全ての利用者さんに園芸療法を楽しんでもらうための工夫は?約500坪の畑や花壇がある「デイサービスセンター 晴耕雨読舎」|気になるあの介護施設
取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー大阪府高槻市に位置する「デイサービスセンター 晴耕雨読舎」は、自然に囲まれた環境のなかで、農園芸に取り組めるデイサービスです。施設の敷地内には約500坪の畑スペースや花壇があり、利用者さんは来所後、自分の好きな野菜や花を育てたり、大工仕事や創作活動をしたりして過ごします。デイサービス設立のきっかけや、園芸療法の継続にあたって難しかったことなどについて、NPO法人たかつき 代表理事の石神洋一氏に話を聞いてみました。
ーー園芸療法を取り入れたデイサービスを設立しようと思ったきっかけを教えてください。
「要介護状態になっても、農園芸を楽しんでいただきたい」と思ったことが、設立の主なきっかけです。当NPO法人は2001年に設立し、介護保険制度の開始とほぼ同時期に「高齢者街かどデイハウス」という介護予防施設を始めました。同施設は簡易的なデイサービスのような形で、一日10人ほどの方にご利用いただき、皆さんで畑作業をしたり、お花を植えたりしていました。
当初の運営は順調でしたが、継続するうちにある課題が浮上します。それは、利用者さんの介護度が進み、一般のデイサービスに移ると、農園芸を継続できないことです。デイサービスで提供されるのは、室内での集団的なサービスが中心のため、元利用者さんからは「今まで頑張ってきたのに、新しい施設では園芸を続けられなくてとても残念」といった声も聞かれるようになりました。
そうした状況を踏まえ、「要介護になっても園芸療法を継続できる場を作りたい」と考え、18年前に当施設の立ち上げに至りました。当初は、「要介護の方がどこまで園芸作業に取り組めるのか」「リスクはないのか」など不安もありましたが、実際に取り組んでみると、利用者さんご自身が自分のできることを理解し、意欲的に活動される姿が多々見受けられました。また、利用者さんと園芸活動に取り組むなかで、栽培時のトラブルの対処法など、こちらが教わることも多く、園芸療法の面白さを改めて実感するようにもなったのです。
ーーもともと、園芸療法を取り入れた施設の設立を検討していたのでしょうか。
そうですね。私はかねてより、環境問題に強い関心があり、何か環境に貢献できることに取り組みたいと考えていました。と同時に、法人設立前に園芸療法と出会い「この取り組みを事業に活かせないだろうか」と思うようになったのです。環境問題へのアプローチと、園芸療法をうまく組み合わせることで、より有意義な事業になるのではと考えました。そこで、園芸療法を取り入れており、かつ環境に配慮した介護施設の運営を思い至ったのです。とはいえ、園芸療法については知識がなかったため、開設してから1年間は、専門家の方にお話を伺うなどして知識を深めました。

畑での作業が難しい利用者さんも、レイズドベッド(立ち上がり式花壇)で自分の好きな野菜を育てられる
ーー園芸療法を取り入れた施設の運営を続けるにあたり、難しかったことはありますか。
リスク管理について考えることが多いですが、ここ数年で最も悩んだのは、「毒性のある植物をどのように扱うか」という点です。利用者さんのなかには、本来食べ物ではないものを口にしてしまう「異食」の傾向がある方もいらっしゃいます。以前、実際にある利用者さんが球根を食べようとして、施設内で話し合いの機会が持たれたこともありました。異食傾向があった利用者のAさんは、外に出るのがとてもお好きで、土を掘ったり、石を集めたりすることを楽しんでいました。ただ、その際に、誤って球根を口にしてしまいそうになることがあったのです。
特に球根植物には、強い毒性を持つものが多く存在します。例えば、スイセンやスズランは、誤って食べると食中毒を起こすだけでなく、大量摂取すると命に関わることもあります。当施設には以前からスイセンが植えられていたのですが、専門家に相談したり、施設内で何度も話し合いを重ねたりして、スイセンの扱いを検討することになりました。そして最終的には、安全を最優先し、全てを利用者さんの手の届かない屋上へ移植することにしたのです。
このように、「リスクのあるものをどこまで排除するべきか」という点は非常に悩ましい問題です。危険を避けるために制限を増やすことは簡単ですが、それでは利用者さんの活動の幅や楽しみをどんどん狭めてしまいます。例えば、ハサミや包丁を扱うことにも、ある程度のリスクはつきものです。園芸療法の魅力は、自然に触れ、季節を感じながら活動できるところにあります。だからこそ、危険をゼロにするのではなく、許容範囲を考え、バランスを取ることが大切だと感じています。
ーー活動を継続するうえでのリスクについては、具体的にどのように対処されているのでしょうか。
私は、福祉の現場や介護の仕事の経験がないままこの事業を始めました。そのため、最初は「どこまで利用者さんにお任せして良いのか」「どの程度がリスクになるのか」といった感覚が掴みづらい部分があったと感じています。介護業界の一般的な常識に従うと、多くの取り組みは「危険そうなのでやめておきましょう」といった判断になりがちです。もちろん安全は大切ですが、過度なリスク回避は、利用者さんができることや、楽しみまで制限してしまうことになります。そのため、私たちは介護業界の常識に捉われず、社会の常識に従うという考えを大切にしています。「一般社会で当たり前に行われていることは、できる限り施設内でも実現したい」という考えです。そのためには、リスクをゼロにするのではなく、どうやって上手にコントロールするかを常に考えています。
具体的には、スタッフ同士で日々情報を共有しながら、利用者さん一人ひとりの状態を丁寧に見極めています。その際、「この方であれば、この作業は安全にできそう」「こちらの作業は少し難しいかもしれない」といった判断を細かく積み重ねることが重要です。園芸療法に限らず、さまざまな活動にチャレンジするためには、この見極めが欠かせません。利用者さんの可能性を広げるためにも、最終的な判断は私が代表者として責任を取り、「危ないかもしれないけれど、工夫すればできること」であれば、まずはやってみよう、という姿勢で取り組んでいます。
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