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ニュース 介護業界ニュース 2025/12/01

#インタビュー

リアルとバーチャルの融合によるレクリエーションも!現場スタッフの業務軽減も期待される「アバター介護士」とは?

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介護のみらいラボ編集部コメント

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大阪府と兵庫県で介護・福祉関連の事業を展開する「社会福祉法人 隆生福祉会」では、大阪府内のグループホームに"アバター介護士"を導入しています。アバター介護士とは、アバターを使って、イベントやレクリエーションの支援、見守りなどを、非接触・非対面で実施できるサービスです。アバターや生成AIを活用したサービス開発を行う「AVITA株式会社」との連携により、介護現場における人手不足や、介護スタッフの負担軽減を目指して開発が進められています。アバター介護士の開発背景や、本格導入までに乗り越えた壁について、社会福祉法人 隆生福祉会の久保田真子氏と、AVITA株式会社の塚本彬華氏に話を聞いてみました。

1.「アバター介護士」を開発しようと思ったきっかけ

ーー「アバター介護士」を開発しようと思ったきっかけを教えてください。

隆生福祉会 久保田(以下、久保田):「介護業界でもリモートワークができないだろうか」と考えたことがきっかけです。介護の現場は身体介助のような、人の手を介する業務がほとんどです。そのため、コロナ禍においてリモートワークが一気に広がった一方で、医療や介護の分野では、リモートワークの導入は困難であるという現場を目の当たりにしました。現在も感染症への警戒は続いており、現場ではマスクの着用が欠かせません。なかなか緊張感を緩めることができず、現場で働くスタッフにとっては、心身ともに負担の多い状態が続いています。

また、介護の現場は女性のスタッフが多く、妊娠や出産をきっかけに休職する人も多い傾向にあります。休職時は現場への復帰を希望していたものの、長く現場を離れていたことに対する不安や、保育園が見つからないといった理由から、復職を諦めるスタッフも少なくありません。このように、せっかくキャリアを積んできた人が、やむなく現場を離れていく現場をなんとかしたいと考えていました。そこで、「離れた場所にいても、何らかの形で現場に関われる手段はないか」と模索していくうちに、アバターを使ったリモートでのコミュニケーションという選択肢に出会ったのです。AVITA株式会社CEOの石黒浩先生と当法人は、遠隔操作アンドロイド「テレノイド」の共同研究を長く続けているご縁もあり、今回の「アバター介護士」の開発に至りました。

2.アバター操作の担当者は?

ーー「自宅からでも操作できる」とのことですが、2025年現在は、どのような方がアバターを操作しているのでしょうか。

久保田:現在は、当法人のスタッフがアバターの操作を担当しています。普段は介護以外の業務を担当している職員ですが、特に問題なく操作できています。基本的な操作はそれほど難しいものではないため、慣れればスムーズに対応できるようです。

なお、産休・育休に入る前のスタッフ数名にも、アバターの基本操作をレクチャーして、「現場と関わりたいと思ったらいつでも連絡をください」と伝えています。やはり、日々の業務で関わってきたご利用者様の様子は、休んでいても気になるものです。まだ休暇中のスタッフからの連絡はありませんが、今後はこのような形での活用が広がることにも期待しています。

アバターの掛け声に合わせて飲み物を提供するなど、現場とも連携しつつ、レクを実施している

アバターの掛け声に合わせて飲み物を提供するなど、現場とも連携しつつ、レクを実施している

3.開発・運用面での工夫

ーー「アバター介護士」の開発・運営にあたり、特に難しかった点はありますか。

AVITA株式会社 塚本(以下、塚本):特に印象的だったのは、「介護の現場でアバターを本当に価値のある存在として機能させていくには、想像以上に繊細な設計や運用の工夫が求められる」ということです。現場にアバターを馴染ませていくには、ただ単に導入するだけでは不十分で、細部まで丁寧に設計する必要があると実感しました。例えば、猫のアバターは表情が分かりやすく、親しみやすい一方で、「猫が人の言葉を喋ることに違和感がある」と感じる方もいらっしゃいます。一方で、大人のアバターにすると、「ご利用者様によっては、高圧的に感じてしまうのでは」という懸念もありました。

そのため、アバターの見た目や振る舞いなどの様々な要素について、「誰にとって、どういった存在であるべきか」を現場の視点から丁寧に考える必要があると改めて感じています。現在も、ご利用者様からの反応について、現場のスタッフさんからこまめにフィードバックをいただいており、そのような声をもとに調整を重ねています。今後も、アバターがチームの一員として自然と現場に溶け込み、皆さんとの信頼関係を築いていけるように、現場に根差した価値のある活用方法を一緒に探っていきたいです。

アバターの掛け声に合わせて飲み物を提供するなど、現場とも連携しつつ、レクを実施している

アバターの操作は手元にあるデバイスのボタンを押すだけなので、慣れれば誰でも簡単に操作できる

ーーただ単にアバターを活用するだけでなく、介護施設ならではの調整が重要なのですね。その他に、実際の導入面において、うまくいかなかったことや、工夫を重ねたことはありますか。

久保田:技術的な面では、通信環境に関する問題が挙げられます。アバターはリアルタイムで操作するため、やはりネットワークの安定性が重要になります。導入当初は、「そもそも不具合の原因が通信の問題なのか」といったことすらも、その場では判断が難しいこともありました。そうした際は、AVITAさんにリモートで状況を確認していただきながら、一つひとつ課題を洗い出し、改善していきました。また、ご利用者様のなかには耳が遠い方も多くいらっしゃるため、スピーカーをどこ置くかといった、細かな調整にも時間をかけています。

さらに、導入当初は「アバターはモニターの中の存在」と設定していたため、「運動後に水分補給をしましょう」といった声掛けがあっても、現場のスタッフやご利用者様には、なかなか伝わらないこともありました。そこで、最近ではリアルとバーチャルを融合させるように工夫しています。例えば先日実施した「おしゃべりテレビ」では、アバターが「スタッフの皆さん、カルピスの準備をお願いします」と声かけを行い、それにあわせて現場の職員が実際にカルピスを配布。その後、アバターが「じゃあ、みんなで乾杯しましょう」と呼びかけて、ご利用者様が自然な流れで水分補給をできるようにしました。介護の現場では、水分摂取をうながしても拒否されてしまうことがよくあるため、アバターとのお喋りを楽しみながら、自然と水分を取っていただけるのは、私たちにとっても理想の姿です。このような身体的なケアにも繋がるように、今後も工夫を重ねていきたいと考えています。

4.今後の展望

ーー「アバター介護士」について、今後の展望を教えてください。

塚本:将来的には、オリジナルのアバター開発や、AIとの連携も進めていく予定です。具体的には、ご高齢者にも受け入れられやすい、介護現場のニーズにマッチした、オリジナルデザインのアバターの開発を検討しています。「AIで対応できる部分はAIに任せつつ、人が担うべき部分は人が対応する」といった役割分担を意識した、新しい介護の仕組みを構築していきたいと考えています。

久保田:当法人では、「人の手で行うことに価値がある」という従来の価値観に捉われすぎずに、「人とテクノロジーの融合により、より良い介護の形を作っていく」という考えを大切にしています。アバターやロボット、AIなどのテクノロジーは、決して人を置き換えるものではなく、人の力を補い、可能性を広げるためのパートナーだと私たちは考えています。現在はまだ法人内での取り組みに留まっていますが、将来的には、「アバター介護士」が他の介護事業所にも広がっていくことを願っています。私たちが積み重ねてきた工夫や知見を共有することで、介護業界全体が、より柔軟で持続可能な形へと進化していく未来を目指し、今後も取り組みを続けていく予定です。

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出典:取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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