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仕事・スキル 介護士の常識 2022/07/05

IADLとは?ADLとの違い・評価指標・低下要因と4つの予防ポイント

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医療・介護業界で活躍するためには、人間のあらゆる生活機能におけるレベルや評価指標について把握しておかなければなりません。なかでも、「IADL」「ADL」の知識を得ておくことは、介護従事者にとってとても大切なことです。

当記事では、IADLの概要やADLとの違いから、IADLの評価指標、IADLが低下する原因、IADLの低下を予防するポイントまでを詳しく解説します。すでに介護職として活躍している方はもちろん、今後介護業界への就職・転職・復職を考えている方も、ぜひ参考にしてください。

1.IADLとは?

IADLとは、「手段的日常生活動作」という意味を持つ「Instrumental Activities of Daily Living」の頭文字をとった略称です。もう少し分かりやすく説明すると、IADLは日常生活における応用的な動作ができるだけでなく、動作に伴う正しい判断・意思決定ができるかどうかの指標であり、これを維持することが生活の質の維持・向上につながります。

一般の人にはなじみの薄い言葉ですが、老人ホームなどの介護現場においてはよく使用されるフレーズです。

(出典:厚生労働省「総論参考資料」

IADLとADLの違い

日常生活動作の指標には、IADLだけでなく「ADL」もあります。ADLは、「基本的日常生活動作」という意味を持つ「Activities of Daily Living」の略称で、IADLと同様、介護現場においては頻繁に使用されています。

では、IADLとADLの違いは何なのでしょうか。下記に、具体的な動作の違いをまとめました。

項目 動作の具体例
IADL ●料理・家事・掃除をする
●買い物をする
●電話対応をする
●金銭管理をする
ADL ●食事をする
●排せつ・入浴をする
●移動をする

上記の通り、ADLが日常生活を送る上での基本的な動作を指す一方で、IADLは応用的な動作(あるいは、より判断力や理解力が求められる動作)を指しています。基本的に人間は、老化や病気によって身体機能・認知機能が低下するとIADLも低下する傾向にあり、IADLの低下状態が慢性化するとADLも低下するとされています。

なお、IADLやADLと似た言葉として「BADL」と呼ばれる指標もあります。BADLというのは「基本的日常生活動作」のことで、具体的には起居動作や移動、食事、更衣、排せつ、入浴、整容などの動作を指します。BADLが「Basic ADL」の略であることからも分かるとおり、「狭義のADL」と考えて良いでしょう。

ADLについてより詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。

●関連記事:ADLとは

2.IADLの評価指標2選

IADLやADLは、高齢者の自立度を判断するための指標です。

支援や介護が必要となった高齢者が、生活の質(QOL)を維持または向上させながら日々前向きに過ごすためには、周囲の人たちが自立支援と介助、ケアのバランスを考慮する必要があります。具体的には「基本的に自分でできることは自分で行ってもらい、最低限必要な部分をサポートする」といった環境を整えることになりますが、環境を十分に整えるには個人のIADLを把握しておくことが大切です。

IADLを把握するための評価指標としてよく用いられるのは、「Lawtonの尺度」と「FAI」です。ここからは、2つの評価指標について詳しく説明しましょう。

Lawtonの尺度

Lawtonの尺度とは、アメリカの心理学者「M・パウエル・ロートン」らによって1969年に発案された評価指標で、IADLの評価指標として最も代表的なものとされています。

Lawtonの尺度を構成するのは、下記の8つの項目です。各項目に当てはまるレベルを選んで採点し、総点数が高ければ高いほど自立度も高いとみなすことができます。

項目 レベル(採点)
(1)電話使用能力 ●自分から電話をかけられる(1点)
●電話に出る(1点)
●電話を使用しない(0点)
(2)買い物能力 ●自分で買い物ができる(1点)
●買い物をするには付き添いが必要、または買い物ができない(0点)
(3)食事準備能力 ●献立を決めて料理ができる(1点)
●食事の準備ができない(0点)
(4)家事能力 ●重労働を除き、すべての家事を自分で行える(1点)
●手助けは必要であるものの、日常生活における簡単な家事ができる(1点)
●家事ができない(0点)
(5)洗濯能力 ●自分でできる(1点)
●簡単なゆすぎなどの洗濯もできない(0点)
(6)移動能力 ●公共交通機関や自家用車を使って移動ができる(1点)
●付き添いがあればタクシーに乗れる(0点)
(7)服薬管理能力 ●用法用量を守って決められた薬を服用できる(1点)
●準備されていれば服薬できる、または管理ができない(0点)
(8)財産管理能力 ●銀行の利用や支払い、金銭管理ができる(1点) ●財産の管理がまったくできない(0点)

上記の項目ごとのレベルは一部を抜粋したもので、実際にはもっと詳しい評価が用意されています。

なお、出典元によると食事準備能力・家事能力・洗濯能力の3項目について、男性は免除されることになっています。しかし現在は、男性においても8項目で評価することが推奨され始めています。

(出典:公益財団法人長寿科学振興財団「手段的日常生活活動(IADL)尺度」

FAI

FAIとは、1983年に「Holbrook M」らによって開発されたIADLの評価指標です。開発当初は脳卒中患者を目的とした評価指標でしたが、日本語版が開発されて以降、対象者はスモン患者や高齢者にまで広がりました。

FAIでは、日常生活の中でも応用的な動作・社会的な動作において、下記の15項目で評価します。

(1)食事の用意
(2)食事の片付け
(3)洗濯
(4)掃除
(5)力仕事
(6)買い物
(7)外出
(8)屋外歩行
(9)趣味
(10)交通手段
(11)旅行
(12)庭仕事
(13)車・住宅の手入れ
(14)読書
(15)勤労

各項目は0~3点に設定されており、最高点数は45点。適切な評価をするために、3カ月月~6カ月の行動を調査するのが基本です。

(出典:がん情報サービス「FAI(FrenchayActivitiesIndex)自己評価表」

3.IADLが低下する原因とは?

前述の通り、IADLが低下する主な原因は、病気や加齢の影響による身体機能・認知機能の衰退です。その他にも、生活環境の変化や精神的ストレスが大きく影響します。

例えば、高齢者のなかには定年退職をして社会や人とのコミュニケーションが激減し、刺激の少ない生活を送る方もいます。また、そうしたなかで家族からのサポートに甘えすぎてしまったがために、いままで自力でできていた動作が簡単にできなくなるケースもあります。

人との関わりが減り、これまで簡単にできていた動作ができないようになっていく......。その事実が、精神面に悪い影響を及ぼし、結果としてIADLのさらなる低下につながってしまうのです。

病気や加齢の影響による身体機能・認知機能の衰退は、防ぎようのない問題です。しかし、生活環境や精神面は、ある程度工夫することで現状の機能を維持することができるでしょう。

4.IADLの低下を予防するポイント4つ

介護保険サービスや介護予防サービスを提供する事業所では、日頃から利用者のIADLの低下予防に取り組まなければなりません。

IADLの低下を予防するには、大前提としてIADLの評価を常に把握しておくことが必要です。そのうえで、「基本的に自分でできることは自分で行ってもらい、最低限必要な部分をサポートする」という環境を整えるためのポイントをおさえましょう。

最後に、IADLの低下を予防するためのポイントを4つ紹介します。

過度な介護をしない

IADLが低下する原因でも説明したように、周囲からのサポートに甘えすぎたことにより、IADLの低下を加速させてしまうケースも多々あります。そのため、介護者や高齢者向け施設で働く介護従事者は、過度な介護をしないことが大切です。

過度な介護をすることは、本人が1人で行う動作、いわゆる「身体機能の低下を防ぐための訓練にもなる動作」を止めてしまうことにもなりかねません。「何ができて、何ができないのか」を細かく把握したうえで、本人が1人でできる部分は静かに見守り、できない部分をしっかりサポートするようにしましょう。

生活環境を整える

高齢者や要介護者が、自分のことを自分で行えるようにするには、周囲の人が適切な生活環境を整えることも大切です。

例えば、足腰の筋力が低下して車いすが必要となった高齢者には、車いすだけでなくつえやシルバーカーといった補助器具を用意する、自宅をリフォームしてバリアフリー化するなど、整えられる部分は多々あります。

生活環境を整えることによって、高齢者本人の生活におけるモチベーションが向上し、生活の質(QOL)の向上につながる可能性もあるでしょう。

デュアルタスクを意識する

デュアルタスクとは、2つの事柄や作業を同時進行で行うことです。例えば、献立を考えながら買い物をする、電話をしながらメモをとるなどの動作が挙げられます。

デュアルタスクの取り組みは、IADLの低下予防だけでなく認知機能の維持にも効果的です。そのため、たとえ小さなことでも、日々デュアルタスクを意識して生活することが大切になります。高齢者向け施設では、デュアルタスクに取り組める何らかのレクリエーション活動を実施すると良いでしょう。

適度な運動や外出を取り入れる

IADLの低下を予防するためには、適度な運動や外出習慣を取り入れることも重要です。

高齢者に限らず、人間は運動不足が続くと骨や筋肉量が減少してしまい、動作能力の低下につながってしまいます。「1人でできること」を増やすためには、1日10分程度でも体操をする、歩くなどの軽い運動をすることが大切です。

ただし、無理な運動をすると、けがにつながってIADLが一気に低下する恐れがあるため、「本人が無理なく毎日続けられる」程度の軽い運動が良いでしょう。

まとめ

IADLとは、「Instrumental Activities of Daily Living」の頭文字をとった略称で、「手段的日常生活動作」を指します。具体的には、家事をする、買い物をする、食事の準備を行うなどの日常生活における応用的な動作のことで、IADLは高齢者の自立度を判断するための大事な指標となっています。

IADLが低下する主な原因としては、病気や加齢の影響による身体機能・認知機能の衰退、生活環境の変化や精神的ストレスが挙げられます。IADLの低下を予防するためには、過度な介護をしないこと、生活環境を整えること、デュアルタスクを意識すること、適度な運動や外出を行うことなどが大切です。

「介護のみらいラボ」では、当記事のほかにも介護業界で働くスタッフに向けて役立つ関連情報を豊富に掲載しています。現場で活用できる基礎知識や専門知識を得たいという方は、ぜひ介護のみらいラボをご覧ください。

※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています

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