【なぞり書き百人一首】夏の歌② 夏の夜は まだ宵ながら あけぬるを 雲のいづこに 月やどるらむ
構成・文/介護のみらいラボ編集部
夏の歌の第2回目にピックアップしたのは、清原深養父の作品。歌意や作者の解説なども掲載しておきますので、情景や詠み手の思いを感じながら、ゆっくりと文字をなぞってみましょう。
歌の意味と作者について
歌番号36番は、平安時代の貴族であり歌人でもある清原深養父の作品。あっという間に明けてしまう夏の夜の短さを、「西の山に沈む暇もなかった月が、仕方なく雲に宿をとって隠れたようだ」というしゃれた言い回しで表現しています。
夏の夜は まだ宵ながら あけぬるを
雲のいづこに 月やどるらむ
小倉百人一首 歌番号(36番) 清原深養父
歌意
夏の夜は短くて、まだ宵のうちだと思っているうちに、早くも明けはじめてきた。月も西の山に沈む暇がなかったはずだけれど、いったい雲のどこらへんに宿をとって隠れているのだろうか。
ことば
●夏の夜は:「夏の夜」は、明けやすくて短いのが特徴だとされています
●まだ宵ながら:「まだ宵のままでいるうちに」の意味。「宵」は夜のまだ早いうちのこと
●明けぬるを:「明けたのだが」という意味
●月やどるらむ:「やどる」は、「雲を宿にして、そこに入り込んで泊まる」の意味で、「隠れる」ということ。月を人間になぞらえた表現です
作者
清原深養父(きよはらのふかやぶ):百人一首の42番に歌がある清原元輔の祖父で、『枕草子』の作者として知られる清少納言の曽祖父。平安時代末期に、藤原範兼が選んだ和歌の名人・中古三十六歌仙の一人でもあります。
[参考]
『全訳読解古語辞典 第五版』(三省堂)
『百人一首(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』(角川ソフィア文庫)
『解説 百人一首』 (ちくま学芸文庫)
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