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職場・悩み 介護の転職お役立ち 2025/10/07

介護の仕事が覚えられないのは職場の問題?今日から実践「できる介護士」の仕事術

文/渡口将生(介護福祉士・ケアマネジャー) 251007_thumb.jpg

介護の現場は覚えることが多いうえに、急な対応を求められることもあり、誰もが不安を抱えがちです。そのため、「仕事が覚えられない」「自分は介護の仕事に向いていないのでは」と悩む介護職の方も多く見られます。

しかし、覚えられないのは、能力が低いせいではありません。すぐに仕事を覚えられるかどうかは、「ちょっとした仕事のコツ」をつかんでいるかどうかに、大きく影響されるからです。

本記事では、介護の仕事が覚えられない理由や仕事を効率的に覚えるためのコツ、退職を決断する前に見直してほしいポイントを解説します。安心して介護の仕事に向き合えるヒントをお届けしますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.介護士が仕事を覚えられない理由

介護士は、高齢者や障害者の生活を支える大切な仕事ですが、介護職のなかには「仕事が覚えられない」と悩む方が多く見られます。

介護士が仕事を覚えられない理由としては、次のことが考えられます。

覚えることが多すぎて頭が追いつかない

介護の仕事は単純なように見えて、実際には多くの知識やスキルが求められます。利用者さんごとに異なる支援を提供したり、個別のケアプラン(介護サービス計画)を覚えたりする必要があるという点を考えれば、わかりやすいのではないでしょうか。

加えて食事や入浴、排泄介助といった身体的ケアにも、細かな配慮や技術が必要です。服薬の確認やバイタルチェックなど、医療に関わる基本的な知識も欠かせません。さらに、記録の書き方や事業所ごとのルール、家族や他職種との連携の取り方まで、覚えることは本当に多岐にわたります。

日々の業務に追われながらこれらを覚えていくのは容易ではなく、頭が混乱してしまうのも無理はないのです。

急な対応が多く流れをつかみにくい

突然、利用者さんの体調が崩れて緊急対応を迫られたり、予期せぬ転倒事故が発生したり----。介護の現場では、突発的な出来事が日常的に発生します。そのため、日々の仕事が予定通りに進まず、「どの業務を優先するべきか」「どう判断すればいいのか」で迷ってしまうことも少なくありません。

場合によっては、業務を教えてもらっている最中に、先輩スタッフが対応に追われて指導を中断してしまうようなこともあるでしょう。そうしたケースでは、教えられた知識が断片的になり、全体の流れや業務のつながりをつかむのが難しくなってしまいます。

教える人によってやり方が違う

介護の現場では、複数のスタッフがチームで動いているため、日によって指導担当が変わる場合もあります。そして、教える人によって排泄介助の方法や声かけのタイミング、記録の書き方などが異なることも珍しくありません。

そうしたことから、どのやり方が正しいのか判断がつかなくなる場合もあるでしょう。また、「とりあえず先輩のやり方をまねてみよう」と思って行動しても、別の先輩から注意を受けてしまい、とまどって自信をなくしてしまうケースもあります。

ゆっくり教えてもらう時間が確保できない

慢性的な人手不足に悩む介護業界では、スタッフが常に業務に追われていて、新人に仕事を教える時間を確保できないのが実情です。

本来は、仕事に慣れるまでの間、先輩が隣について1つひとつ確認しながら指導するのが理想です。しかし、現実には「見て覚えてもらう」「やりながら慣れてもらう」といった指導方法が取られることもよくあります。

そうした環境では、ミスを恐れながら業務を進めなければならず、心理的な負担も大きくなるでしょう。質問したいことがあっても、先輩が忙しそうだと声をかけにくく、疑問を放置してしまうような事態も起きやすくなります。

丁寧に指導を受ければ、難なく身につくはずの知識や技術が、現場の忙しさによっておろそかになってしまう。それも、仕事が覚えられない理由の1つといえるでしょう。

2.介護の仕事を早く覚えるためのコツ

ここまで、仕事が覚えられない原因について紹介してきましたが、介護職として働く以上は、何とかして仕事を覚えなくてはなりません。

ここからは、すぐに実践できる「介護の仕事を覚えるためコツ」を紹介していきます。

覚える優先順位をつける

最初のコツは、「覚えるべき仕事に優先順位をつけること」です。優先順位を決めると、効率よく仕事を覚えられるので、ぜひ試してみてください。優先順位は以下の通りです。

利用者さんの顔と名前を覚える

最優先で覚えるべきは、利用者さん1人ひとりの顔と名前です。名前を覚えることは、信頼関係を築く第一歩になります。また、名前を呼ぶだけで利用者さんの安心感は大きく変わります。覚えにくい場合は、それぞれの特徴や話した内容と結びつけて記憶するなど、自分なりに工夫してみましょう。

時間帯ごとの対応を覚える

介護の現場には、時間帯によって行なうべき業務が決まっているケースがあります。たとえば、起床介助、排泄介助、食事の配膳、就寝準備などもその1つで、それぞれ決まった時間帯に動きます。

効率よく仕事を進めるには、こうした「時間ごとに決められた業務」を覚えていくのも、大事なことです。仕事の流れが把握しやすくなるので、「次に何をすればよいのか」を自然と理解できるようになるでしょう。

利用者個人の情報や臨機応変な対応を覚える

全体の流れが見えてきたら、次は利用者さんごとの個別対応を覚えていきましょう。「この方は食事をゆっくり取る」「この方は声かけを多めにすると安心する」など、個人の特性を理解することは、介護の質を高めるうえで非常に重要です。

個々の特性や既往歴、生活歴を覚えることで、コミュニケーションが円滑になり、業務もスムーズに進められるはずです。

メモをとる

覚えるべきことが多い介護の現場では、記憶に頼らず積極的にメモを取る習慣をつけましょう。業務の手順や利用者さんの特徴、注意点などをこまめに記録しておけば、後で頭の整理がしやすくなります。

メモは使いやすいものを選び、要点を押さえて記入することが大切です。その日のうちに見返すと知識して定着しやすく、あいまいだった点がクリアになる場合もあります。

わからないことはすぐに質問する

不明な点をそのままにしておくと、誤ったやり方が習慣になってしまう可能性があります。わからないことがあれば、その場ですぐ質問するように心がけてください。

「指導者が忙しそうで聞きにくい」と感じることもあるかもしれませんが、利用者さんの安全や安心を守るうえで、確認作業は不可欠です。遠慮せず、前向きに学びの姿勢を持って質問すれば、先輩たちからの信頼も得やすくなるでしょう。

業務の意味を考える

業務を「単なる作業」としてこなすのではなく、「なぜこの介助が必要なのか」「この対応は利用者さんにどう影響するのか」といった意味、意図を理解しながら取り組むことも大切です。

食事介助1つを取っても、「むせないように配慮する理由」や「食事のタイミングが心理的に与える影響」など、奥深い要素がたくさんあります。業務やケアの意味、意図を理解すると、知識が深まって、利用者さんに寄り添った介護が実践できるようになるでしょう。

3.「仕事が覚えられない」が理由で退職する前に考えること

「仕事が覚えられない」という理由で退職する人は少なくありませんが、「退職」を選ぶ前に一度立ち止まって、自身の行動や環境を振り返ってみてはどうでしょうか。

「覚えられない」ことに対して、本当にやれることをやったのか。その点を冷静に見つめ直すだけでも、今後の仕事に対する姿勢や考え方が大きく変わるはずです。

覚えるための努力ができていたか?

仕事は、時間が経てば自然に覚えられるものではありません。意識的に学ぼうとする姿勢が、成長につながります。だからこそ、振り返りの際は、自分が「覚えるためにどんな努力をしてきたか」を見つめ直すことが大切です。

試しに、次のような点を自分に問いかけてみましょう。

・日々の業務のなか出てきた注意点や利用者さんの特徴などを、自分なりにメモしていたか
・業務マニュアルを読んだり、先輩から聞いたことをノートにまとめたりしていたか
・教えてもらうのを待つだけでなく、自分から「教えてほしい」と伝えたか


教える環境が整っていない現場は確かにあります。しかし、教えてもらう姿勢・覚えようとする姿勢がなければ、どこの事業所にいっても「仕事が覚えられない」という悩みは解消しないでしょう。

コミュニケーションを積極的にとっていたか?

仕事をスムーズに覚えるためには、職場の人たちとの関係性も重要です。特に質問しやすい雰囲気かどうか、相談できる相手がいるかどうかは、新人にとって「心の支え」にもなり得る大事な要素です。

ただし、その環境は待っているだけで得られるものではなく、自分からコミュニケーションを取りにいく姿勢が求められます。

たとえば、出退勤時のあいさつや休憩時間の何気ない会話など、小さなやりとりを積み重ねるだけでも、周囲との距離は縮まっていくはずです。信頼関係が築けていれば、わからないことを聞く際にも遠慮しなくて済み、周囲も自然とサポートしてくれるようになるでしょう。

事業所の特徴を把握できていたか?

介護施設にはそれぞれ独自の方針や運営スタイルがあり、規模や利用者さんの状態、事業所の形態(特養・訪問介護など)によっても、求められるスキルや覚えることが違ってきます。

「この職場のやり方が合わない」と感じる場合、それは自分に合っていないからではなく、事業所の特徴を十分に理解できていないからかもしれません。

たとえば、グループホームでは、認知症に対するケア方法を覚える必要があります。一方、訪問系のサービスでは、身体介護だけでなく生活援助も求められます。このように、サービス内容によって覚えることは大きく異なるのです。

ただ、どうしても「仕事が覚えにくい」という場合は、自分にマッチした事業所に転職するのも、1つの選択肢かもしれません。

まとめ:「どうすればできるようになるか」を考えよう

介護の仕事では、多くの知識・スキルが求められるため、決して簡単に覚えられるものではありません。しかし、仕事が覚えられないと感じたときは、自分の学び方や環境への向き合い方を見直すチャンスでもあります。

大切なのは、「できないから辞める」ことではなく、「どうすればできるようになるか」を考えることです。

介護は、人と人が支え合う仕事です。だからこそ、たとえつまずいても1人で抱え込まず、周囲の力を借りながら少しずつ成長していきましょう。その努力は必ず誰かの支えとなり、結果として大きな自信へとつながるはずです。

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渡口将生(Masaki Toguchi)

介護福祉士・ケアマネジャー

20歳で介護福祉士の資格を取得後、施設の介護士や訪問介護のヘルパーとして従事。その後、介護資格取得のスクール講師を経験し、3つの事業所で管理者を務める。現事業所で相談員を経験後、ケアマネジャーとして勤務する。

セミナー講師やライターとしても活動しており、主に介護・医療メディアの執筆や講義を行っている。

渡口将生の執筆・監修記事

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