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仕事・スキル 介護士の常識 2024/09/20

介護現場で役立つポジショニングとは?目的や必要性、ポイントや注意点を解説

文/中村 楓(介護支援専門員・介護福祉士・介護コラムニスト) 0924_thumbail.jpg

介護現場では、自分で身体を動かすことができない利用者さんを見る機会も多いですよね。健康な私たちでも、同じ姿勢を取り続けるとつらいように、身体を動かせないことは利用者さんにさまざまな影響を及ぼします。
そのため、介護現場には、利用者さんが安心して快適に過ごすための方法として、ポジショニングと呼ばれる介護技術があります。
本記事では、介護現場におけるポジショニングの目的や必要性について解説するとともに、ポジショニングの具体例や実施のポイントについて詳しくお伝えします。

1.介護現場で役立つポジショニングとは

介護

介護現場におけるポジショニングとは、自力で身体を動かすことが難しく、自分では体位変換ができない利用者さんに対し、クッションや枕などを活用して、利用者さんにとって安全で快適な姿勢を整えることです。
脳梗塞や脳出血などの疾患の後遺症や、病気などにより身体を自分で動かせない人の場合、同じ姿勢が続くと筋肉が緊張して身体が硬くなってしまいます。身体が硬くなると、筋肉が拘縮して関節が固まり、伸ばしたり曲げたりするのが難しくなったり、身体が変形してしまったりすることがあります。姿勢が自分で変えられないことにより、一か所に体重がかかり続けることで、痛みが出たり、褥瘡ができてしまったりすることもあるでしょう。
介護現場でポジショニングを行うと、利用者さんは安楽な姿勢でリラックスして過ごすことができ、呼吸も楽になるため、さまざまな活動がしやすくなります。また、利用者さんの身体の緊張が緩まることで体位変換や移乗がスムーズに行えるので、介護者の負担軽減も期待できるでしょう。

2.介護職が知っておくべきポジショニングの目的や必要性

老人

ポジショニングを行う目的や必要性を知っておくと、介護現場でポジショニングを正しく行いやすくなります。介護職が知っておくべきポジショニングの目的と必要性について、詳しく見ていきましょう。

ポジショニングの目的

ポジショニングには主に、次の3つの目的があります。

  • 身体にかかる圧力のムラをなくして平均的にする
  • 筋肉の緊張やこわばりを緩めてリラックスさせる
  • 身体を安定させて安楽な姿勢を保つ

身体にかかる圧力のムラがなくなると、ベッドや車いすなどの設置面全体に圧力が分散します。その結果、局地的に体重がかからなくなり、褥瘡ができにくくなるでしょう。
また、筋肉の緊張やこわばりを緩めて、身体や関節が固まりにくくするのも、ポジショニングの目的の一つです。利用者さん自身が身体を動かせなくても、ポジショニングによって身体を安定させることができます。不要な力が入ることが少なくなるため、楽に過ごせ、安心してリラックスできるようになるでしょう。

さらに、正しいポジショニングを行うことは、褥瘡の予防や身体の動かしやすさなどにつながります。そのため、介護者の介助負担を軽減させることも、ポジショニングの目的といえるでしょう。

ポジショニングの必要性

ポジショニングの必要性の一つに、利用者さんの身体の変形やゆがみを予防することがあげられます。身体を自分で動かせない利用者さんは、腰や肩、首などに痛みや負担を感じるような姿勢となっていても自分で調整ができません。そのため、不適切な姿勢が続くと、身体に余分な力が入ることで筋緊張が続きます。結果として、身体や関節が固まり変形やゆがみの原因となることもあるでしょう。変形やゆがみを予防するためにも、ポジショニングは必要です。

そのほかにも、ポジショニングは、褥瘡や誤嚥の予防、呼吸のしやすさなどにつながります。身体とベッドなどの設置面全体に平均的に体重が分散されるようポジショニングを行うことで、褥瘡ができるリスクを下げる効果が期待できるでしょう。また、ポジショニングによって正しい姿勢を保つと、呼吸や嚥下がしやすくなります。食事が一人で行えない利用者さんでも、介助によって安心して食事が取れるようになるでしょう。さらに、ポジショニングは筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。利用者さんがリラックスして過ごせるようにサポートするためにも、ポジショニングの必要性は高いといえるでしょう。

3.介護現場におけるポジショニングの具体例

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介護現場で実際にポジショニングを行う時には、どのように実施すればよいのでしょうか。ここでは、ベッド上のポジショニングのうち、仰臥位と側臥位のポジショニング例を紹介します。

仰臥位で行うポジショニング

仰臥位は、身体とマットレスの設置面積が広く安定した姿勢です。いわゆる仰向けの姿勢を、介護現場では仰臥位といいます。拘縮や足の屈曲などがある場合のポジショニングについてお伝えします。

【拘縮がある場合】
拘縮がある場合や身体の一部がマットレスに押し付けるような形になっている場合は、拘縮や押し付けを助長しないよう、立体的にクッションや枕などを使って、身体にかかる圧力が分散できるようにサポートします。

【足の屈曲が強い場合】
足の屈曲が強い場合には、大腿部をしっかりと支えつつ、足全体がサポートできるように、広めにクッションを置くようにします。また、大腿骨の外側から下腿部の骨の内側へと広くサポートし、踵だけに圧力がかからないようにしましょう。

【手指に拘縮がある場合】
手指に拘縮がある場合には、握りこめるようなものは拘縮を助長してしまいます。球状で反発力があるものを使うと、指の間も開いて拘縮が予防できます。

【クッションや枕を使用する時のポイント】
ポジショニングで使用するクッションや枕などの高さ、厚みは、足からクッションや枕が外れないように調整する必要があります。もし長さが足りずにサポートが不十分と感じる場合には、クッションや枕を変更するか、複数のクッションや枕を組み合わせるなどして、安楽な姿勢になるようにしましょう。

側臥位で行うポジショニング

横向きの姿勢である側臥位でポジショニングを行う場合は、まず仰臥位で身体の傾きやねじれを確認します。側臥位にする時には、仰臥位で確認した傾きやねじれが悪化しないよう、ポジショニングを行います。
側臥位でのポジショニングは、胸郭と骨盤を支えるクッションや枕を用意します。形が本人の身体に合っているか、長さは十分にあるかを確認しておきましょう。まずは、上側の足を支えるクッションや枕を選び、上側になる足が、頭・胸郭・骨盤の真下、もしくはやや前方になる位置になるようにします。骨盤から足先に向けて滑り台のようになってしまうと、圧力がかかるところに差が出るため、骨盤から足先までは同じくらいの高さになるように、クッションや枕をセッティングしてください。
下側の肩の位置や骨盤の位置を確認し、ねじれがあるようならクッションや枕を追加したり、位置を変えたりして調整しましょう。再度、全体を確認して微調整を行います。

4.介護職がポジショニングを行う際のポイントと注意点

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介護職がポジショニングを行う際には、どのようなポイントを押さえ、どんな点に注意したらよいのでしょうか。ポイントと注意点に分けて、詳しく解説します。

ポジショニングを行う際のポイント

ポジショニングを行う際には、以下の3つのポイントを意識します。

  • 体軸を整える
  • 身体のすき間を埋める
  • 重力を利用する

それぞれについて詳しくお伝えします。

【体軸を整える】
体軸がゆがんでいると、余計な力が加わって痛みや筋肉が緊張する原因になってしまいます。ポジショニングを行う際は、「肩と肩を結ぶライン」と「腰と腰を結ぶライン」は平行になるようにしましょう。次に、「肩と腰のラインに対し、背骨が垂直」になるよう、肩の位置や腰の位置を確認し、体軸を整えるようにするのがポイントです。

【すき間を埋める】
ポジショニングでは、ベッドと身体のすき間を埋めていくことも大切です。足の付け根から踵まで、といったように、面積の広いクッションや枕を複数利用するなどして、すき間を埋めていきます。この時、クッションを挟んだことで体軸がゆがまないように確認しましょう。体軸が整った状態ですき間を埋めると、身体全体で体重を支えるようになるため、身体にかかる圧力が分散できます。

【重力を利用する】
重力もうまく活用しましょう。仰臥位や側臥位では、骨盤から足先までの高さに差があると、低い方に重力が多くかかってしまいます。重力を一定にするために、クッションや枕を活用し、膝や足首の高さを骨盤の高さと同じくらいにしましょう。重力が平均的にかかるようにすると、身体のゆがみは少なくなり、利用者さんの負担は少なくなって安楽な姿勢を取ることができます。

ポジショニングを行う際の注意点

ポジショニングを行う際には、体軸を整えることを念頭に置いて行います。体軸がゆがむと体のどこかに負荷がかかるため、体軸は常に意識しておきましょう。

【クッションや枕を使用する時の注意点】
ポジショニングでは、関節の拘縮やゆがみのあるところにそのままクッションや枕等を入れてはいけません。必ず体軸がゆがまないように確認してから、クッションや枕等を入れるようにしないと、一部に圧力がかかってしまいます。また、クッションが入っていない場所があると、支えられていない部分に負荷がかかってしまい、褥瘡発生リスクが高くなってしまうので注意しましょう。

【下肢のポジショニングの注意点】
下肢のポジショニングは、骨盤より膝や足首の位置が低いと、低い位置ほど重力がかかって身体への負荷が大きくなってしまいます。骨盤から足先までは同じ高さにすることを意識しながら、ポジショニングを行うことが大切です。

まとめ:適切なポジショニングで利用者さんが快適に過ごせる環境を作ろう

介護

ポジショニングは、利用者さんの姿勢を整えて安楽に過ごせるようにする技術です。ポジショニングを正しく行うことで、利用者さんの身体はリラックスすることができ、活動性を広げられるでしょう。また、介護職にとっても、介助する際の身体の負担を減らすことにつながります。ポジショニングのコツをつかみ、利用者さんと介護職の双方が気持ちよく過ごせる環境を作りましょう。

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中村楓(Kaede Nakamura)

介護福祉士・介護コラムニスト

現役介護支援専門員。介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級、認知症介護実践者研修の資格を持つ。病院や通所リハビリ、デイサービスで介護福祉士として働き、生活相談員や介護認定調査員の経験も持つ。「介護の未来を明るくする」をモットーに、現場感ある記事を書く介護コラムニストとしても活動中。

中村楓の執筆・監修記事

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