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仕事・スキル 介護士の常識 2021/11/26

#介護職お役立ち

【介護スタッフ向け】入浴介助の手順・注意点とは?

構成・文/介護のみらいラボ編集部 介護 入浴.jpg

入浴介助は、高齢者施設や在宅ケアセンターで働く際に発生する日常業務の一つです。また、身体を清潔に維持することは、人として生きていく上で必ず発生する欲求にあたります。入浴日を心待ちにする利用者のためにも、正しい知識を身に付けて、安全な入浴介助を提供しましょう。

この記事では、介護スタッフとして働く上で知っておきたい入浴介助の基礎知識を解説します。入浴介助のコツを知り、介護スタッフとしてのステップアップを目指したい人は、ぜひ参考にしてください。

入浴の目的と介護の心得

入浴には被介護者の身体を清潔に維持し、床ずれ・感染症を予防する効果が期待されます。肌に汚れがついた状態を放置することは、被介護者にとってのリスクです。そのため、定期的に入浴し、身体の隅々まで洗うことが求められます。また、身体を芯から温めて血液循環を促進し、筋肉の緊張をほぐすことも、入浴の目的の一つです。筋肉の緊張をほぐすことには、関節などの痛みを和らげる働きが期待されます。

さらに、入浴時間は被介護者の身体の状態を確認するよい機会です。洗体する際に被介護者の身体を観察し、肌の乾燥・傷・痣はないかを確認しましょう。

介護の現場で働く人が入浴介助する際に心掛けたいポイントは、下記2点です。

●被介護者の安全を最優先に考える
浴室は、急激な温度変化による体調不良や転倒事故を起こしやすい環境です。被介護者の安全を最優先に考えて、入浴介助にあたってください。

●被介護者のプライバシーに配慮する
入浴時間は本来、自分だけで過ごすプライベートな時間です。被介護者が「恥ずかしい」と感じることがないように配慮して、過剰な支援を控えましょう。「股間を洗う」などとくに恥ずかしさを感じさせるリスクの高い行為は極力、被介護者自身に任せることが理想です。

なお、近年利用者が増えている、自宅で利用者を介護をする訪問介護では、入浴に加えて排せつや食事、掃除なども行います。そのため、安全性やプライバシーの配慮に加えて、サービスの提供に必要な設備を用意しておくことも大切です。

(出典:厚生労働省「訪問介護・訪問入浴介護」

入浴介助の手順

入浴介助をスムーズに実践するためには、一連の手順を把握しておく必要があります。また、入浴は被介護者の身体に対する負担が大きく、事故を起こすリスクの高い行為です。入浴介助の正しい手順やポイントを理解しておくことは、事故の防止に役立ちます。

ここで紹介する入浴介助の手順とポイントを十分に理解して、安全な入浴介助を実践しましょう。

準備の手順とポイント

入浴の予定日には、あらかじめ被介護者に声を掛けて、心の準備を整えさせます。被介護者の気分が乗らない日に無理強いすることは避け、一人ひとりの気持ちに配慮した介護を実践しましょう。入浴当日は下記の手順に従って、事前準備を進めてください。

●準備物を用意する
入浴介助には、バスタオル・着替え・ボディソープもしくは石鹸・爪切りが必要です。被介護者の状態によっては、シャワーチェア・転倒防止マット(浴室フロア用と浴槽内用)も準備しましょう。

●体調の確認を行う
被介護者の体温・血圧・脈を測定し、顔色や呼吸の状態を見て、健康チェックを行います。看護師同伴で入浴サービスを提供する場合は、被介護者の健康状態を相談し、入浴が可能であるかの判断をあおいでください。

●服を脱ぐ手伝いを行う
更衣介助の基本ルールは、麻痺や痛みのない側の腕・足から脱がせることです。麻痺や痛みのある部分に力を加えることがないように注意しつつ、上着・ズボンを脱がせてください。

★準備のポイント
(1)冬場は暖房器具を適時使用し、浴室や脱衣所を温めましょう
(2)介護スタッフは入浴介助を始める前に、濡れてもよい服装に着替えましょう

浴室や脱衣所の温度が低いと、寒暖差によるヒートショックを起こす危険性が高まります。浴室暖房や暖房器具を有効に活用し、浴室や脱衣所を、22度~25度程度に温めてください。

入浴中の手順とポイント

入浴は、シャワーチェアに腰掛けさせて全身を洗い、浴槽に入る流れで進めます。手順の詳細は、下記の通りです。

●身体を洗う
滑らないように注意しつつ、シャワーチェアに被介護者を腰掛けさせます。その後、心臓に遠い足先・手先から始め、体幹に近い部位へ進む流れで、洗体を進めてください。

●浴槽に入る
健常者には浴槽用手すりをつかませて、介護スタッフが身体を支えつつ、浴槽に入ってもらいます。身体に麻痺がある人の場合はシャワーチェアを用意して、麻痺のない側から先に、浴槽へ入れましょう。麻痺のある側は介護スタッフが介助し、安全面に注意して、浴槽へ入らせます。浴槽の中にいる時間は、5分~10分程度が目安と考えてください。

●浴槽を出る
急激に立ち上がると立ちくらみを起こすリスクがあるため、ゆっくり身体を起こさせます。浴槽のふちに一旦腰掛けてもらうと安全に、浴槽を出ることが可能です。麻痺がある人の場合はシャワーチェアを使用して、外側の足から順番に浴槽を出てもらいます。

★準備のポイント
(1)浴槽のお湯の温度は、38度~40度程度に設定しましょう
(2)シャワーチェアは、お湯を掛けて温めましょう

浴槽のお湯の温度が熱すぎる・冷たすぎる場合、適温となるまで入浴できません。待つ間に身体を冷やすと風邪のリスクがあるため、あらかじめ適温に設定しましょう。

入浴後の手順とポイント

入浴後は速やかに身体を拭き、湯冷めを防止することが大切です。その後、更衣介助や入浴後のサポートを提供します。

●服を着る手伝いを行う
脱がせる場合とは反対に、麻痺や痛みのある側の腕・足から服を着せます。可能であれば麻痺や痛みのない側は、自分自身で着てもらいましょう。

●入浴後のサポートを行う
入浴後は爪が柔らかくなるため、爪切りを行うよい機会です。被介護者を椅子に座らせて、白い部分を1mm~2mm残す程度まで、手や足の爪を切ってください。また、皮膚科で処方された軟膏・保湿剤を必要に応じて塗りましょう。

★準備のポイント
(1)入浴後は、身体状況に合う服を着せましょう
(2)水分補給用の飲み物を用意しましょう

身体の一部に麻痺や痛みのある被介護者には、着替えやすく柔らかい素材の服がおすすめです。かぶるタイプの服は着替えしにくいケースがあるため、注意しましょう。入浴後の水分補給を怠ると、脱水症状を引き起こすリスクがあります。血液中の水分が失われることで脳梗塞のリスクが高まるケースもあるため、十分な水分補給を行うように促してください。

入浴介助を行う際の注意点

最後に、入浴介助を行う際の注意点を解説します。注意点を意識することなく入浴介助にあたると、被介護者の尊厳を損なったり事故を招いたりする可能性があり、非常にハイリスクです。下記の内容を頭に入れておくことで、被介護者の心身の健康を保つことができます。

●被介護者が行えることは本人に任せる
過剰介護(被介護者の行えることまで支援すること)は、被介護者の自立を妨げるリスクがあります。被介護者が行えることの範囲を適切に見極めて、必要最小限の介助に留めることが大切です。

●絶対に目を離さないで介助する
介護スタッフの不注意に起因する入浴中の事故は、少なからず存在します。入浴介助中は被介護者から目を離さず、細心の注意を払い、サポートにあたってください。

●空腹時や食事直後の入浴を避ける
空腹時の入浴は、脱水や血糖値の低下によるめまい・貧血などを引き起こすリスクがあるため、推奨されない行為です。食事直後の入浴は、胃腸の働きを低下させて消化吸収不良を引き起こすリスクがあります。食事後に入浴させる場合は1時間程度、時間をあけるとよいでしょう。

まとめ

入浴は、心身のリラックスを促すとともに被介護者の身体を清潔に保ち、感染症を防止するためのよい手段です。入浴時間を有効に活用するためには、介護スタッフが正しい知識を持ち、適切な介助を提供する必要があります。

なお、介護スタッフとしてステップアップするためには、入浴介助以外の業務の知識も深めることが大切です。「介護のみらいラボ」では、介護スタッフに役立つ情報を多数掲載しております。ワンランク上の介護スタッフとして、高齢者や高齢者の家族を支援したい人はぜひ「介護のみらいラボ」をご参考ください。

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