「エンターテイメント型レクリエーション」を取り入れたきっかけは?笑いをテーマにしたユニークなデイサービスに注目|気になるあの介護施設
取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー
福岡県北九州市にある「アマリリスエンターテイメントデイサービス」は、笑いをテーマにしたユニークなデイサービスです。理事長や職員が一丸となり、独自のエンターテイメント型レクリエーションを提供していることが特徴で、趣向を凝らしたレクはSNS上でも大きな反響を呼んでいます。エンターテイメントを取り入れたきっかけや、レクを考えるうえで心がけていることなどについて、理事長の西村博子氏に話を聞いてみました。
1.介護にエンターテイメントを取り入れようと思ったきっかけ
ーー介護にエンターテイメントを取り入れようと思ったきっかけを教えてください。
大きなきっかけは、介護に音楽を取り入れる効果を実感したことです。私は幼少期からピアノやバイオリンなどの楽器に親しんでおり、大人になってからも音楽を続けていました。ある日、そのことを知った利用者さんからリクエストがあり、施設で楽器を演奏することになったのです。すると、場の雰囲気が一気に明るくなり、音楽が与える影響やパワーを強く感じました。
演奏はその後、利用者さんからの要望があれば行う程度だったのですが、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、「デイサービスにもっと音楽を取り入れてはどうか」との考えに至ります。自粛により気持ちが沈んでいる利用者さんを目の当たりにしたことで、施設内に簡易的なステージを作り、そこで歌やダンスを披露することを思いついたのです。さらに、利用者さんとスタッフが一体になって楽しめるよう、手作りの楽器を使って全員で演奏をしたり、好きな音楽にオリジナルの振り付けをつけて踊ったりする取り組みを始めました。このような活動が、当施設でのエンターテイメント活用の原点となっています。

チェロを演奏する西村さん
2.エンターテイメントの導入にあたり、難しかったこと
ーーエンターテイメントの導入にあたり、難しかったことはありますか。
特段難しかったことはありませんが、あえて言えば、私が考えたコンセプトをスタッフにも理解してもらうことでしょうか。施設へのエンターテイメントの導入は、もともとは私一人で始めた取り組みでした。楽器を演奏するだけでなく、大好きな浜崎あゆみさんのコンサートを真似て、利用者さんの前で歌を披露するなどしていたのです。すると、次第に利用者さんの間で評判が高まり、「今日はあのコンサートはやらないの?」と声をかけられるほどになりました。気が付けば、スタッフも一緒になって歌ったり踊ったりするようになり、エンターテイメントの要素がどんどん広がっていったのです。
3.スタッフを指導するうえでの工夫
ーー歌ったり踊ったりするのは少しハードルが高そうですが、スタッフの皆さんはどのようにして慣れていったのでしょうか。指導するうえでの工夫があれば教えてください。
当施設ではスタッフの自主性を重視しているため、歌やダンスへの参加を私からお願いしたことは一切ありません。しかし、利用者さんが喜ぶ姿を目にするうちに、「自分もやってみたい」と前に出るスタッフが増えていきました。そして多くのスタッフが、「一度前に出るとクセになる」と話しています。
この際、私が重要だと感じているのは、スタッフが一歩を踏み出すための「殻を破る手助け」をすることです。例えば、いきなり100人の前で話してくださいと言われても、何を話せばいいか、どう振る舞えば良いか分からない人は多いですよね。しかし、講演をしている人の横で話を聞いたり、一言挨拶をしたりしていると、だんだんと慣れていくものです。最初は小さな一歩でも、そうした経験を積み重ねることで、次第に自信がつき、殻を破ることができると私は考えています。利用者さんの笑顔を見たり、「楽しかった!」という声を聞いたりすることで、次第に「もっと利用者さんを喜ばせたい」という気持ちが強くなり、積極的に参加するスタッフが自然と増えたのだと思います。

毎回のレクにはスタッフも積極的に参加している
ーーその他、スタッフが働きやすい環境の維持のために意識していることはありますか。
スタッフを信頼し、自ら考えて行動できる環境を整えることです。こちらから指示を出すのではなく、「これをやりたい」とスタッフ自身が思い、発信できるような環境の整備に注力しています。具体的には、良い取り組みは全力で褒めることを意識しています。
また、日頃からコミュニケーションの機会を増やし、お互いに意見を言い合える環境を作ることも大切にしていますね。例えば、昼食時には各自が持参したおかずを食べますが、ご飯は施設で炊いたものを全員で分け合い、一緒に食事をする時間を設けています。これは、「同じ釜の飯を食う仲間」としての意識を育てることで、自然とチームワークが生まれるのではとの考えからです。日々の何気ない会話や関わりを大切にすることで、「自分の頑張りが認められている」と実感しやすくなり、自然と主体的な行動に繋がっていくのではないでしょうか。
4.今後の展望
ーー今後の展望をお聞かせください。
現在、介護業界は人材不足が深刻な課題とされています。そのため、より多くの方がこの仕事に魅力を感じ、やりがいを持って働ける環境を整えていきたいと考えています。また、当施設では、高齢者の方々にとって本当に楽しく心地よい場所を提供することを目指し、日々運営に取り組んでいます。利用者さんが自由に楽しめる場を作ることで、スタッフの負担が増えることもありますが、それ以上にやりがいを感じられるような、新しい形の介護を提供し続けたいです。
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