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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2026/03/13

#認知症ケアの現場から

利用者に心地よい介護技術「寝返り介助のポイント」|認知症ケアの現場から(39)

文・写真/安藤祐介 e50dd9a9adb54ef351e44d956ca099b982b5cf89.jpeg

介護技術をひと言でいうなら「人の動きの支援」です。人の動きは寝返りや立ち上がりといった基本的なものから、食事・排泄・入浴といった複雑なものまで幅広くあり、介護者はそれらを介護技術で支援します。

言葉で書くと簡単そうですが、実際には介護技術に難しさを感じる人も少なくないと思います。その理由は、多くの人が「考えなくても動けている」からです。街ゆく人たちの中に、「どうやって歩こう?」「どうやって階段を登ろう?」と考えながら動いている人はほとんどいませんよね。そのため、いざ介護者となり利用者さんの動きを手伝おうと思うと、どうすれば良いのかわからずにとまどうのです。

そこで、本記事では作業療法士である筆者が、現場で生かしやすい介護技術を解説します。今回は「寝返り介助」の技術について紹介しましょう。

1.ポイント①:上半身と下半身の介助に時間差をつける

寝返りは、上半身と下半身の介助に時間差をつけながら行いましょう。人にとって、上半身と下半身を同時に動かして寝返るほうが難しいからです。みなさんもベッドで寝返る時、先に下半身を少し動かしてから上半身を動かす、もしくはその逆の動きで寝返っているのではないでしょうか。

上半身と下半身の動きに多少のタイムラグをつけることで、自然と体の「ねじれ」が生まれ、余計な力が必要ない心地よい動きになります。一方、上半身と下半身を同時に動かそうとすると、体をねじらずに動くため、利用者にとって不自然な動きになります。

参考写真

△好ましくない介助...上半身と下半身を同じタイミングで介助

参考写真

〇好ましい介助...上半身と下半身に時間差をつけて介助

2. ポイント②:反対方向に少し動く

本格的に寝返り介助を行う前に、寝返る反対方向に少し動いてもらいましょう。例えば、左側に寝返るのであれば、右側に少し動いてから左側に寝返ってもらいます。こうすることで寝返る動きに軽く勢いをつけられ、より少ない力で寝返ってもらえます。

私たちも椅子から立ち上がる時などに、少しでも楽に立つために反動をつけることがありますが、ベッド上の動きも同じです。特に高齢の利用者さんの場合は、軽く勢いをつけることで低下しがちな筋力を補えます。

参考写真

△好ましくない介助...静止した状態からそのまま介助

参考写真

〇好ましい介助...反対側に少し動いてもらってから介助

3. ポイント③:半身を下げる

寝返り介助は一見すると半身を上げる動きに見えますが、実はベッドに向かって下がる動きをしています。例えば、左側に寝返る場合、右半身を上に持ち上げるように動くより、左半身を下に下げるように動くほうが少ない力で動けます。地球には重力があるため、右半身を上げるには、左半身を下げたほうが楽に動けるのです。

寝返り介助というと、つい寝返ってもらうことに注目しがちですが、「重力を使って半身を下げる動き」であるという点に気づくと、利用者さんの体に触れる位置や動きの促し方も変わると思います。

参考写真

△好ましくない介助...半身を上げるように介助

参考写真

〇好ましい介助...半身を下げるように介助

4. ポイント④:全身をねじる

寝返りは、"全身をねじる"動きです。例えば、寝返りを打つ時に足先を軽く押さえておくと、足がねじれずに動きにくくなります。足先の影響はわずかだと思われがちですが、人の体はすべてつながっているため、一か所の動きが全身に影響するのです。もちろん頭や腕、胸なども寝返りやすさに関係しており、左側に寝返る時におなかの表面を軽く右側に引いておくだけでも、おなかがねじりにくくなり、寝返りが大変になります。

逆に、ねじれを手伝うようにおなかを左側に促せば、寝返りが楽になります。介助の際、利用者さんが動きにくそうな体の場所(特に緊張が高く硬いところ)があれば、そこに触れて全身のねじれを支援してみてください。

参考写真

△好ましくない介助...いつも同じところに触れる

参考写真

〇好ましい介助...利用者が動きにくいところに触れる

5. ポイント⑤:頭を寝返る方向に向けてもらう

先に紹介したように、人の全身はつながっており、寝返りには体のすべての場所が大切になります。中でも欠かせないのが頭の向きや動きです。例えば、左側に寝返る時に、頭が右側を向いていたらどうでしょう。寝返りにくいのが一目瞭然だと思います。

頭は体の動きの司令塔のようなもので、私たちも寝返る時には、まず頭を寝返る方向に向けます。動く方向と見える方向が一致することで、全身を同じ方向にねじる準備ができるからです。また、動く先の空間を目で確認できれば、安心感も高まります。恐怖心や不安感が強い利用者の場合は、より安心して動いてもらえるように、介護者が寝返る方向に移動すると良いでしょう。

参考写真

△好ましくない介助...頭が寝返る方向と反対を向いている

参考写真

〇好ましい介助...頭が寝返る方向を向いている

6. ポイント⑥:片足でベッドを押してもらう

寝返る時は、片膝を立ててもらいましょう。中には、両膝を立ててもらう介護者もいると思いますが、それだと両足がパタンと横に倒れるような動きになり、自分の力では寝返りしにくくなります。

一方、片膝を立てて足裏でベッドを押し、その力を下腿→膝→大腿→骨盤→背骨と全身に伝えていけば、体をねじりながら寝返る動きを促しやすくなります。また、片膝だけを立てることで、もう片方の足が下方向に下がりやすくなるため、下半身をより動かしやすくなります。

参考写真

△好ましくない介助...両膝を立てて横に倒す介助

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〇好ましい介助...片膝を立てて足裏でベッドを押してもらう介助

7. ポイント⑦:手を寝返る方向に置いてもらう

動きの大まかな方向は、"手"で決まります。例えば、座った状態で右手を斜め前に出し、前屈みになってみてください。多くの人が右手に引かれるようにして斜め前の方向に動くと思います。これは手と全身がつながっているためで、寝返りの時も手を寝返る方向に置いてもらえば、全身の動きが円滑になります。

ただし、利用者さんによって好ましい手の置きどころや角度が変わるため、上方向・横方向・下方向の三つから選んでもらいながら、心地よく寝返れる手の位置を探ってみてください。

参考写真

△好ましくない介助...手を組んでもらう

参考写真

〇好ましい介助...手を寝返る方向に置いてもらう

8. ポイント⑧:体のねじれに沿って介助する

体が緊張や拘縮でねじれている利用者さんの場合は、無理に正しい姿勢に戻してから寝返り介助するのではなく、ねじれた姿勢に沿って介助してみてください。手足を左右対称な正しい位置に戻そうとすると、逆に利用者さんの体の緊張が高まりかねないので注意しましょう。

体がねじれているのは、「ねじりながら寝返る」という動きの準備が整った状態とも考えられます。例えば、左足がねじれた利用者さんは、「左足をねじる」という準備ができており、あとはそのねじれを全身に広げていけば、「利用者さんのねじれ=自らやっている動き」を尊重しながら寝返ることができるのです。

参考写真

△好ましくない介助...手足のねじれを戻してから介助

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〇好ましい介助...体のねじれに沿って介助

9. ポイント⑨:安定した環境で介助する

寝返り介助は、安定したベッド・マットレスの上で行ったほうが楽です。例えば、中身が空気のエアマットや低反発の柔らかいマットレスは、寝ると体が沈み込みます。一見すると快適そうですが「体が沈む=動きにくい状態」であり、健康な人でも自由には動けず、長時間寝るには適していません。

筋力が低下した利用者さんは、私たち以上に動きにくいため、手足で十分にベッドを押せなかったり、体を安定させようと過度に緊張が高まったりして、介助量が増えてしまいます。褥瘡治療などの特別な理由がない限り、柔らかいマットレスを避け、体が沈まず安定感があるマットレスを選びましょう。それによって、寝返り介助が行いやすくなるはずです。

参考写真

△好ましくない介助...体が沈みやすい不安定なマットレスで介助

参考写真

〇好ましい介助...体が支えられる安定したマットレスで介助

まとめ

今回は、利用者に心地よい介護技術として、「寝返り介助のポイント」をお伝えしました。なお、紹介した介護技術は、動きの学習の専門家である谷口奨先生が提唱するシンプルラーニング・予防介助の考えを参考にしています。

1つひとつのポイントを組み合わせ、介助のたびに経験を積み重ねれば、お互いにとって楽な動きが身につきます。介護技術に悩んだ時は、ぜひ参考にしてください。

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安藤祐介(Yusuke Ando)

作業療法士

2007年健康科学大学を卒業。作業療法士免許を取得し、介護老人保健施設ケアセンターゆうゆうに入職。施設内では認知症専門フロアで暮らす利用者47名の生活リハビリを担当し、施設外では介護に関する講演・執筆・動画配信を行っている。

安藤祐介の執筆・監修記事

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