信用金庫に認知症の方が来店された際の対応方法は?京都信用金庫における「シニアライフあんしんサポート」の取り組み

京都・滋賀・大阪を中心に展開する京都信用金庫では、高齢者の顧客を対象とした「シニアライフあんしんサポート」を提供しています。シニア向けのサービス・商品の提供はもちろん、地域包括支援センターとの連携や認知機能チェックの提供などにより、高齢者の快適な生活を支援する取り組みです。認知症が疑われる方が来店された際に気をつけていることや、地域の方々からの反応などについて、京都信用金庫 くらしのサポート部の安藤小百合氏、ゆたかなコミュニケーション室の島田貴弘氏に話を聞いてみました。
1.システムを活用し、顧客の状況や要望を他店舗と共有
――認知症が疑われるお客様が窓口を訪れた際に、職員の皆様が日々意識されていることや、注意されていることについて教えてください。
安藤:「コンタクト履歴」というシステムの活用により、お客様の状況やご要望を他の店舗と共有することで、状況の把握に努めています。コンタクト履歴とは、お客様が来店された目的や、職員とお話した内容を書き込むシステムのことです。お客様が毎回同じ店舗を利用されるとは限らないため、どの店舗に来られても丁寧な対応ができるように、情報共有を欠かさずに行っています。特に、普段から当金庫の窓口に来られるお客様には、家族構成やご家族の状況についてお聞きしたり、可能な範囲内で緊急連絡先などをお伺いしたりするようにして、有事の際に対応できるようにしています。
また、認知症の発症によって強い不安を感じられている方や、お怒りの方が窓口にいらっしゃることもあるため、そのような場合は場所を変えてゆっくりとお話を伺うように心がけています。実際に窓口の対応をしている職員からは、「認知症サポーター養成講座や銀行業務検定で、『お客様のことを否定せずに、まずは話を聞いて受け止めることが重要』と学んだので、お客様対応の際は常に心がけている」といった声もありました。今後もそれぞれのお客様に適した対応ができるように、認知症に関する学びを深めていければと考えています。

「シニアライフあんしんサポート」により、万が一の際に備えられると喜びの声が集まっている
2.京都信用金庫オリジナルの診断書を作成
―「シニアライフあんしんサポート」のお取り組みを進めるにあたり、特に工夫されたことはありますか。
安藤:シニアのお客様向けの商品である「つないで安心代理人サービス」の提供開始時に、当金庫オリジナルの診断書を作成したことです。同サービスは、認知症により認知判断機能が低下した場合に備えて、当金庫との取り引きにおける代理人をお客様ご自身で指定できるものです。万が一お客様の認知判断機能が低下した場合は、診断書をご提出いただくことで、代理人とのお取り引きが可能になります。
このようなサービスを作ると、どうしても「認知症と診断されたらすぐに代理人に繋ぐ」という考えになってしまいがちですが、認知症を発症した場合、全ての意思決定ができなくなってしまう訳ではありません。そのため、ご本人にとってできること、できないことを確認できる診断書が必要ではないかと考え、同サービス専用の診断書作成に至りました。たとえ認知症を発症しても、預金がご本人様のものであることに変わりはありません。代理人が必要な状況について、正確に判断できるような仕組みを取り入れた点については、かなり注力しました。

職員向けの勉強会の様子
3.取り組みに対し、喜びの声が数多く寄せられている
――高齢者を含めたお客様や、地域の方々からの反応はいかがですか。
安藤:本当にさまざまなお声をいただいています。先ほどお話した「つないで安心代理人サービス」に関しては、「もし認知症になって自分のお金を動かせなくなったらどうしようと思っていたけれど、不安を解消できました」といった喜びの声が数多く寄せられました。これからも、それぞれのお客様に適したご提案やサービスの提供を心がけていく予定です。
島田:地域包括支援センターとの連携についても、前向きなご意見が集まっています。お客様ご本人からの感謝の言葉だけでなく、同センターの担当者さんからも、「京都信用金庫からの連絡がきっかけで、認知症が疑われる方へ適切なサービスをご案内することができました」というお言葉をいただいたこともありました。
さらに、認知機能の状態を確認できるサービス「認知機能チェック」を利用されたお客様からは、「自分は認知症なのではと不安に思っていたけれど、病院はハードルが高くてなかなか行けなかった。いつも利用している信用金庫でチェックを受けられるのはとてもありがたいです」といったお声も聞いています。当金庫だからできることにより、今後も地域にお住まいのお客様のお役に立てれば嬉しいです。
4.自分で意思決定できるうちに、意思を反映できるお手伝いをしていきたい
――高齢者支援に関して、展望をお聞かせください。
安藤:近年は認知症や相続に関するサービスが増えつつあるものの、お客様ご自身が元気なうちは、なかなか準備に取りかかれないケースが多いのが現状です。認知症が進んでから金融関係の対応に追われると、ご本人の意向を汲み取ることは非常に難しくなってしまいます。そのため、当金庫ではご自分の意思を自分自身で決められるうちに、その意思を反映できるお手伝いをしていきたいと考えています。たとえ認知症になっても、安心して生活し続けられることをお客様にお伝えしつつ、寄り添っていきたいですね。また、今後は単身者の方が増加していくことが予想されるため、単身のお客様のリスクに備えた商品やサービスの提供も検討できればと考えています。
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介護のみらいラボ編集部コメント
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