看護助手のリアル体験談|現場で知った「やりがい」と「命の支え方」
文/佐藤恵美(介護福祉士・社会福祉士)「看護助手の仕事は実際大変なのかな?」「病院で働くのは専門知識がないと難しそう」。看護助手の仕事に対して、このような疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
私は、30代の終わりに無資格・未経験の状態で、地元の病院に転職しました。その後、同じ病棟で7年勤務し、介護福祉士や社会福祉士など、現場で役立つ資格を取得しています。
この記事では私の体験をもとに、看護助手のリアルな働き方をお伝えします。実際の現場でどのように働くのか、興味のある人はぜひ読んでみてください。
1.看護助手を目指したきっかけ
「人を助ける仕事がしたいな」と思ったのが、看護助手を目指したきっかけです。もともとは事務職についていたのですが、配属先はとても多忙な部署。朝早くから夜中まで働く日もあり、5年目でとうとう倒れてしまいました。
そのため一時的に休職していたのですが、結局そのまま退職し、数か月間自宅療養することに。そして、体調が回復してきたころ、ぼんやりと頭に浮かんできたのが、「今度働くなら、困っている人を支えるような仕事にしよう」という思いでした。
休職している間、通院先のお医者さんや看護師さんに温かく接していただいたからだと思います。また、そのころ祖母の認知症が悪化し、在宅介護にあたっていたのも理由の1つでした。しかし、漠然と「困っている人を助けられる仕事がいいな」と考えていただけで、具体的な職種を決めていたわけではありません。
誰かを助けるという意味では、介護施設や教育機関などさまざまな職場が考えられます。そうしたなかには、介護職員や療育指導員など、私のキャリアでも挑戦できそうな仕事もいくつかありました。では、なぜ看護助手という仕事を選んだのか。それはタイミングと人の縁によるものでした。
2.看護助手になる前にとった3つの行動
事務職の仕事を辞め、かなり元気になったころのことです。私は仕事探しのために、次の3つの行動をとりました。
- 情報を集める
- ハローワークに行く
- 働きたい医療機関に自分で連絡をとる
順を追ってお話ししていきます。
情報を集める
「フルタイム勤務でも大丈夫だな」と考えていた私は、まず本屋に向かいました。目指している「人を支え、助ける仕事」について、きちんと情報を得なければと考えたのです。そして、介護福祉関連の雑誌や資格の本を買い込み、どのような仕事があるのかを調べました。そのときに見つけたのが、看護助手です。
看護職・介護職の経験や資格がなくても、病院の職員として働ける。患者さんの支援ができる。それを知ったとき、通院先のお医者さんや看護師さんのおかげで、どれだけ心が癒やされたかを思い出しました。
病院勤務に関心を持ったのは、子どもから高齢の方まで、幅広く関わりたいという理由からです。当時の私は30代後半で、一般的には元気な世代。だからこそ、多様な人たちと関わって、自分自身の視野と仕事の幅を広げていきたかったのです。
ハローワークに行く
情報を集めた私は、すぐにハローワークで求人を探しました。しかし、小さな町なので、医療機関の数はそこまで多くありません。介護施設の求人が目立つ一方で、医療機関の求人はほぼ皆無でした。
ハローワークの職員さんにも相談したのですが、今は求人がないとの回答。早く働かなければと焦っていたため、「あきらめて別の仕事も探そうか」と考えながら帰路につきました。
ところがその翌日、家族から耳寄りな情報を得ることができました。私が幼いころにお世話になった病院が、代替わりを機にリニューアルしたというのです。私はさっそくパソコンを開き、その病院の名前で検索をかけました。
働きたい医療機関に自分で連絡をとる
調べた病院は、地元に古くからある個人医院でした。それが院長の代替わりとともに規模を広げ、より多くの患者さんを支える病院に生まれ変わっていたのです。
私は直接メールで連絡し、応募したい旨を伝えました。その結果----。数日後に適性検査や面接を受けて採用され、看護助手としての一歩目を踏み出すことになったのです。
あらかじめ仕事内容についてざっくりと調べていたので、働き始めたときは未経験でも大きなギャップは感じないだろうと思っていました。しかし、看護助手の仕事は思った以上に多忙。「意外に大変だな」と感じたのを覚えています。でも、その一方で「周囲の思いやりとチームワークに助けられる温かな仕事だな」とも感じていました。
3.看護助手の仕事内容とは?
看護助手の仕事は、配属先によってさまざまです。基本的な役割は、看護師のサポートで、主に以下のような業務があります。
- 備品の管理
- 病室や居室の環境整備
- 患者さんへの介護業務
私は病棟に配属され、患者さんのケアに努めました。以下は、私が従事した業務の一覧です。
| 業務 | 内容 |
|---|---|
| 食事介助 |
|
| 排泄介助 |
|
| 入浴介助 |
|
| 更衣介助 |
|
| 移乗・移動・移送介助 |
【例】
|
| 体位変換 |
|
| 状態観察・報告 |
|
| 備品管理 |
|
| 環境整備 |
|
1つひとつは地味に見えますが、患者さんの表情や体調の変化を日々見守り、快適な入院生活につなげるための大事な業務です。
4.看護助手としてのやりがいを感じた場面
看護助手として働くなかで、やりがいを感じられる場面は大きく分けて3つあります。
- 患者さんの回復を見られる
- 患者さんとの温かな交流がある
- 他職種との連携でケアの質を高める
それぞれについて、詳しくお話ししていきます。
患者さんの回復を見られる
私がもっともやりがいを感じたのは、患者さんが回復していく姿を間近で見られる点でした。
私が働いていたのは、「回復期リハビリ病棟」です。回復期リハビリ病棟は、病気やけがの治療を終え、リハビリ中心のフェーズに入った患者さんが過ごされる施設で、脳疾患で麻痺が残った方や骨折した方など、さまざまな患者さんがいらっしゃいました。
年齢も、10代の学生さんから100歳を超える方まで幅広く、病棟全体が1つの町のような雰囲気だったのを覚えています。
多忙な毎日でしたが、リハビリスタッフと一緒に懸命に身体を動かす患者さんの姿は、いつも力を与えてくれました。重症で寝たきりだった患者さんが、ベッドから車椅子に移れるようになったとき。あるいは、発声もままならなかった脳疾患の患者さんが、穏やかに「おはよう」と言ってくれたとき。そんなときは、たまった疲れが吹き飛ぶような、晴れやかな気持ちになりました。
今でも忘れられない患者さんがたくさんおり、退院までの回復を見届けられるところに、強いやりがいを感じていました。
患者さんとの温かな交流がある
患者さんと心を通い合わせる場面にも、看護助手としてのやりがいを感じます。
看護助手は、医療職やリハビリ職よりも患者さんに近い立ち位置にいます。医師や看護師、リハビリスタッフが「治療と回復」をメインとする職種だとしたら、看護助手は患者さんの「生活」に関わる職種です。そのため、患者さんの本音を聞く機会がたくさんありました。
- 家族に迷惑がかかるのがつらい
- 本当に元の暮らしに戻れるのか不安
- 障害が残って、前と同じように動けないのが悔しい
やり切れない気持ちを、何度となく聞いてきました。そして、そのたびに「話を途切れさせないようにしよう」「励ましてあげなきゃ」と焦っていました。ですが、「忙しいのにゆっくり話を聞いてくれてありがとう」と言ってくれる患者さんの笑顔を見ると、心のなかのモヤモヤが一気に晴れていきます。
看護助手は、医療のプロでもリハビリのプロでもありません。しかし、「人」として寄り添うことはできるのだと感じられる瞬間だったと思います。
他職種との連携でケアの質を高める
チーム医療の一員として働くのも、やりがいを強く感じられる点です。看護助手の立ち位置は、その名の通り「看護師の助手」です。しかし、関わるのは看護師だけではありません。
私の勤務先では、看護助手が患者さんの入浴予定を組んでいました。リハビリや検査の時間と重ならないように、入浴時間を設定する業務です。
言葉にすると単純な作業に思えますが、単に空いている時間帯に入浴するのではなく、入浴後に十分な休養を取れるように配慮する必要があります。リハビリの前後に入浴すると、患者さんの疲労感が強くなるからです。そのため、時間を決めるにあたっては、看護師やリハビリスタッフと相談する場面も少なくありませんでした。
とはいえ、どうしてもうまく入浴時間を決められない日はあります。そのようなときは、患者さんの負担を軽くできるようにリハビリ時間を調整してもらったり、入浴方法を変えてみたりと、他職種と一緒にいろいろな案を出し合っていました。
ちなみに、他職種との連携には次のようなものもあります。
- リハビリスタッフの提案で、新しい福祉用具を介助に取り入れる
- 看護師と相談し、患者さんに負担をかけないおむつ交換を考える
- 医療ソーシャルワーカーに普段の患者さんの様子を伝える
看護助手の仕事には、日々新しい発見と学びがあります。また、チームの一員として他職種と協力し合い、患者さんのより良いケアにつなげる仕事には、大きなやりがいがあります。
5.看護助手の仕事で大変だったこと
看護助手の仕事には、大変なこともありました。
- 体力的にきつい
- 命を預かるプレッシャーがある
- 職員同士の考えが食い違うときがある
1つずつお話しします。
体力的にきつい
看護助手の仕事では、ほぼ立ちっぱなし、歩きっぱなしという日も珍しくありません。ナースコール対応で病棟中を歩いたり、看護師とともに患者さんを検査室まで送ったりと、絶えず動き回っています。そのため、看護助手になってしばらくの間は、毎日へとへとになっていました。
なかでも大変だったのは入浴介助です。患者さんの身体状況に合わせた入浴形態を採用するのですが、1人ひとり介助の仕方が違うため、毎回神経を使って安全に気をつけながら介助にあたっていました。介助の際は腰への負担も大きく、腰痛に悩まされることも多かったです。
そんな具合で、身体介助に慣れないうちは大変でしたが、先輩や看護師からのアドバイスもあり、少しずつ身体の使い方がうまくなりました。
命を預かるプレッシャーがある
看護助手の仕事は、日々の生活支援が中心ですが、「患者さんの命を預かっている」と強く感じる場面もあります。
あるとき、いつも明るい患者さんに元気がなく、話し方にもどことなく違和感を覚えました。ろれつが回っていないように感じたのです。すぐ看護師に報告したところ、主治医に連絡をし、検査してもらえることになりました。
検査の結果、脳疾患を発症していることがわかりましたが、迅速な対応で順調に回復し、後遺症もありませんでした。しかし、少しでも発見が遅れていたらと考えると、今でも背筋が凍る思いです。
看護助手は、ケアを通して患者さんと長く接する職種です。その分、小さな変化にも気づけます。だからこそ、常に「命を預かっている」という意識を持っていなければなりません。
職員同士の考えが食い違うときがある
病院ではさまざまな職種の職員が働いており、患者さんの捉え方はそれぞれに異なります。そのため、意見がすれ違うケースも少なくありません。ある日のカンファレンスでも、職種ごとの視点の違いを実感する出来事がありました。
高齢の患者さんについて、「歩行訓練を始めたい」と言うリハビリスタッフに対し、看護師は「まだ歩行訓練は危険なのでは」と慎重な意見を伝えました。看護師と一緒にケアにあたっていた私も、患者さんの筋力が弱いのを知っていたため同じ意見です。そこで、医師の意見を仰いだところ、ペースは遅くとも、無理のない範囲で歩行訓練を進めようということになりました。
その結果、時間はかかりましたが、患者さんは順調にリハビリをこなし、退院するころにはスタスタと歩けるまでに。スタッフ間の意見に相違があっただけに、誰もがほっと胸をなでおろしました。
患者さんの回復を願うのは、どの職種も同じです。だからこそ、ときに意見がぶつかるのも当たり前かもしれません。ただし、そうした場面でも、冷静に互いの価値観や考えをすり合わせていくことが大切です。
また、そうしたやりとりこそが、多くの職種で患者さんを支える医療現場に必要なプロセスなのだと思います。
まとめ:これから看護助手を目指す方へ
看護助手は、資格や専門知識がない人でも始められる仕事です。医師や看護師をはじめとする他職種から多くを学び、医療や福祉について考える機会にも恵まれています。
私は医療の現場を何も知らずに飛び込んだため、きついと感じる日もありました。しかし、職場の仲間とともに患者さんを支えた経験や、多くの患者さんと接した経験は、私の人生の糧となっています。
大変なこともありますが、それ以上に得られるものがある仕事なので、看護助手に少しでも興味があれば、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
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