ケアマネジャーの資格は廃止される?うわさの真相と将来性を解説
文/山本史子(介護福祉士)「ケアマネジャーの資格が廃止される」という、うわさを耳にしたことはありませんか。うわさを聞いて、不安に感じた方もいるでしょう。ケアマネジャーは、利用者さんが適切な介護サービスを利用する際に重要な役割をしており、高齢者の生活を支えています。そのため、ケアマネジャーの資格がなくなることは考えにくいでしょう。
本記事では、ケアマネジャーの資格が廃止されるという誤解が生まれた理由やケアマネジャーの将来性、ケアマネジャーの資格の取得方法を紹介します。これからケアマネジャーを目指そうと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
1.ケアマネジャーの資格は廃止されない

結論からいうと、ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格が廃止される予定はありません(※2025年6月時点)。ケアマネジャーの資格の見直しは定期的に行われているものの、「資格の廃止」ではなく「質の向上」や「役割の明確化」に重きが置かれています。今後も少子高齢化が進む日本社会において、ケアマネジャーの需要は高まると予測されています。
また、ケアマネジャーは、介護保険制度の中核を担う必要不可欠な存在です。介護が必要な方と家族が、安心して適切な介護サービスを利用できるようにサポートする重要な役割を担っています。そのため、ケアマネジャーの資格がなくなることは考えにくいでしょう。
2.ケアマネジャーの資格が廃止されるといわれる理由

ケアマネジャーの資格が「廃止されるのではないか」という、うわさが広がった背景には、次の4つの理由が考えられます。
- ケアマネジャーの受験資格が見直しされたから
- 管理者が主任ケアマネジャーに限定されたから
- ケアプランを有料化する案が出たから
- AIの導入でケアマネジャーは必要ないと考えられたから
それぞれについて解説します。
ケアマネジャーの受験資格が見直されたから
2018年度から、ケアマネジャー試験の受験資格が見直され、受験対象者が「介護・医療関連の国家資格を有する者」に限定されています。これまで認められていた以下については対象外となりました。
- 無資格で介護業務10年以上従事した方
- 介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)などの資格保有かつ、5年以上の実務経験者
また、2014年度以前は受験資格に該当する国家資格の取得者は、一部の試験科目が免除されていましたが、2015年度からは試験科目の免除制度が廃止されました。受験資格や試験科目の免除制度の見直し等により、以前よりも受験者数が減少したことから「資格自体が縮小されていくのでは」といった不安が生じたと考えられます。
ただし、受験資格の見直しや試験科目の免除廃止は「制度の質を高めるための見直し」であり、廃止を目的としたものではありません。むしろ、ケアマネジャーとしての専門性を高め、より質の高い支援ができる人材の育成を目指したものだと考えられるでしょう。
管理者が主任ケアマネジャーに限定されたから
2018年度の介護報酬改定により、居宅介護支援事業所の管理者は主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)に限定されました。この改定に対応できない事業所が多かったため、「事業所を続けられるのか」といった不安や「ケアマネジャーが不要になるのでは」という憶測が広まりました。
しかし、2020年度までは経過措置期間が設けられており、2021年度以降は主任ケアマネジャーの急な退職などで人材が不足している場合は猶予期間の延長を、山間部や離島では管理者を継続できる、配慮措置がとられています。ただし、猶予期間の延長は2027年3月31日までで、2027年4月1日から主任ケアマネジャーが管理者であることが必須となります。この制度についても質の高いケアマネジメントを推進するもので、ケアマネジャーを廃止する動きとの関連性は低いといえるでしょう。
ケアプランを有料化する案が出たから
「ケアプランの作成に利用者負担を導入する案」が検討されたことも、ケアマネジャー廃止のうわさの1つと考えられます。ケアプランの有料化は、利用者さんにケアプランに関心をもってもらうことやケアマネジャーの質の向上を目的とされており、実際、厚生労働省の社会保障審議会では、ケアプランの有料化が議論された経緯があります。ただし、この案には反対する声もあり、まだ導入されていません。ケアプランの有料化に伴い「ケアマネジャーの需要の低下」や「利用者の減少」を心配する声もあり、ケアマネジャーの廃止に向かっていると誤解されたと考えられます。
AIの導入でケアマネジャーは必要ないと考えられたから
AI技術の進展や介護業界へのICT化により、業務効率化が図られています。ケアプランの作成に活用されることもあり「ケアマネジャーが不要なのではないか」という声が聞こえます。確かにAIは過去の事例データから、最適なプランを作成できるかもしれません。しかし、実際には利用者さんや家族の心身の状態・生活状況、利用者さんの価値観などを理解し、信頼関係を築くことや適切な判断力が必要です。そのうえで必要な医療・介護サービスを調整するため、AIはあくまで「補助的なツール」であり、ケアマネジャーの業務を代替するものではないと考えられています。
3.ケアマネジャーの将来性

ケアマネジャーは介護を提供する事業所をはじめ、医療や関連機関をつなぐ存在として、欠かせない職種です。そのため、ケアマネジャーの仕事は、少子高齢化が進む日本において重要性を増しており、ケアマネジャーの処遇や試験の合格率にも表れています。
処遇改善の見直しが期待されている
介護業界の人材不足は深刻な問題であり、ケアマネジャーも例外ではありません。そこで、介護職員等の確保に向けて、2024年度の介護報酬改定では、「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」を一本化した「介護職員等処遇改善加算」が設けられました。この改定により、事業所に入る介護報酬の増加が見込まれるため、ケアマネジャーの給与アップも期待されています。
ケアマネジャーの合格率は上昇している
これまで「介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)」の合格率は10%台になる年もあり、難しい試験として知られていました。しかし、全体としては変動があるものの、ここ3年間は上昇傾向にあります。
| 第25回(2022年度) | 19.0% |
| 第26回(2023年度) | 21.0% |
| 第27回(2024年度) | 32.1% |
参考:第27回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について|厚生労働省
試験免除の廃止や受験資格の見直しにより、受験者数が低下していますが、2024年度の合格率は前年よりも11%上昇し、20年ぶりに30%を超える結果となりました。合格率の上昇は、試験が簡単になったわけではなく、必要とされる人材に向けて制度が最適化されている過程といえるでしょう。
4.ケアマネジャー資格の概要と取得方法

ケアマネジャーの資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する必要があります。試験に合格後、実務研修を修了しなければ、ケアマネジャーとして働くことはできません。ここでは、受験要件とケアマネジャーとして働くまでの流れを解説します。
受験要件
介護支援専門員実務研修受講試験を受けるためには、次の要件の両方が満たされている必要があります。
- 医師・看護師・介護福祉士などの国家資格を保有している
- 保有資格の業務、または相談援助業務に従事した期間が通算5年以上、かつ業務に従事した日数が900日以上ある
- 勤務地もしくは住所が、受験地にある(業務に従事していない場合は、住所が受験地にある)
例えば、無資格の方がケアマネジャーを目指す場合、介護福祉士を取得後、5年以上働くことで、ケアマネジャー試験の受験要件が満たされます。介護福祉士になるためには実務者研修を修了し、3年以上の実務経験が必要です。そのため、無資格の方は最低8年あればケアマネジャーとして働けるでしょう。
ケアマネジャーになるまでの流れ
ケアマネジャーになるには、試験の合格や研修の受講、都道府県への登録などを行う必要があります。具体的な流れは、以下のとおりです。
1.介護支援専門員実務研修受講試験を受験
2.介護支援専門員実務研修受講試験合格
3.介護支援専門員実務研修の受講
4.研修修了証明書の交付
5.都道府県へ登録
6.介護支援専門員証の交付
7.業務の実施
介護支援専門員の実務研修は、講義と演習を含めた約90時間のカリキュラムがあります。受講には手数料やテキスト代が必要となるため、各自治体で確認しておきましょう。研修修了証明書を受け取ったら介護支援専門員の登録をします。介護支援専門員証が交付されてはじめて業務が開始できます。
5.ケアマネジャーは国家資格になる?

2025年6月時点でケアマネジャーは、国家資格としての制度改正は予定されていません。現状では、「都道府県知事の登録を受けた公的資格」という位置付けとなっています。ただし、受験資格は、医師や看護師、介護福祉士などの国家資格を所有していることに加えて、5年以上の実務経験があることが求められており、専門性の高い方が対象となっています。ケアマネジャーは高度な知識と技術、さらに実践力を備えた職種であり、介護分野において重要な役割を担う人材といえるでしょう。
まとめ:ケアマネジャーの仕事には需要があり廃止されない

ケアマネジャーの資格が廃止されるという情報は、制度の見直しやAI導入などにより、誤解が生じた結果と考えられます。2025年6月時点では、資格廃止の予定はなく、今後も需要が高まるでしょう。
少子高齢化が進むなか、ケアマネジャーは利用者さんや家族、医療・介護事業者の間に立ち、調整をする専門職として必要とされる存在です。また、処遇改善や合格率の上昇など、前向きな変化もみられます。
ケアマネジャーは需要が高く、将来性のある仕事です。今後も変化する社会のなかで、ケアマネジャーは求められ続けるはずです。
●関連記事
【日本全国電話・メール・WEB相談OK】介護職の無料転職サポートに申し込む
スピード転職も情報収集だけでもOK
マイナビ介護職は、あなたの転職をしっかりサポート!介護職専任のキャリアアドバイザーがカウンセリングを行います。
はじめての転職で何から進めるべきかわからない、求人だけ見てみたい、そもそも転職活動をするか迷っている場合でも、キャリアアドバイザーがアドバイスいたします。
SNSシェア












