Produce by マイナビ介護職 マイナビ介護職

介護の未来ラボ -根を張って未来へ伸びる-

仕事・スキル 介護施設・職場 2026/02/28

#インタビュー#気になるあの介護施設

外出を「特別なイベント」にしないためのスタッフ教育とは?旅行に行ける身体をつくる「リハビリスタジオてぃーだ真砂」|気になるあの介護施設

取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー iv260206_a.jpg

千葉県千葉市に位置する「リハビリスタジオてぃーだ真砂」は、旅行に行ける身体づくりを目標としたデイサービスです。同施設では、観光バスの乗り降りや階段昇降など、旅行での動作を取り入れた「旅行リハ(リョコリハ?)」を実施。保険外サービスとして年2回の旅行企画も実施するなど、リハビリの成果発表の場としても旅行を活用しています。旅行に行ける身体づくりをコンセプトに掲げる理由や、スタッフの教育面でのポイントなどについて、施設長の布津優子氏に話を聞いてみました。

ーーーー「旅行に行けるカラダをつくる」をコンセプトとした背景を教えてください。

大きく2つの理由があります。1つは、「頑張って運動しても、もう年齢的に出かけることはない」「若い頃はいろいろな所に行ったけれど、今は無理だよね」といった言葉を、当施設の創業者が耳にしたことです。やはり、足腰が弱ると長距離の移動は難しくなるため、旅行を諦めがちになってしまいます。そうした方にも、旅行を楽しんで欲しいとの思いから、旅行に行ける身体づくりを目標に掲げた施設運営を行っています。

もう1つは、旅行という行為そのものが、生活に必要な機能の集大成だと考えているからです。旅行をするには、公共交通機関や車を利用して移動するだけでなく、食事や入浴、買い物など様々な行動を取ります。また、団体旅行であれば、周囲の方への気遣いや交流も生まれます。これらはすべて、身体機能・認知機能・社会生活機能が組み合わさった、日常生活の延長線上にある行動です。そのため、「家の中で生活できること」だけを目標にするよりも、「旅行に行ける状態」を目標にした方が、結果的に日常生活の質を幅広く維持できると考えています。旅行に行ける力があれば、普段の生活も自然と保たれるという発想です。

また、旅行を目標にすることで、前向きな循環が生まれることも期待しています。旅行に向けてリハビリを行い、体調管理や準備を重ね、実際に旅行に行く。帰ってきてからその体験を家族や友人に話し、「次はどこに行こうか」「また行くために運動を頑張ろう」と次の目標が生まれる。そうしたサイクルが続くことが、コンセプトの大きな狙いです。さらに、旅行には「役割を取り戻す」という側面もあると考えています。例えば、家族や孫のためにお土産を選ぶ、誰かの好きなものを思い浮かべて買って帰るといった行為は、「自分が誰かのためにできること」です。旅行を通じて、そうした役割を再び感じられることも、大きな意味があるのではないでしょうか。

屋外の不安定な環境を想定した訓練も多数実施している

屋外の不安定な環境を想定した訓練も多数実施している

ーーとはいえ、様々な身体状況の方が集まり旅行をするのは、簡単ではなさそうに思えます。施設での旅行の実施時、サポート面で意識していることはありますか。

一番大切にしているのは、事前の準備とシミュレーションです。全員が下見に行けるわけではないため、基本的には担当者が代表して下見を行い、その内容をもとに資料を作成。注意点や動線などは写真付きで共有し、事前にレクチャーを行います。そのうえで、当日の動きを全員で具体的にシミュレーションしています。また、必ずリーダーを一人決め、全体を見る役割(リーダー)と、個別に介助を担当する役割を明確に分けています。誰がどの利用者様をサポートするのかを事前に決めておくことで、現地で慌てずに対応できるようにするためです。

さらに、持ち物の管理についても細かく確認するようにしています。以前、ある利用者様が、サービスエリアのトイレの洗面台に荷物を置いたまま忘れてしまったうえ、目的地に着いてから置き忘れが判明したケースがありました。その経験から、「忘れ物はありませんか」と聞くのではなく、「お財布はありますか」「メガネや傘を忘れていないですか」と具体的に声をかけ、その場で確認してもらうようにしています。

ほかにも、出発前には、全員の服装や持ち物が分かる写真を撮っています。帽子やスカーフ、持ち物を記録しておくことで、迷子や忘れ物があった際にもすぐに対応できるためです。そして、当日は目印としてお揃いのバンダナを身につけていただき、あわせて施設名と緊急連絡先を記載した名札も着用しています。このように、事前に起こり得ることを想定し、できる限り備えることで、利用者様が安心して旅行を楽しめる環境づくりを心がけています。

ーー利用者さんに旅行を楽しんでもらうため、スタッフの教育面で気をつけている点があれば教えてください。

一番大切にしているのは、「外出を特別なイベントにしないこと」です。施設のコンセプトとして旅行を目標に掲げている以上、年に数回の大きな外出だけでなく、日常的に外に出ることにスタッフ自身が慣れていく必要があると考えています。そのため、屋外歩行訓練を含め、小さな外出企画を数多く実施しています。

外に出ると、施設内では見えなかった利用者様の様子が、良い面も悪い面もはっきりと分かります。例えば、室内では安定して歩けている方でも、屋外の段差や傾斜、不整地では不安定になったり、歩行が大きく崩れたりすることがあります。ただ、その一方で、表情は明るくなり、近くの公園に行くだけでも笑顔や活気がまったく違って見えることも多いです。そうした良い面や難しさも含めて、スタッフが実体験として理解することが重要だと考えています。こうして、日常的に外出を重ねると、「どこで不安が強くなるのか」「どのタイミングで声かけや支援が必要か」といった判断力が自然と身についていきます。また、事前に外での様子を知っていれば、歩行距離の設定や途中離脱への対応なども、現実的に考えられるようになるものです。

さらに、こまめな外出企画としては、近隣への散歩や買い物など、デイサービスの利用時間内で戻ってこられる場所を中心に行っています。こうした機会は、利用者様にとっての気分転換や自信につながるだけでなく、スタッフにとっても大きな学びの場になります。また、外出を共にすることで、利用者様との関係性が深まり、仕事へのモチベーション向上にもつながっているようです。「デイサービスの中だけで完結する支援ではなく、その方の生活全体やご自宅での様子まで想像しながら関われるスタッフになってほしい」という思いが、教育の根底にあります。

歩行訓練の一貫として、公園での散策を楽しむ利用者さん

歩行訓練の一貫として、公園での散策を楽しむ利用者さん

ーーリョコリハ?や、旅行企画についての反応はいかがですか。

旅行に参加された利用者様から多く寄せられるのは、「思っていたよりも動けた」「自信がついた」という声です。参加前は、「団体旅行についていけるだろうか」「バスの乗り降りができるだろうか」と強い不安を抱えている方が少なくありません。特に、何年も病院や近所以外に出かけていなかった方ほど、その不安は大きいです。それでも、行きたいという気持ちがある方には、ご家族と相談のうえ、参加していただくこともあります。実際に旅行を終えたあと、「行けてよかった」「自分でもできた」という言葉をいただくことが多く、その変化にとても嬉しく思っています。

また、普段は介護を受ける立場の利用者様が、「いつも世話になっているから」と奥様やお子様を誘って参加されることも。旅行先でご家族がとても楽しんでいる姿を見て、ご本人が嬉しそうにされている場面もありました。もちろん、利用者様のサポートはスタッフが行うため、ご家族はゆっくりと買い物や食事を楽しめます。このように、旅行はご本人の自信につながるだけでなく、ご家族にとっても気分転換や思い出づくりの時間になっていると感じています。

ーー今後の展望をお聞かせください。

宿泊を伴う旅行を再開させたいと考えています。私が入社した2019年には、すでに宿泊付きツアーが実施されており、タイへの旅行の手配が完了している状況でした。ところが、その直後に新型コロナウイルスが流行し、2020年春に予定していたタイ旅行は、実施が難しいという判断になってしまったのです。

その後しばらくは旅行を取りやめ、状況を見つつ、近場かつ小規模な外出から少しずつ再開しました。その間にスタッフの入れ替わりもあり、宿泊旅行を実際に経験したスタッフは今では少なくなっています。また、新しい施設も増えているため、宿泊を伴う旅行に対しては、これから経験値をイメージを高めていく必要がある状況です。日常的な外出を重ねながらスタッフの経験を積み、条件やタイミングが整った段階で、宿泊旅行にもチャレンジしていきたいと考えています。

スピード転職情報収集だけでもOK

マイナビ介護職は、あなたの転職をしっかりサポート!介護職専任のキャリアアドバイザーがカウンセリングを行います。

はじめての転職で何から進めるべきかわからない、求人だけ見てみたい、そもそも転職活動をするか迷っている場合でも、キャリアアドバイザーがアドバイスいたします。

完全無料:アドバイザーに相談する

最新コラムなどをいち早くお届け!
公式LINEを友だちに追加する

お役立ち情報を配信中!
X(旧Twitter)公式アカウントをフォローする

介護職向けニュースを日々配信中!
公式Facebookをチェックする

SNSシェア

タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

EGGOの執筆・監修記事

介護の仕事・スキルの関連記事

  • 介護施設・職場

    2026/03/27

  • 障害者支援施設とは?提供するサービスの種類や支援内容をわかりやすく解説

  • 文/山本史子(介護福祉士)
  • 介護資格

    2026/03/26

  • 介護職員初任者研修の試験に落ちたら?理由と合格のための対策を解説

  • 文/織田さとる(ケアマネジャー、介護福祉士、社会福祉士、公認心理師)
  • 介護職のスキルアップ

    2026/03/20

  • 利用者に心地よい介護技術「起き上がり介助のポイント」|認知症ケアの現場から(40)

  • 文・写真/安藤祐介
もっと見る