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ニュース 介護業界ニュース 2026/02/25

#インタビュー

介護を「誰もが誇れる仕事」にするために。現場の声を社会に繋ぐ「KAiGO PRiDE」の挑戦

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介護のみらいラボ編集部コメント

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2025年2月、介護の未来を変革するビジネスを表彰するイベント「KAiGO DESIGN AWARD2025」が初開催されました。同アワードを企画したのは、全国で介護の魅力発信と課題解決を行う、一般社団法人KAiGO PRiDE(カイゴプライド)です。厚生労働省が主導する実証事業の一環として活動を始め、社会における介護の認識を変える取り組みを多数実施しています。活動の開始背景や、活動に参加した介護職からの反応などについて、代表理事のマンジョット・ベディ氏と、事務局の山口仁氏に聞きました。

ーー「一般社団法人KAiGO PRiDE」では、"介護のイメージを業界の内外から変える取り組み"を多数実施しています。そもそも、どのような経緯で活動を始めることになったのでしょうか。

マンジョット:「日本における介護の課題を、クリエイティブの力で改善したい」と思ったことがきっかけです。私はインド国籍で、17歳の時に来日。その後30年以上、日本の広告業界に携わってきました。広告の仕事は、それぞれの企業やブランドが抱える課題を、映像や写真などの手段で解決していくものです。そして、長年この世界で仕事をするなかで、「社会にはまだまだ解決すべき課題がある」と気付くようになりました。そうした課題のうちの一つが、介護だったのです。

正直なところ、私は介護についてほとんど関心がなく、恥ずかしながら「介護は国が主体となって進めるものであり、自分には関係ない」と思っていました。ところが、ある日友人が運営している介護施設を見学したことがきっかけで、介護に目を向けるようになります。実際に現場を見たことで、自分がいかに介護のことを知らなかったかに気付かされたのです。と同時に、介護に対するネガティブなイメージと、現場で働く介護職の方々が笑顔でいきいきと仕事をしている様子とのギャップに、大きな衝撃を受けました。そこで、「このギャップをクリエイティブの力で解決したい」と考え、介護事業所を運営している知人と認知症カフェを開設したり、各地で講演を実施したりするなど、広告の仕事を続けながら、介護に関する活動を始めました。

ーーそういった活動を重ねて、厚生労働省が主導する実証事業に参画することになったのですね。

マンジョット:そうですね。2014年頃に、熊本県が主催する「介護の日」のイベントに招かれ、講演を行ったことがありました。そこで厚生労働省の方と出会ったことをきっかけに、実証事業に参画することになります。そして、2019年からKAiGO PRiDEプロジェクトを始め、その第一弾の取り組みとして、熊本県の介護職50人のポートレートを撮影し、それぞれが語る介護の魅力を言葉にして写真に添えたのです。

「KAiGO PRiDE@TOYAMA母の日特別イベント」として、富山県内で介護職に就く11組の親子を撮影した際の様子。撮影しているのはマンジョット氏(写真左)

「KAiGO PRiDE@TOYAMA母の日特別イベント」として、富山県内で介護職に就く11組の親子を撮影した際の様子。撮影しているのはマンジョット氏(写真左)

現役の介護職にスポットを当てた理由は、「介護の現場で働いている方々による言葉を届けた方が、説得力があるはず」と考えたためです。この取り組みは業界の内外から大きな反響を呼び、2025年現在も日本各地で継続しています。

また、こうした取り組みをさらに広げるために、2021年に一般社団法人KAiGO PRiDEを設立。KAiGO PRiDEプロジェクトの継続のほか、介護の認識を変えるオンラインイベント「KAiGO PRiDE WEEK」、介護職と高齢者が共に参加するファッションウォーク「LiNK WALK」介護や高齢期の暮らしに役立つアイデアや製品にスポットライトを当てる「KAiGO DESIGN AWARD2025」の開催などを行っています。

ーーこれまで活動を継続するにあたって、特に難しかったことを教えてください。

マンジョット:介護の話をすると、多くの人が距離を置いてしまうことです。子どものことを語るときは、将来への希望などが前向きに語られるのに対し、介護の話になると「昨日までできていたことができなくなる」というイメージが先立ち、どうしてもネガティブに受け止められがちです。そのため、人を巻き込みながら活動を進めていくのは、簡単ではありませんでした。

その状況が大きく変わったと感じたのは、2019年から実施しているKAiGO PRiDEプロジェクトです。介護職の方々が自分の言葉で仕事の魅力を発信するようになってから、空気が一気に変わったと感じています。例えば、オリンピックに出場したことのない人が会場の雰囲気を語るよりも、実際に出場した人が話した方が、ずっと説得力があるのと同じです。介護も現場で働く人にしか語れないストーリーがあり、そこには共感や感動が詰まっています。私自身も、介護職の方から聞いた話に思わず涙してしまうことが何度もありました。

富山駅構内では、写真展示も実施。「写真を見て、『自分が抱いていた、介護に対する暗いイメージは違うのかもしれない』と思いました」といった感想も寄せられた

富山駅構内では、写真展示も実施。「写真を見て、『自分が抱いていた、介護に対する暗いイメージは違うのかもしれない』と思いました」といった感想も寄せられた

そうした現場の声が社会に届き始めたことで、共感して一緒に活動へ加わってくれる人が増えました。ただし、取り組みを一時的なものではなく、ムーブメント(社会的な流れ)に繋げるには、一人ひとりの介護に対するマインドを変えていくことが欠かせません。人の価値観を変えるのは決して簡単ではありませんが、内側からの発信と、企業を巻き込んだ外側の取り組みの両方を進めながら、介護を前向きに捉えられる社会へと繋げていきたいと考えています。

ーー中心的な取り組みである「KAiGO PRiDEプロジェクト」に対して、介護職の方からの反応はいかがですか。

マンジョット:ポートレートの撮影を始めてから、驚くようなことが起きました。それは、撮影に参加した介護職の方々が、自分の仕事を「誇れるもの」として受け止め始めたことです。介護職の方々と話をすると、「自分たちは誰でもできる仕事をしている」という感覚を持っている方が多いように感じています。撮影の際も、自信なさげに下を向いて部屋に入ってくる方がほとんどです。

しかし、「あなたの仕事は本当に素晴らしい」「僕は介護の仕事に惚れてしまったんです」と何度も声をかけると、次第に表情が変わり、内側から笑顔や誇りが滲み出てくるのです。その瞬間を撮影した写真が、現在展示会を行ったり、当法人のホームページに掲載したりしているものです。撮影後には、「この仕事を辞めなくて本当に良かったと感じました」と涙ながらに伝えられたことが何度もあります。また、撮影後に各施設の施設長から「撮影後、まるで別人のようになって驚いています」と報告をいただくことも少なくありません。そのような言葉をいただくと、胸が熱くなりますし、この活動を続けてきて本当に良かったと感じます。

介護職と高齢者によるファッションウォーク「LiNK WALK」も複数回開催。介護職とケアを必要とする方が歩く姿を通して、

介護職と高齢者によるファッションウォーク「LiNK WALK」も複数回開催。介護職とケアを必要とする方が歩く姿を通して、"支え合う社会"を表現している

山口:皆さん、ご自身の仕事に誇りを感じている一方で、その想いを人前で語るとなると、ためらいがある方も多いと感じています。本当は「自分たちはプライドを持って介護の仕事を頑張っている」と自信をもって社会に発信していただきたいですし、そのためには、そう言える環境を私たちが作っていく必要があると考えています。そうした環境づくりには、介護業界の内側だけでなく、企業や一般の方々にも理解を深めてもらうことが欠かせません。社会全体が介護の価値を共有できるようにしていくことが、今後の活動の大きなカギになると考えています。

ーー活動について、今後の展望をお聞かせください。

マンジョット:私たちの活動の目的は、介護そのものをブランディングしていくことです。繰り返しにはなりますが、介護職に従事している方々は素晴らしい仕事をしているのに、自分に自信が持てない人が多いと感じています。また、介護に対する関心の低さも気になっています。海外の学生に「将来どんな仕事をしたいか」と尋ねると、必ず一定数が「介護やケアの仕事をしたい」と手を挙げますが、日本で介護を選択肢に挙げる人はほとんどいません。

一方で、実際に介護現場で働いている方に話を聞くと、「楽しい」「やりがいがある」と前向きな声が返ってきます。そのギャップを埋め、社会全体に介護の魅力を伝えていくことが必要だと感じています。今後は、クリエイティブの力で介護職をブランディングすることで、「将来介護職に就きたい」と思う人が増えるような環境を作っていきたいと考えています。

現役介護職のポートレート撮影をはじめとした活動は、全国に広まり続けている

現役介護職のポートレート撮影をはじめとした活動は、全国に広まり続けている

山口:今後の具体的な予定としては、「介護プレナーシップコミュニティ」の立ち上げが挙げられます。アワードは年に一度の華やかなイベントですが、それだけで終わらせるのではなく、日常的に企業や関係者が課題やアイデアを持ち寄れる場を作りたいと考えています。介護業界では、「新しいものを考えたけれど広がらない」「介護分野では実証のフィールドが少ない」といった声をよく耳にします。医療では大学病院などで実証試験を行い、論文や学会を通じて横展開される仕組みが整っていますが、介護にはまだそうした場が不足しているようです。そのため、企業だけでなく行政、介護現場、金融関係者など幅広い人が集まり、課題を一気に解決できるようなプラットフォームの構築を目指しています。

また、2026年2月25日〜27日には、「International KAiGO Festival 2026」を東京ビッグサイトで開催。同イベントでは、優れたアイデアを表彰するピッチコンテストや、業界の著名人を招いたトークセッションを実施するほか、「KAiGO PRiDEプロジェクト」の一環として作成したショートムービーも公開します。今後も、介護の魅力を業界の内外に向けて発信する、様々な取り組みを続けていく予定です。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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