「分からない」の言い換え方は?ビジネスシーン向けの敬語表現を解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部介護の現場で何か質問をされた際、答えが分からなければ「分かりません」と返答する方も多いでしょう。しかし、利用者さんやその家族、目上の方に「分かりません」と答えると、ストレートすぎて少し失礼な印象を与えることもあります。シチュエーションに応じて適切に対応するためにも、「分かりません」に代わる表現を知っておくとよいでしょう。
この記事では、介護職の方向けに、仕事場における「分からない」の使用方法や言い換え表現を例文付きで解説します。周囲とのコミュニケーションを円滑にしたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
1.「分からない」の敬語表現は「分かりません」で大丈夫?
「分からない」を丁寧に表現すると、「分かりません」となります。ちなみに「分かりません」は、以下のような意味を持つ言葉です。
・理解できない
・考えがおよばない
・自分の力では答えが出せない
・納得できない
「分かりません」は、介護の現場でもよく使われる表現ですが、実は注意が必要な言葉でもあります。先に紹介したように、利用者さんやその家族、目上の方などに向けて「分かりません」と答えるのは、ストレートすぎてよい印象を与えないケース(あるいは、ぶっきらぼうに聞こえるケース)があるからです。
上司に向けて報告をする場面、あるいは利用者さんやその家族と会話する場面、施設外の方に業務メールを送る場面などでは、できるだけ避けたほうがよいでしょう。同様に、面接の場面で「分かりません」と伝えるのも適切とは言えません。ただし、同僚や親しい関係の先輩社員とコミュニケーションをとるときに使うのは問題ありません。
2.介護職が使える「分からない」の言い換え方
介護の現場で「分かりません」を使うのは、避けたほうが賢明ですが、仕事中に「理解できない」「答えが出せない」ことを相手に伝えたいシーンは数多くあります。
介護職の方が、利用者さんやご家族に何かを尋ねられたときに、より丁寧な印象を与えるためには、以下のように言い換えるのがおすすめです。
存じません
「存じません」は「知りません」の謙譲語です。人に対して使う場合は「存じ上げません」とするのが一般的で、目上の方に使うのに最適な表現です。一方で、物事を対象とする場合は「存じません」を使いましょう。
なお、「存じ上げません」「存じません」は、知っているかどうかを答えるときの表現であり、こちらから質問するときには使いません。
・「存じ上げません」の例文
・申し訳ございません。施設長は所要につき不在で、いつ戻るかについては存じ上げません。
・恐縮ながら、ご紹介された方について存じ上げませんでした。
・「存じません」の例文
・恥ずかしながら、ご指摘いただいた点については存じません。
・その製品については存じませんでした。
「存じ上げません」「存じません」のどちらも、手前にクッション言葉を置いて使うのがおすすめです。「失礼ですが」「恐縮ですが」などの一言を添えると、より丁寧な印象を与えられるでしょう。
分かりかねます
「分かりかねます」は、「分かる」の運用形と補助動詞の「かねる」、丁寧語の「ます」を組み合わせた言葉です。「かねる」が動詞の連用形に付くと、「~しようとしてもできない」という意味になるため、「分かりかねます」は「分かろうとしてもできなかった」ことを表します。
・「分かりかねます」の例文
・当方では分かりかねますので、専任スタッフにおつなぎいたします。
・他施設の契約についてはこちらでは分かりかねます。恐縮ですが、先方のご担当者さまにお問い合わせください。
「分かりかねます」は「お答えできなくて申し訳ない」という謝罪のニュアンスも含むため、「分かりません」と比べてやわらかい印象を与えます。
ただし、「分かりかねます」と伝えるだけでは、「へりくだっているだけで回答になっていない」という印象を与えかねません。「分かりかねます」を使う場合は、「回答できる担当者につなぐ」など、代替手段を提案するのがおすすめです。
お答えいたしかねます
「いたしかねる」は、「する」の謙譲語である「いたす」と補助動詞の「かねる」、丁寧語の「ます」が合わさった言葉です。「分かりかねます」と同様に「答えようとしたが、できなかった」という意味になり、質問に回答できないことを丁寧に伝えるのに適した表現です。
・「お答えいたしかねます」の例文
・申し訳ありませんが、ケアマネジャーの決定や、要介護度の審査についてこちらではお答えいたしかねます。
・恐縮ですが、お求めいただいている説明については現在お答えいたしかねますので、後日施設長より連絡いたします。
・当施設の業務範囲外のことはお答えいたしかねますので、ケアマネジャーにご相談いただければ幸いです。
「お答えいたしかねます」は、丁寧な言い方ではあるものの、相手の質問に対する回答を断ることになるため、相手に冷たい印象を与える場合があります。「なぜ答えられないのか」「誰に尋ねればよいのか」「いつ・どのような内容なら答えられるのか」といった補足を付け加えると、冷たい印象をやわらげることができるでしょう。
例えば、「現在担当者が不在ですので、お問い合わせの内容にお答えいたしかねます」であれば、「後ほど担当者よりご連絡いたします。●時ならいかがでしょうか」などと付け加えるのがよいでしょう。
確認いたします
「確認いたします」は、「確認する」の謙譲表現で、分からない旨を伝えた上で、回答する意思を示す言葉です。相手に前向きな意思が伝わりやすいので、さまざまな場面で使えるでしょう。
・「確認いたします」の例文
・お問い合わせの件については、担当者に確認いたします。
・本件については関係者に確認いたしますので、お時間をいただきたく存じます。
なお、「確認させていただきます」という言い方をする人もいますが、適切な使い方を理解しておかないと誤用になる可能性があります。「~させていただく」は相手(あるいは第三者)から許可を得た上で使う言葉なので、許可を必要としないシーンでの使用は適切ではありません。その場合は、「確認いたします」や「確認します」と伝えるほうが、すっきりするでしょう。
ご教示ください
「ご教示ください」には、尊敬語の「ご(御)」が含まれているため、上司や先輩、取引先といった目上の人に対して使うのが一般的です。相手にやり方、手順などを教えてもらいたいときに使うと、丁寧な依頼になるでしょう。
・「ご教示ください」の例文
・資料について分からない点があるため、ご教示いただければ幸いです。
・この作業は未経験のため、やり方をご教示ください。
似た言葉に「ご教授ください」がありますが、混同しないように注意が必要です。「ご教授ください」は、高度な専門知識や専門技術を教えるというニュアンスがあるため、仕事の現場で使うのはあまりふさわしくありません。
単純に情報を聞きたいときには、「ご教示ください」と伝えましょう。
3.【状況別】介護職が「分からない」を敬語表現にするときの例文
以下では、介護職が「分からない」ことを丁寧に伝えたいときの例文を、「上司や先輩職員に接するとき」と、「利用者さんと接するとき」の2つの状況に分けて紹介します。使用場面によって、どう使い分ければよいかを確認しておきましょう。
上司・先輩職員にメールで質問をする場合
以下は、介護職の方がメールやチャットツールを使って、上司・先輩職員に分からないことを尋ねるときの例文です。
〇〇主任
お世話になっております。
先ほどは介護についてのマニュアルをお渡しいただきありがとうございました。
内容について確認しましたが、1点だけ分からないことがありましたので、ご相談させていただけると幸いです。
・マニュアル内のP26とP27で、食事の配膳手順がそれぞれ違っておりました。
更新履歴を確認したところ、P26のほうが後で更新されているようです。こちらが最新の情報かと思いますが、いかがでしょうか。
お手数をおかけしますが、ご教示のほどよろしくお願いいたします。
上司や先輩職員にメールで質問する際は、より短い時間で内容を把握し、正確に答えられるように配慮することが大切です。質問内容を箇条書きにして、「要件」「現状」「自分の意見」「依頼」の4項目で構成するとよいでしょう。
利用者さんの問い合わせに対して回答する場合
以下は、利用者さんからの問い合わせに回答するときの例文です。
お世話になっております。××介護施設の■■と申します。
「現在利用している介護サービスの費用について、過去6か月分の明細を知りたい」とのお問い合わせをいただき、誠にありがとうございました。
大変恐縮ではございますが、明細についてはこの場でお答えいたしかねます。後日、担当者よりご回答いたしますので、○日までお時間をいただけると幸いです。お手数をおかけして申し訳ございませんが、何卒よろしくお願い申し上げます。
問い合わせを受けたときには、施設名・担当者名を明記しつつ、相手の質問内容を復唱しましょう。複数の質問を受けているときには、どの質問に対して回答しているのか、関係が分かるように記載してください。
なお、問い合わせには具体的に回答すべきですが、答えられないときは「お答えいたしかねます」「確認いたします」といった表現で、その旨を伝えてください。後で回答ができるときは、回答できる期日を伝えるとより誠実な印象を与えられます。回答を出せない場合は、理由を丁寧に伝えましょう。
まとめ
「分からない」の丁寧な表現は「分かりません」ですが、ストレートすぎて少しぶっきらぼうな印象を与える恐れがあります。「存じ上げません」や「分かりかねます」「確認いたします」といった言葉に言い換えると、やわらかい印象を与えることができるでしょう。また、相手の質問に答えられないときは「お答えいたしかねます」、分からないことを教わるときには「ご教示ください」が適切です。
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