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仕事・スキル 介護資格 2025/06/16

#精神保健福祉士

精神保健福祉士国家試験の合格率は?合格ラインや勉強のポイントを解説

文/久木田みすづ(精神保健福祉士・社会福祉士・心理カウンセラー) thumb250616.jpg

メンタルの不調を訴え、休職や退職をする労働者の数は全体の10%程度だといわれています。しかし、これは企業に限った数字のため、学校や地域社会なども含めれば、メンタルに問題を抱える人の割合はさらに増えるでしょう。

精神保健福祉士は、そうした人たちをサポートし、自立した生活や社会復帰を推進する役目を担います。

精神保健福祉士になるには、国家試験に合格する必要があるため、「精神保険福祉士として活躍したい」と考える人にとって、国家試験の特徴や合格率は非常に気になるところでしょう。この記事では、精神保健福祉士国家試験の合格率や合格のポイントを詳しく解説します。事前にしっかりと情報を収集したい人は、ぜひチェックしてみてください。

1.精神保健福祉士国家試験の合格率は?

精神保健福祉士国家試験の過去5年の合格率は、平均して60%台で推移しています。特に2022(令和4)年度と2023(令和5)年度は約70%を超えているため、数字だけを見れば合格率が高いと感じるでしょう。

しかし、精神保健福祉士国家試験は、専門科目と共通科目を合わせて18科目あります。また、試験は2日にわたって実施され、試験時間は両日合計で230分のみ(1日目が90分、2日目が140分)。1日目に専門科目を48問こなし、2日目で共通科目84問を解き終える必要があります。

毎年、「時間が足りなかった」という受験生の声も珍しくないため、計画的に準備を進めないと、60%の合格者に入れない可能性もあるでしょう。

年度 受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
2019(令和1)年 6,633 4,119 62.1
2020(令和2)年 6,165 3,955 64.2
2021(令和3)年 6,502 4,267 65.6
2022(令和4)年 7,024 4,996 71.1
2023(令和5)年 6,978 4,911 70.4


2.精神保健福祉士国家試験の合格ラインは?

精神保健福祉士国家試験の合格ラインは、次のとおりです。

60%程度正答していること

精神保健福祉士国家試験は、1問1点で計算し、合計132点満点です。合格するには、60%程度の正答率が必要になるため、確実に合格するには80点以上取ることを目標にするとよいでしょう。

ただし、正答率の基準を満たしているからといって、安心はできません。1科目でも0点があると、不合格になってしまうからです。0点の科目があると、どんなに総合得点が高くても合格できないので注意してください。

受験時の試験の難易度で補正される

精神保健福祉士国家試験は、年度によって難易度が異なるため、問題の難易度に合わせて合格ラインも補正されます。つまり、試験の難易度が高かった年は、正答率が60%を切っていても、合格する可能性があるのです。

3.精神保健福祉士国家試験の特徴

精神保健福祉士国家試験には、次のような特徴があります。

どの学校で学ぶかで合格率に違いがある

精神保健福祉士国家試験の受験資格を得るには、定められた専門機関で指定科目を履修し、卒業しなければなりません。そして、学習する機関によって試験の合格率に違いがあります。

●精神保健福祉士国家試験合格率(令和5年度) 

人数 割合
保健福祉系大学等卒業者 1,684人 34.3%
養成施設卒業者 3,227人 65.7%
合計 4,911人 100%

専門機関ごとに合格率が異なるのは、卒業者のバックグラウンドの違いによるものだと考えられます。たとえば保健福祉系大学等の場合、入学時に相談援助業務の実務経験が問われることはなく、新卒の学生も多く在籍しています。一方、養成施設には、入学する時点で社会福祉士国家資格を保持していたり、相談援助業務の実務経験があったりする学生も少なくありません。

つまり、養成施設卒業者のなかには、精神保健福祉分野の現場経験がある人が多く、そうした人たちは、国家試験に関する十分な知識を備えているのです。それを考えれば、合格率が高くなるのも自然な流れといえるでしょう。

社会福祉士国家資格保持者は科目免除がある

精神保健福祉士国家試験の受験者には、社会福祉士の資格保有者も多く見られますが、実は精神保健福祉士国家試験と社会福祉士国家試験の共通科目では、同じ問題が出題されます。そのため、すでに社会福祉士を持っている受験者は、共通科目が免除されることになります。

試験の共通科目は84問と数が多いので、これが免除されれば受験勉強の負担が大幅に減るはず。この点も、合格率に大きく影響していると考えられます。

精神保健福祉士国家試験は内容が限定的である

精神保健福祉士は、精神に障害を抱えた人を支援するための国家資格です。そのため、試験では精神保健福祉分野における歴史や制度、支援方法、事例問題などが多く出題されます。

一方、社会福祉士は、子どもや高齢者、障害者などさまざまな対象者を援助するための国家資格であり、児童福祉や高齢者福祉、障害者福祉など、幅広い分野の制度や援助方法について勉強する必要があります。

両者を比較すると、精神保健福祉士のほうが、国家試験の内容は限定的だといえるでしょう。

4.精神保健福祉士国家試験に合格するためのポイント

精神保健福祉士国家試験に合格するには、試験の特徴や合格率を把握したうえで、効率よく学習を進めることが大事です。ここでは、試験合格に向けての「ポイントを押さえた勉強方法」を紹介します。

過去問を解くことで出題傾向を把握する

受験勉強で必ず取り入れてほしいのが、精神保健福祉士国家試験の過去問です。過去問を利用することで、実際の試験のボリュームはどのぐらいなのか、頻出する問題はあるかなどを把握することができるでしょう。

過去問は昨年度分だけではなく、3〜5年ほどさかのぼってチェックするのがおすすめです。余裕があれば、それより前まで確認しても構いません。そうすることで、試験の全体像がつかめるからです。

なお、福祉・医療関連の法律や制度は、頻繁に新設・改正が行われます。この点にも注目しながら、過去問を解きましょう。新設や改正があった年は、その内容に関連する問題が出題されることが多くなります。

模擬試験で試験当時の雰囲気に慣れる

国家試験当日は、慣れない環境のなかで、指定時間内に問題を解き終える必要があります。日頃から練習問題や参考書で勉強していたとしても、本番の雰囲気はまったくの別物。試験当日にあわてないためにも、日頃の勉強環境と試験日の環境のギャップをできるだけなくすように工夫してみましょう。

たとえば、試験勉強を進めるなかで、模擬試験を受けてみるのも一つの方法です。模擬試験は、本番と似た環境の体験ができるため、どの問題から手をつけるとやりやすいか、1問何分ぐらいで解答すれば制限時間に間に合うのかなどが把握できます。勉強の理解度がどこまで進んでいるかの確認にもなるので、ぜひ活用してください。

得意科目や分野に力を入れる

精神保健福祉士国家試験では、132点中80点以上取ることが目標になります。確実に点数を得るためには、苦手科目・苦手分野の克服を目指すよりも、得意科目・得意分野の理解を深め、正答率を上げることに注力したほうがよいでしょう。

ただし、1科目でも0点があると不合格となってしまうため、苦手分野についてもバランスよくケアしてください。

国家試験対策講座などで効率的に勉強をする

独学で精神保健福祉士国家試験に挑戦する人もいますが、不安を感じるなら国家試験対策講座を受講することをおすすめします。対策講座は、専門学校などに通学して学ぶコースのほか通信教育もあるため、自分のライフスタイルに合わせた方法を選びましょう。

対策講座では、専門の講師が国家試験の出題傾向を教えてくれたり、質問に答えてくれたりと、独学にはないメリットが得られます。1人でどう勉強に取り組めばよいかわからない人や、効率的な勉強方法が知りたい人は、対策講座を視野に入れてみましょう。

まとめ:合格率だけに注目せずにコツコツ勉強しよう

精神保健福祉士国家資格の過去5年の合格率は、平均して60%台で推移しています。ただし、受験者のバックグラウンドなどによって合格率に差が生じるため、合格率を気にするよりも、自分にふさわしい勉強方法を見つけ、着実に知識を深めていくことを優先してください。

努力した分、必ず結果はついてきますので、焦らずにコツコツと合格を目指しましょう。

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久木田みすづ(Misuzu Kukita)

精神保健福祉士・社会福祉士

福祉系大学卒業後、カウンセリングセンターの勤務を経て、心療内科クリニック・精神科病院で精神保健福祉士・カウンセラーとして従事。うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんと家族に対する相談や支援に力を入れる。現在は、主にメンタルヘルスの記事を執筆するライターとして活動中。

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