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仕事・スキル 介護士の常識 2025/10/28

介護の夜勤がきついと感じる理由は?勤務時間や1日の仕事内容、夜勤のメリットについて解説

編集/中西紗羅(介護福祉士) thumb_251024.jpg

夜勤のある介護施設で働くことを検討している方のなかには、夜勤は「体力的にきつそう」「忙しそう」とイメージする人もいるでしょう。しかし、介護施設の夜勤は"きつい"と感じることがある一方で、収入アップといったメリットも存在します。

本記事では、介護施設における夜勤の勤務時間とシフト、夜勤の1日のスケジュール、主な仕事内容、きついと感じる理由、夜勤のメリット、夜勤の介護施設を選ぶポイントについて、それぞれ解説します。

1.介護の夜勤の勤務時間とシフト

参考写真

まずは、介護の夜勤の勤務時間と、勤務シフトについて解説します。介護職の主なシフトとしては、2交代制と3交代制があり、それぞれ勤務時間が異なります。

2交代制

2交代制とは、1日の勤務時間帯を、昼と夜の2つに分けるシフトです。一般的には、日勤(昼)が8時間勤務、夜勤帯は16時間程度の勤務としています。多くの介護施設では、2交代制が取り入れられており、介護職のなかでもポピュラーなシフトといえるでしょう。

3交代制

3交代制とは、勤務時間帯を昼・夕方・夜の3つに分けるシフトです。それぞれ日勤・準夜勤・深夜勤に分けられており、基本的には各8時間勤務とされています。2交代制に比べて、夜勤の勤務時間が短くなることが特徴です。

しかし、3交代制を導入するにはより多くの人員確保が求められるため、実際に導入している介護施設は、2交代制よりも少ない傾向にあります。

日本医療労働組合連合会の「2024年介護施設夜勤実態調査結果」によると、「2交代夜勤」の施設が112施設中99施設と、全体の9割近く(88.4%)を占めている結果が出ています。そのうちの84施設(84.8%)は、16時間以上の夜勤勤務であり、全体的にみても2交代制・16時間勤務の介護施設が多い傾向にありました。

2.介護の夜勤シフト時のスケジュール例

参考写真

介護施設における、2交代制・3交代制の夜勤スケジュールを簡単に紹介します。

2交代制(16時間勤務)の例

時間帯 主な業務内容
17時 出勤・日勤からの申し送り
18時〜19時 食事の準備・食事介助・服薬介助
20時〜22時 トイレ誘導・おむつ交換・口腔ケア・更衣介助・就寝準備・消灯
23時 巡回・トイレ誘導・おむつ交換・体位交換
0時~3時 休憩時間・仮眠・記録業務・雑務など
6時 起床準備・整容介助・更衣介助・トイレ誘導・おむつ交換
7時 食事の準備・食事介助・服薬介助・口腔ケア
8時 日勤への申し送り・退勤

2交代制では、複数名のスタッフが夜勤に対応することもあり、交代で仮眠をとることができます。

3交代制(8時間勤務)の例

時間帯 主な業務内容
22時 出勤・準夜勤からの申し送り
23時〜2時 巡回、トイレ誘導・おむつ交換、体位交換、コール対応
3時 休憩時間
6時 起床準備・整容介助・更衣介助・トイレ誘導、おむつ交換
7時 申し送り・退勤

3交代制では、ワンオペ(1人のスタッフのみ)で業務をすることもあります。見守りやコール対応をしながらの休憩となるケースも少なくありません。

また、食事の準備や介助は、早番スタッフが対応し、夜勤者は介助に介入しないこともあります。

3.介護の夜勤の仕事内容

参考写真

介護施設の夜勤業務で介護職に求められる仕事内容について解説します。

日勤からの申し送り

職場に出勤したら、日勤帯の職員からの申し送り(引き継ぎ)を受けます。利用者の日中の様子や、出来事、連絡事項などを共有し、夜勤帯業務に向けた準備をします。

食事の準備・介助

夕食、朝食それぞれの準備を行います。利用者によっては、自力で食事をすることが難しい人もいるため、必要に応じて食事介助も行います。

服薬介助

食前・食後・就寝前などのタイミングで、服薬の確認を行います。利用者ごと、薬剤ごとによって服薬するタイミングは異なるため、ミスのないようにそれぞれしっかりと確認しましょう。また、嚥下機能の低下している高齢者では、薬剤の誤嚥の恐れもあるため、飲み込めたかどうかまでの確認が必要です。

口腔ケア

口腔ケアとは、主には歯磨き・うがいのことをいいます。それらを自力で行うことが難しい利用者に対して、食後のタイミングで口腔ケアを行います。

おむつ交換・排泄介助

おむつ交換やトイレ誘導などの排泄介助を行います。「約3時間おきにおむつ交換が必要」「○時と△時に声かけしてトイレ誘導が必要」など、排泄のタイミングや介助の必要度は利用者によって異なるため、臨機応変の対応が求められるでしょう。

利用者の排泄タイミングの目安がわかるように、チェック表を活用している施設も多くあります。その人に合ったタイミングで、適切な介助を行うことが求められる業務です。

巡回・安否確認

利用者の就寝後には、利用者の安否確認や、施設内の安全確認を目的とした巡回を行います。「概ね1〜2時間に1回」のように、施設ごとに巡回の回数は異なります。

巡回時には、利用者の呼吸や覚醒の状態、ベッド上でどんな体制で、どの位置に寝ているかなどをチェックするほか、所在確認も大切な役割の1つです。

例えば、認知症の症状で「徘徊」がある利用者の場合、ベランダの窓から外に出ようとするケースも考えられます。利用者の安全を守り、状態の急変にいち早く気が付くためにも巡回を行います。

体位交換

同じ姿勢で長時間が経過すると、体の一部に圧力がかかって血行が悪化します。そのまま皮膚の状態も悪化してしまうと、褥瘡(じょくそう)になることがあります。

自力で寝返りができない利用者に対しては、右側臥位(右横向き)で寝ていた場合、左側臥位(左横向き)に体位変換したり、クッションを使用したりして体位交換を行います。体の一部分に圧力がかからないように、体位変換をして圧力を分散します。

体位交換は、摩擦やズレに注意しながら行うことが大切です。基本的には、最後に体位交換をしてから2時間以内に行う必要がありますが、利用者の皮膚状態や栄養状態などによって、目安となる時間は異なります。

コール対応・緊急時対応

利用者からコール(呼び出し)があれば、その都度、対応が求められます。「トイレに行きたい」「体調が優れない」など、その訴えはさまざまです。病状・持病の悪化といった緊急事態のケースもあるため、コールがあったら迅速な対応をしましょう。

なお、巡回時に体調の急変を発見した場合も、早急で的確な判断と、対応を行うことが必要です。

記録業務・雑務

介護記録の作成や、日勤帯に終えられなかった雑務などを行います。夜勤帯は、コールや急変といった緊急時の対応がなければ、日勤よりも落ち着いて作業ができるといえます。

備品の管理、各種委員会の資料作成などの時間としても有効に活用できるでしょう。

日勤への申し送り

夜勤帯での出来事や、利用者の様子などについて、日勤のスタッフへ申し送ります。夜間帯にあった体調不良や、利用者の小さな変化などについても、「これは申し送りで伝えなくてもいい」と自身で判断をせずに、必ず情報共有をしましょう。自身の業務を終えたら、退勤となります。

4.介護の夜勤がきついと感じる理由

参考写真

介護の夜勤が"きつい"といわれる理由について解説します。

勤務時間が長い

前述したように、介護の夜勤は、8時間〜16時間勤務が一般的です。もちろん、休憩時間や仮眠時間はあるものの、長時間労働であることに変わりはなく、体力的にも"きつさ"を感じることがあるでしょう。

加えて、コール対応や緊急時の対応が発生した場合には、思うような休憩時間が確保できないこともあるため、疲れがより蓄積されてしまうといえます。

日勤よりもスタッフ数が少ない

日勤に比べて、夜勤は勤務するスタッフの数が少なくなります。勤務シフトや、介護施設の規模によっては、夜勤をワンオペで対応することもあるでしょう。

業務内容そのものは日勤よりも少ないですが、コール対応や緊急時対応が重なってしまうと、心身に負担を感じる場合があります。

生活リズムが崩れる

夜勤のある介護施設は、平日9時〜18時のような定時制ではなく、日勤・準夜勤・深夜勤などのシフト制です。そのため、朝早い日の出勤があれば、朝に帰宅する日もあり、生活リズムが崩れる恐れあります。

不規則な生活リズムは、体調管理が難しく、心身の健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。その結果、シフト勤務を負担に感じるケースもあるでしょう。

緊急対応が求められることがある

利用者の持病の悪化や、容態の急変など、緊急対応が求められることがあります。介護職員は医療的処置ができないため、医師、看護師などが到着するまでその場を仕切ったり、救急車の手配をしたりすることも必要です。

緊張感のある対応が苦手な人にとっては、緊急対応に強いストレスを感じてしまうことも考えられるでしょう。

体力的・精神的に疲れが溜まる

人数が少なく、通常、体を休める夜の時間帯に仕事をすることの身体的な負荷や、緊急時の対応などが求められるため、体力的にも、精神的にも疲れが溜まりやすいといえます。心身の不調は、パーフォーマンスやモチベーションの低下にも影響するでしょう。

5.介護の夜勤に入るメリット

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"きつい"といわれるなかでも、介護の夜勤に入るメリットがあります。それぞれ解説していきます。

夜勤手当があり、給料がアップする

夜勤の場合、基本給に加えて「夜勤手当」が支給されることがほとんどです。そのため、手当を加えることで、日勤と同じ時間で労働をしても、夜勤に入る方がもらえる金額はアップします。

また、夜勤手当とは別に「深夜割増賃金」が支払われることも、夜勤の特徴です。22時〜翌日5時までの勤務には、「基本給を25%増しした賃金」が深夜割増賃金として支払われるため、夜勤手当と合わせて収入アップを目指せるでしょう。

日勤に比べて業務量が少ない

拘束時間が長く、少ない人員で巡回や介助を行う一方で、利用者対応の時間は日勤よりも少なく、業務量の負担は夜勤の方が少ないといえます。

コールや緊急対応がなければ、しっかりと仮眠時間を確保できることもあるため、「思っていたよりも楽」と感じることもあるでしょう。また、入浴介助や、レクリエーション活動を行う必要もありません。

就職・転職で有利になる

介護施設の夜勤経験は、就職や転職で有利になるといえます。夜勤に対してネガティブな人がいるなかで、夜勤経験者は即戦力としてもカウントされるほか、夜勤を避けて就職活動をしている人よりも応募できる求人数が多くなるため、必然的に選択肢も増えます。

連休を確保しやすい

2交代制(16時間)のシフトでは、2日分の勤務時間としてカウントされます。多くの介護施設では、夜勤明けの翌日を休みと設定しているため、実際には「連休扱い」にはならないものの、夜勤明けにプライベートの時間を確保しやすいといえるでしょう。

プライベートの時間を確保できることで、心身のリフレッシュや、趣味に打ち込むなどの時間を費やせます。

通勤ラッシュに巻き込まれない

夕方に出勤して、朝方に帰宅をするため、公共交通機関を使っている人は通勤ラッシュに巻き込まれないのもメリットの1つです。

特に、朝の混雑した駅や満員電車はストレスにもなるため、通勤ラッシュを避けられることは、ストレスを軽減できるといえるでしょう。

介護職未経験でも挑戦できる

慢性的な人材不足ということもあり、未経験でも応募できる介護施設の夜勤はあります。「夜勤に挑戦したい」「介護のスキルを高めたい」といった場合でも挑戦できます。

ただし、夜勤は決して楽な仕事という訳ではありません。そのため、未経験で挑戦する場合には、研修や教育制度が充実している介護施設を選ぶといいでしょう。

6.夜勤のある施設を選ぶポイント

参考写真

介護の夜勤で働こうと考えた際に、施設を選ぶポイントを解説します。

シフトの交代制

2交代制(16時間)か、3交代制(8時間)によって、働き方や勤務時間は異なります。自身の働き方に大きく影響している要素でもあるため、どちらのシフトを採用しているのかは、しっかりと確認しておきましょう。

仮眠室・休憩室の有無

夜勤帯で利用できる仮眠室、休憩室があると、落ち着いて休憩しやすいです。規模の大きい介護施設であれば、仮眠や休憩の専用スペースを設けていることもありますが、小規模の施設だと、事務所を休憩場所としていることがあります。

心身の休息を取るには、仮眠室や休憩室の有無も大きく影響するポイントになるため、事前にチェックしておくといいでしょう。

夜勤の人員数

夜勤のスタッフ数が多いと、それだけスタッフ1人あたりの業務負担が軽減されます。近年では業務効率のために介護用ロボットを導入する施設もあり、夜勤の人員数と合わせて確認をしておくと、実際に夜勤で働く際のイメージを掴みやすくなるでしょう。

ひと月あたりに入る夜勤の回数

夜勤の回数に制限はなく、それぞれの介護施設によって夜勤に入る回数は異なります。人によって、「夜勤はなるべく少ない方がいい」「手当がもらえるので多く入りたい」と、ニーズも異なるため、その施設の月あたりの夜勤回数は確認しておくと安心です。

夜勤手当の有無・金額

夜勤帯の深夜割増賃金は法律上、事業者(介護施設)からの支払いの義務がありますが、夜勤手当の有無や金額は、施設によって異なります。例えば、「夜勤手当がもらえると思って入職したら、実際にそのような制度はなかった」というケースも、考えられます。

夜勤手当の金額は収入額にも影響するため、夜勤手当と金額は、必ず確認しておきましょう。

残業時間・休憩時間

夜勤での休憩時間や、月あたりの平均残業時間は、働くうえで大切なポイントです。利用者の急変やコール対応などでまとまった休憩時間が確保できないこともありますが、そのようなケースでの休憩対応などについても確認しておくといいでしょう。

休憩時間を設定していなかったり、問い合わせ時に曖昧な回答でごまかされたりする場合には、コンプライアンス的にも問題がある施設といえるため、入職は避けることが望ましいといえます。

まとめ

参考写真

介護施設の夜勤には、2交代制と3交代制があります。ワンオペ勤務になる施設もあり、長時間労働と合わせて、体力的、精神的にも負担を感じる部分はあるでしょう。

しかし、夜勤手当や深夜割増賃金による収入アップや、連休を確保しやすいというメリットの側面も忘れてはいけません。未経験で挑戦できる求人もあるため、キャリアアップ、収入アップなどを目的に、介護施設の夜勤を1つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

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中西紗羅(Sara Nakanishi)

介護福祉士

2014年介護福祉士養成校を卒業し、介護福祉士の資格を取得する。その後、従来型の介護老人福祉施設にて4年勤務する。「より個人に寄り添ったケアを実現したい」という想いから、ユニット型の介護老人福祉施設に転職する。ユニットリーダー研修を受講し、利用者様が「ありのまま自分らしく」過ごしていただけるよう、1人ひとりに寄り添ったケアを目指し6年勤務する。

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