介護福祉士養成施設とは?種類やカリキュラムを紹介
文/長谷部宏依(介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー)介護福祉士養成施設は、介護に関する知識や実技を学び、介護福祉士の資格を取得するための施設です。介護福祉士養成施設には4年制大学や短期大学、専門学校などがあり、卒業(修了)までの期間や入学資格は施設によって異なります。
この記事では、介護福祉士養成施設の種類や期間、カリキュラムなどについて詳しく解説します。介護福祉士の資格を取得したいと考えている人は、参考にしてください。
- 目次
- 1.介護福祉士養成施設とは
- 2.介護福祉士養成施設の種類
- 4年制大学
- 短期大学(2~3年)
- 専門学校(2~3年)
- 1年課程の専攻科
- 3.介護福祉士養成施設に通信制はある?
- 4.介護福祉士養成施設に通う期間は卒業した学校の種類により異なる
- 5.介護福祉士養成施設ルートは卒業年度によって資格取得条件が変わる
- 6.介護福祉士養成施設のカリキュラム
- 7.介護福祉士養成施設に通うメリット
- 効率的に学習できる
- 高等学校卒業後、最短2年で介護福祉士になれる
- 国家試験の傾向がわかる
- 友人たちと一緒に学べる
- 講師に質問できる
- 8.働きながら資格取得を目指す場合は実務経験ルートもおすすめ
- まとめ:自分の希望に合う介護福祉士養成施設の選択が重要
1.介護福祉士養成施設とは
介護福祉士養成施設とは、その名のとおり介護福祉士の資格を取得するための施設で、厚生労働大臣や文部科学大臣が指定した学校、あるいは都道府県知事が指定した養成機関の総称です。
介護福祉士養成施設は、「質の高い介護サービスを提供するための専門職を育てること」を目的とし、高齢者や障害者など支援を必要とする人々に適切なケアを提供できるよう、実践的なカリキュラムが組まれています。
その点を踏まえるなら、介護福祉士養成施設は高齢化が進む社会にあって、非常に重要な役割を果たす機関だといえるでしょう。
2.介護福祉士養成施設の種類
介護福祉士養成施設には、次の4種類があります。
- 4年制大学
- 短期大学(2~3年)
- 専門学校(2~3年)
- 1年過程の専攻科
ここからは、それぞれについて詳しく解説します。
4年制大学
介護福祉士の養成課程がある4年制大学は、高等学校の卒業者や高等学校卒業程度認定試験に合格した人が入学対象となります。在学期間が4年という長期にわたるため、じっくりと学習に取り組むことが可能です。
4年制大学の特徴は、介護だけでなく心理学や社会福祉学、保健学など、福祉に関連するさまざまな分野を網羅的に学べる点です。カリキュラムには一般教養科目も含まれており、倫理学や社会学、経済学といった幅広い知識を学ぶことで、問題解決能力や多角的な思考なども身につくでしょう。
また、4年制大学を卒業すれば、修士課程や博士課程に進むことができます。大学院での学びは大学よりも高度で専門的になり、研究活動も増えるため、福祉分野で研究者や教育者として活躍したい学生にとっては、有意義な時間となるでしょう。
なお、4年制大学の福祉系学科では、将来的に福祉分野でリーダーシップを発揮できる人材の養成が期待されています。
短期大学(2~3年)
介護福祉士の養成課程がある短期大学は、一般的に2~3年の学習期間となっており、学生は介護福祉士に必要な基礎知識・専門科目を学ぶほか、実技・実習なども行います。
4年制大学よりも短い期間で集中的に学習するため、効率的に介護の知識・技術を身につけられるのが短期大学の特徴です。そのため、長期間にわたって学習する時間がない人や、早期に仕事に就きたい人にはおすすめのルートといえるでしょう。
短期大学の入学資格は、高等学校の卒業者や高等学校卒業程度認定試験に合格した人です。4年制大学に比べて学費が安いことから、経済的な負担を軽減しながら資格取得を目指せます。
ちなみに、短期大学のなかには、学びを深めたい学生や専門性を高めたい学生のために、4年制大学への編入が可能な学校もあります。
専門学校(2~3年)
介護福祉士の養成課程がある専門学校の主な対象者は以下のとおりです。
- 高等学校を卒業した人
- 福祉系以外の4年制大学を卒業した人
専門学校はほとんどが2年制ですが、なかには3年制の施設もあります。また、専門学校は、4年制大学や短期大学よりも、実務に即したカリキュラムが多いのが特徴です。実践的な技術や調整力を身につけることを重視しているため、卒業後は即戦力としての活躍が期待される傾向にあります。
そのため専門学校は、介護福祉士としての実践的なスキルを、効率的に学びたい人に適したルートといえるでしょう。
1年課程の専攻科
1年課程の専攻科は、特定の資格を持っている人や、特定の学歴を有する人を対象としています。入学対象は以下のとおりです。
- 保育士資格を保有している人
- 福祉系大学(社会福祉に関する科目を履修)を卒業した人
- 社会福祉士養成施設を卒業した人
学生は1年間の集中的な学習を通じて、介護・福祉の専門技術を学び、介護福祉士国家試験の受験資格を得ることになります。
このルートは、専門職としてのキャリアをさらに発展させたい人におすすめです。ただし、1年課程の専攻科自体が少なくなっており、通学できる距離にこの養成施設がないケースも考えられます。
3.介護福祉士養成施設に通信制はある?
介護福祉士養成施設に通信制はありません。介護福祉士として活躍するには、実技の習得が不可欠であり、通学して実務に即した知識・技術を身につける必要があるためです。
ただし、すでに介護福祉士国家試験の受験資格を保有している人や、実務者研修などを修了している人に向けた「国家試験対策としての通信講座」はあります。
4.介護福祉士養成施設に通う期間は、卒業した学校の種類により異なる
介護福祉士養成施設での学習期間は、以下のとおりです。
- 高等学校を卒業している場合、介護福祉士養成施設に2年以上通学
- 福祉系大学や社会福祉士養成施設、保育士養成施設などを卒業した場合、介護福祉士養成施設に1年以上通学
大半の人は高等学校を卒業した後に、4年制大学や短期大学、専門学校などの介護福祉士養成施設に通っている印象です。
福祉系大学などの卒業者は、1年課程の専攻科に通うことで、介護福祉士国家試験の受験資格が得られます。
(出典:厚生労働省「社会福祉士・介護福祉士等」)
5.介護福祉士養成施設ルートは卒業年度によって資格取得条件が変わる
介護福祉士養成施設を卒業する際の資格取得条件は、卒業年度によって異なります。
卒業年度 | 資格取得条件 |
---|---|
2016年度まで | ・卒業と同時に介護福祉士の資格を取得できた。 |
2017~2026年度 |
・卒業時に登録申請すれば、5年間は介護福祉士の資格を保有していると認められる。 ・介護福祉士の登録を継続させるには、卒業後5年の間に国家試験に合格するか、卒業後5年以上継続して介護実務に従事する必要がある。 |
2027年度以降 |
・介護福祉士養成施設を卒業(修了)するだけでは介護福祉士の資格は得られない。 ・国家試験の合格が必須(実技試験は免除)。 |
介護福祉士養成施設に通う場合には、自分の卒業(修了)年度を事前に把握しておきましょう。
6.介護福祉士養成施設のカリキュラム
介護福祉士養成施設では、以下のカリキュラムを勉強します。
教育内容 | 時間数 | |
---|---|---|
人間と社会 | 人間の尊厳と自立 | 30時間以上 |
人間関係とコミュニケーション | 60時間以上 | |
社会の理解 | 60時間以上 | |
人間と社会に関する選択科目 | ― | |
介護 | 介護の基本 | 180時間 |
コミュニケーション技術 | 60時間 | |
生活支援技術 | 300時間 | |
介護課程 | 150時間 | |
介護総合演習 | 120時間 | |
介護実習 | 450時間 | |
こころとからだのしくみ | 発達と老化の理解 | 60時間 |
認知症の理解 | 60時間 | |
障害の理解 | 60時間 | |
こころとからだのしくみ | 120時間 | |
医療的ケア | 医療的ケア | 50時間+演習 |
(出典:厚生労働省「介護福祉士養成課程 新カリキュラム 教育方法の手引き」)
「人間と社会に関する選択科目」については、介護福祉士養成施設ごとに科目や時間が設定されます。科目例は以下のとおりです。
ねらい・教育に含むべき事項 | 科目例 |
---|---|
物や人間等の「生命」の基本的仕組みの学習 | 生物、生命科学 |
社会生活における数学の活用の理解と数学的・論理的思考の学習 | 統計、数学(基礎)、経理 |
家族・福祉、衣食住、消費生活等に関する基本的な知識と技術の学習 | 家庭、生活技術、生活文化 |
さまざまな文化や価値観を背景とする人々と相互に尊重し合いながら共生する社会への理解や、国際的な視野を養う学習 | 国際理解、多文化共生 |
現代社会の基礎的問題を理解し、社会を見つめる感性や現代を生きる人間としての生き方について考える力を養う学習 | 社会、現代社会、憲法論、政治・経済 |
その他の社会保障関連制度についての学習 | 労働法制、住宅政策、教育制度、児童福祉 |
(出典:厚生労働省「介護福祉士養成課程 新カリキュラム 教育方法の手引き」)
上記の表をみると、介護にかかわるための基本的な考え方や介護技術について、多くの時間を割かれているのがわかります。
7.介護福祉士養成施設に通うメリット
介護福祉士養成施設に通うメリットは以下のとおりです。
- 効率的に学習できる
- 高等学校卒業後、最短2年で介護福祉士になれる
- 国家試験の傾向がわかる
- 友人と一緒に学べる
- 講師に質問できる
以下では、それぞれについて解説します。
効率的に学習できる
介護福祉士養成施設に通う最大のメリットは、効率的に幅広い知識と介護技術を学べる点です。1~4年という期間で介護に関連する知識・技術を取得できるよう、座学と実習をうまく組み合わせたカリキュラムが用意されており、学生は基礎知識から応用技術まで、体系的かつ集中的に学べるでしょう。
介護実習では実際のケアに触れることで、現場で起こるさまざまな状況に対応する実践力が身につきます。また、介護福祉士として必要な知識・技術だけでなく、ほかの資格取得のためのサポートや、福祉に関連する幅広いカリキュラムを設けている場合もあります。
独学では得られない経験や学びは、介護福祉士としての質を高め、さまざまな現場で活躍するための基礎をつくるのに有効でしょう。
高等学校卒業後、最短2年で介護福祉士になれる
高等学校を卒業してから最短2年で資格を取得できるという点も、介護福祉士養成施設に通う大きなメリットです。独学で資格を取得しようとする場合、3年以上の実務経験に加えて、実務者研修などを修了する必要があります。
筆者が老人保健施設に就職した際は、新規に開設された施設だったこともあり、多くの介護職員が入職しました。そのなかで、介護福祉士養成施設を卒業(修了)している介護福祉士の有資格者は、無資格の介護職員より早くリーダーになっていました。
「早く現場で活躍したい!」という人は、介護福祉士養成施設で学ぶことをおすすめします。
国家試験の傾向がわかる
介護福祉士養成施設では、国家試験の内容を徹底分析し、出題傾向に基づいた模擬試験や対策講座が行われるため、国家試験の傾向を効率よく学べます。試験の形式やよく出る問題に慣れることで、試験に対する自信も高まるでしょう。
また、介護福祉士養成施設の卒業生は実技試験が免除されるため、筆記試験の対策に集中できます。さらに、過去問や試験の動向をもとにした指導や、最新の試験情報を反映した講義も受けられます。
介護福祉士養成施設は、国家試験に合格するための知識を効率的に学べるだけでなく、サポートも充実しているのです。
友人たちと一緒に学べる
社会貢献を目指す人、家族の介護を見据えて学びたい人など、介護福祉士養成施設ではさまざまな背景を持ちながらも、同じ目標に向かう仲間と出会えます。共通の目標を持つ学生たちが一緒に学び、切磋琢磨することは大きな成長につながるでしょう。また、グループワークやディスカッションを通じて意見交換を行い、協力しながらよりよい介護方法の探求もできます。
介護福祉士養成施設の学習環境は、実際の介護現場で必要とされる協調性や、コミュニケーション能力を養うのに適した環境といえます。
講師に質問できる
介護福祉士養成施設は、講師が近くにいるため質問や相談がしやすい環境です。現場経験が豊富な専門家たちが、学生からの質問や相談に適切かつ具体的にアドバイスしてくれるため、理解が難しい内容や調べても解決できない問題も、その場で解決できるでしょう。
手厚いサポートを受けることで学習がスムーズに進み、学生は自信を持って国家試験に臨むことができます。
8.働きながら資格取得を目指す場合は実務経験ルートもおすすめ
働きながら介護福祉士の資格を取得したい人には、実務経験ルートがおすすめです。
介護福祉士養成施設の場合、期間や場所が限定的になるため、仕事をしながらの学習が難しくなることがあります。一方、実務経験ルートでは、3年以上の実務経験に加えて実務者研修などを修了すれば、受験資格が得られます。
(出典:厚生労働省「社会福祉士・介護福祉士等」)
さらに、実務経験ルートでは、介護福祉士養成施設に通学するよりも資格取得の費用を抑えられます。実際の介護現場で働きながら学ぶため、理論だけでなく実践的なスキルも身につくでしょう。ただし、仕事と勉強を両立させるためには、自己管理能力や計画性が必要です。
まとめ:自分の希望に合う介護福祉士養成施設の選択が重要
介護福祉士養成施設には、4年制大学、短期大学、専門学校、1年課程の専攻科の4種類があります。入学資格や在学期間は介護福祉養成施設ごとに異なるため、入学を考えている場合、「自分はどの介護福祉士養成施設に入れるのか」を事前に調べておきましょう。
なお、介護福祉士の資格がなくても、介護職に就くことは可能です。3年以上の実務経験と実務者研修などを修了することで、介護福祉士国家試験の受験資格を得ることもできます。
介護福祉士養成施設に通って勉強に集中するのか、介護職として実務経験を積みながら勉強をするのか。それぞれにメリット・デメリットがあるので、どちらが自分に合っているかをきちんと検討してみるとよいでしょう。
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