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ニュース 介護業界ニュース 2021/04/06

#結城康博#加算#基本報酬#介護報酬改定#介護施設

令和3年度介護報酬改定(上)厳しい訪問介護、まあまあな施設介護

介護報酬改定について解説する眼鏡をかけた結城先生.jpg

介護のみらいラボ編集部コメント

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文:結城康博(淑徳大学教授)

介護報酬改定について解説する結城康博先生

2021年4月から介護報酬の改定率が+0.7%となり、新しい単価(値段)で介護保険がスタートしました。これから、(上)(下)の2回にわたって21年介護報酬改定の概要を解説していきます。(上)の本稿では、まず介護報酬の注目ポイントを施設ごとに見ていきましょう。

厳しい訪問介護!「まあまあ」と評価できる施設介護!

今回の改定の大きなポイントは、自立支援・重度化防止などに重きを置いていること。介護サービスを通じて、要介護者の心身の状態をより良くしようといった意図が感じられます。例えば、具体的な方策の1つとして、「科学的介護」といった項目が注目されています。

しかし、今回の改訂は、これまでの改定率の歴史を見る限り、今回、「小幅な引き上げ」と評価されてしまうことは否めないでしょう。特に、「訪問介護」は厳しい結果となっています。
「介護施設」の分野は、基本報酬が軒並み上がっていますので、同じ介護サービスを提供したとしても、一定の増収が見込めます。そういった点では、一定の評価ができます。

1単位のみの引き上げ訪問介護

既述のように訪問介護の「基本報酬」は1単位、身体介護中心型(1時間以上1時間30分未満)でも2単位と、ほとんど変わらない結果となっています(表1)。
つまり、値段でいうと10円しか報酬が引き上がらないため、引き上げ分をすべて介護職の給料に反映したとしても、時給10円しか上げられないことになります。一般的に介護職員は人材不足と言われますが、特に、在宅で働くヘルパーはその問題が深刻で、有効求人倍率が15倍と驚愕する数値となっています。

表1:訪問介護の基本報酬

項目 時間 单位/回
改定前 改定後
身体介護中心型 20分未満 166 167
20分以上30分未満 249 250
30分以上1時間未満 395 396
1時間以上1時間30分未満 577 579
以降30分増やすごとに算定 83 84
生活援助加算(注1) 66 67
生活援助中心型 20分以上45分未満 182 183
45分以上 224 225
通院等乗降介助 - 98 99

※単位数はすべて1回あたり
※ (注1)引き続き生活援助を行った場合の加算(20分から起算して25分ごとに加算、70分以上を限度)
出典: 「参考資料1:令和3年度介護報酬改定における改定事項について」第199回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料/2021.1.18(厚生労働省ホームページ)をもとに作成

乗降介助の見直し

訪問介護分野では、新しく通院等乗降介助が「99単位/片道」となりました。これは、要介護者の通院に同行するケースで変更が見受けられます。
旧来は自宅がサービス開始の出発地であり、1つの病院への通院介助をこなしたら、必ず自宅に戻らないといけませんでした。しかし、4月からは複数の病院への通院が可能となり、例えば自宅へ戻らずに2つの病院をはしごする間の介助も算定対象となりました。また、デイサービスのご利用者が1度自宅に帰らずとも、直に「通院等乗降介助サービス」を利用して、病院へ向かってから自宅に戻るサービスも可能となりました。

介護施設の基本報酬は引き上げ

いっぽう施設系の介護報酬においては、基本報酬が10単位以上引き上がっていますので、これまでのサービスを維持していても、自ずと収入増になります。例えば、特別養護老人ホームの基本報酬は、すべての要介護度において引き上げられています(表2)。これは老人保健施設、介護医療院といった施設系サービスでも同様です。
しかし、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど)といった施設系は、比較的控え目な引き上げとなっています。

表2:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の基本報酬

費用
要介護 单位/回
改定前 改定後
介護福祉施設サービス費
(従来型個室)
1 559 573
2 627 641
3 697 712
4 765 780
5 832 847
ユニット型介護福祉施設サービス費
(ユニット型個室)
1 638 652
2 705 720
3 778 793
4 846 862
5 913 929

※単位数はすべて1日あたり
出典:「参考資料1:令和3年度介護報酬改定における改定事項について」第199回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料/2021.1.18(厚生労働省ホームページ)をもとに作成

一部加算が基本報酬に包括化

特別養護老人ホームなどの基本報酬が大幅に引き上がっていても、楽観視はできません。なぜなら、旧来、算定できた「加算」が包括化され、基本報酬に盛り込まれたうえでの引き上げとなっているからです。
具体的な例ですと、「栄養マネジメント加算」が廃止されて基本報酬に盛り込まれ、新たに「栄養マネジメント強化加算」が新設されました(表3)。しかし、この新算定をする場合には、かなりのハードルの高い計画書を作成するなど手間のかかる作業が必要となります。そのため、大幅に引き上がった基本報酬は、旧来の加算が廃止されたことを踏まえると、実はさほど大きな引き上げではないとも理解できます。

表3:施設系サービスにおける栄養ケア・マネジメント

改定前 改定後
項目 単位 項目 単位 ステータス
栄養マネジメント加算 14単位/日 - - 廃止
栄養ケア・マネジメントの末実施 14位/日計算
(3年の経過措置期間を設ける)
新設
なし - 栄養マネジメント強化加算 11単位/日 新設
低栄養リスク改善加算 300単位/月 - - 廃止
経口維持加算 400単位/月 経口維持加算 400単位/月 変更なし

出典: 「参考資料1:令和3年度介護報酬改定における改定事項について」第199回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料/2021.1.18(厚生労働省ホームページ)をもとに作成

介護職員等特定処遇改善加算の1/2ルールの見直し

今回の改定における重要なポイントとして、介護人材不足対策である介護職員等特定処遇改善加算の1/2ルールが見直されたことが挙げられるでしょう。
この加算は、介護職員への給与の補填となる介護報酬ですが、旧来、その配分はベテランの職員に手厚くすることとなっており、それ以外の介護職員へ配分する場合、ベテラン介護職員の1/2以下にするといった規定がありました。
今回の見直しにより、ベテラン職員への配慮は重視しながらも、他の職員への報酬を厚くすることも可能となりました。

今回の介護報酬改定は細かい点で大きく変わっていますので、参考文献でも示した厚生労働省の資料をよく読んで理解していく必要があります。特に、次回の(下)で、詳しく述べますが「科学的介護」に関する事柄などは複雑な仕組みになっていますので、より情報収集が必要でしょう。

次回4月8日には、科学的介護とLIFEを中心に解説します。

参考文献

第199回社会保障審議会介護給付費分科会
「参考資料1:令和3年度介護報酬改定における改定事項について」2021年1月18日

厚生労働省「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議 別冊資料(介護報酬改定)」2021年3月9日

厚生労働省「令和2年度 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料」2021年3月9日

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プロフィール

結城 康博 (ゆうきやすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授 社会福祉士 介護福祉士

馬淵敦士さん

1969 年生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒業。法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。1994~2006 年、東京都北区、新宿区に勤務。この間、介護職、ケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護係の仕事に従事(社会福祉士、介護福祉士)。現在、淑徳大学総合福祉学部教授(社会保障論、社会福祉学)。元社会保障審議会介護保険部会臨時委員。『介護職がいなくなる』岩波ブックレット。その他、多数の書籍を公刊。