介護職員初任者研修とは?費用や受験資格、資格を活かせる職場について紹介
編集/中西紗羅(介護福祉士)世の中には介護関連の資格が多くあるため、「どの資格を取得すればいいか分からない」と悩むこともあるでしょう。今回紹介する介護職員初任者研修は、介護の知識や技術を身につけられる「介護の入門資格」として人気があり、介護職未経験者でも受講可能な資格です。
本記事では、介護職員初任者研修の概要から受講方法、受講費用を抑える方法、資格を取得するメリットと、活かせる職場について、それぞれ紹介します。
- 目次
- 1.介護職員初任者研修とは?
- 介護職員初任者研修の受験資格は?
- 介護職員初任者研修は働きながらでも目指せる?
- ホームヘルパー2級との違い
- 介護福祉士実務者研修との違い
- 2.介護職員初任者研修を取得する方法
- 介護職員初任者研修のカリキュラム
- 受講費用
- 受講修了までの期間
- 試験の難易度・合格率
- 3.介護職員初任者研修の費用を抑えて受講する方法
- 各民間スクールのキャンペーン
- ハローワークの職業訓練
- 国や自治体の補助制度
- 4.介護職員初任者研修を取得するメリット
- 介護の知識やスキルが身につく
- キャリアの選択肢を広げることができる
- 未経験でも自信が持てる
- 給与アップが期待できる
- 5.介護職員初任者研修の資格を活かせる職場・仕事
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 有料老人ホーム
- グループホーム
- デイサービス
- デイケア
- 訪問介護
- まとめ
1.介護職員初任者研修とは?

介護職員初任者研修とは、2013年4月1日の介護保険法改正に伴い、新たに導入された研修です。介護現場で働くうえで欠かせない知識や技術を身につけられる「介護の入門資格」として多くの人に選ばれています。介護職未経験者が新たに介護の仕事に挑戦する場合に、または実務経験の浅い介護職員が受講するケースがほとんどです。
介護職員初任者研修は、主に民間スクールや自治体などが実施主体となって、定期的に研修が開講されており、誰でも受講しやすいのが特徴です。
介護職員初任者研修の受験資格は?
介護職員初任者研修には、受験資格がなく、学歴・年齢・介護職経験の有無などに関わらず、受講の意思があれば、誰でも受講可能です。そのため、介護業界に初めて挑戦する方でも安心して学べます。
また、研修の最後には「修了試験」の合格が必須です。しかし、この試験を行う目的は受講者を落とすことではなく、研修内容の振り返りと受講者の知識の定着であるため、研修修了までのハードルは、決して高くありません。
介護職員初任者研修は働きながらでも目指せる?
介護職員初任者研修には受験資格が設けられていないため、社会人として働きながらでも受講は可能です。受講者のなかには、介護職への転職や自身のスキルアップを目的としている方も多いため、一般的に働きながら受講するケースがみられます。
なお、働きながら受講するためには、いくつかの注意点を把握しておくことが重要です。詳しくは後述しますが、研修の修了には特定の科目にてスクーリング(通学)が必須になります。そのため、働きながら受講するには、自身の勤務時間の調整やスケジュール管理が求められます。
土日や夜間に通学可能なコースを設けているスクールもあるため、スクール選びも重要なポイントのです。
ホームヘルパー2級との違い
ホームヘルパー2級は、介護職員初任者研修が導入される前に運用されていた旧資格です。正式名称を「訪問介護員2級養成研修課程」といい、主に、訪問介護に関連する知識や技術を学ぶためのカリキュラムで構成されていました。現在は廃止されており、新たに取得することはできません。
介護職員初任者研修が導入された背景に、旧制度当時は「介護関連資格が複雑化していた」ことがあげられます。介護職がキャリアプランを選択する際、どの資格を取得したらいいのかが分かりにくい状態にありました。そのため、介護職として、在宅や介護施設を問わずに役立つ知識や技術を身につけられる研修として、介護職員初任者研修が新設されました。
介護福祉士実務者研修との違い
介護職員初任者研修と混同しやすい研修として、介護福祉士実務者研修があげられます。介護福祉士実務者研修とは、介護職員初任者研修の上位に位置付けられる研修です。
介護現場で役立つ知識や技術を、より実践的な観点から学べます。介護職員初任者研修よりも受講期間が長く、最大で20科目、450時間の学習が必要となります。
実務者研修は受講期間が長く、費用もかかります。しかし、充実したカリキュラムが設定されているので、介護の基礎から専門的知識までを体系的に学習可能です。介護職未経験者はもちろん、介護実務者のさらなるスキルアップとしても活用されている研修です。
また、実務者研修を修了し、一定以上の介護実務経験を積むことで、国家資格である介護福祉士国家試験の受験資格を得られます。
介護福祉士実務者研修も、介護職員初任者研修と同様に、研修そのものに受験資格は設けられていません。そのため、未経験から国家資格の取得までを見据えた介護専門職へのキャリアチェンジとして、実務者研修を受講する人も少なくありません。
2.介護職員初任者研修を取得する方法

介護職員初任者研修を受講する場合、主な実施者である民間企業が運営するスクールや各自治体が開講している研修を受講するのが一般的です。
介護職員初任者研修は、「通学」もしくは、「通学+通信」の2パターンで受講ができます。座学と実技のスクーリング(通学)89.5時間と、通信講座40.5時間を組み合わせて受講する形式が一般的です。
初任者研修は、合計10科目・130時間の講義と、筆記試験の実施で修了できます。そのうち、通信講座として受講できるのは最大合計40.5時間までであり、基本的には座学と実技のスクーリングは避けられません。
働きながら研修を受講する際は、しっかりとしたスケジュール管理が求められます。
介護職員初任者研修のカリキュラム
介護職員初任者研修は、下記の通り、合計10科目・130時間の講義と、研修の理解度を計るための修了試験のカリキュラムで構成されています。
| 研修科目 | 研修時間数 |
|---|---|
| 職務の理解 | 6時間 |
| 介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 |
| 介護の基本 | 6時間 |
| 介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 9時間 |
| 介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
| 老化の理解 | 6時間 |
| 認知症の理解 | 6時間 |
| 障害の理解 | 3時間 |
| こころとからだのしくみと生活支援技術 | 75時間 |
| 振り返り | 4時間 |
| 合計 | 130時間 |
上記全ての科目と学習時間を満たした受講者は、修了試験の受験が可能です。修了試験に合格することで修了証が発行され、研修を終えたことが認められます。万が一、修了試験に不合格となった場合は、合格するまで追試を受けられます。
修了試験は、あくまでも研修内容の定着が目的です。研修テキストや講義内容をしっかりと復習しておくことで、合格基準をクリアできるでしょう。
受講費用
研修の受講費用は、地域差や実施主体ごとに詳細は異なりますが、平均で5万円〜10万円程度です。研修カリキュラムは厚生労働省が明確に定めているため、基本的にどの実施主体、どの民間スクールを選んでも、学習内容に差はありません。
ただし、受講費用の分割払いや、割引などのオプションを設けている民間スクールもあるため、自身のニーズにマッチした実施主体を選ぶようにしましょう。
そのほかにも、国や自治体が提供している給付金などを活用することで、費用を抑えられるケースもあります。受験費用の割引などについては、詳しくは後述します。
受講修了までの期間
研修の受講を修了するまでの明確な期間は、実施主体や受講方法によって週あたりのスクーリング日数が異なるため、一概にはいえません。しかし、どの実施主体においても、概ね最短で1ヶ月、平均して3ヶ月程度が受講期間とされています。
通学のみで取得を目指す場合は、プライベートの予定と調整しながら受講する必要があるため、修了までに時間がかかります。なるべく早く取得を目指したい人は、「通学+通信」のコースで受講することがおすすめです。
なお、研修の修了試験に不合格となった場合には再試験が必要であり、その分、受講期間は延びてしまいます。
試験の難易度・合格基準
研修の修了試験は、70点以上が合格基準とされています。上述したように、修了試験の目的は、研修で学んだ内容の定着であり、基本的には研修内容に沿って試験問題が出題されます。難易度は高くなく、研修内容を復習しておけば十分に合格可能です。
3.介護職員初任者研修の費用を抑えて受講する方法

介護職員初任者研修の費用は、概ね5万円〜10万円ですが、割引や制度を活用すればさらに安い金額で受講できるケースもあります。費用を抑えるためには、事前に各制度やキャンペーンを把握しておくといいでしょう。
各民間スクールのキャンペーン
初任者研修を開講している民間スクールで、独自に実施している割引制度(キャンペーン)を上手く活用すると費用を抑えられます。各スクールや時期によって受講費の割引や全額負担など、さまざまなキャンペーンを実施していることがあります。
なかには、「受講費は無料だが、テキスト代は発生する」という制度もあるため、事前にいくつかの民間スクールの情報を調べ、比較検討するといいでしょう。
ハローワークの職業訓練
ハローワークでは、就職に必要なスキルや知識などの習得を目指す「ハロートレーニング(職業訓練)」と呼ばれる公的制度があります。ハロートレーニング(職業訓練)には、「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があり、介護職員初任者研修は、ハロートレーニングの対象コースのとして提供されています。
ハロートレーニングの受講料は原則無料で、テキスト代は自己負担です。希望するコースを選択することで、内容に準じたスキル、知識の習得を目指すことが可能です。受講者が特定の要件を満たす場合には、求職者支援制度における生活支援の給付金(月10万円)や、高等職業訓練促進給付金の支給を受けられる場合もあります。
さらに、研修修了後に介護の仕事を探す場合、就職までの準備経費として介護分野就職支援金(最大20万円)を借りられる場合もあります(要件あり)。
全くの未経験から介護の仕事を探すには、労力も必要です。研修の受講から、仕事探しまでを一貫して行える制度としても、ハロートレーニングは有効活用できるでしょう。
ただし、公的制度であるため、いくつかの受講要件を満たし、コースを受講するための選考に合格する必要があります。詳しくは、自身の住む自治体の窓口へ問い合わせてください。
国や自治体の補助制度
ハローワーク以外にも、国や自治体の制度を活用する方法があります。
厚生労働省には、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した場合、教育訓練経費の一部が支給される「教育訓練給付金」と呼ばれる制度があります。これは、労働者の主体的なスキルアップや能力開発を促進し、雇用の安定化を図る目的で作られた制度です。
教育訓練には3つの種類があり、介護職員初任者研修はそのうち「特定一般教育訓練」と「一般教育訓練」いずれかに該当します。
- 特定一般教育訓練:教育訓練経費の40%(上限20万円)を訓練修了後に支給
- 一般教育訓練:教育訓練経費の20%(上限10万円)を訓練修了後に支給
研修の受講(修了)後に、受講費用の一部がキャッシュバックされることが特徴です。
公的制度であるため、制度を利用するには特定の要件を満たす必要があります。詳しくは申請窓口であるハローワーク窓口に問い合わせてみましょう。
また、そのほかにも、各自治体が独自の制度を提供している場合があります。
特定の自治体では、市内在住(もしくは在学中)であり、研修修了後に市内の介護事業所にて就労が可能で、なおかつ研修の全日程に参加できる人を対象に、介護職員初任者研修を無料で受講できる制度が設けられています。
ただし、自治体の制度では、定員人数や欠席不可などの条件が課せられる場合もあります。詳しくは、自身の住む自治体の窓口に問い合わせてみましょう。
4.介護職員初任者研修を取得するメリット

介護職員初任者研修を取得するメリットを解説します。
介護の知識やスキルが身につく
介護職員初任者研修を受講すると、介護に関する知識やスキルを身につけられます。介護の基礎的な部分から学ぶため、正しい介護技術を習得でき、適切な介護ケアの実践が可能になります。
技術面だけではなく、介護の対象者となる高齢者とのコミュニケーションや、高齢者に多い特定の障害や疾患に対する理解も深められます。未経験者でも、現場で活用できる内容を習得できます。
キャリアの選択肢を広げることができる
介護職員初任者研修には、学歴や年齢などといった受験資格はありません。そのため、介護職未経験から介護業界にチャレンジしたい人の入門資格として適しています。
資格が全てではありませんが、やはり、業務に関連した資格を所持していることで、転職活動も有利になるといえます。
初任者研修を修了すると、初任者研修の上位資格として位置付けられる介護福祉士実務者研修の受講へとステップアップ可能です。実務者研修の受講には、初任者研修の修了は必須ではありませんが、初任者研修修了者は、実務者研修のうち130時間分の受講時間が免除されるため、時間的にも労力的にも大きなメリットがあります。
また、介護福祉士実務者研修の修了は、初任者研修で学んだ内容を活かせるだけでなく、介護福祉士国家試験の受験資格の1つでもあります。そのため、未経験者でもキャリアの幅を広げられるでしょう。
未経験でも自信が持てる
介護職未経験から、新たに介護業界へチャレンジした人にとっては、介護職員初任者研修を修了したことが、自信へとつながります。無資格の状態だと、業務中に不安に感じる部分も多くあるでしょう。そのため、研修を修了し資格を得ることで、根拠を持った介護ケアの実践が可能になります。自分の仕事に自信を持つことで、さらなるモチベーションの向上や、自己研鑽にもつながるでしょう。
給与アップが期待できる
介護職員初任者研修修了者と、介護関連資格の無資格者とでは、給与に差があります。厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」では、初任者研修修了者と、無資格者における給与の違いは下記の通りでした。
- 介護職員初任者研修:324,830円
- 無資格者:290,620円
(参考:令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果|厚生労働省)
上記の給与額は、常勤者の平均給与額(月給)です。両者には約34,000円の差があり、年収換算すると約400,000円の違いになります。初任者研修を修了することで、給与アップが期待できるでしょう。
5.介護職員初任者研修の資格を活かせる職場・仕事

介護職員初任者研修の資格を活かせる職場や、仕事内容について紹介します。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、通称「特養」と呼ばれる介護施設です。原則、65歳以上で、要介護3以上の人が入居対象です。
要介護認定は全部で7段階あり、要支援1〜2、要介護1〜5と、段階的に数字が大きくなるにつれて、求められる介護ケアの度合いが高くなります。つまり、「要介護3以上」を入居対象としている特養では、日常的に介護ケアが必要な比較的重度の入居者が多くいます。
入所者数は施設の規模によって異なりますが、規模の大きい施設では50名以上の施設もあるため、介護ケアを要するさまざまな入居者と関わる機会が得られるでしょう。
また、特養では、食事、入浴、排泄などの、日常生活における介護全般に携わることが求められます。初任者研修で学んだ内容を実践で活かせるほか、介護職としてのスキルアップにも適した職場環境といえます。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、日常的に介護を必要とする高齢者が入居できる介護施設です。特養のような「原則、要介護3以上」という決まりはなく、施設ごとに入居要件は異なります。
有料老人ホームは大きく3つの区分(介護付き・在宅型・健康型)に分けられており、区分によって、入居者の介護の必要度は異なることが特徴です。
介護職員としての基本的な業務は、特養と比べても大差はなく、日中には施設内レクリエーションの実施や、入居者の日常生活のサポートなどを行う施設もあります。施設によっては、要介護3以下の利用者も多いため、介護ケアの必要度が低い入居者が多い施設を選ぶと、未経験でも徐々に仕事に慣れることができるでしょう。
介護職員として求められるスキルや知識は幅広く、スキルアップとしてもおすすめの職場です。
グループホーム
グループホームは、要介護者のなかでも「認知症」の診断を受けた人を対象とした介護施設です。少人数の入居者で「ユニット」と呼ばれる単位を組み、施設内で共同生活を送ります。介護職員には、入居者の身体的介護から、日常生活のサポート、レクリエーションの実施などが求められます。
初任者研修には「認知症の理解」の科目を中心に、高齢者について学ぶ科目もあるため、研修で学んだ内容は、実務にも活かせるでしょう。特養や有料老人ホームとは異なり、比較的入居人数が少ないため、1人ひとりに寄り添った介護ケアがしやすい職場ともいえます。
デイサービス
デイサービスは、利用者が事業所に通い、介護ケアを受けるサービスです。上述した施設とは異なり、基本的には利用者は日帰りです。
デイサービスでは、要介護認定を受けた高齢者に対して、日中のレクリエーションや機能訓練などの介護ケアを提供します。また、通退所時の送迎や食事の提供なども、デイサービスの役割の1つです。
なお、デイサービスには夜勤がないため、介護職員自身のワークライフバランスを維持しやすい職場といえます。介護度が低い利用者も多く、利用者とコミュニケーションを図りながら仕事をしたい人にもおすすめです。
デイケア
デイケアは、通所リハとも呼ばれます。利用者が事業所へ通い、主に身体機能のリハビリテーションを目的とした施設です。デイケアの主な実施主体は介護老人保健施設、病院、診療所などがあげられます。医療職やリハビリ専門職によるリハビリテーションのほか、食事や入浴、排泄介助などを提供します。
デイサービスは日常生活の支援であるのに対し、デイケアは医療的な支援が主体です。そのため、医師の指示のもと、多職種連携をしながらサービスを提供することが特徴です。
訪問介護
介護ケアを必要とする利用者の自宅へ介護職員が向かい、介護ケアサービスを提供します。主な仕事は、身体介護や日常生活支援などです。ときには利用者からの困りごとを聞き、介護職員が対応できる範囲でサポートを行います。
基本的には1対1での支援となるため、利用者との密な関係性の構築ができる職場です。1人で対応しなければならないことも多いため、自ずとスキルアップや経験値につながるともいえるでしょう。
6.まとめ

介護職員初任者研修とは、介護現場で働くために必要な知識や、技術を身につけられる研修です。研修の受験資格は特にないため、介護職未経験者が、介護の入門資格として受講する研修として人気があります。研修には、合計10科目・130時間の学習時間が必要ですが、働きながらでも受講可能です。
また、研修の実施主体は、民間スクールや各自治体などであり、受講費用に差はあるものの、研修内容は共通です。スクールの割引制度や、ハローワーク、あるいは国などの制度を上手く活用することで、受講費を安く抑えられます。
初任者研修を修了することで、介護職員としてのキャリアパスを広げられるため、未経験でも介護職に挑戦してみたいと考えている人には、おすすめの研修です。
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