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仕事・スキル 介護士の常識 2022/08/23

介護事故の種類とは?予防方法から発生時の対応方法まで

構成・文/介護のみらいラボ編集部 6.jpg

介護サービスの主な目的は、高齢者や障害者の日常生活を支援したり、機能回復を促したりすることです。サービス提供にあたっては安心・安全が大前提であり、介護職には「介護事故」に対する深い理解と行動が求められます。

当記事では、介護事故の概要や種類を整理した上で、介護事故を予防するためのリスクマネジメントについて解説します。介護事故が起こった際の注意点なども紹介するため、介護職を目指している方や、介護事故について詳しく知りたい介護職の方は、ぜひ参考にしてください。

1.介護事故とは?

介護事故とは、介護サービスの提供中に発生した事故全般を指す言葉です。その内容は多岐にわたり、福祉制度の向上に取り組む「全国社会福祉協議会」では、介護事故を下記のように定義しています。

社会福祉施設における福祉サービスの全過程において発生する全ての人身事故で身体的被害及び精神的被害が生じたもの。なお、事業者の過誤、過失の有無を問わない。

(引用:厚生労働省「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針 ~利用者の笑顔と満足を求めて~」について

事故に対する考え方は、基本的に医療や看護分野と同じです。対象者はあくまでサービスを利用する方やご家族に限定され、サービスを提供する職員の側に起きた事故については労災として扱われます。

(出典:厚生労働省「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針 ~利用者の笑顔と満足を求めて~」について

介護事故の種類と発生例

介護事故にはいくつかの種類があります。ここでは代表的なものを3つ挙げ、発生例とともに解説していきます。

転倒 介護事故のなかでも非常に割合が高く、加齢による筋力や視力、バランス感覚の衰えが主な原因となっています。事故後に歩行困難や寝たきりになることが多く、骨折や合併症で死亡するケースも少なくありません。介護者のミスが転倒につながる場合もあります。

【発生例】
・自力で立ち上がろうとしてふらついた
・後方から声をかけられ、振り向いた時にバランスを崩した
・車椅子の足載せ台(フットサポート)に足を乗せたまま、立ち上がろうとした
誤嚥 飲食物が気管に入ってしまう現象です。唾液の減少や歯の欠損が原因となり、飲食物をうまく飲み込めないために起こります。誤嚥性肺炎になるだけでなく、窒息した場合は生死にかかわる重大な事態となります。

【発生例】
・食事中にむせたり、せきが出たりした
・施設のイベントなどで、普段とは異なるメニューを食べた
・嚥下状態に適さない食事形態を提供された
紛失・破損 利用者さんの所有物を紛失または破損させてしまう事故は、訪問介護サービスなどで起こりやすい傾向にあります。内容次第では、多額の損害賠償を請求されることにもなりかねません。

【発生例】
・買物用に預かったお金をなくした
・一時的に預かった補聴器や眼鏡を紛失した
・車椅子を転回させようとして、ドアガラスを割ってしまった

(出典:公益財団法人 介護労働安定センター「介護サービスの利用に係る 事故の防止に関する調査研究事業」報告書

2.介護事故を予防するためのリスクマネジメント4つ!

介護サービスを利用する方には、身体的な衰えだけでなく病気や障害を持っている方も多くいらっしゃいます。そうしたなか、介護事業所や施設で対応にあたれる人数には限りがあるため、介護現場で事故を完全になくすのは難しいかもしれません。

しかし、一定の対策を行えば事故の発生リスクを軽減することは可能です。ここからは、介護事故を予防するためのリスクマネジメントを4つ紹介します。

事故を減らせる仕組みを構築する

介護事故は職員のミスだけでなく、施設の設備や器具に問題があるなど、外的要因によって発生することもあります。そのため、職員の意識を高めるだけでなく、環境要因についてもきちんと整備していくことが大切です。

例えば、誤薬事故の防止策として、薬を持ち出す際に利用者さんの名前を読み上げるのが一般的ですが、これだけだと十分な対策とはいえません。顔写真付きのお薬チェックシートを作って照合を行うなどすれば、万が一配薬ミスがあったとしても直前で気付くことができるでしょう。

リスクマネジメントを行う際は、事故を減らせるような仕組みを整えることが大切です。職員の意識や能力に依存せず、職場が一体となって「ミスが起こりにくい環境作り」を行うことが求められます。

防げる事故に対する防止策を徹底する

介護事故には、「防げない事故」と「防げる事故」があります。認知症の方が徘徊して転倒してしまう事故は、24時間付き添うなどしない限り起こり得ますので、防げない事故の典型でしょう。一方で、事業者や施設に過失がある事故は努力次第で防ぐことができます。

介護事故を減らすためには、「何が防げる事故か」を明確にした上で、徹底した防止策を講じることが大切です。まずは、「人員配置は適切か」「業務の流れに問題はないか」など、労働環境から見直してみましょう。なお、事故の予見に基づく対策が万全に行われていれば、重大事故などが発生した際にも、賠償責任を問われるリスクが低くなります。

ヒヤリハット事例を事前に共有する

ヒヤリハットとは、「重大事故には至らなかったものの、事故に直結してもおかしくなかった事象」を指します。例えば、「利用者さんの要望で長湯をさせていたら、のぼせ気味になってしまった」などもヒヤリハットの事例です。仮に利用者さん個人の要望があったとしても、「頻繁に声をかける」「体調を考慮して丁重に断る」といった対策を行っていればこうした事態は防げるでしょう。

なお、労働災害の発生比率を分析した「ハインリッヒの法則」では、1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故があり、さらにその裏には300件のヒヤリハットがあるとされます。

(出典:厚生労働省 「ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)」

日頃から「ヒヤリ」「ハッ」とした体験を共有しておくことで、施設全体の事故防止につなげましょう。

●関連記事:介護現場で発生するヒヤリハットの原因|報告書をまとめるポイントも

日頃から利用者さんとの信頼関係を築いておく

職員が気付いていなくても、利用者さんが普段危ないと感じている場所や場面があるかもしれません。利用者さんとの信頼関係を築いておけば、会話のなかで事故予防につながるヒントを得られる可能性もあります。

日頃から丁寧に対応するのはもちろん、積極的にコミュニケーションを取ることで、お互いの距離を縮めるように心がけましょう。

また、正確な引き継ぎ(申し送り)を徹底し、利用者さんに不安感を与えないことも大切です。利用者さんとの関係性にきちんと目を向ければ、必然的に質の良いサービスを提供できるようになります。

3.介護事故が起こった時のポイント・注意点

介護事故が起きてしまった場合は、関係者全員で振り返りを行いましょう。どのようにすれば事故は防げたのか、それぞれが原因を探ることで有効な再発防止策が見つかるはずです。

最後に、介護事故が起こった時のポイントと注意点を解説します。

適切な対応を実施する

介護事故が起きた場合は、利用者さんやご家族に対して適切な対応を実施しなくてはなりません。主な内容は、下記の通りです。

・利用者さんへの対応
最優先すべきは、利用者さんの安全確保です。食べ物が喉に詰まった場合はタッピングを、外傷がある場合は応急処置を慌てずに行ってください。状況によっては、心肺蘇生やAED(自動体外式除細動器)を使用しましょう。

・ご家族への対応
事故状況や利用者さんの容態について、ご家族に詳しく説明しなければなりません。事故から時間が空くほど不信感を与えるため、速やかに行いましょう。

上記と併せて、責任者は事故報告書を作成し、各市区町村の関係機関に提出する必要があります。事故報告書は事故情報の収集や分析に用いられるとともに、安全対策の一環として各事業所に共有されます。

(出典:厚生労働省「介護保険施設等における事故の報告様式等について」

事故の報告漏れや隠ぺいは絶対に避ける

介護事後が起きた際は、適切な報告経路で、事態の報告を行わなければなりません。「事故を起こした」「目撃した」という場合は管理者に報告し、管理者は責任者に漏れなく報告します。また、介護事故の対象には送迎や通院、レクリエーションなどの外出中の事故も含まれます。

公的機関への報告については、「外傷により入院および医療機関受診を要したもの」などの線引きがなされています。感染症や食中毒に関しては、保健福祉センターに届け出たものが報告対象です。事故の報告漏れがあると、初期対応に遅れが生じて被害が拡大する恐れがあるので注意しましょう。

(出典:大阪市「介護保険事業所等での事故発生時の報告等の取扱いについて」

隠ぺいについては施設や事業所の信用を失うだけでなく、行政処分などの処罰を受けることにもなります。さまざまなリスクを回避するためには、軽微なトラブルでもきちんと報告し合うような組織風土を作ることが大切です。管理者においては、事故が起きた際の報告ラインや対応マニュアルを十分に整備しておきましょう。

まとめ

介護事故とは、介護サービスの提供中に起きた事故全般を指し、転倒や誤嚥、紛失・破損などが多く発生している傾向にあります。介護事故を未然に防ぐための対策を行ったり、日頃から利用者さんとの信頼関係を築いたりして、介護事故が発生しないような職場環境を整備していきましょう。

また、事故が起こった時は、利用者さんやご家族、必要な機関に即時連絡するとともに、各市区町村の関係機関に事後報告書を提出することが求められます。

「介護のみらいラボ」には、この他にも介護士におすすめの資格やスキルアップの情報、介護業界の最新情報など、多彩な内容のコラムが掲載されているので、日常的な情報源としてぜひご活用ください。

※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています

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