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職場・悩み 介護の転職お役立ち 2025/09/29

介護職が退職を切り出せないときの伝え方と準備を解説

文/長谷部宏依(介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー) 250929_thumb.jpg

介護の現場で働く方のなかには、「退職したいけれどなかなか言い出せない」と悩んでいる人が少なくありません。職場の人手不足や利用者さんへの責任感、同僚への配慮。そうした理由から、退職の意思を伝えることをためらってしまう気持ちは、みなさんも理解できるのではないでしょうか。

この記事では、介護職によく見られる「退職を切り出せない」という問題を取り上げ、具体的な退職手続きの進め方や、円満な引き継ぎ方法などを紹介します。できる限だけ実務的な観点からの解決策を提案していきますので、退職あるいは転職を検討する際の参考にしてください。

なぜ介護職は退職を切り出しにくいのか

ほかの職種に比べて、介護職には「退職の意思を伝えるのが難しい」と感じる方が多いようです。そして、その背景には介護現場特有の事情があります。

まずは、介護職が退職を切り出しにくい理由を見ていきましょう。

辞めたら職場が回らないから

介護業界では、人手不足が深刻な問題となっています。そのため、退職を検討するにあたって「残るスタッフの負担が増え、サービスの質が低下するのではないか」という不安や罪悪感を持つ方は少なくありません。夜勤のシフトが組めなくなるなど、現場への影響が大きいことがわかっているからこそ、退職の意思を伝えにくいのです。

周囲にどう思われるのか不安だから

介護職の場合、地域内で転職することが多く、前職での評判が伝わりやすい環境にあります。また、研修会や勉強会などで、ほかの施設のスタッフと顔をあわせる機会も多いため、「あの人は突然辞めた」といった情報が広まりやすいことも事実です。

そうしたことから、周囲に「逃げた」「投げ出した」と思われないか、同僚や上司との関係が悪くならないかなどが気になり、退職の意思表示ができないケースも珍しくありません。なかには「業界内での評判が、就職活動や次の職場での人間関係構築に影響するのではないか」という不安を抱える方も多見られます。

引き留められるとつらいから

「もう少し頑張ってみないか」「何とか条件を改善するから」。そう言って上司や経営者から引き留められると、「断りにくい」と感じる方も多いのではないでしょうか。

介護業界では、日々のコミュニケーションや意思の疎通が欠かせないため、上司との信頼関係が強ければ強いほど、期待を裏切ることへの罪悪感が強くなる傾向にあります。自分の退職によってシフトに穴が開いたら、かわりの人材が見つかるまで現場が混乱するかもしれない。そんなふうに考えると、退職が切り出しにくくなるのも当然です。

円満退職できる伝え方とは

退職を決めたら、次に考えるべきは「どのように伝えるか」です。円満に退職するためには、伝え方が非常に重要になります。

ここでは、スムーズに意思を伝え、良好な関係を保ったまま退職するためのポイントを紹介します。

自分の意思を固める

退職の意思を伝えるにあたっては、自分の気持ちを整理しておくことが大切です。「なぜ退職したいのか」「どんな未来を描いているのか」を明確にしておけば、気持ちが揺らぎにくくなるでしょう。逆に、迷いがある状態で話を切り出すと、引き留められた際に気持ちが変わってしまう可能性があります。

気持ちを整理するときは、ノートに退職理由や今後のキャリアプランを書き出してみるのが効果的です。「体力的に夜勤が厳しくなった」「家族の介護との両立が難しい」「別の分野でスキルアップしたい」など、明確かつ具体的に書いてみましょう。

退職後の具体的な行動計画(転職先の候補や資格取得の予定、休息期間など)もあらかじめ考えておくと、周囲からの質問に答えやすくなります。

そうやって自分自身の意思を固めておけば、たとえ引き留められても「ありがたいお言葉ですが、よく考えた上での決断です」と毅然とした態度で応じられるはずです。

いつ誰に伝えるのか確認する

退職の意思は、直属の上司に伝えるのがマナーです。就業規則で退職の申し出期限(通常は1か月前)が定められている場合がほとんどですので、切り出すタイミングはそれに従いましょう。可能であれば、引き継ぎの時間やかわりの職員を探す時間に配慮して伝えるのがおすすめです。

筆者が退職した際は、3か月前に上司に退職の意向を伝えました。引き継ぎに最低1か月はかかることと、残っている有休を完全に消化したかったためです。

落ち着いて話せる環境を整える

退職の話は、プライバシーが保たれる場所で、時間に余裕を持って行いましょう。「少しお時間をいただけませんか」と前もって伝え、ほかのスタッフや利用者さんに聞かれない環境(個室、会議室など)で話すのが理想です。

また、休憩時間や勤務終了後など、落ち着いて話せる時間帯を選ぶことも重要です。

退職理由の伝え方を考える

退職理由は簡潔かつ前向きな言葉で伝えるのがポイントです。「キャリアアップのため」「家庭の事情で」など、相手が理解しやすい理由を選びましょう。

職場の不満や人間関係のトラブルが本当の理由であっても、そこを強調するのは避け、建設的な会話になるように心がけてください。

その際、「貴重な経験をさせていただきました」「学んだことを次のステップに生かしたい」など、感謝の気持ちを示すとより円満な退職につながります。

円満退職をするために気をつけたいポイント

退職を伝えた後も、実際に退職するまでにはさまざまな手続きや配慮が必要です。最後までよい印象を残し、気持ちよく次のステップに進むためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。

就業規則を理解しておく

労働基準法では、退職の申し出は2週間前までに行えばよいとされています。しかし、就業規則で1か月前などと定められている場合は、そちらに従ったほうがトラブルになりにくいでしょう。

退職届は口頭での申し出でも有効ですが、「言った」「言わない」というトラブルを避けるためにも書面で提出することをおすすめします。

感情的にならない

退職の話し合いのなかで、不満や怒りを言葉にしてしまうと、円満退職が難しくなります。本当の退職理由が何であれ、最後まで冷静さ、誠実さを保ちましょう。

感情的になりそうな場面があったら、深呼吸をしたり、「少し考えさせてください」と時間を置いたりするなどの工夫で、自分をコントロールしてください。

引き継ぎは責任を持つ

後任者や同僚に迷惑がかからないよう、担当業務の引き継ぎは丁寧に行いましょう。業務マニュアルを作成して、利用者さんの状態・好みなど細かな情報も共有しておくと、退職した後もスムーズに業務が回ります。

筆者の場合、ケアマネジャーとして担当していた利用者さんを、別のケアマネジャーに依頼しなければならなかったため、依頼先について上司と相談をしました。そして、社内のケアマネジャーに移行できなかった利用者さんについては、他社の居宅介護支援事業所に依頼することにしました。

有休消化は計画的にする

有給休暇を消化したい場合は、早めに計画を立てて職場と相談しましょう。退職直前にまとめて有休を取得すると、引き継ぎの機会が持てなくなり、円満退職の妨げになることもあります。可能であれば、退職日の1〜2週間前までに有休消化を終えるようにするとよいでしょう。

退職後の手続きを確認する

退職にともなう各種手続きについても確認しておきましょう。健康保険の切り替えや年金の手続き、失業保険の申請などは、手続きに期限があるので注意してください。

あわせて、勤務先で貸与されていた制服やネームプレート、鍵、ICカードなどについても、忘れずに返却しましょう。退職証明書や離職票など、今後の就職活動に必要な書類の発行については、いつ頃受け取れるか人事部に確認しておくことをおすすめします。

まとめ:退職は終わりではなく新しいキャリアへと続く出発点

退職によって職場との契約関係は終了します。しかし、視点を変えれば、退職=自己成長の可能性を模索するための出発点と考えることもできます。これまでの経験を生かして、さまざまなことにチャレンジし、スキルアップ・キャリアアップを目指してみましょう。

介護の現場で培った「人を思いやる心」や「コミュニケーション能力」「問題解決力」などは、どんな職場でも貴重な財産となるはずです。よりよい未来のために、前向きな一歩を踏み出してください。

介護の世界は広いようで狭いものです。だからこそ、最後まで感謝の気持ちを忘れずに、退職の手続きを進めていきましょう。

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長谷部宏依(Hiroe Hasebe)

介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー

介護職員として介護老人保健施設に入職。その後介護福祉士を取得し訪問介護や訪問入浴、デイサービスで働く。ケアマネジャーは20年の実績があり、100名以上の高齢者を担当。認認介護・老老介護・介護拒否など困難事例も多く経験。現在はWebライターとしてさまざまな記事を執筆している。福祉住環境コーディネーター2級も取得。

長谷部宏依の執筆・監修記事

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