医療介護福祉士とは?主な役割から注意点と取得方法まで
構成・文/介護のみらいラボ編集部
介護福祉士としてのスキルアップ・キャリアアップにつながる資格の1つが「医療介護福祉士」です。医療介護福祉士を取得するためには、1年以上の実務経験に加えて、研修・実習で慢性期医療について学ぶ必要があり、取得した知識は高齢者介護だけでなく、チーム医療の現場でも生かすことができるでしょう。
当記事では医療介護福祉士の資格について、概要や取得方法、取得するメリット・デメリットなどを詳しく解説します。介護福祉士としてのキャリアアップを目指したい方や、より質の高い介護を実践したい方は、ぜひご覧ください。
1.医療介護福祉士とは?
医療介護福祉士とは、一般社団法人日本慢性期医療協会が認定する民間資格で、2010年に創設されました。1年以上の実務経験のある介護福祉士が、指定の講座(講義・実習)を修了し、認定試験に合格することで取得が可能となります。
医療介護福祉士資格では、「チーム医療のメンバーとして活躍できる介護福祉士の育成」を目的としているため、講義・実習では慢性期医療における検査や薬についての知識、緊急時の対応などについても学びます。そのため、介護や医学の知識をさらに深めたい方や、仕事の幅を広げたい介護福祉士の方には、おすすめの資格と言えるでしょう。
医療介護福祉士の役割
医療施設や医療ニーズの高い方を支援する介護施設で、医師、看護師といった他職種と連携しながら、利用者さんの日常生活を支えるのが医療介護福祉士の役割です。
利用者さんと日々向き合うなかで、相手をきちんと観察し細かい変化に気付けるのが、介護職員の強みですが、医療介護福祉士として医療に関する専門知識を身に付ければ、アセスメントの質はより向上するでしょう。
なお、近年は、医療の現場でも介護士の需要が高まっており、終末期医療や看取りなどの現場では、一定の医療知識を持った介護士が求められる傾向にあります。そのため、医療介護福祉士が貢献できる場面は、今後ますます増えていくと予測されます。
医療介護福祉士の資格を取得するメリット・デメリット
医療介護福祉士の資格を取得するメリットとして、医療の専門知識を身に付けることで、毎日の業務に自信をもって取り組めるようになる点が挙げられます。医療現場や介護現場で突発的な事故があった場合でも、知識があれば冷静に対処することができるでしょう。
また、医療介護福祉士の資格は、医療および介護関連の知識・技術の高さを証明するための材料にもなります。転職する際には、医療介護福祉士を取得しているという経歴が好印象となり、採用に有利に働く可能性も考えられます。
ただし、医療介護福祉士は、比較的新しい資格であるため、認知度が低い傾向にあります。加えて、民間資格であることから、保有しているだけで給与面に反映されることもありません。前述したように、高齢化が進む日本では、医療知識を持った介護士の需要が今後も高まっていくと予想されますが、あえて挙げるならそうした点がデメリットと言えるでしょう。
医療介護福祉士の注意点
医療介護福祉士は、医療の現場で働く介護士が医学的知識を習得し、医療行為を含まない緊急時の対応や、事故防止対策を行えるようになるための資格となっています。そのため、「資格を取得しても医療行為ができるわけではない」という点には注意が必要です。
とはいえ、医療分野の知識を身に付け、利用者さんがどのような健康状態であるかを把握できれば、介護の質や取り組み方は大きく変わってきます。正しい医療知識を身に付けることで、医療従事者との連携がよりスムーズになり、利用者さんに適切な処置やサービスを提供しやすくなるでしょう。
2.医療介護福祉士の資格取得方法
医療介護福祉士の資格取得方法は以下の通りです。
医療介護福祉士の資格取得方法 | |
---|---|
受験資格 | 介護福祉士としての実務経験が1年以上ある者 |
資格取得方法 | 全6日間24単位(講義16単位、実習8単位)を履修し、認定試験に合格すること |
受験料 |
一般参加(会員以外):90,000円 日本慢性期医療協会会員施設に勤務する介護福祉士:70,000円 |
参加申込方法 | 申込用紙に必要事項を記入し、FAXで申し込み |
(出典:日本慢性期医療協会「第10回医療介護福祉士認定講座開催のご案内」)
医療介護福祉士の講習では、講義の受講と実習を組み合わせて、次のような内容を学びます。
・脳血管疾患管理や口腔ケア
・排泄ケア
・慢性期医療の薬や検査
・リハビリテーション介護
・胃ろうの管理
繰り返しになりますが、高齢者の身体介護だけでなく慢性期医療についても学ぶ点が、医療介護福祉士資格の大きな特徴です。近年、需要が高まっている慢性期医療の緊急処置について学ぶことで、介護・医療知識の理解がさらに深まるでしょう。
3.【医療介護福祉士以外】介護福祉士のスキルアップにつながる資格
介護福祉士がスキルアップを実現したい場合は、医療介護福祉士以外の資格取得を検討する方法もあります。
ここからは、介護福祉士のスキルアップにつながる資格を3つ紹介します。それぞれの資格の概要はもちろん、役割や仕事内容、取得するメリットについても解説するので、興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
ケアマネジャー
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護を必要とする方が適切な介護保険サービスを受けられるように、ケアプランの作成やサービス事業者との調整を行う、介護保険のスペシャリストです。福祉関係者だけでなく、医療従事者、行政担当者といった幅広い人たちと関わりを持ち、介護保険サービスを提供する上での中心的役割を果たしている点に特徴があります。
ケアマネジャーは、介護サービスを提供する事業所や施設にとって不可欠な職種であるため、居宅介護支援事業所や介護施設(介護老人福祉施設や介護老人保健施設、有料老人ホームなど)、地域包括支援センターなど活躍できる場が数多くあります。なお、地域包括支援センターでは、「主任ケアマネジャー」というケアマネジャーの上位資格保有者の配置が義務付けられているため、資格を取得しておけば、転職を検討する際の選択肢が広がるでしょう。
また、厚生労働省の調査によると、介護職員の平均年収が約353万円なのに対して、ケアマネジャーは約410万円となっています。ケアマネージャーの資格を取得することで、収入面にいい影響を与える可能性が高い点も、大きなメリットと言えるでしょう。
(出典:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag「介護支援専門員/ケアマネジャー」)
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」)
認定介護福祉士
認定介護福祉士は、一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構によって創設された民間資格です。介護福祉士の上位資格として、2015年より認定が開始されました。
認定介護福祉士は、利用者さんへの直接的な介護業務だけでなく、「介護の中核的存在」として、マネジメントやサービス管理にも携わります。また、介護スタッフの教育や他職種との連携を通じて、介護サービスの質の向上を目指すのも、認定介護福祉士の大事な役割です。そのため、認定介護福祉士には、介護の知識・スキルに加えて、コミュニケーション能力やマネジメント力なども求められます。
認定介護福祉士を取得すると、介護士としての視野が広がるため、自己研さんやスキルアップにつながりやすいでしょう。
喀痰吸引等研修
喀痰吸引等研修とは、痰の吸引や経管栄養などの医療行為を行える介護職員を養成するための研修です。
介護士は、原則として医療行為を行うことはできませんが、喀痰吸引等研修を修了した介護士であれば、痰の吸引や経管栄養といった医療行為を実施できます。ただし、医療行為は「医師や看護師の監督のもとで行う必要がある」という点に注意が必要です。
近年、介護現場では、痰吸引や経管栄養などの医療的ケアを必要とする利用者さんが増えています。今後も需要の増加が見込まれるため、喀痰吸引等研修修了者が現場から必要とされる機会は、ますます増えていくでしょう。
また、喀痰吸引等研修は資格手当の対象となる場合が多く、資格取得によって給与アップが期待できるというメリットもあります。
まとめ
医療介護福祉士とは、日本慢性期医療協会が認定する民間資格であり、取得することで慢性期医療の検査・薬についての知識や、緊急時の対応などが身に付きます。
実際に医療行為を行うことはできないものの、医師や看護師との連携をスムーズに行えたり、患者さんの変化に素早く気付いたりできるようになるため、資格取得者にはチーム医療のメンバーとしての活躍も期待されています。介護福祉士がスキルアップするための資格はいくつかありますが、医療介護福祉士を選択肢の1つに加えてみてはいかがでしょうか。
「介護のみらいラボ」では、介護にかかわるさまざまな情報を提供しています。介護の現場で活躍するための資格についても紹介していますので、キャリアアップを目指す方はぜひ参考にしてください。
※当記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています
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