認知症利用者さんが楽しめるレクリエーション「ふわパタ風船シュート」|認知症ケアの現場から(35)
文・写真/安藤祐介認知症利用者さんへのレクリエーション(以下、レク)に悩むことがありませんか?認知症があると他の利用者さんとの突発的なトラブルが起きやすかったり、職員の見守りが欠かせなかったりして、みんなが楽しめるレクを実施するのは、けっして簡単ではありません。
しかし、レクは認知症がある利用者さんの心身を賦活し、「楽しかった!」「参加して良かった!」と感じてもらえる貴重な時間です。また、認知症ケアにおける重要なアプローチの1つでもあります。本記事では、介護老人保健施設の認知症フロアで働く筆者が、現場で実施しやすく、認知症の利用者さんの反応も良いレクを厳選してご紹介します。
1.認知症利用者さんへのレクのポイント
ルールを簡単にする
認知症のある利用者さんは、ルールを理解するのが苦手です。そのため、紅組と白組に分かれる、手だけを使って行う、落ちたボールを拾ってはいけないなど、ルールが複雑なほど守れる方と守れない方の差ができてしまいます。認知機能に応じてグループ分けができる場合は問題ありませんが、不特定多数の利用者さんが参加する場合は、誰にでもわかりやすい簡単なルールにすることが大切です。
競技形式は控える
認知症の有無に限った話ではありませんが、利用者さんの中には負けず嫌いの方や感情の起伏が激しい方がおり、レクに夢中になるあまり、他者と口論になったり手が出たりといったトラブルに発展してしまうことがあります。特に、勝ち負けを競ったり点数で順位をつけたりする場合に起こりやすいため、トラブルが懸念される場合は競技形式を控え、参加者全員で協力して行えるようなものや、一人ひとりが個別に楽しめるものを選ぶと良いでしょう。
ただし、競技形式のレクには、「勝ちたい! 負けたくない!」という真剣さが芽生えたり、チームの連帯感が生まれたりするメリットもあるため、参加者同士の関係性や席次などに配慮しながら、上手に取り入れてみてください。
職員が少なくても安全に行える内容にする
介護現場は人手不足なことが多く、レクに多くの人員を割けないことがあります。そのため、職員が複数名いないと安全に実施できなかったり、円滑に進行できなかったりする内容は避けたほうが無難です。例えば、ボーリングゲームのように、毎回倒れたピンを並べ直す必要があるものは、職員の仕事量が多くなり1名では実施が難しい場合もあります。
理想的には、利用者さんたちが自主的に楽しめて、その状況を見守る職員が1名いれば安全を確保できるような内容にするのが良いでしょう。
2.ふわパタ風船シュートのやり方
期待できる効果
- 全身を動かすことで、体力の維持・向上につながる
- 心身に活力を与えることで、認知症の症状緩和につながる
- 楽しい時間を過ごすことで、気分転換ができる
- 活動と休息のメリハリがついて、生活リズムが整う
- 他の利用者さんと交流することで、孤独感が軽減される
- 職員との関係性が良好になり、日々の介護が円滑になる
準備するもの
すべて100円ショップで購入できるもので準備します。
●うちわ:人数分用意します。さまざまな色を用意すると選ぶ楽しみが増えます。
※購入品:セリア オリジナルデコレーションうちわ 蛍光カラー
●風船:サイズは6インチ(約15cm)~9インチ(約22cm)程度。ゴールに見立てたざるに入る大きさにします。
※購入品:セリア ポップバルーン9インチ 9個入り
●ざる:風船が入るゴールとして使用します。ゴールをざるにすると、風船が中に入ったのがわかるほか、うちわの風を受けて風船が動くので面白さが増します。
※購入品:セリア バブルざる 29型 約290×290×120(H)mm
●ポール:高い位置にゴールを設置するために使用します。
※購入品:セリア プールスティック110cm
●木材
ポールを安定させるために使用します。
※購入品:セリア MDFボード 30×30×0.8cm(土台として使用)/セリア 桐材 45×3×3cm(土台に取り付ける支柱として使用)
レク用品の作り方
①購入した木材(木の板と柱)を組み合わせて、ポールを固定する土台を作ります。
②ポールを4つ結び付けて土台に差し込み、上にざるを設置したら完成です。
レクの流れ・やり方
①10名程度の利用者さんにテーブルに集まってもらいます。
●身体機能の適応:椅子や車いすに座れる方、うちわを持てる方
●認知機能の適応:認知症が軽度~中程度の方
上記はあくまで目安です。例えば、うちわが持てない方や重度の認知症がある方にも参加していただくと、風船の行方を目で追ったり場の雰囲気を楽しんだりする姿が見られることがあるので、実施する中で適応性を探ってみてください。
②好きなうちわを選んでもらい、準備運動をします。レクがはじまる前に、場の雰囲気を温める声かけや準備運動などを行うと本番がより盛り上がります。
(介入の一例)
・うちわで自分をあおぐ、横の人や正面の人をやさしくあおぐ
・うちわの柄をクルクル回す、小さく~大きく8の字を描く
・うちわの色を選んだ理由やうちわにまつわる思い出などを聞く
③風船に空気を入れます。
職員が入れても良いですが、身体機能が高い利用者さんにお願いするのも良いでしょう。空気を多めに入れると、少ない力でもフワフワ動く風船になります。
④うちわを使って風船をゴールに入れてもらいます。
全員で風船をゴールに入れることを目指します。うちわであおいでも直接叩いても構いません。職員は、風船が利用者さんの手が届かない所に行ったときに介入します。

レクのバリエーション
こちらのレクにはいくつかのバリエーションを加えることができます。参加している利用者さんの身体機能や、内容への慣れに応じて難易度を変えると変化があって面白いです。
- 風船の数:1つがいちばん簡単。2~3個と増えるほど難しい。
- 風船の大きさ:小さいほど入りやすく簡単。大きいほど入りにくくなり難しい。
- ゴールの数:1つがいちばん簡単。2~3つと増えるほど難しい。
- ポールの高さ:ポールが低いほど簡単。高くなるほど難しい。
- ざるの大きさ:ゴールが大きいほど簡単。小さいほど入りにくくなり難しい。
- うちわの大きさ:小さいと軽くてあおぎやすい。大きいと重いが風船には当たりやすい。
- ゴールに入った風船を、下からうちわであおいで出す。
- ざるのかわりに大きなポリ袋をポールにかぶせ、下からうちわであおいで出す。
まとめ
今回は、認知症利用者さんが楽しめるレクリエーションとして「ふわパタ風船シュート」をご紹介しました。こちらは認知症が軽度から中度程度の方まで適応があり、身体機能としては座位が保ててうちわが持てれば参加可能です。風船を目で追う、四方に手を伸ばす、うちわでくり返しあおぐといった動きは全身の適度な運動になり、レク後の水分摂取が進みやすくなることもあります。
うちわや風船といったアイテムを使ったり、目を引きやすいようにカラフルな色合いにしたりすることで興味・関心を持ってくれる認知症の利用者さんもいるので、レクに悩んだときの参考にしていただければ幸いです。
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