひと月の自己負担があらかじめ定められている上限額を上回った際に、その超過分を払い戻す仕組み。家計を圧迫しすぎないよう介護の支払いを抑える支援策で、上限額は個々の経済状況に応じて決められている。
また、介護事業所にとっても影響は大きい。2割負担層拡充により「利用控え」が増えれば、事業収入の低下で経営的に苦しくなる。ケアマネジャーも利用者の「懐」具合を気にしながらアセスメントをしなければならず、ケアマネジメントの理念も揺るがしかねない。
今夏の参議院選挙が済めば、当面、国政選挙はない。そのため、介護崩壊を加速させる2割自己負担層拡充が断行される可能性は十分にある。これは介護保険の歴史的転換点となりかねず、非常に注視しなければならないであろう。
SNSシェア
介護のみらいラボ編集部コメント
次の2024年度の介護保険制度改正に向けた議論を行う社会保障審議会・介護保険部会がさる3月24日に再開されました。淑徳大学の結城康博教授は、2015年まで介護保険部会の委員を務めていた経験からも、次期制度改正は大きな節目となるのではないかと考えています。今夏の参議院選挙が終われば、当面、国政選挙がないことからも、結城教授は「介護崩壊を加速させる2割自己負担層拡充が断行される可能性は十分にある」と予測しています。ぜひ、お読みください。