0〜100歳が集結!複合福祉施設「深川えんみち」に位置する「深川愛の園デイサービスセンター」に注目|気になるあの介護施設
取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー東京都江東区にある「深川愛の園デイサービスセンター」は、2024年5月に開設された、複合型の福祉施設「深川えんみち」の1階に位置するデイサービスです。建物内には、高齢者デイサービス・学童保育クラブ・子育てひろばが揃うほか、私設図書館やキッチンスペースなどもあり、幅広い世代の人が集まる憩いの場にもなっています。施設の概要や、多世代交流を行ううえで心がけていることなどについて、社会福祉法人 聖救主福祉会の小久保 佳彦氏と、岩﨑 美恵子氏に話を聞いてみました。
ーー「深川愛の園デイサービスセンター」の施設紹介をお願いいたします。
岩﨑:当施設は、複合型福祉施設「深川えんみち」の中にあるデイサービスです。もともとは別の場所にありましたが、2024年5月に移転し現在の形となりました。一般型のデイサービスと認知症対応型デイサービスの2つのクラスがあり、それぞれの滞在時間は前者が5時間、後者が7時間です。定員は合計35名(一般型23名/認知症型12名)で、いずれも要介護2前後の方が中心となって通われています。
特徴は大きく2つあり、1つ目は多世代交流の機会が多いことです。複合型福祉施設の中に位置しているため、子育てひろばや学童保育クラブに通うお子さんから地域の方々などと、日常的な交流が行われています。2つ目は、生活の中での動作も機能訓練の一つとして捉え、運動以外にも積極的に身体を動かしていただいていることです。例えば、昼食の際は、お米を研ぐ・テーブルを拭く・お茶を配る・料理の盛り付けをするなどの作業を分担。できる範囲で利用者さんに協力してもらい、自然に体を動かせるよう工夫しています。
ーー多世代交流の機会も多いとのことですが、そもそも複合型福祉施設「深川えんみち」は、どのような場所なのでしょうか。
小久保 :深川えんみちは、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い人が集う2階建ての建物です。当施設と、民間学童の「ライト学童保育クラブ」、親子が自由に遊べる江東区委託事業の「子育てひろば ころころ」が一つの建物に集まっています。地域の方々がゆるやかにつながることで、"誰もが安心できる居場所になること"を目指しています。
建物の構造についてご紹介すると、1階には、主にデイサービスで使っている「わいわいひろば」「ゆったりひろば」「まちキッチン」があります。また、一箱本棚オーナー制度を取り入れた私設図書館「エンミチ文庫」や、アースオーブン(土をベースとしたオーブン)&かまどがある「かまどひろば」も設けられています。そして2階には、主に学童保育クラブで使用している「うんどうひろば」「こどもひろば」が。2階へは1階の中央にある広い廊下を通らないと移動できないため、その際に自然と、デイサービスの利用者さんと子ども達との交流が生まれています。

エンミチ文庫をきっかけに、利用者さんと地域の人々との交流が生まれることも
ーー1階の「まちキッチン・ゆったりひろば・わいわいひろば」について、デイサービスでのそれぞれの活用方法を教えてください。
岩﨑:まず「まちキッチン」は、認知症対応型クラスの利用者さんが主に使っているスペースです。家庭科室のようなシンクが付いたテーブルがあり、車椅子の方も活動に参加しやすいように工夫されています。なお、同スペースのトイレにはベビーベッドが備え付けられており、赤ちゃんのおむつ替えにも使用可能。火曜・水曜・木曜の午前中には、2階の「子育てひろば ころころ」に赤ちゃんが集まるため、子どもを連れた保護者の方がトイレに立ち寄ることで、利用者さんと赤ちゃんが自然に触れ合えるようになっています。
続いて「ゆったりひろば」は、入浴後にゆっくりとお過ごしいただくスペースとして活用しています。特に、比較的若い男性の利用者さんに人気がありますね。周囲を壁で囲われた洞窟のようなソファーも設置されており、「なんだか落ち着く」といった声も寄せられています。また、座敷は布団を敷いて雑魚寝をしたり、お昼寝をしたりと、ゆったりくつろげるスペースとなっています。ちなみに、夕方に利用者さんが帰宅された後は、学童保育クラブの英会話の習い事スペースとしても使用されています。
最後に、「わいわいひろば」は、一般型クラスの方々が主に過ごす場所です。基本的には、レクリエーションなどのプログラム活動を行っており、名前の通り、ワイワイとにぎやかに過ごしています。
ーー日常的な交流とは別に、子ども達と利用者さんの交流の機会を設けることもあるのでしょうか。
岩﨑:年間を通して、様々なイベントの機会を設けています。具体的には、ライト学童とは月に一回「運営会議」を行っており、お互いのスケジュールを確認し合いながら、一緒にできるレクリエーションを調整しています。例えば、9月は敬老の日に合わせて、子ども達がデイサービスを訪れ、利用者さんの両腕を2人1組でマッサージする企画を立てました。その際、利用者の皆さんは本当に素敵な表情をされていて、「この前のあれ、すごく嬉しかった」と次の利用日にも話題に出るほどでした。また、こちらは日常的な交流にはなりますが、水曜日は学校の授業が早く終わるため、利用者さんが早く学童に来た子ども達の宿題を見たり、音読を聞いてあげたりといったことも行っています。
ーー子ども達との交流によって実感している効果はありますか。
岩﨑:子ども達が、学校から学童に帰ってきた際の「ただいま」「おかえり」というやり取りは、最初は言葉だけのキャッチボールでした。しかし、そうした言葉のやり取りが、だんだんとハイタッチや握手になっていって。今では、男の子と利用者さんが、握手のついでに手の引っ張り合いをするようにもなりました。利用者さんは毎回「今日は負けてあげたのよ」などと嬉しそうに話していて、そうしたやり取りが、自然と日常の中に溶け込んできているなと感じています。
また、「子ども達に会いたい」という声が利用者さんから上がったり、子ども達からも「あのおじいちゃん、今日は来てないね」と気に掛ける声が聞こえたりと、お互いを思いやる関係が育っています。そうした小さな変化や優しいやり取りを見ていると、交流の効果を実感しますね。なお、子どもたちとの交流の際には、安全面にも十分配慮しながら、無理のない形で行うことを心がけています。
ーー地域の方々との交流はいかがでしょうか。
岩﨑:地域の方々とは、主に「エンミチ文庫」をきっかけとした交流が多いように感じています。先ほども少しご紹介した通り、エンミチ文庫は、一箱本棚オーナー制度の私設図書館です。本を置きたい人は、月額のオーナー料を払うことで、自分だけの本棚を持つことができます。また、オーナーさんは交代でお店番をすることにもなっています。この「エンミチ文庫」はデイサービスで使っている「まちキッチン」に面しているため、自然とオーナーさんと利用者さんが会話をする機会が増えました。なかには、傾聴ボランティアの勉強を始め、お昼休みや空いた時間に利用者さんのお話を聞いてくださるオーナーさんもいらっしゃるほどです。
「エンミチ文庫」はまだ知名度が低いものの、「とてもいい取り組みですね」と言って貸し出しカードを作ってくださる方や、「ちょっと本を読ませてもらっていいですか」と立ち寄ってくださる方も増え、少しずつ地域の方にも広がってきているようです。ちなみに、図書館のオーナーには、居宅介護支援事業所のケアマネジャーや、以前当施設と同じ建物内にあった保育園の先生方もいらっしゃり、本当にさまざまな方が関わってくださっています。こうしたつながりが広がっていくことも、交流の大きな効果だと感じています。
ーー施設の移転にあたり、利用者さんからの反応はいかがですか。
岩﨑:最初は「あれがしたい」「ここに行きたい」といったことをなかなか言葉にできない利用者さんも多く、こちらから「今日はこれをしましょう」と提案する形が中心でした。しかし、徐々に「今日は外出しますが、どこに行きたいですか?」といったように、利用者さんの意見を取り入れるようにしていったところ、少しずつ意見が出るようになってきたのです。現在では、そうした声をできるだけプログラムに反映させるようにしています。
こうした変化は利用者さんだけでなく、職員にも見られるように感じています。環境が変わったことで、意見が活発に出るようになったのです。その一例が、期日前投票です。深川えんみちから徒歩1分の場所には、区役所の出張所があり、選挙時には期日前投票ができます。そのことを知った職員が「せっかくだから利用者さんと一緒に行ってみよう」と提案し、実際に何度か皆で期日前投票に足を運びました。歩いて移動することは機能訓練にもなりますし、社会の一員としての重要な行動を取り戻せることは、利用者さんの心理面においても非常に良い影響を与えるのではないかと考えています。実際に、「もう行けないと思っていたけれど、久しぶりに投票できてうれしかった」と話す方もいらっしゃいました。こうした活動ができるのも、この場所に移ってきたからこそだと感じています。
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