障害者グループホームで発生しうるトラブルとは?対処法・防止法もあわせて解説
編集/中西紗羅(介護福祉士)障害者グループホームには、障害や疾患を理由に、日常生活に困りごとを抱える多様な利用者が入所しています。そのため、迷惑行為や利用者間のトラブル、あるいは職員によるトラブルなどが発生することもあるため、働くうえではトラブルの対処法や防止法を把握しておくといいでしょう。
本記事では、障害者グループホームで発生しうるトラブルの具体例と、トラブルの対処法・防止法についてそれぞれ解説します。
- 目次
- 1.障害者グループホームの利用者を起因としたトラブル例
- 門限になっても自室に帰ってこない(行方不明)
- 他の利用者や職員に対する暴言・暴力
- 騒音問題
- 施設共用部の使用に関するトラブル
- 2.障害者グループホームの職員を起因としたトラブル例
- 虐待の予兆(身体的・精神的・性的)
- 介護放棄の兆候
- 金銭・物品管理に関する不適切な行為
- 3.障害者グループホームで発生したトラブルの対処法
- 利用者を起因としたトラブルの対処法
- トラブル状況の確認を行う
- 当事者への事実確認を行う
- 施設のルールを改めて確認する
- 当事者・被害者に対するケアを行う
- 利用者の家族・関係者・職員間の情報共有
- 職員を起因としたトラブルの対処法
- 職員に対してヒアリングを行う
- 利用者(被害者)とその家族へ謝罪する
- 不適切な行為をした職員の処遇を決める
- 4.障害者グループホームにおけるトラブル防止法
- 利用者を起因としたトラブルの防止法
- 利用者一人ひとりの特性を理解する
- 利用者とのコミュニケーションを増やす
- 職員同士の情報共有を徹底する
- 職員を起因としたトラブルの防止法
- 利用者の様子をしっかりと観察する
- 風通しのよい職場環境を整える
- 十分な人員を確保する
- まとめ
1.障害者グループホームの利用者を起因としたトラブル例

グループホームで発生しうるトラブルは、主に「利用者を起因としたもの」と、「施設の職員を起因としたもの」の2つに大きく分けられます。
まずは、利用者を起因とするトラブル例について紹介します。
門限になっても自室に帰ってこない(行方不明)
多くの障害者グループホームでは、日中活動に厳格な制限はなく、利用者は比較的自由に過ごせる環境が提供されています(一部の施設では、日中は医療機関や地域が開催するデイケアへの参加などを「決め事」としているケースもある)。
そのため、利用者は日中に買い物をしたり、家族や友人と会ったり、医療機関に通院することも可能です。
しかし、あくまでも自立に向けた訓練を行う施設であるため、「外出時は職員に一報を入れる」「行き先を伝える」などの外出時の決まりや、門限が定められていることがあります。
利用者が施設で定められている決まりを破ると、「門限になっても自室に戻らない」「連絡がつかない」といったトラブルへと発展します。
他の利用者や職員に対する暴言・暴力
障害者グループホームには、アパートタイプや一軒家タイプなどの種類があります。基本的には、複数名の利用者が同じ敷地内、あるいは建物内で生活しているため、利用者のなかには、障害や疾患が原因で心身の状態が不安定な人も、少なからず存在します。
そのため、「意思表示がうまくできない」「失礼な発言をしてしまう」「こだわりが強い」などの理由から、他の利用者や職員とのトラブルに発展してしまうケースがあります。
騒音問題
利用者のなかには、心身の状態が不安定なことで大声を出したり、大きな足音を立てたりする行為となって現れるケースがあります。それらが「生活音」とは呼べないほどに、音量が大きくなると、他の人にとっては「騒音」として捉えられる可能性があります。
アパートやマンションにおける複数の部屋を、障害者グループホームとしている場合、利用者の自室以外の部屋は、一般の住民が利用しています。そのため、騒音問題が原因で他の住民とのトラブルに発展してしまうと、最悪の場合、その利用者は施設から退去する必要があることも考えられます。
施設共用部の使用に関するトラブル
施設共用部に関するトラブルには、「ゴミ出しのルールを守らない」「共有部の廊下を汚染する」「駐輪所で迷惑な停め方をする」「郵便受けの周囲に不要なチラシを捨てる」などがあげられます。
共有部を毎日使用していると、一度はうっかりミスも発生するかもしれません。しかし、それが頻繁になると、他の利用者に対する迷惑行為につながり、最悪の場合、トラブルに発展することも考えられます。騒音問題と同様に、施設のルールを守れない人は退去となる可能性もあります。
2.障害者グループホームの職員を起因としたトラブル例

職員を起因とするトラブル例は、主に職員から利用者に対する「不適切な対応」があげられます。ここで紹介する「トラブル例」は、職員の対応ミスや不適切な行動など、放置すれば深刻な人権侵害や犯罪行為に発展しかねないものです。早期に気づき、改善・再発防止を行うことが施設運営にとって非常に重要となります。
虐待の予兆(身体的・精神的・性的)
殴る・蹴るといった直接的な暴力だけでなく、利用者に対して乱暴な口調で接する、必要以上に強い指導をする、嫌がるのに身体を押さえつけるなどの行為は、虐待の入り口となり得ます。
見過ごせば、身体的虐待・精神的虐待・性的虐待といった明確な犯罪に発展するリスクがあります。利用者側は、こうした行為を他者に相談しにくいこともあり、トラブルの発覚まで時間がかかることがあるため、特に注意が必要です。
介護放棄の兆候
「あとでやればいい」と世話を後回しにする、緊急コールの対応が遅れる、食事や服薬の支援を忘れるといった行為は、介護放棄の前段階といえます。
これが常態化すると、利用者の健康や命に関わる重大事故となります。
施設のシフトの作り方、あるいは勤務時間帯によっては職員の人数が少ないことで、職員の業務負担、精神的ストレスとなり、発生してしまうことが考えられます。
金銭・物品管理に関する不適切な行為
施設によっては、利用者の金銭管理を施設側(職員)で請け負っていることがあります。その場合、職員は利用者のお金がどこに、どの程度保管されているのかをチェックできる状況にあるでしょう。
そうした状況で、「つい借りた」「返すつもりだった」といった軽い気持ちで利用者の金銭や物品に手を出すことは、窃盗や横領につながる重大リスクです。
そのほかにも利用者の私物を勝手に処分する、財布の中身を頻繁に確認するなども、信頼関係を損なう行為です。
3.障害者グループホームで発生したトラブルの対処法

障害者グループホームでトラブルが発生した場合、どのように対処すればいいのでしょうか。「利用者起因」と「職員起因」のそれぞれにおけるトラブルの対処法を解説します。
利用者を起因としたトラブルの対処法
まずは、利用者を起因としたトラブルの対処法を解説します。
①トラブル状況の確認を行う
まずは、トラブルが発生した状況の確認を行いましょう。被害者や第三者からの証言、あるいは相談などがあれば、それらも参考情報とします。職員1人で対処するのではなく、施設長やリーダーへ報告した後、職員全体での情報共有を行うことが望ましい対応です。トラブルの状況確認や、情報整理を終えたら、当事者へ事実確認を行います。
②当事者への事実確認を行う
当事者に対しても、トラブルの事実確認を行います。故意に行ったわけではなく、うっかりミスや、ストレスが溜まっていたことによる行為であった可能性もあります。そのため、いきなり強い口調で注意するのではなく、「この事実は本当かどうか」「なぜ起こしてしまったのか」を丁寧に聞き取るように心掛けましょう。
③施設のルールを改めて確認する
施設のルールを改めて確認することも、対処法として重要です。障害や疾患の特性が原因だとしても、利用者がルール違反をしたことに変わりありません。そのため、施設としては再発防止の対策が求められます。施設の利用規定や、日常生活の細かなルール(ゴミ出し、駐輪所の使い方など)を、利用者と一緒に再度確認し、共通認識を持つことが望ましいでしょう。
④当事者・被害者に対するケアを行う
トラブルの当事者や被害者に対する精神的ケアも必要です。騒音やルール違反などの行動は、特に被害者にとっては精神的ストレスの要因につながるため、話を聞いたり、再発防止の取り組みを伝えたりして、安心感を与えることが求められます。
⑤利用者の家族・関係者・職員間の情報共有
トラブルの一連の流れについて、利用者の家族や、関係者と情報共有を行うことも大切です。利用者のトラブルは、施設が全ての責任を抱える必要はなく、家族や関係者などとも相談や協議をしながら、利用者がトラブルなく過ごせるような環境を整えていくことが求められます。
また、再発防止のために事実を正確に文書で記録し、職員間で共有することが大切です。記録に残すことで、施設として問題にしっかりと向き合い、適切なケアを行ったことの証明にもなります。
職員を起因としたトラブルの対処法
次に、職員を起因としたトラブルの対処法について解説します。
①職員に対してヒアリングを行う
トラブルの内容について、職場全体で共有します。その後、トラブルを起こした職員に対して、内容の事実確認を行いましょう。被害者はもちろん、その様子を知っている(見ていた)第三者などからの話も参考にすると、事実確認がより明確になります。
当事者の職員に対しては、「なぜトラブルを起こしたのか」「自分自身が犯した行為をどのように考えているのか」など、言動に対する考えや理由を確認し、今後の再発防止策を考えます。
②利用者(被害者)とその家族へ謝罪する
事実確認ができたら、被害を受けた利用者と、その家族に謝罪します。特に虐待ケースでは、被害者の医療的ケアが求められることもあるため、施設側には速やかな対処が求められます。
③不適切な行為をした職員の処遇を決める
再発防止策とあわせて、不適切な行為をした職員に対する処遇を決めます。トラブルの大きさや状況などを考慮しながら、施設(法人)の就業規則に則った対応を行いましょう。
また、トラブルが大きくなり、虐待や介護放棄、窃盗まで発展した場合は、いずれの行為も、れっきとした犯罪行為であるため、施設側としても当事者を許すことはできません。
4.障害者グループホームにおけるトラブル防止法

障害者グループホームにおけるトラブル防止法について、「利用者起因」と「職員起因」に分けてそれぞれ解説します。
利用者を起因としたトラブルの防止法
利用者を起因とした主なトラブル防止法としては、コミュニケーションの強化があげられます。それぞれ見ていきましょう。
①利用者一人ひとりの特性を理解する
前提として、障害者グループホームの利用者は、何らかの理由によって自立した生活を送ることが困難なために、施設で生活をしています。トラブルを防止するためには、まず職員が利用者一人ひとりの特性を理解することが大切です。
例えば、無断外出が頻回な利用者に対しては、「行動を注意深く見守る」「外出時に職員から声をかける」といった防止策が実施できるでしょう。
②利用者とのコミュニケーションを増やす
利用者とのコミュニケーションを増やすことで、相手のことをさらに深く知るきっかけになります。例えば、利用者が大声を出したときは、本人に悪意はなく、「思ったことをうまく伝えられない」だけであって、職員や周囲の人に何か困りごとを伝えたいのかもしれません。
そのため、コミュニケーションを通して、利用者のささいな変化に気づけるよう、職員として努力していく必要があります。また、利用者の行動だけを見るのではなく、利用者の特性や性格までしっかりと理解するためにも、コミュニケーションのきっかけを増やすことが必要です。
③職員同士の情報共有を徹底する
職員同士の情報共有を徹底することで、トラブルが起きる前に、原因や要因を早期に特定しやすくなります。特に、利用者の体調の変化、生活様式の変化などは、トラブルの引き金になりやすい傾向にあります。そのため、利用者が日々どのような様子かを、しっかりと記録し、共有しておくことがトラブル防止につながります。
また、トラブルがあった際も、事実を正確に記録に残しておくことで、再発防止にもなるでしょう。
職員を起因としたトラブルの防止法
職員を起因とした主なトラブル防止法としては、以下があげられます。
①利用者の様子をしっかりと観察する
職員から虐待を受けていても、利用者は他者に言い出せないケースがあります。しかし、虐待や被害を受けている利用者は、少なからず日々の様子に違和感が現れることが考えられます。
例えば、「元気がない」「食欲がない」「傷やアザが増えた」「特定の職員に対して怯えている」などの様子が頻回に見られることは、何かしらのトラブルが発生している可能性があるといえます。
利用者の日々の様子をしっかりと観察し、ときに個別に相談することで、トラブルの早期発見へとつなげられるでしょう。また、虐待を受けていると疑わしい利用者をケアする場合には、複数の職員で対応するようにすることで、虐待を防ぐ効果が期待できます。
②風通しのよい職場環境を整える
他者へ無関心な職場環境の場合、トラブル行為を犯しやすいといえます。そのため、風通しのよい職場環境を整備することは、職員間での情報共有をしやすくなるだけでなく、不適切な行為を防止する観点からも有効といえるでしょう。
③十分な人員を確保する
人手不足で職員1人あたりの業務負荷が増えたことにより、トラブルに発展してしまうケースがあります。この場合、まずは施設(法人)として、十分な人員を確保することが求められます。
また、利用者への理解を深めるために、利用者の障害特性やニーズを把握し、理解するための研修や講習会なども定期的に開催できるとよいでしょう。利用者に対して、適切なケアや関わり方ができるようになることで、トラブル防止にも効果的といえます。
5.まとめ

障害者グループホームで発生しうるトラブルには、利用者起因、職員起因の2つがあります。働くうえでどのようなトラブルの発生が考えられるのか、その対処法や防止法をしっかりと理解しておくと、万が一の際にもスムーズな対応が可能です。
いずれにおいても、トラブルが発生してしまったら、事実確認をしっかりと行ったうえで、当事者や被害者への対処、あるいはケアなどを行います。加えて、健全な施設運営のためにも、再発防止に取り組みましょう。
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