介護職はメンタルをやられる?今すぐできるストレス対策と職場の選び方
文/中谷ミホ(介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士)介護の現場で働いていると、「もう無理かもしれない」「このまま続けられる自信がない」と感じる瞬間は誰にでもあります。仕事にやりがいを感じていても、心の疲れやストレスが積み重なって、モチベーションが下がってしまうこともあるでしょう。
この記事では、介護職がメンタルをやられる理由やストレスを感じやすい職場の特徴、ストレス対策などをわかりやすく解説します。最後まで読んで、「自分だけじゃなかったんだ」と、心が軽くなるヒントを見つけてもらえると幸いです。
- 目次
- 1.介護職が「メンタルやられる」といわれる理由
- 2.精神的なストレスを感じやすい介護職の特徴
- 未経験で介護の仕事を始めた人
- 自分と他人を比べてしまいがちな人
- 自分の気持ちを言葉にしにくい人
- 小さなミスを引きずってしまう人
- 他人の評価を強く意識してしまう人
- 完璧を求めすぎる傾向がある人
- 考えすぎてしまう癖がある人
- 運動習慣がない人
- 3.メンタル面でストレスを感じやすい介護施設の特徴
- 人手不足で常に忙しい
- 職員間の人間関係が悪い
- 利用者や家族からのハラスメントがある
- 4.介護職が試したいストレス対策
- 同僚と悩みを共有する
- プライベートを充実させる
- 専門家に相談する
- 「辞める」ことも選択肢に入れる
- 5.メンタル面の負荷が少ない職場探しのポイント
- 離職率や定着率をチェックする
- 面接時に現場の雰囲気を確認する
- 研修制度やメンタルケアの体制があるか
- 福利厚生や休暇制度の充実度
- まとめ:自分のメンタルを守るために、できることから始めよう
1.介護職が「メンタルやられる」といわれる理由
介護職がメンタル面の負担を感じやすいのは、身体的・精神的に過酷な業務内容や人間関係の煩雑さ、感情労働(業務中に感情のコントロールを求められる仕事)によって生じるストレスなどが、複雑に絡み合っているためです。
まず、身体面では、腰痛や肩こりなどの慢性的な不調を抱える職員が多くいます。不規則なシフト勤務により睡眠リズムが乱れて、自律神経に悪影響を及ぼすケースも少なくありません。
精神面では、看取りの場面で利用者さんの最期に立ち会うときの喪失感や、認知症の方との意思疎通が難しいことからくる無力感などが大きな負担となります。さらに、利用者さんやご家族からの心ない言葉によって、自信を失うこともあるでしょう。
こうした体験が積み重なると、「この仕事を続けていていいのか」と悩むようになり、介護職としての誇りさえ揺らぐことがあります。
また、常に気を張って働いているために、自分でも気づかないうちに精神的な疲労が蓄積していたりもします。その結果、「なんとなくつらい」「やる気が出ない」といった、目に見えにくいストレス症状があらわれてしまうのです。
2.精神的なストレスを感じやすい介護職の特徴
以下のような特徴を持つ介護職は、メンタルの負担を感じやすい傾向にあります。
未経験で介護の仕事を始めた人
未経験から介護の仕事を始めた人は、現場の空気や対応にとまどい、不安を抱く場面が多いため、精神的な負担を感じやすくなります。
自分と他人を比べてしまいがちな人
「まわりの職員はもっとできているのに......」と他人と比べる癖があると、自信を失いやすくなります。仕事ができる人と比較することで自己評価が低くなり、前向きな気持ちを保つのが難しくなるのです。
自分の気持ちを言葉にしにくい人
悩みや不満をうまく伝えられず、一人で抱え込んでしまう人は、知らず知らずのうちにストレスをため込みがちです。気持ちを表現できないと、心身の不調につながることもあるので注意が必要です。
小さなミスを引きずってしまう人
ささいな失敗を悲観的にとらえて、「自分には向いていない」と思ってしまうと、心のダメージが蓄積しやすくなります。物事をネガティブに受け止めがちな人は、仕事への自信も持ちにくくなるでしょう。
他人の評価を強く意識してしまう人
「まわりにどう思われているか」「迷惑をかけていないか」などが気になる人は、日常でも常に気を張ってしまうもの。その結果、心休まる時間が減り、慢性的にストレスを感じやすくなります。
完璧を求めすぎる傾向がある人
「何事も完璧にこなさなければ」と考えてしまう人は、わずかな失敗でも大きなストレスを感じがちです。完璧主義は達成感を得にくいだけでなく、自分を責める要因にもなります。
考えすぎてしまう癖がある人
物事を必要以上に深く考えてしまうと、気持ちの切り替えが難しくなり、ストレスを長引かせる原因になります。「もしも失敗したら......」といった不安が、頭から離れない状態が続くこともあるでしょう。
運動習慣がない人
日頃から体を動かす機会が少ないと、心身のリフレッシュがしづらくなります。運動不足はストレスの発散を妨げ、疲労感がたまる原因にもなりかねません。
3.メンタル面でストレスを感じやすい介護施設の特徴
介護職のストレスは、職場環境にも大きく左右されます。以下のような施設では、メンタルに負担がかかりやすいといわれています。
人手不足で常に忙しい
介護業界には、人手不足が慢性化している施設が少なくありません。そのような職場では、一人あたりの業務量が過剰になり、時間にも心にも余裕がなくなります。業務をこなすことに精一杯で、「利用者さんに丁寧な対応ができない」という罪悪感を抱くこともあるでしょう。十分な休息が取れないために、疲労やストレスも蓄積しやすくなります。
職員間の人間関係が悪い
介護の現場はチームワークが重要ですが、職員同士の関係がぎくしゃくしている職場では、連携がうまく取れずストレスが増大します。無視や陰口、派閥による対立といった問題があると、毎日の勤務が苦痛になる可能性もあります。仕事の悩みを安心して相談できる相手がいないと、孤立感が強まり、精神的な負担はさらに大きくなるでしょう。
利用者や家族からのハラスメントがある
介護現場では、利用者さんやそのご家族からの暴言・暴力、過度な要求といった「カスハラ(カスタマーハラスメント)」が深刻な問題となっています。こうした行為を繰り返し受けると、職員は自尊心を傷つけられ、無力感に襲われてしまいます。施設側が問題を放置したために職員の心身が疲弊し、最終的には退職を考えてしまう、といったケースも少なくありません。
4.介護職が試したいストレス対策
では、介護現場で働きながら、メンタルを守るためにはどうすればいいのでしょうか。以下に、現場で働く介護職員が実際に取り入れている対策を紹介します。
同僚と悩みを共有する
介護の仕事は精神的な負担が大きいため、悩みを一人で抱え込むと限界を迎えやすくなります。
そんなときは、同じ現場で働く仲間に気持ちを打ち明けてみるのも一つの方法です。同業者だからこそのアドバイスをもらったり、「悩んでいるのは自分だけではないんだ」と思えたりすれば、孤独感が和らいで心が軽くなるでしょう。日常の雑談や休憩中の何気ない会話も、貴重なストレス解消の手段になります。
プライベートを充実させる
心の健康を保つうえでは、現場を離れてからの時間の過ごし方も重要です。
たとえば好きな音楽を聴いたり、映画を観たり、軽い運動を取り入れたりすることで、気持ちがリフレッシュされるかもしれません。また、睡眠や食事の質を見直すだけでも、日々の疲れが取れやすくなります。「仕事のための休み」ではなく、「自分を癒すための時間」という意識を持ちましょう。
専門家に相談する
ストレスや不安が続くときは、心療内科やカウンセラーといった専門家に頼るのも有効です。
専門家に話して客観的なアドバイスが得られれば、自分では気づかなかった心の変化にも早めに対応できます。「相談するのは弱さのあらわれ」などと思わずに、「心のメンテナンス」ととらえてください。
職場によっては、産業医やEAP制度(従業員支援プログラム)を利用できる場合もあります。利用できるようなら、有効に使いましょう。ちなみに、EAP制度とはストレスや人間関係、家庭の悩みなどに対して、外部の専門家によるカウンセリングや相談支援を提供する福利厚生制度のことです。
(参考:厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」)
「辞める」ことも選択肢に入れる
どれだけ努力してもメンタルが限界に達していると感じたら、「辞める」という選択肢を検討することも大切です。社会に出ると頑張り続けることが美徳とされがちですが、自分の健康を犠牲にしてまで続けるべき仕事などありません。
いったん仕事から距離を置くことは、心身の回復や新たな方向性を見つけるきっかけにもなるはずです。退職は「逃げ」ではなく、「自分を守るための賢明な選択」だと考えてください。
5.メンタル面の負荷が少ない職場探しのポイント
介護の仕事を続けたい人にとって、ストレスの少ない職場を見つけることは非常に重要です。職場選びをする際は、以下のポイントを参考にしてみましょう。
離職率や定着率をチェックする
職員の入れ替わりが多い施設は、業務負担の偏りや人間関係のトラブルなど、何らかの問題を抱えている可能性があります。不安を感じるようなら、求人情報だけでなく離職率や定着率なども調べてみるとよいでしょう。
ハローワークの相談員に確認したり、実際に働いたことのある人の口コミを参考にしたりするのも効果的です。こうした情報は、長く働ける職場かどうかを見極める大切なポイントになります。
面接時に現場の雰囲気を確認する
面接や見学の際には、現場の空気をしっかり観察することが大切です。スタッフの表情やあいさつの様子、利用者さんとの関わり方に注目すると、職場の雰囲気や働きやすさ、人間関係などが判断しやすくなります。
研修制度やメンタルケアの体制があるか
研修制度が整っている職場は、職員のスキル向上やキャリア支援に力を入れており、安心して働ける環境が整っています。
さらに、メンタルケアの体制があるかどうかも確認したいポイントです。定期的な面談やEAP制度など、心の健康をサポートする仕組みが整っているところは、職員を大切にしている職場といえるでしょう。
福利厚生や休暇制度の充実度
給与だけでなく、福利厚生や休暇制度にも目を向けましょう。その際は有給休暇が取りやすいか、産休・育休制度は実際に利用されているか、時短勤務やシフトの調整に柔軟に対応してもらえるかなど、細かな点までチェックしておくのがおすすめです。自分のライフスタイルに合った制度が整っていれば、長く無理なく働き続けられます。
まとめ:自分のメンタルを守るために、できることから始めよう
介護の仕事はやりがいがある一方で、精神的な負担が大きくなりがちです。「メンタルがやられそう」と感じているのは、あなただけではありません。まずは今抱えているストレスの原因を明らかにして、自分に合った対策を取ってください。
もし、「今の職場ではもう限界かも」と感じるようなら、無理をせずに環境を変えてみるのもよいでしょう。
あなたが安心して働ける場所は、きっとあります。これからも介護の仕事を続けていけるように、心身ともに健やかでいられる環境、自分を大切にしながら働ける環境を見つけてください。
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