【なぞり書き百人一首】秋の歌⑪ 八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり
構成・文/介護のみらいラボ編集部
秋の歌の第11回目にピックアップしたのは、恵慶法師の作品。歌意や作者の解説なども掲載しておきますので、情景や詠み手の思いを感じながら、ゆっくりと文字をなぞってみましょう。
歌の意味と作者について
「河原院」という豪華な屋敷がすっかり荒れ果ててしまった姿を、夏から秋への移り変わりに重ね合わせた作品です。こうした物悲しい雰囲気もまた、秋ならではの情緒といえるのではないでしょうか。
八重むぐら しげれる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋は来にけり
小倉百人一首 歌番号(47番) 恵慶法師
歌意
幾重にも雑草が生い茂ったこの寂しい家には、人は誰ひとりとして訪ねてこないけれども、秋だけは確かにやってきたのだなあ。
ことば
●八重むぐら:「八重」は茂り重なった状態を表す言葉で、「むぐら」はつる状の雑草の総称
●しげれる宿:「宿」は家のこと
●人こそ見えね:「人は見あたらないけれども」の意味
●秋は来にけり:「けり」は感動を表す言葉
作者
恵慶法師(えぎょうほうし):平安時代中期の僧・歌人。播磨国の講師(僧侶たちの監督)だったといわれていますが、経歴も没年も明らかになっていません。
[参考]
『全訳読解古語辞典 第五版』(三省堂)
『百人一首(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』(角川ソフィア文庫)
『解説 百人一首』 (ちくま学芸文庫)
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