多世代による「ごちゃまぜ」空間を実現!施設らしさを払拭した「深川愛の園デイサービスセンター」|気になるあの介護施設
取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー東京都江東区にある「深川愛の園デイサービスセンター」は、2024年5月に開設された、複合型の福祉施設「深川えんみち」の1階に位置するデイサービスです。建物内には、高齢者デイサービス・学童保育クラブ・子育てひろばが揃うほか、私設図書館やキッチンスペースなどもあり、幅広い世代の人が集まる憩いの場にもなっています。複合型福祉施設の中に位置することになったきっかけや、今後の展望などについて、社会福祉法人 聖救主福祉会の小久保 佳彦氏と、岩﨑 美恵子氏に話を聞いてみました。
ーーなぜ高齢者デイサービスと子育てひろば、学童保育クラブが同じ建物の中に位置することになったのでしょうか。背景を教えてください。
小久保 :当法人が運営している保育園の移転話がきっかけです。現在の深川えんみちから歩いて5分ほどの場所に、「まこと地域総合センター」という建物があります。そこでは、保育園のほか、移転前の当デイサービスや学童など、子どもから高齢者までを対象にした複数の事業が、同じ建物の中で一体的に行われていました。ところが、保育園フロアの老朽化が進んだため、リニューアルを検討することになりました。その際、仮園舎の候補として挙がったのが、現在の深川えんみちの建物です。ただし、残念ながらこの建物は、保育園が移転するには少々面積が足りず、「この場所を他の用途で活かせないか」という話になり、その際にまず浮かんだのがデイサービスだったのです。
ーーでは、以前から移転を検討していたのですね。
小久保 :そうですね。もともとデイサービスは建物の3階にあり、利用者さんにも職員にも建物内の移動の負担が大きい環境でした。そのため、「いつか1階に移りたい」と考えていたのです。最初は、建物全てをデイサービスで使用したいと考えていましたが、この建物にはエレベーターがなく、2階は高齢者が通う施設としては使えないことが分かりました。そこで、2階は学童として使用することに。前身となる「まこと地域総合センター」は、子どもからお年寄りまでを支えることを方針に進めてきたため、これは最適な形でした。
さらに、保育園が行っていた区の委託事業である「子育てひろば」も、スペースが空いている時間帯を活用して、同じ建物内で実施できるようにしました。こうして、平日は日中がデイサービス、夕方からは学童クラブ、そして、その間の時間に子育てひろばといったように、"タイムシェアによって3つの事業が共存する複合施設"として運営することになったのです。

深川えんみち内では、多世代交流の様子が日常的に見られる
ーー前身となる「まこと地域総合センター」でも保育園や学童が同じ建物に入っていたとのことですが、以前から子ども達と利用者さんとの交流は行っていたのでしょうか。
小久保 :「まこと地域総合センター」では、それぞれの入口が別々になっており、現在の深川えんみちのように、建物の利用者さんが同じ入口を使うことはほぼありませんでした。また、活動するフロアも異なっていたため、子ども達と利用者さんが自然に触れ合う機会はほとんどなかったのです。現在のように、デイサービスのフロアを通って学童に通ったり、日常的に交流の機会を設けたりすることで、子ども達と利用者さんの距離はぐっと縮まったように感じています。
ーー移転後に感じている、運営上の課題はありますか。
岩﨑:やはり、路面に面した1階のスペースで運営する点は、非常に良い面がある一方で、安全面の課題もありました。移転前のデイサービスは3階にあり、特定のボタンを押さないとエレベーターが動かない、緊急時は扉を施錠してフロアからの出入りを制限できるなど、安全管理がしっかりできる環境でした。それが1階に移動したことで、「安全対策を取らなくて大丈夫なのか」といった声を、ケアマネジャーの方々を中心にいただくようになったのです。
もちろん、施設の計画段階で安全面についてはしっかりと検討していましたが、現在はあえて過度な対策は取らず、地域に開かれた施設として、「人の目による見守り」が機能する環境を大切にしています。もしふらっと外に出ていく方がいたとしても、周囲の方々が「デイサービスの利用者さんかな?」と気付いて声をかけてもらえるような関係づくりを意識していますね。
ーー実際に運営するうえでは、「人の目による見守り」はなかなか難しそうな印象があります。具体的には、安全面ではどのような対策を取っているのでしょうか。
岩﨑:実は昨年、デイサービスの利用初日に、途中でご自宅へ帰ってしまった方がいらっしゃいました。その出来事をきっかけに、深川えんみちのスタッフ全体で、改めて安全対策を見直すことになったのです。その際、「鍵をかけよう」という話も出ましたが、時間帯や状況によっては職員の動きが制限されてしまうこともあるため、現在は必要な場合のみ施錠する方針にしています。
また、鍵に頼るのではなく、スタッフ一人ひとりの意識向上と連携を基本としています。基本的には、スタッフが席を外す時は必ず声を掛け合い、視野を広く保ちながらお互いに見守りを引き継ぐようにしています。そうしたスタッフ同士の情報共有を徹底することで、それ以降は同様の事態は発生していません。帰宅してしまった利用者さんも、初日は緊張や不安があったようで、その後は落ち着いて過ごされています。
さらに、認知症の方の中には、「帰りたい」と外に出たがる方もいらっしゃいます。そのような場合も無理に制止するのではなく、スタッフが一緒に外に出て建物の周りを歩くなどすることで、気持ちを切り替えられるように工夫しています。
ーーその他、運営面で心掛けていることがあれば教えてください。
岩﨑:やはり、スタッフ自身が楽しんで仕事をしていないと、その雰囲気は利用者さんにも伝わってしまうと考えています。そのため、レクリエーションや日々の活動のなかで、スタッフ自身も「楽しめること」を大切にしています。具体的には、スタッフの得意分野や、好きなことをプログラムに反映しています。例えば、お酒が好きなスタッフが、お酒にまつわる話を皆の前でして盛り上がることもあれば、外出が好きなスタッフが積極的に外出レクを企画することも。そうした一人ひとりの「好き」や「得意」が利用者さんの楽しみにもつながっています。また、それぞれの個性を尊重し合える環境づくりが、結果的にスタッフの成長にもつながっていると感じています。
ーー今後の展望をお聞かせください。
岩﨑:今後の予定としては、昨年に続いて2回目となるバスハイクを企画しています。学童の子どもたちとデイサービスの利用者さんが一緒に出かける日帰りのバス旅行を10月に予定していて、マイクロバスを2台借りて行う予定です。希望制の自費参加にはなりますが、多くの方が楽しみにされています。当日はお一人で参加される方もいれば、ご家族と一緒に参加される方もいらっしゃり、デイサービスと合わせて、合計で40人ほどが参加予定です。
昨年はいちご狩りに出かけたところ、子ども達と利用者さんだけでなく、スタッフ同士の距離もぐっと縮まり、関係づくりの面でも良い機会になりました。このバスハイクは、今後も年に一度の恒例行事にしていきたいと考えています。また、イベントだけでなく、日常においても「子どもが高齢者と交流しているのが当たり前」という空気を、もっと根付かせていきたいと考えています。
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