社会福祉とは?社会福祉制度の種類と仕事、福祉との違いを簡単に解説
編集/中西紗羅(介護福祉士)社会福祉は特別なものではなく、日常生活のなかに深く関わっています。また、社会福祉の仕事は、施設や家庭、関連機関などの連携も必要となります。そのため、社会福祉の全体像を理解することで、自分がどのような支援ができるか明確になるでしょう。
本記事では、社会福祉の概要や仕事、社会福祉制度の種類について簡単に解説するとともに、社会福祉系の仕事に就く方法や将来性についてお伝えします。
1.社会福祉とは?

社会福祉とは、ハンディキャップをもつ人が安心して生活できる社会を作るための仕組みや制度のことです。年齢や障がいの有無・経済状況に関わらず、誰もが人間らしい生活を送れるよう、国や地方自治体、民間団体などが連携して、さまざまなサービスや支援を提供しています。
私たちの身の回りには、実は多くの社会福祉サービスが存在しています。介護サービスや保育園、生活保護なども社会福祉の一環です。日常生活のなかで利用されているサービスの多くが、実は社会福祉の枠組みに含まれています。
身近にある社会福祉の例
社会福祉は決して特別なものではありません。例えば、以下のような社会福祉サービスが存在しています。
- 高齢者の入所施設
- 障がい者の就労支援施設
- 障がい者用駐車スペースやスロープ
- 地域交流サロンや公民館活動
- 駅や街中の点字ブロック
- ボランティア活動
- 学童保育
- 生活保護
上記の例からもわかるように、社会福祉は社会生活でハンディキャップがある人も、そうでない人も、同じように安心して生活できる大切な仕組みといえます。
社会福祉と福祉の違い
「社会福祉」は、国や自治体が制度として整えた仕組みであるのに対して、「福祉」は人が安心して幸せに暮らすことを意味する広い概念である点が、「社会福祉」と「福祉」の違いです。「福祉」とは、今は助けが必要としない人も含めた、すべての人が幸せになることを意味しています。
社会福祉と社会保障の違い
社会保障とは、病気や失業、障がいなどによって生活に困る人を守るための公的な制度の総称です。社会保障は、「社会保険」「社会福祉」「公的扶助」「保健医療・公衆衛生」の4つの柱で構成されており、社会福祉は社会保障制度の一部として位置付けられています。
社会保障は、生活を安定させ、安心して暮らせるようにするための、セーフティネットの役割をはたしており、おもな財源は普段収めている税金や保険料です。
| 社会保険 | 病気・加齢・失業など、生活に困った場合に一定の給付をし、生活を安定させることを目的とした制度 ・医療保険 ・年金制度 ・介護保険 など |
|---|---|
| 社会福祉 | 高齢者や障がい者など、ハンディキャップをもつ人が安心して社会生活が営めるよう、支援をする制度 ・介護サービス ・障害福祉サービス ・子育て支援 など |
| 公的扶助 | 生活困窮者に対して、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助ける制度(生活保護制度) |
| 保健医療・公衆衛生 | 健康で生活できるように予防・衛生を保つ制度 ・病気による受診・治療 ・疾病予防や健康づくり ・母子の健康のための活動 ・食品や医薬品の安全性の確保 など |
社会福祉は、社会保障という大きな屋根を構成している大きな要素の一つが社会福祉と考えるとイメージしやすいでしょう。
2.社会福祉制度にはおもに4つの種類がある

社会福祉制度には、おもに4つの種類があります。
- 高齢者福祉
- 児童福祉
- 障害者福祉
- 母子及び父子・寡婦福祉
これらの社会福祉制度は、対象者や特徴・必要な支援内容も異なります。これらを理解することで、より幅広い視点で利用者さんを支援できるようになるでしょう。
高齢者福祉
高齢者福祉は、加齢や心身機能の低下により介護が必要となったとしても、住み慣れた地域で自立した生活ができるよう、社会全体で支えていくことを目的としています。
厚生労働省の資料によると、2025年には団塊の世代が75歳以上となることもあり、75歳以上の高齢者の割合が人口の約18%を占めるようになります。また、2020年には「認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ」以上の高齢者は410万人だったのに対し、2025年には470万人に増加すると予測されているため、高齢者福祉の重要性は高まっていると考えられます。
高齢者福祉といえば、介護保険や医療をイメージする人も多いでしょう。しかし、高齢者サロンや体操教室などの生きがい活動、高齢者への雇用、高齢者に適した住居など、さまざまな社会福祉サービスが高齢者福祉に該当します。
児童福祉
児童福祉は、すべての子どもが心身ともに健やかに成長できるよう、安心して生活できる環境を保障することを目的としています。子どもの虐待や貧困、障がいなど、さまざまな理由で困難を抱える子どもや家庭を支援するためのサービスを提供しています。
具体的には、児童福祉には次のような支援やサービスがあります。
- 保育所
- 認定こども園
- 児童養護施設
- 障害児相談施設
- 児童発達支援センター
- 児童手当の支給
- 高等学校の授業料無償化
児童福祉には、保育所や放課後等デイサービスの設置のほか、児童手当といった経済的支援が含まれます。また、虐待防止やひとり親家庭への支援など、家庭環境に課題を抱える子どもを守るための制度も整備されています。児童福祉は、子育てを社会全体で支えていくことを目指し、行政機関や児童福祉施設、民生委員、学校などと連携・協働することが求められています。
障害者福祉
障害者福祉とは、身体・知的・精神・発達などに障がいのある人が、地域社会で自立し、自分らしい生活が送れることを目的としています。障がいの有無に関わらず、すべての人が尊重され、共生できる社会の実現を目指しています。
障害者福祉では、障がいのある人の特性に合わせて、生活介護や移動支援などの生活に直結したサービスのほか、仕事をサポートする就労支援やグループホームといった入居施設の提供などがあります。また、特別障害者手当や特別児童扶養手当などの支給もされています。
ひとり親家庭等への社会福祉
ひとり親家庭等への社会福祉では、離婚や死別などで配偶者を失い、ひとり親として子どもを育てている家庭を支援します。経済的な理由で子育てや生活が困難になることや精神的な孤立を防ぎ、自立を支えることを目的としています。
ひとり親家庭を対象とした支援は、以下の4本柱により施策が推進されています。
- 子育て・生活支援
- 就業支援
- 養育費確保等支援
- 経済的支援
ひとり親が安定した職に就けるように職業訓練や就職活動を支援しています。また、ひとり親家庭が抱える悩みを相談できる環境を整え、子どもの虐待や貧困を予防する対策も進められています。
参考:ひとり親家庭への支援に関する法体系について|厚生労働省
3.社会福祉に関わる仕事

社会福祉は、制度や仕組みだけで成り立つものではありません。実際に支援を必要とする人に寄り添う「人」が必要です。ここでは、社会福祉を支えている仕事について紹介します。
介護系の仕事
介護系の仕事には、高齢者や障がい者が日常生活を送るうえで必要な支援を提供する職種があります。介護系の仕事で代表的な職種は、介護施設の介護士です。介護士の仕事は、例えば、食事・入浴・排せつなどの身体介護、掃除・洗濯・買い物などの生活援助をします。
施設職員であれば無資格・未経験からでも始められることが多く、働きながら資格取得を目指す人も少なくありません。
働く場所も多様で、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などの入所施設、デイサービスといった通所施設、自宅へ訪問する訪問介護などが代表的です。
保育士の仕事
児童福祉の分野では、子どもの成長を支える専門職が活躍しています。例えば、保育士は保育所(保育園)や認定こども園などで、乳幼児の遊び・食事・生活習慣の支援のほか、保護者への育児相談なども行います。保育所には0歳から6歳までの子どもがいるため、その年齢にあった遊びや対応が求められます。
保育士になるには、養成課程のある学校を卒業し、保育士試験に合格する必要があります。
看護師の仕事
社会福祉の現場では、保健・医療との連携も不可欠です。看護師は医療機関だけでなく、介護施設や在宅医療の現場でも活躍しており、医療と社会福祉の両方の視点から支援できるでしょう。
例えば、看護師の仕事は、診療の補助のほか、療養上の世話をしながら、心身の健康に問題を抱える人の生活を支えることです。病気や治療について患者さんや家族に説明したり、退院後の生活に関する助言をしたりします。
看護師は国家資格であり、専門性の高い仕事です。看護師になるには看護専門学校等を卒業し、国家試験に合格する必要があります。
相談援助をする仕事
社会福祉に関わる仕事のなかには、生活に悩みを抱える人に対して、情報提供やサービスにつなげる相談援助をする仕事があり、一般的にソーシャルワーカーと呼ばれています。相談援助をする仕事は、社会福祉事務所や医療機関、介護施設などがあり、支援対象者も高齢者や障がい者、生活困窮者など多岐にわたります。
相談援助をする仕事は福祉系の学校を卒業し、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を取得するのが一般的です。また、福祉事務所で働く場合は、公務員試験に合格し、社会福祉主事任用資格を取得する必要があります。
4.社会福祉系の仕事に就くには

社会福祉の仕事には、資格が必要なものと無資格・未経験から始められるものがあります。介護職の場合は、無資格・未経験から始められ、働きながら資格を取得することが可能です。以下は、社会福祉の仕事に役立つ資格の一例です。
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護福祉士
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 保育士
- 社会福祉士
- 精神保健福祉士
- 看護師
- 理学療法士
- 言語聴覚士
看護師や保育士といった専門的な仕事に就きたい場合は、大学や専門学校の卒業や特定の実務経験が必要な場合もあります。
社会福祉の分野は人の支えになることを実感できる仕事です。興味のある人は、資格取得の方法や福祉施設の情報を調べてみると良いでしょう。
5.社会福祉の将来性

社会福祉は、今後ますます重要性が高まる分野です。高齢化の進行や少子化、家族形態の変化など、社会の構造が大きく変わるなかで、支援を必要とする人の増加が推測されます。
一方で、社会福祉の分野は人手不足が問題となっており、人材確保が課題となっています。こうした背景から、介護福祉士の資格が取得しやすくなるよう、試験科目を複数のパートに分けて、一定の合格水準を満たしたパートは翌年度の試験で受験免除ができる「合格パートの受験免除」が令和8年1月の試験より導入されることが決まっています。また、ICTの導入といったさまざまな改善が進められており、社会福祉の現場では効率化と質の向上が図られています。
社会福祉は、生活に欠かせないサービスのため需要が高く、資格を取得することでキャリアアップすることも可能な分野です。自分がどのような形で関わるか考えながら、将来性のある社会福祉の分野で活躍してみてはいかがでしょうか。
まとめ:社会福祉とは簡単にいうと「誰もが安心して暮らせる社会を支える仕組み」

社会福祉とは、年齢や障がい、経済状況などハンディキャップもある人が安心して暮らせるように支援する制度や取り組みのことです。介護や子育て、障がい者支援など、日常のなかに根ざした支えの多くが社会福祉の一部といえるでしょう。それぞれの活動には専門職があり、制度や地域と連携しながらサービスを提供しています。
高齢化や少子化が進むなか、社会福祉の重要性は高まっています。自分にできる形で社会福祉に関わることで、社会全体を支える一員として活躍できるでしょう。
●関連記事
【日本全国電話・メール・WEB相談OK】介護職の無料転職サポートに申し込む
スピード転職も情報収集だけでもOK
マイナビ介護職は、あなたの転職をしっかりサポート!介護職専任のキャリアアドバイザーがカウンセリングを行います。
はじめての転職で何から進めるべきかわからない、求人だけ見てみたい、そもそも転職活動をするか迷っている場合でも、キャリアアドバイザーがアドバイスいたします。
SNSシェア












