「介護をする人・される人」の両方に役立つアイデアを表彰!4部門8賞が選ばれた「KAiGO DESIGN AWARD2025」に注目
2025年2月、介護の未来を変革するビジネスを表彰するイベント「KAiGO DESIGN AWARD2025」が初開催されました。同アワードを企画したのは、全国で介護の魅力発信と課題解決を行う、一般社団法人KAiGO PriDE(カイゴプライド)です。厚生労働省が主導する実証事業の一環として活動を始め、社会における介護の認識を変える取り組みを多数実施しています。アワードの概要や実施の背景について、代表理事のマンジョット・ベディ氏と、事務局の山口仁氏に聞きました。
ーー「一般社団法人KAiGO PRiDE」とは、どのような活動をしている団体なのでしょうか。まずは、活動概要をお聞かせください。
マンジョット:一般社団法人KAiGO PRiDE(以下、KAiGO PRiDE)では、「誰もが自分らしく安心して暮らせる社会」の実現を目指し、クリエイティブの力で日本の介護を拡張・強化するプロジェクトを実施しています。設立背景については後ほど改めてご紹介しますが、私はクリエイティブ・ディレクターとして、日本の広告業界で30年以上活動してきました。そうした経験を活かし、介護分野の課題にクリエイティブの力を掛け合わせることで、業界全体のイメージの変化や課題解決を目指しています。
活動の例としては、2019年に熊本県でスタートしたKAiGO PRiDEプロジェクトをはじめ、介護の認識を変えるイベントウィーク「KAiGO PRiDE WEEK」、介護職と高齢者が共に参加するファッションウォーク「LiNK WALK」の開催などが挙げられます。
なかでも中心的な存在である「KAiGO PRiDEプロジェクト」は、介護職が自ら誇りを持ち、介護の魅力を伝える取り組みです。これは厚生労働省の実証事業の一環として始まったもので、介護職のポートレート撮影や、インタビュー動画「My Story」の制作などを通じて、現場の声を社会に届けています。2019年以降継続して実施しており、介護業界の内外から大きな反響が寄せられています。
2025年2月には、初の取り組みとなる「KAiGO DESIGN AWARD 2025」を開催したそうですね。同会についても、概要を教えてください。
マンジョット:「KAiGO DESIGN AWARD2025」は、介護や高齢期の暮らしに役立つアイデアや製品にスポットライトを当てるビジネスピッチコンテストです。「プロダクトデザイン部門」「ビジネスアイデア部門」「クリエイティブコンテンツ部門」「ファッション・メイク部門」の4つの部門を設け、全国から介護やヘルスケアに関するモノ・コト・アイデアを募集しました。
初回となった今回は合計で55件のエントリーがあり、審査員による選考の末、「プロダクトデザイン部門:2件・ビジネスアイデア部門:3件・クリエイティブコンテンツ部門:2件・ファッション・メイク部門:1件」が選ばれました。
具体的な受賞アイデアとしては、転倒骨折リスクを低下させる衝撃マットや、視覚障がい者のためにスポーツの実況音声をリアルタイムで生成するAI、着る人と着せる人の両方の視点で考えられた衣類などが挙げられます。これらのアイデアは、2025年2月20日・21日に開催された「International KAiGO Festival 2025」にて最終のピッチコンテストを行い、表彰式も実施しました。なお、当日は厚生労働省・経済産業省の政策担当者、業界をリードする企業の経営者などによるトークショーも実施しています。
ーーデザインアワードは、これまでの"介護の認識を変える活動"とは少し異なるように感じます。なぜ同会の開催に至ったのでしょうか。
マンジョット:KAiGO PRiDEではこれまで、さまざまな取り組みを通して、介護の内側からイメージを変えることに注力してきました。日本では介護に対して、比較的ネガティブなイメージを持つ人が多い傾向にあります。また、介護の現場で働いている人も、「誰でもできる仕事をしている」という認識を持っていたり、自分に自信がなかったりする人が多いと感じていました。そのため、私たちは現場で働く人々の声や姿を通じて、介護という仕事の素晴らしさを発信してきました。こうした活動により一定の手応えを感じていましたが、その一方で、「日本が直面する介護の課題を本気で解決するには、もっとスピードを上げ、仲間を増やしていく必要があるのでは」と考えるようになったのです。
そこで、民間企業を巻き込み、日本における介護の課題を一緒に解決していく方法を模索。その結果、介護や高齢期の暮らしに役立つアイデアや、製品にスポットライトを当てるアワードの開催を思い付きました。日本には、高齢者や障がいを持つ方も使いやすい製品やサービスが数多くあるものの、必要としている人の手には届きづらいのが現状です。そのため、「どのような身体状況でも自分らしく生きる」ためのサービスやアイデアをアワードで取り上げることで、そうした便利なものを広く伝えたいと考えました。また、介護業界に対する可能性を多くの企業に感じていただくことで、介護をより前向きに捉えられる社会を、一緒に目指していきたいとも考えています。
山口:現在、このアワードにおいて最も重要な課題は、取り組みそのものを、より多くの企業に認知していただくことだと考えています。「KAiGO DESIGN AWARD2025」は、その名前から介護のみを対象としているように感じるかもしれませんが、実はヘルスケア全般も視野に入れています。例えば、元気な高齢者がなるべく長く自宅で安心して暮らせるような製品やサービスも含まれており、このようなものは「シルバーエコノミー」と呼ばれる分野にあたります。これは高齢化が進むなかで生まれる新しい経済の動きで、2030年には市場規模が100兆円にも達すると言われ、非常に大きな可能性があります。だからこそ、多くの企業の方々にそのポテンシャルを感じていただき、介護や高齢社会をよりポジティブに捉えられるような社会にしていきたいです。
ーー初回となる今回のアワードを振り返って、どのように感じていますか。また、介護業界の内外から寄せられた感想についても教えてください。
マンジョット:これまでの介護業界において、地域単位など「点」での取り組みは複数開催されていたものの、今回のように日本全国を対象とした「面」での取り組みは、ほとんど存在していなかったように思います。介護はいずれ誰もが関わるものであるからこそ、日本全国のどこにいても、介護する側・される側の両方が幸せになれるような仕組みやサービスが必要だと考えています。そうした点からも、今回のような全国単位の取り組みは、非常に大きな意義があるのではないでしょうか。また、こうした構想を話したり、実際にアワードなどのイベントを開催したりしたことで、想像以上に多くの方が「ぜひ一緒にやりたい」「何か協力したい」と声を上げてくださっています。想いに共感して下さる仲間が着実に増えていることは、何よりの励みになっています。
私たちが目指しているのは、単なるアワードの開催ではなく、ムーブメント(社会的な流れ)に繋げることです。ただし、そのためには、より多くの方の力を借りることが欠かせません。現在もすでに取り組んでいるように、企業や自治体、厚生労働省などの国の機関とも連携しながら、より大きな枠組みで動かしていきたいと考えています。5年後、10年後には、「日本には、介護する人・される人の両方を支える、良い製品やサービスが揃っている」と言われるようにしたいですね。
ーーアワードについて、今後の展望をお聞かせください。
マンジョット:2025年9月現在、すでに第2回目となるアワード「KAiGO DESIGN AWARD 2026」の開催が決定しています。介護や医療、ヘルスケアに関連するBtoB展示会のCare Show Japan(ケアショー・ジャパン)とのコラボにより、2026年2月25日から27日にかけて様々なプログラムを開催する予定です。初回との大きな違いは、全国で働く介護職の皆さんに、一次審査を担っていただくことです。私たちはこれまで、「KAiGO PRiDEプロジェクト」の一環として、全国にアンバサダーと呼ばれる仲間を広げてきました。そのネットワークを活かして、選抜されたメンバーの方に審査をお願いしたいと考えています。
どれだけ優れたアイデアやデザインであっても、現場で働く介護職の方や、サービスを受ける方にとって本当に良いものでなければ意味がありません。日常の中で「こういうものがあったらいいのに」と感じる視点こそが、必要とされていると感じています。そのため、まずは現場感覚を持つ介護職の方々によって審査し、そのうえでデザイン性や専門性などの観点から最終的な評価を行う、二段階の審査体制を整える予定です。実際に介護現場で働く方々の力を借りて、より意義のあるアワードを目指していきたいです。
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介護のみらいラボ編集部コメント
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