社会福祉士は公務員としても活躍できる?働く場所や採用ルートを解説!
文/倉元せんり(社会福祉士)「社会福祉士は公務員になれるのだろうか」「公務員として働く場合、社会福祉士の資格が役立つ職種はあるのだろうか」。そんな疑問を抱いている方はいませんか? 結論からいうと、社会福祉士も公務員として働くことができます。また、社会福祉士の資格が役立つ職種もあります。
ただし、公務員として働くには、公務員試験に合格することが必要です。この記事では、社会福祉士が公務員として活躍できる職場や採用ルート、公務員として働くメリットについて詳しく解説します。公務員になろうか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 目次
- 1.社会福祉士は公務員としても活躍できる
- 2.社会福祉士が公務員として働く場所
- 国家公務員
- 家庭裁判所
- 少年院や刑務所
- 地方公務員
- 児童相談所
- 福祉事務所
- 地域包括支援センター
- 公立病院
- 市区町村役場
- 3.社会福祉士が公務員として働く際の採用ルート
- 国家公務員
- 地方公務員
- 4.社会福祉士が公務員として働く際の年収
- 5.社会福祉士が公務員として働くメリット
- 収入が安定する
- 福利厚生が手厚い
- 社会的信用が得られる
- 6.社会福祉士が公務員として働く際の注意点
- 業務内容を自分で選べない場合がある
- 自治体によって給与が異なる
- 7.公務員以外の社会福祉士との違い
- まとめ:社会福祉士が公務員として働くために準備しよう
1.社会福祉士は公務員としても活躍できる
公務員は、国の機関で働く「国家公務員」と、自治体の役場などで働く「地方公務員」の2種類に分けられます。
社会福祉士が公務員になる場合、国家公務員であれば法務省や裁判所などに勤務し、専門性の高い業務に携わります。一方、地方公務員は、自治体の福祉課や児童相談所などで地元住民に密着した支援活動を行うのが特徴です。
なお、地方公務員には「地方公務員上級福祉職」と呼ばれる区分があり、福祉職として働く際は、この区分で受験する必要があります。なかには、社会福祉士の有資格者を求める自治体もあるので、社会福祉士資格を取得しておくことで、キャリアの選択肢が広がるでしょう。
2.社会福祉士が公務員として働く場所
社会福祉士が公務員として働く場所は、国家公務員と地方公務員のどちらを選ぶかによって異なります。
ここでは、社会福祉士が公務員として働く場所と仕事内容について解説します。それぞれの仕事内容を知って、自身に合った職場を見つけましょう。
国家公務員
国家公務員として働く場合の職場・職種として、以下の2つを紹介します。
- 家庭裁判所(家庭裁判所調査官)
- 少年院や刑務所(福祉専門官)
1つずつ見ていきましょう。
家庭裁判所(家庭裁判所調査官)
社会福祉士の資格取得が要件ではありませんが、家庭裁判所で働く「家庭裁判所調査官」は、社会福祉士の専門性を生かせる職種の1つです。
家庭裁判所調査官の主な役割は、心理学や社会福祉学などの知識を用いて、家庭内の紛争解決や非行少年の立ち直りをサポートすることです。具体的には、当事者との対話を通じて問題の本質を探り、解決に向けた方策を提案する役割を担います。家庭の問題に深く関わり、人の心情に寄り添いながら未来を見据えた支援ができるため、やりがいも大きいでしょう。
なお、家庭裁判所調査官になるには、裁判所職員採用総合職に採用された後、裁判所職員総合研修所で2年間研修を受ける必要があります。
少年院や刑務所(福祉専門官)
少年院や刑務所の「福祉専門官」は、出所・出院後の社会復帰をサポートする職種です。具体的には、福祉の知識と経験を生かして、住居や就労の調整、福祉サービスの手続き、受刑者の精神面のケアなどを担います。
この職種は、2014年度から設けられた比較的新しい専門職で、社会福祉士または精神保健福祉士の資格に加え、おおむね5年以上の福祉現場での実務経験が求められます。再犯防止や社会復帰支援に関わりたい方に適した職場といえるでしょう。
地方公務員
地方公務員として働く場合の主な職場・職種には、以下の5つがあります。
- 児童相談所(児童福祉司)
- 福祉事務所
- 地域包括支援センター
- 公立病院
- 市区町村役場
1つずつ紹介します。
児童相談所(児童福祉司)
児童相談所は、原則として18歳未満の子どもの問題について家庭、学校などから相談を受け、調査・確認をしたり一時的に子どもを保護したりする機関です。近年、児童虐待の相談が増加している社会背景から、その重要度は増しています。
児童相談所で働く児童福祉司の任用資格は、社会福祉士資格を取得することで得られ、活動を通じて社会福祉士の知識と技術を存分に生かせます。
児童福祉司の主な役割は、虐待の調査や家庭訪問、親子関係の調整、養育環境の改善支援などです。ときには、子どもの命を守るために緊急的な介入や一時保護の判断を下すこともあり、幅広い業務がこなせる分、責任も大きい職種といえるでしょう。
福祉事務所
福祉事務所は、生活保護や児童・障害者・高齢者福祉など、地域住民の生活を支える総合的な業務を担う福祉行政機関です。都道府県や市および特別区への設置が義務付けられており、社会福祉法に基づいて運営されています。
福祉事務所で働く社会福祉士は、生活保護のケースワーカーとして生活困窮者の自立支援を行ったり、住民の相談窓口として適切なサービスにつなぐ役割を担ったりと、地域の生活課題を解決するための中核的な役割を担います。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者を支える地域の総合相談窓口です。すべての市区町村に設置が義務付けられており、社会福祉士・保健師・主任ケアマネジャーが連携して、高齢者のさまざまな課題に対応しています。
地域包括支援センターで働く社会福祉士は、総合相談や権利擁護業務が主な役割で、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるように、幅広い支援を行います。
なお、雇用形態は運営主体によって異なり、市区町村が直接運営する場合は公務員として勤務しますが、社会福祉法人などに委託されている場合は、その法人の職員として働くことになります。
公立病院
公立病院で働く社会福祉士は、患者やその家族が治療に専念できるようにサポートする、医療ソーシャルワーカー(MSW)の役割を担います。
医療ソーシャルワーカーの主な業務は、「医療費の支払いが不安」「退院後の生活をどうすればよいか」といった悩みへの相談援助や、地域の福祉サービスとの連携調整などです。医療と福祉をつなぐ架け橋として活動できるため、専門知識を医療現場で生かしたい方にとっては、理想的な環境といえるでしょう。
市区町村役場
市区町村役場では「地域福祉課」「障害者支援課」などの部署で、生活困窮者や高齢者、障害がある方の相談対応を行います。窓口対応が中心ですが、場合によっては家庭訪問や施設訪問を行うこともあります。また、地域の福祉計画策定や各種サービスの調整・実施に関われるのも大きな特徴です。
住民の声を直接聞きたい方、制度を活用して地域の生活を支えたい方に適した職場といえるでしょう。
3.社会福祉士が公務員として働く際の採用ルート
公務員として働く際は、公務員採用試験に合格する必要があります。ここでは、国家公務員と地方公務員の主な採用ルートを解説します。
国家公務員
国家公務員として働くためには、「法務省専門職員(人間科学)」などの採用試験を受験しなければなりません。この試験区分には福祉のほか、教育学・社会学・心理学などの科目も含まれるため、幅広い知識が求められます。
採用試験の受付期間や受験資格については、公式サイトに掲載されているため、しっかり確認しておきましょう。国家公務員試験において、社会福祉士資格は必須ではありませんが、専門知識は業務遂行に役立つため、面接などのアピールポイントになるはずです。
地方公務員
地方公務員として働くにあたっては、地方上級試験の「福祉職」または「社会福祉」区分を受験するのが一般的です。多くの自治体では、社会福祉士や保育士などの資格を受験要件としていますが、「資格取得見込み」で受験できるケースも少なくありません。自治体によって条件が異なるため、事前に志望先の募集要項を確認しておきましょう。
試験内容は専門試験と面接が中心で、社会福祉の基礎知識や法制度の理解、具体的な事例への対応力が問われます。過去の出題傾向を研究し、福祉行政の課題や自分の考えを整理しておくと、試験対策になるだけでなく、実務への準備にもつながるでしょう。
4.社会福祉士が公務員として働く際の年収
「令和5年 地方公務員給与の実態」によると、福祉職公務員の年収は約514万円です。内訳は、以下のとおりです。
| 内訳 | 1か月の平均収入 |
|---|---|
| 基本給 | 286,320円 |
| 扶養手当 | 4,205円 |
| 地域手当 | 21,485円 |
| 合計 | 312,010円 |
(出典:令和5年 地方公務員給与の実態)
なお、約514万円は、これらの金額に賞与(月収の4.5倍※)を加えた数字です。厚生労働省の「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」によると、国民の所得中央値は405万円であるため、社会福祉士の給料はそれよりも高いといえるでしょう。
ただし、年収は自治体によって異なります。また、市区町村よりも都道府県で働くほうが年収は高い傾向があります。
※人事院「人事院勧告」の「特別給(ボーナス)年間支給月数」より、令和5年における国家公務員の支給月数4.5か月分を使用。
5.社会福祉士が公務員として働くメリット
社会福祉士が公務員として働くメリットは、以下の3つです。
- 収入が安定する
- 福利厚生が手厚い
- 社会的信用が得られる
1つずつ詳しく紹介します。
収入が安定する
公務員は給与体系が明確で、賞与も定期的に支給されるため、収入が安定しています。また、勤続年数に応じて給料が上昇し、退職金が増加するのも公務員の特徴です。
景気の影響を受けにくいため、民間企業と比べて雇用の安定性が高く、再任用制度を利用すれば定年後に継続して働けるのも、大きなメリットといえるでしょう。
福利厚生が手厚い
福利厚生が充実しており、住居手当、交通費補助など給与以外の待遇が手厚いのも、公務員の魅力です。
自治体によって内容は異なりますが、有給休暇や育児休暇制度が充実しているところも多く、ワークライフバランスを保ちやすい環境にあります。共済組合に加入することで、ホテルや各種施設の割引が受けられる場合もあり、そうした制度を利用すれば、プライベートの充実にもつながるでしょう。
社会的信用が得られる
社会福祉士(国家資格)と公務員が組み合わさることで、社会的信用がさらに高まります。安定した収入と身分が保障されているため、住宅ローンやクレジットカードなどの審査で有利に働くことも多く、住宅購入や子育て・教育資金、老後の備えに関する計画も立てやすいでしょう。
6.社会福祉士が公務員として働く際の注意点
社会福祉士が公務員として働く際は、以下の2点に注意が必要です。
- 業務内容を自分で選べない場合がある
- 自治体によって給与が異なる
それぞれ詳しく紹介します。
業務内容を自分で選べない場合がある
公務員として勤務すると、定期的な人事異動が避けられません。福祉職も例外ではなく、数年ごとに異動を命じられるケースが多く見られます。場合によっては、福祉職以外の部署に異動する可能性もあるため、特定分野を極めたい方や希望する業務にこだわりがある方には向かない可能性があります。公務員に興味のある方は、自分のキャリアプランと照らし合わせたうえで検討するようにしましょう。
自治体によって給与が異なる
社会福祉士が公務員として働く場合の年収は、所属する自治体によって大きく異なります。ちなみに、都道府県・特別区・政令指定都市は一般的な市町村と比べて平均年収が高い傾向にあります。特に東京23区などは、地域手当が割高に設定されているため、総支給額も高くなるでしょう。
一方で、平均年収の水準が低めの自治体もあるので、公務員を目指す際は、希望する自治体の給与体系をあらかじめ調べておくことをおすすめします。
7.公務員以外の社会福祉士との違い
公務員の社会福祉士は、行政権限に基づく支援や制度の運用を担い、地域全体にサービス、サポートを提供します。一方、民間の社会福祉士は、特定の施設やサービスのもとで、個別的な支援を行います。
処遇面に目を移すと、公務員は給与と福利厚生が安定しているのが特徴で、民間の社会福祉士は実績や能力評価が重視される傾向にあります。そのため、民間のほうがキャリアアップが早い場合もあるでしょう。また、公務員は定期異動でさまざまな分野を経験できますが、民間では1つの専門性を深く追求しやすい環境にあります。
どちらが優れているというわけではないので、自分の志向や価値観に合った選択をしましょう。
まとめ:社会福祉士が公務員として働くために準備をしよう
社会福祉士は、公務員としても活躍できます。国家公務員の場合は、法務省や裁判所などで広い視点から業務に携わり、地方公務員は児童相談所や福祉事務所、地域包括支援センターなどで住民に密着した支援を提供します。
ただし、公務員として働くためには、公務員試験に合格しなければなりません。公務員を目指す方は、受験資格や採用試験情報などをしっかりチェックして、採用試験に備えることが大切です。
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