音楽の効果で要介護5から2への改善も!軽音楽を取り入れたデイサービス「ミュージックケア KEION」|気になるあの介護施設
取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー埼玉県川越市に位置する「ミュージックケア KEION」は、その名の通り、軽音楽を取り入れたデイサービスです。利用者さんは来所後、三味線やギターの生演奏にあわせたラジオ体操や、各種楽器の演奏など、音楽をふんだんに活用したプログラムに取り組みます。デイサービスでの一日の流れや、音楽を活用するうえで心がけていることについて、株式会社OPENUP代表の上野拓氏に話を聞いてみました。
1.「ミュージックケア KEION」とは?
ーー「ミュージックケア KEION」の施設紹介をお願いいたします。
当施設は埼玉県川越市にあるデイサービスです。特徴は、軽音楽を取り入れていること。「利用者さんが自主的に行きたいと思える介護施設を作りたい」との思いから、2021年にオープンしました。施設内には電子ドラムやギター、ピアノ、ウクレレなどの多種多様な楽器を取り揃えているほか、防音スタジオも完備しており、利用者さんが主体的に音楽を楽しめる環境を整えています。なお、2025年現在は、要介護1〜2程度かつ、80代前後の方々が中心となって利用されています。また、1日の平均利用者数は約23人で、稼働率は89%ほどです。
ーーデイサービスでの一日の流れを教えてください。
来所後は、バイタルチェックを済ませた後、三味線やギター、ベースなどの生演奏にあわせてラジオ体操を行います。続いて、音楽療法士による発生練習とボイストレーニングを実施し、その流れでギターの伴奏にのせた合唱タイムへ。さらに、看護師であり三味線の名取でもある職員が演奏する三味線にあわせて、口腔体操を実施。合間には、季節の話題や豆知識を楽しむミニ雑学コーナーも設けています。
午前中のプログラムがひと段落した後は、昼食と自由時間です。食後は散歩に出かけたり、防音室でギターやウクレレなどの個人練習に取り組んだりと、皆さんそれぞれのスタイルでゆったりと過ごされています。14時からは、再びプログラムがスタート。利用者さんによる演奏にあわせて歌を楽しんだり、スクリーンに映した映像を見ながら、ハワイアンダンスや盆踊り、ジャズダンスなど、さまざまなスタイルで身体を動かします。そして、15時にはおやつを食べ、再び利用者さんによる演奏やカラオケを楽しみます。一日の締めくくりには、職員の生演奏にあわせて「蛍の光」を全員で合唱。その後、順次帰宅します。
2.利用者さんから特に人気のあるプログラム
ーー様々な取り組みのなかでも、利用者さんから特に人気のあるプログラムを教えてください。
スクリーンに映した映像を見ながら取り組む、ハワイアンダンスや盆踊り、ジャズダンスなどは特に人気があります。当施設ではリハビリのために特別な時間を確保することはなく、プログラムへの参加を通して無理なく身体を動かせるように工夫しています。例えば、ダイエット目的でスポーツクラブに通い始めても、続かない人が多いのと同様に、デイサービスでよく見られるリハビリも、辛く感じてしまう人は少なくありません。その点、盆踊りやハワイアンダンスであれば、「運動している」という意識があまりないまま、無理なく身体を動かすことができます。当施設の利用者さんは、このように散歩やダンスなどで一日中動き回っているので、一般的なリハビリを行った場合よりも、活動量が多いかもしれません。ほかにも、私自身がギターを弾き、その演奏にあわせて歌う「生演奏のカラオケ」も多くの人気を集めています。
元々はレストランだった建物を改装しており、介護施設とは思えないほどおしゃれ
ーー自由に演奏できる時間もあるとのことですが、施設内には何種類ほどの楽器を用意しているのでしょうか。
2025年現在は、ギター・アンプ・ミキサー・電子ドラム・キーボード・ピアノ・ウクレレ・三味線・琴・篠笛・ボンゴ(太鼓)など、さまざまな楽器を取り揃えています。もともと私が所有していたギターやアンプ・ミキサーなどに加え、知人や地域の方々から寄付していただいた楽器もあり、少しずつ充実してきました。なかでも琴や三味線は、かつて弾いていたことを思い出し、「懐かしい」と手に取られる方も。ご自身で琴の爪を購入し、毎回練習に励んでいる利用者さんもいらっしゃいます。また、施設内には演奏や歌声を記録できるレコーディング機材も揃えており、音楽の楽しみをさらに広げられる環境を整えています。
3.皆さんに演奏や音楽を楽しんでいただくために、工夫していること
ーー利用者さんのなかには、演奏の経験がそこまで多くない方もいらっしゃると思います。皆さんに演奏や音楽を楽しんでいただくために、工夫していることはありますか。
楽器の演奏ができない方も多いため、当施設では、利用者さんの多くが好きな歌を歌ったり、ダンスをしたりして、思い思いに音楽を楽しんでいます。私たちが音楽を活用するうえで何よりも大切にしているのは、「心から音楽を楽しむこと」です。演奏の技術や経験は関係なく、一人ひとりに合った形で音楽に触れていただくことが理想です。そのため、「カラオケで好きな歌を歌う」「楽器に触れてみる」など、利用者さんが自分らしく音楽と関われるようサポートしています。
また、演奏に積極的に取り組む方に対しては、その方の個性を尊重することを特に大切にしています。当施設は、楽譜通りの正確な演奏を求める場所ではなく、自由に音楽を楽しむ場です。誰かと競い合うのではなく、自分だけの音をのびのびと奏でることで、周囲の方が自然と笑顔になったり、思わず歌を口ずさんだりすることもあります。私たちは、「このような音楽を通じた喜びの瞬間こそが、利用者さんの生きがいや自信につながっている」と考え、全ての方が何かしらの形で音楽に触れられるように工夫しています。
4.利用者さんやご家族からの反応
ーー「ミュージックケア KEION」について、利用者さんやご家族からの反応はいかがですか。
利用者さんからよくいただくのが、「この施設に通い始めてから介護度が改善された」という声です。当施設では、日々の活動のなかで歌を歌う時間が特に多く、そのことが嚥下機能の改善をはじめとした、さまざまな良い効果を生み出しているようです。実際に、最初は食事をうまく飲み込めなかった方が、少しずつ普通食を食べられるようになるなど、目に見える変化も生じています。なかには、胃ろうを閉鎖し、要介護5から要介護2に介護度が改善した方もいらっしゃいました。ほかにも、「とにかく通うのが楽しいので、通所日数を増やしたい」「ほかのデイサービスは続かなかったけれど、ここなら楽しく通える」といった声も数多く寄せられており、なかには週に5日利用されている方もいらっしゃいます。これからも、音楽の力を活かしながら、日々の楽しみと張り合いを感じられる場を提供できればと考えています。
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