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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2025/10/07

#認知症ケアの現場から

足が変形している利用者さんのための車いすフットサポートへの工夫|認知症ケアの現場から(33)

文・写真/安藤祐介 care33_thumbnail.jpg

利用者さんのなかには、麻痺や骨折などの影響で、足が車いすのフットサポートに乗らない方がいます。また、股・膝・足関節が拘縮で曲がっていたり、足の筋肉が緊張で突っ張っていたり、足部がねじれたまま変形していたりと、利用者さんによってさまざまな足の状態が見られます。

参考写真

事業所によっては、その方専用の足台を作ったり、フットサポートの位置・角度が変えられる高機能の車いすで対応したりすることもありますが、一般的な車いすでは対応が難しい場面も多いと思います。

そこで本記事では、介護施設で使われる機会が多い普通型車いすで行えるフットサポートへの工夫を紹介します。木の板やバスマットなどを使い、できるだけ安価にできるやり方を中心に取り上げるので、よろしければ参考にしてください。

1.足をフットサポートに乗せる必要性

利用者さんに限らず私たちにとっても、足を地面や床に着けて過ごすのはとても大切なことです。足が床に着くことで、足底で床の存在を感じられ、足から床へと必要な力をかけながら楽に動くことができるのです。たとえば、座って食事をする場面を想像してみてください。足を床に着けているときと、足が宙に浮いているときではどちらが食べやすいでしょうか。

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足が床に着いている

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足が宙に浮いている

実際にやってみるとわかりますが、足を床に着けているときのほうが手を動かしたり体を前後左右に傾けたりするのが簡単で、食事しやすいと思います。これは足を床に着くことで地面に力をかけられて、座位を保ちやすくなるからです。表現を変えるなら、「床の力を借りながら楽に座れている状態」と言えるでしょう。

一方、足が宙に浮いているときは床の力を使えず(厳密には椅子の座面からも床を感じられますが)、自分自身で姿勢を保つ必要があるため、その分だけ体全体が動かしにくくなります。噛んだり飲み込んだりといった、口やのどの動きまでやりにくくなるでしょう。

よく介護施設では、「食事のときは足を床に着けてもらいましょう」と言われますが、これは足を床に着くことで利用者さんの座位が安定し、結果的に咀嚼・嚥下がしやすくなるからです。

2.車いすフットサポートへの工夫3選

足が床に着くと、お尻にかかる圧が足に分散されて褥瘡予防になる、足に力が入りやすくなって筋力低下・拘縮・浮腫などの予防になる、足が動かしやすくなり座り直しや立ち座りの介助量が減るなどの効果も期待できます。

しかし、利用者さんによっては、車いすの座面が高くて足が床に着かなかったり、足部の変形のために足の一部しか着かなかったりすることがあります。そこで必要になるのが車いすのフットサポートです。多くの普通型車いすは工具1つでフットサポートの高さ調整ができ、利用者さんの足の位置にフットサポートを合わせることで、足が宙に浮いているときよりも随分と動きやすくなります。

しかし、利用者さんのなかにはフットサポートの高さ調整だけでは対応しきれない足の状態の方もいます。以下では、そういった場合に行ってみてほしい工夫をご紹介しましょう。

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工夫①/足の位置が合わない場合

利用者さんの足が過度に突っ張っていたり曲がっていたりすると、通常のフットサポートでは足の位置が合わず、うまく乗らないことがあります。その場合は、木の板を必要な大きさに切り、フットサポートに取り付ける工夫を行います。

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フットサポートをはみ出すように足が伸びている方は、細長い木の板を取り付け、フットサポートの手前側に落ちるように足が曲がっている方は、前輪が接触しないように形を工夫した木の板を取り付けます。

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工夫されていない通常のフットサポート

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足が前方に伸びている方への工夫

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足が手前に落ちやすい方への工夫

取り付ける方法でおすすめなのは、フットサポートと木の板をそれぞれビニールひもで十字に縛り、ビニールひも同士を結び付けるやり方です。この方法であれば、簡単かつ丈夫に木の板を固定できます。

利用者さんの足のサイズが大きく、通常のフットサポートでは十分に乗らない場合も、同じ方法で大きめの木の板を取り付ければ、足のサイズに適したフットサポートを作れます。

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工夫②/足の角度が合わない場合

一般的なフットサポートは地面に対して平行でなく、足を乗せたり力をかけたりしやすいように角度が付いています。自動車のブレーキペダルやアクセルペダルを想像してもらえればわかりやすいかもしれません。

角度があると車いす移動の際などには便利ですが、そのせいで足底が着きにくくなる利用者さんもいます。

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地面に対して平行な角度ではない

たとえば、足関節が拘縮で硬くなっていたり、足部がねじれた状態で変形していたりすると、通常のフットサポートでは角度が合わず足が十分に乗りません。その場合は、フットサポートに斜めに切ったバスマットや段ボールなどを取り付けて、足の角度に合わせる工夫を行います。これを、工夫①で行った木の板と組み合わせれば、フットサポートの大きさと角度を利用者さんの足に合わせることができます。

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角度を付けるために工夫されたバスマット

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足首の角度が合わない①

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木の板+バスマットの工夫①

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足首の角度が合わない②

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木の板+バスマットの工夫②

バスマットを斜めに切る際は、写真のように2枚重ねて斜めにカッターを入れると、床を傷付けずに作業できます。

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工夫③/足の高さが合わない場合

股・膝・足関節に重度の拘縮があり、足が大きく曲がっている利用者さんの場合、フットサポートの高さを限界まで上げても足が乗らないことがあります。

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この場合、床に置く足台を使うにしても、相当な大きさが必要になります。状況によっては「足が宙に浮いたまま生活してもらうのもやむを得ない」と考えるケースもあるかもしれません。しかし、フットサポートの高さをかさ増しする工夫を行えば解決できます。

ホームセンターなどには発砲スチロールのブロックが販売されており、これをフットサポートの大きさに切って設置すれば、足が大きく曲がった利用者さんでも足を着けて生活することが可能です。

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発泡スチロールは軽いので、車いす全体のバランスが崩れる心配が減り、移乗介助などでフットサポートを外すときも大きな負担にはなりません。さらに、利用者さんの足の緊張が緩和してフットサポートを少し下げたくなったときは、本体のフットサポートの位置を下げれば全体が下がるので、調整も簡単です。

ブロックとフットサポートを固定する際は、工夫①で行ったのと同じように双方をビニールひもで十字に縛り、ビニールひも同士を結び付けるのがおすすめです。

3.気を付けてほしい点

足がフットサポートに乗らない利用者さんに対して、タオルなどを使って足と車いすを縛って固定するような対応を見かけることがありますが、できるだけ行わないほうがいいでしょう。

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行わないほうがいい対応

なぜなら、足の位置を無理に正しい位置に固定すると、足だけではなく体全体の緊張を高め、拘縮の進行を早めたり、痛みが出たりするケースがあるからです。

たとえば、片麻痺があり足が突っ張っている利用者さんの足を無理に曲げてフットサポートに乗せると、一見足が左右対称になってきれいに座れているように見えます。しかし、突っ張る足を無理に曲げるのは、全身の緊張を高め続けることになり、固定を外したときにますます突っ張りが強くなります。

そうすると、次にフットサポートに足を乗せるときはさらに強い力で固定する必要があり、悪循環になりかねません。そうならないためにも、利用者さんが過度な緊張のない位置に足を置いてもらい、その位置で足台を用意したり、今回ご紹介したようなフットサポートの工夫を行ったりしてください。

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安定感がある足台が置かれている

たとえ体が左右非対称であっても、足を楽な位置に置けたほうが利用者さんにとって快適な座位になります。

詳しくは、こちらの記事の【ポイント2/正しい座位を押し付けない】を参考にしてください。

まとめ

今回は「足が変形している利用者さんのための車いすフットサポートへの工夫」をお伝えしました。足部は体の中心から離れており、お尻や背中に比べると重要性は高くないように思えるかもしれません。しかし、立ったり歩いたりするときに唯一地面と接しているのが足であり、座っているときにも足が地面に着いているかどうかで快適さが変わります。

「地に足を着ける」という言葉があるように、足がどっしりと大地に着いているのは人の暮らしにとって大切なことです。足が床に着かない利用者さんがいたときは、今回紹介した工夫を参考にしていただけると幸いです。

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安藤祐介(Yusuke Ando)

作業療法士

2007年健康科学大学を卒業。作業療法士免許を取得し、介護老人保健施設ケアセンターゆうゆうに入職。施設内では認知症専門フロアで暮らす利用者47名の生活リハビリを担当し、施設外では介護に関する講演・執筆・動画配信を行っている。

安藤祐介の執筆・監修記事

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