介護ロボットの種類とは?導入のメリット・デメリットや課題など
構成・文/介護のみらいラボ編集部介護の現場では、介護スタッフにかかる身体的負担の大きさや、慢性的な人手不足に悩まされています。みなさんのなかにも、「今後、高齢化が進んでさらに介護スタッフの負担が増えるのでは?」と不安に感じている方がいるのではないでしょうか。
こうした状況を受けて、近年注目度が高まっているのが「介護ロボット」です。介護ロボットは、介護スタッフの負担が大きい6つの分野を「介護利用における重点分野」として開発が進められてきました。
当記事では、介護ロボットの種類や導入する上でのメリット・デメリットを紹介します。併せて、介護ロボットの課題や今後の展望も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1.介護ロボットとは?
介護ロボットとは、ロボット技術やAI技術を応用し、介護を必要とする方の自立支援や介護スタッフの負担軽減を目的として作られたロボットです。厚生労働省では、介護ロボットを以下のように定義しています。
・情報を感知(センサー系)
・判断し(知能・制御系)
・動作する(駆動系)
この3つの要素技術を有する、知能化した機械システム。
また、近年介護ロボットが注目されている背景には、次の2つが関係しています。
・少子高齢化による要介護者の増加
・介護業界の人員不足
「介護を必要とする方が増加する一方で、介護スタッフの数が不足している」という現在の状況では、介護作業における業務の負担軽減・効率化を図ることや、要介護者の自立をサポートすることが不可欠と言えます。
続いては、介護ロボットの種類や重点分野について解説しましょう。
介護ロボットの種類
介護ロボットの種類は、大きく分けて以下の3つです。
【介護ロボットの種類】
介護支援型ロボット |
介護支援型ロボットは、介護スタッフの負担軽減を目的にしたロボットです。介護業務のなかには、移乗や排泄など身体に負担がかかる姿勢・動作で行う作業が多くあります。 介護支援型ロボットを使用することで、介護スタッフの身体的負担だけでなく、要介護者の遠慮や緊張なども軽減できるでしょう。 |
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自立支援型ロボット |
自立支援型ロボットは、要介護者の動作をサポートすることを目的としたロボットです。要介護者のなかには、軽いサポートがあれば自立した生活を送れる方もいます。 自立支援型ロボットを活用することで、自力でできることが増えると、要介護者の自信につながり、心理的負担も軽減するでしょう。 |
見守り型ロボット |
見守り型ロボットは、要介護者を遠隔で見守ることを目的としたロボットです。機器に取り付けられたセンサーやカメラを利用して、要介護者の異変を検知します。 認知症の方の行動や異変に素早く気付くことができれば、事故などの防止にもつながるでしょう。 |
介護ロボットの重点分野6つ
経済産業省と厚生労働省は、介護ロボットを利用する重点分野として以下の6つを挙げています。
【介護ロボットの重点分野】
移乗支援 |
移乗支援は、要介護者をベッドから車椅子、ベッドからストレッチャーに移す時などの身体的負担をサポートする分野です。 移乗支援ロボットには、装着型と非装着型の2種類があります。移乗支援ロボットが普及することで、「力仕事」という介護業界のイメージが変わるかもしれません。 |
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移動支援 |
移動支援は、要介護者の歩行や立ち座りを補助する分野です。 さまざまなシーンで、要介護者の自立した活動をサポートできるため、自信の向上につながるでしょう。 |
排泄支援 |
排泄支援は、排泄に関わるすべての動作をサポートする分野です。排泄支援には、トイレへの誘導、衣類の着脱、トイレ内の環境改善なども含まれます。 排泄のサポートは、介護のなかでも負担の大きい業務です。業務の負担を軽減することは、介護業界における仕事環境の改善にも役立つでしょう。 |
見守り支援 |
見守り支援は、センサーや外部通信機能を使って、要介護者の異変を検知する分野です。 施設・在宅の両方で活用できることはもちろん、赤外線カメラによって夜間の様子もチェックできるため、介護スタッフの見回り負担が軽減されます。 |
入浴支援 |
入浴支援は、入浴に関わるすべての動作を補助する分野です。 浴室は転倒のリスクが多い場所でもあるため、入浴介助は他の業務以上に気を使います。ロボットを導入することで、介護スタッフの身体的負担だけでなく、心理的負担も軽減されるでしょう。 |
介護業務 |
介護業務支援は、介護業務に関する情報収集をサポートする分野です。 日々の介護業務の内容を共有することで、さまざまな情報が蓄積され、介護サービスの作成・見直しなどがスムーズに行えるようになるでしょう。 |
2.介護ロボットを導入するメリット・デメリット
近年導入が進んでいる介護ロボットは、2008年の段階から厚生労働省の指針によって研究開発が推進されていました。
介護業務の効率化、介護スタッフの身体的・心理的負担軽減など、メリットが目立つ介護ロボットですが、デメリットも存在します。ここでは、介護ロボットにおけるメリット・デメリットを紹介します。
介護ロボットのメリット3つ
介護ロボットを導入する主なメリットは、以下の3つです。
介護スタッフの負担が軽減する |
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介護の現場では、移乗介助、排泄介助など足腰に負担がかかる業務が多く、介護スタッフのなかには、慢性的な腰痛を抱えている方もいます。パワーアシスト機能を備えた介護ロボットを利用することで、身体的な負担が軽減される点は最大のメリットと言えます。 |
要介護者の精神的負担が改善する |
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介護においては、介護スタッフだけでなく、要介護者の側にも精神的な負担があることを知っておきましょう。要介護者のなかには、介護されている状況の恥ずかしさや申し訳なさから、負い目を感じている方も少なからずいらっしゃいます。 介護ロボットを利用することで、そうした精神的負担が改善する点も、メリットの一つでしょう。 |
介護業務の生産性向上が見込める |
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介護には、24時間の見回りなど、人手が必要な業務も多くあります。一部の業務をロボットが担当することで、他の業務に人手が割けるため、作業全体の生産性向上が見込めるでしょう。 |
介護ロボットのデメリット3つ
介護ロボットを導入する主なデメリットは、以下の3点です。
費用がかかる |
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多くの介護ロボットが開発されてきましたが、最も大きなデメリットは、機器の購入や維持に高額な費用がかかることです。そのため、予算が限られている介護施設などでは、導入したくてもできない状況が続いています。 |
広いスペースが必要 |
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介護ロボットには大型の機器もあり、設置や保管のために広いスペースが必要です。小規模の老人ホームなどでは、機器のために介護スペースが圧迫されるというデメリットが発生する可能性もあります。 |
ロボット操作に慣れる必要がある |
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介護ロボットを安全に操作するには、操作方法を熟知する必要があります。操作方法の習得には時間がかかるため、操作に慣れるまでは、介護スタッフの業務負担が増えることもあるでしょう。 |
3.介護ロボットの現状と課題は?
介護ロボットによって、介護業界の利便性が高まる一方で、ロボットによる介護に抵抗感を抱く方も一定数存在します。公益財団法人介護労働安定センターが行った「令和2年度介護労働実態調査事業所における介護労働実態調査」によれば、介護ロボットを導入していない事業所が80.6%あり、普及率が高いとは言えません。
なかには、「介護ロボットによるサポートが増えると、介護スタッフと要介護者の間の信頼関係が薄くなる」と不安に感じている施設運営者の方もいるでしょう。しかし、介護ロボットの利用経験がある方からは、おおむね高い評価が得られていることも事実です。
最後に、介護ロボットのこれからについて紹介しましょう。
「スマート介護士」の登場で需要が高まる可能性も!
現状、介護ロボットの導入率は低めですが、これから介護ロボットの需要が高まる可能性は十分にあります。なぜなら、2019年3月にスマート介護士の資格が創設されたからです。
スマート介護士とは、介護ロボットやセンサーなどを活用して介護業務の効率化を図り、介護現場の質や生産性の向上に貢献できる介護士のこと。スマート介護士は、初級の「Basic」と中級以上の「Expert」の2種類からなる民間資格で、今後はさらなる上級資格の創設も見込まれています。
近い将来、スマート介護士を取得していることが、介護ロボットに関する基礎知識を習得した証明となり、介護の現場で重宝される存在となることが予想されるため、興味のある方は資格取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。
まとめ
介護ロボットは、要介護者の自立支援や介護スタッフの負担軽減を目的として作られたロボットです。特に、介護の分野で負担の大きい「移乗支援」「移動支援」「排泄支援」「見守り支援」「入浴支援」「介護業務支援」の6つを重点分野として、研究開発が推進されています。
介護ロボットにはメリットが多い一方で、コスト面や学習面でのデメリットもあり、現状では広く普及するに至っていません。しかし、スマート介護士の資格が創設されたことによって、徐々に需要が高まると考えられています。
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※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています
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