「利用者さん専用の畑」があるデイサービスはどんなところ?農園芸や大工仕事に取り組める「デイサービスセンター 晴耕雨読舎」|気になるあの介護施設
取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー大阪府高槻市に位置する「デイサービスセンター 晴耕雨読舎」は、自然に囲まれた環境のなかで、農園芸に取り組めるデイサービスです。施設の敷地内には約500坪の畑スペースや花壇があり、利用者さんは来所後、自分の好きな野菜や花を育てたり、大工仕事や創作活動をしたりして過ごします。デイサービスでの一日の流れや、園芸療法を続けるうえで心がけていることなどについて、NPO法人たかつき 代表理事の石神洋一氏に話を聞いてみました。
ーー「デイサービスセンター 晴耕雨読舎」の施設紹介をお願いいたします。
大阪府高槻市にあるデイサービスです。園芸療法を取り入れていることが特徴で、建物に隣接する約500坪の農地や花壇では、野菜作りやガーデニング、土いじりなどを楽しめます。また、農園芸のほかにも大工仕事や室内での創作活動など、利用者さんの「生きがい」に焦点を当てた、多彩なサービスを提供しています。なお、施設の定員は22名で、2025年現在の平均介護度は約1.5です。要介護1〜2の方が中心ですが、要介護3〜5の方も3割ほど通われています。
ーーデイサービスでの一日の流れを教えてください。
来所後は、まず手洗い・うがい・バイタルチェックを済ませた後、午前中のプログラムがスタートします。ただし、"プログラム"といっても、集団でのレクリエーションは実施していません。事前にこちらで用意したメニューか、利用者さん自身のやりたいことに取り組んでいただく仕組みです。園芸療法に注力している当施設では、畝3m分またはレイズドベッド(立ち上がり式花壇)1つを「〇〇さん専用の畑」として確保しており、好きな野菜を栽培できます。午前中は、まずご自身の畑を見に行く方もいれば、季節や趣味に合わせた室内の活動を楽しむ方もいらっしゃいます。
昼食を取った後は、14時頃から午後の活動がスタート。引き続き畑に出て作業をする方や、大工仕事を楽しむ方、室内で創作活動に取り組む方など、それぞれがご自身のペースで過ごします。そして、16時になったら、体操をしたり、予定表にその日行った活動を書き込んだりして、16時45分頃から順次帰宅します。

施設周辺は自然が豊かで、建物の中にいても川のせせらぎが聞こえるほど
ーー主に「農園芸や大工仕事、室内での創作活動」などを行っているとのことですが、具体的にはどのような作業が多いのでしょうか。
まず農園芸では、先ほども少しご紹介したとおり、畝3mまたは約1m幅のレイズドベッド(立ち上がり式花壇)を「〇〇さんの畑」として確保しており、そこで育てたい野菜を自由に栽培し、持ち帰っていただいています。夏はトウモロコシ・ナス・ゴーヤ・ミニトマト・キュウリなど。冬は大根・白菜・春菊・カブなどを育てます。土づくりをする→植える→育てる→収穫するという基本的なサイクルで、一年を通じて野菜作りを楽しめることが特徴です。なお、この「自分の畑」は希望者のみの取り組みであり、専用の畑を持っていない利用者さんもいらっしゃいます。
ただ、こうした自分の畑を持っていない利用者さんも、共同の畑を耕したり、花を植えたりして園芸活動を楽しんでいます。共同の畑で植えた野菜は、皆さんと一緒に収穫した後、お昼ご飯の味噌汁の具材として活用することも。また、お花は、チューリップやセンニチコウ、ヒャクニチソウなど切花として楽しめるものを中心に植え、咲いた後は利用者さんに持って帰っていただいたり、施設内に飾ったりしています。
次に、大工仕事では、レイズドベッドの制作や修繕、畑に設置するベンチ作り、ペンキ塗り、材木のやすりがけなど、幅広い作業に取り組んでいただいています。これらの作業は、特に男性の利用者さんからの人気が高い傾向にありますね。単に「自分が楽しいから」だけでなく、「誰かの役に立ちたい」「他の人が喜んでくれるとうれしい」といった気持ちで参加される方が多いようです。
このほか、室内の創作活動としては、育てたお花を使ったドライフラワーや押し花づくり、お正月の飾り作りなどの季節の活動を行っています。当施設には、もともと自然と触れ合うことや、土いじりが好きな方が多く通われています。そのため、自然を活かした多彩なプログラムを提供することで、利用者さんが生きがいを感じられる時間を大切にしています。

共同の花壇で育てたお花を摘む利用者さん
ーー利用者さんに多種多様なプログラムに取り組んでいただくうえで、心がけていることを教えてください。
最も大切にしているのは、「利用者さんが本当にやりたいこと」に取り組んでいただくことです。そのために、利用者さんの気持ちや希望を引き出すことを常に心がけています。デイサービスでは7時間近く施設に滞在していただくため、スタッフが一方的にプログラムを提供するだけでは、利用者さんが疲れてしまったり、活動の継続が難しくなったりすることもあります。だからこそ、興味や意欲につながることを一緒に見つけ、そうした活動に取り組んでいただくことを重視しています。
とはいえ、利用者さんから「これをやりたい」といった明確な希望が出てくることは、それほど多くはありません。そこで当施設では、これまでの経歴や趣味、性格などをスタッフが把握しつつ、その方が喜びそうなプログラムを提案するようにしています。集団でのレクではなく、いくつかの活動の中から選択するスタイルを採用しているのも、利用者さんの主体性を尊重するためです。少しでも「生きていて良かった」と感じられる時間を過ごせるよう、やりがいや生きがいにつながる活動を提供することを意識しています。
ーーでは、利用者さんからの要望で始まった活動もあるのでしょうか。
利用者さんの声から生まれた活動のなかで、最も大きなものが味噌作りです。当施設では、毎日昼食にお味噌汁を提供しており、年間でおよそ180kgもの味噌を使います。そのため、農閑期にあたる2月頃に、毎年皆さんで味噌作りを行うようになりました。大豆を蒸して潰し、麹と塩を混ぜ合わせ、樽に仕込むという方法で、2週間ほどかけて作業します。
この取り組みが始まったのは、20年ほど前のことでした。「昔は家で味噌を作っていたけれど、ここでもやれないだろうか」と、ある利用者さんから提案があったのです。そこで、試しに5kgほどを数人で仕込みました。その味噌を半年後に食べてみると、とても美味しく、作業自体も楽しかったため、翌年からはもう少し量を増やすことに。それ以来、現在まで活動が続いています。味噌作りの時間には、「懐かしい」「昔は自宅で作っていた」といった思い出話も飛び交い、利用者同士の交流も自然と生まれます。現在では、「2月=味噌作り」といえるほどの恒例行事になり、多くの利用者さんが参加するようになりました。
ーー「デイサービスセンター 晴耕雨読舎」について、利用者さんやご家族からの反応はいかがですか。
皆さん、それぞれの活動にとても前向きに参加してくださっていると感じています。最近、特に印象的だったのは、週3〜4回ほど通われている、90代の利用者Aさんに関するエピソードです。その方はご自分の畑でキュウリを育てていて、毎回2〜3本ずつ収穫されるため、かなりの量になっています。こうして毎回キュウリを持ち帰り続けたある日、Aさんの息子さんから「母のキュウリで、こんな料理を作りました」と、写真付きのレシピ集をいただきました。そのレシピには、漬物などの一般的な料理だけでなく、味噌をつけて焼いたり、すりおろしてご飯にかけたりといった珍しい調理法も数多くあり、スタッフも参考にして自宅で試すほどでした。利用者さんの活動が家庭の食卓を豊かにし、ご家族との交流にもつながっていることを実感できた、うれしい出来事だったと感じています。
また、利用者Bさんは、当施設での野菜作りをきっかけに、ご自宅でも家庭菜園を再開したと伺いました。Bさんはもともと家庭菜園やガーデニングが好きだったものの、病気の発症や認知症の影響で長年取り組めていなかったそうです。ところが、デイサービスでの経験を通じて、再び野菜作りに挑戦することに。ご家族にも手伝っていただきながら、ナスやキュウリ、大根などを植えているようです。施設で得た知識や経験を自宅に持ち帰り、ご家族と一緒に活動されている姿に、胸が熱くなりました。
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