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仕事・スキル 介護施設・職場 2025/09/08

#気になるあの介護施設

自立支援特化型のデイサービスを始めたきっかけは?介護保険サービスからの卒業を支援する「ポラリスデイサービスセンター」|気になるあの介護施設

取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー iv250902_thumb.jpg

兵庫県宝塚市を中心に展開する「ポラリスデイサービスセンター」は、自立支援に特化したデイサービスです。利用者さん一人ひとりに合わせた特別なリハビリプログラムの実施により、介護度の改善を目指しています。寝たきりの状態から、たった1年で介護保険からの卒業に至った事例も少なくありません。自立支援特化型のデイサービスを始めたきっかけや、今後の展望について、株式会社ポラリス代表取締役であり、医師の森剛士氏に話を聞いてみました。

1.自立支援特化型のデイサービス設立のきっかけ

ーー自立支援特化型のデイサービスを設立しようと思ったきっかけを教えてください。

「"在宅で過ごしている高齢者の重度化防止"を目的としたデイサービスを作りたい」と思ったことがきっかけです。私はもともと外科医として病院で働いていましたが、祖母が寝たきりになったことを契機として、リハビリテーション医に転身。その後、出身地である兵庫県宝塚市に、外来リハビリ専門クリニックと、通所リハビリセンターを開設しました。

通所リハビリ施設を立ち上げたばかりの頃は、急性期病院のリハビリ室で実施しているリハビリテーションのように、さまざまな機械を活用したり、理学療法士や作業療法士に入っていただいたりと、高齢者にとって効果が見込まれるものを片っ端から試していました。ところが、急性期や回復期を経て、ある程度症状が固定された患者さんに同じ方法を試しても劇的な変化はなく、別の方法を模索し始めます。

こうして様々な方法を探すうちに、国際医療福祉大学大学院教授の竹内孝仁先生と出会い、「竹内先生の考えを取り入れたデイサービスを作れば良いのではないか」との考えに至ります。当時、竹内先生は、特別養護老人ホームで寝たきりの状態の人を家に帰す「おむつ外し運動」という取り組みを実施しており、水・食事・排便・運動の4つの要素を重視した高齢者ケアを提唱していました。そこで、竹内先生の理論を取り入れた在宅向けの取り組みを始めようと考え、ポラリスデイサービスを開設しました。

2.開設・運営するうえで、難しかったこと

ーー自立支援特化型のデイサービスを開設・運営するうえで、難しかったことはありますか。また、運営を続けるうえでの工夫についても教えてください。

特に難しかったのは、利用者さんの自立支援と、経営とのバランスを取ることです。当施設では「介護保険からの卒業」を目指しているため、利用者さんが元気になればなるほど、利用者数は減少します。これは、私たちにとって喜ばしい成果である一方で、経営面においては収益の減少という課題を伴います。また、仮に自立支援を実現しながら収益を上げられたとしても、事故などのリスクを防げなければ本末転倒です。そのため、「自立支援力の向上」「収益性の確保」「リスクマネジメント」の3つの要素を同時に実現する必要があります。この三者のバランスを維持しながら運営を続けることこそが、最も困難であり、同時に創意工夫を重ねてきた点だと考えています。

こうした工夫のなかでも、特に効果的だったのがグループ展開です。これまでの経験から、デイサービスの最小運営単位としては、3拠点ほどが最も効果的であると感じています。たとえば、同一市内に3つの事業所があれば、突発的な人手不足が生じた際にも、他の事業所から応援を受けることが可能になります。このような柔軟な連携体制を築くため、当施設では3拠点を1ユニットとした運営体制を整え、それを基本として横展開を進めてきました。効率性と安定性を両立させるこのグループ展開は、運営上の大きな支えとなっています。

目標達成のためのモチベーション向上のため、スタッフのサポートのもと出かける「外出企画」を実施することも

目標達成のためのモチベーション向上のため、スタッフのサポートのもと出かける「外出企画」を実施することも

3.スタッフの教育面での工夫

ーー施設で働くうえでは、自立支援に関する知識を身につける必要があるかと思います。スタッフの教育面での工夫についてお聞かせください。

当施設では、病院でのリハビリでは改善が見込めなかった利用者さんに対しても自立支援を行い、成果を上げています。だからこそ、支援は簡単ではなく、高い専門性と実践力が欠かせません。そのため、人材教育には特に力を入れています。

具体的には、新人研修を皮切りに、中間研修・主任研修・管理者研修といったキャリア段階ごとのプログラムを設け、段階的に必要なスキルを身につけられるような研修体制を整備。疾患別の対応・個別機能訓練・自立支援のスキルなど、現場でそのまま活かせる学びを重視しています。さらに、「目の前の利用者さんを絶対に元気にする」という覚悟を持ってリハビリに取り組んでもらうために、折に触れて理念教育を行うようにもしています。

4.現在施設で働いているスタッフには、どのような人が多い?

ーー現在施設で働いているスタッフには、どのような人が多いのでしょうか。やはり、自立支援に興味を持っている人が中心となっているのですか。

10年ほど前までは、「自立支援」という言葉自体がほとんど知られていませんでした。しかし、最近では、「自立支援といえばポラリス」と言っていただけるようになり、少しずつ認知が広がってきていると感じています。それに伴い、最近は「自立支援に携わりたい」という思いを持って、当施設に応募してくださる方も増えてきました。

介護の仕事は、多くの方から感謝されるやりがいのある仕事ですが、利用者さんの状態が徐々に悪化していく現実に、もどかしさを感じている介護職の方も少なくないようです。その点、自立支援では、目に見える回復や変化を実感できる機会が多くあります。例えば、「車椅子が不要になった」「介護度が改善した」といった変化を目の当たりにした時のスタッフは、本当にうれしそうです。ありがたいことに、当施設には10年以上継続して勤務しているスタッフも複数います。目の前の利用者さんが元気になり、ご家族やケアマネジャー、スタッフ全員が一緒に喜びを分かち合える瞬間こそが、この仕事の何よりのやりがいなのではないでしょうか。

5.今後の展望

ーー今後の展望をお聞かせください。

現在最も注力しているのは、世界一周クルーズにリハビリを取り入れた「ポラリス×クルーズ」です。これは、要介護・要支援状態で船に乗り、船旅を楽しみながら集中的なリハビリを行う自費のサービスです。また、旅行期間中の体調管理のため、船内で運動をする「ポラリス健康倶楽部」や、一人での寄港地の散策が難しい方に向けた、訪問介護のようなサービスも提供しています。現在、ポラリスのリハビリを取り入れているピースボートは、乗客の約7割が70歳以上だといいます。元気に自分らしく船旅を楽しんでいただくために、クルーズ船におけるサービス提供にも注力していく予定です。

さらに、2024年7月には『これならわかる〈スッキリ図解〉自立支援介護』を出版しました。現代の日本では少子高齢化が急速に進み、今後さらに社会保険費が増大することが社会課題となっています。どんどん需要が高まる自立支援を、今後も広めていくことができればと考えています。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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