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ニュース 介護業界ニュース 2025/03/28

#インタビュー

パーソン・センタード・ケアは何から始めれば良い?注意点や心理的ニーズを把握する方法も紹介

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介護のみらいラボ編集部コメント

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パーソン・センタード・ケアという認知症ケアを知っていますか。パーソン・センタード・ケアとは、施設の規則や介護者の都合に合わせるのではなく、介護を受ける方の「その人らしさ」を重視したケアのことです。始め方や実施時の注意点について、パーソンセンタードケア研究会講師の寺田真理子氏に話を聞いてみました。

1.パーソン・センタード・ケアの取り入れ方

――パーソン・センタード・ケアを取り入れたいと思っても、なかなか難しいと感じている方も多いと思います。まずは何から始めることがおすすめですか。

まずは、利用者さんの行動の理由を考えてみることがおすすめです。例えば、施設内をずっと歩き回っているAさんに対して、「お部屋に戻りましょう」などと声をかけて、歩くのをやめさせようとするスタッフさんは多いでしょう。しかし、Aさんは何か目的があって歩いているため、そもそもAさんはなぜ歩くのかを考えることが重要です。もしかしたら、トイレに行きたいけれど場所が分からないのかもしれません。また、会社に行っていた頃のことを思い出して、駅に向かおうとしているなどの理由も考えられます。ご本人に歩き回る理由を尋ねてみて、その内容に応じた声をかけるようにすると、段々行動が落ち着いてくるケースも多く見られます。この人は認知症だから仕方ないと考えるのではなく、「どうしてこのような行動をするのだろう」という目線を取り入れてみてください。

他にも、スタッフの皆さんが普段使っている言葉を変えてみることも効果的です。言葉の変化は、意識や行動の変化に繋がるためです。先日パーソン・センタード・ケアの研修を担当した際に、ある施設の方が「今までスタッフ同士の会議の際には、『利用者Bさんの〇〇という問題について話し合いましょう』と言っていたけれど、この問題という言葉には、"Bさん自身が悪いことをしている"というニュアンスがあるので変える必要があると思った」とおっしゃっていました。言葉は行動や意識に直結するため、普段から使っている言葉によっては、「この人は認知症だから適当に扱っても良い」という考えに繋がりかねません。また、ダメといった言葉も、利用者さんの意思を否定する際に使用しがちです。行動の理由を考えることも、言葉を変えることも、どちらも今日から気軽に試せるものなので、ぜひ取り入れてみてください。

2.パーソン・センタード・ケア実施時の注意点

――パーソン・センタード・ケアを実施する際の注意点はありますか。

一度に全てを変えようとしないことです。先ほど2つの方法をご紹介しましたが、これらにいっぺんに取り組むのは簡単ではありません。また、介護施設ではやるべきことが非常に多くあるため、あれもこれもとなると、本来の業務がおろそかになってしまいます。パーソン・センタード・ケアを重視することは、施設のカルチャーを変えることにも繋がります。そのため、まずは身近なものから始め、一つずつ無理なく進めていきましょう。

パーソン・センタード・ケア実施時の注意点

3.個別の対応が難しい時の解決策

――介護施設だと、どうしても個別の対応が難しいケースもあるかと思いますが、その際におすすめの方法があれば教えてください。

パーソン・センタード・ケアを取り入れている介護施設のなかには、「特定の方を特別扱いする日」を設けている施設もあります。例えば、その日だけは起床時間を遅くできるなど、施設のスケジュールと多少異なった行動が可能になるイメージです。特別扱いと聞くとあまり良いイメージがないかもしれませんが、その日によって対象となる利用者さんを変えれば、結果として全員に同じ対応をすることができますよね。いきなり同じような仕組みを取り入れることは難しいと思うので、まずは可能な範囲内で利用者さんの意思を確認したり、反映させたりすることがおすすめです。

4.パーソン・センタード・ケアは前向きな効果がたくさん。身構えずに取り入れて

――パーソン・センタード・ケアを取り入れてみたいと考えているスタッフや施設に向けて、メッセージをお願いします。

パーソン・センタード・ケアは難しそうという印象を持たれることが多いですが、実際には非常に取り組みやすいものです。例えばコミュニケーションが難しい利用者さんであっても、普段の生活の様子から好みや苦手を把握し、それに応じた対応をすることは可能なのではないでしょうか。「お花が飾ってあると嬉しそうにしている」「黄色のアイテムが好きなようだ」など、日常生活における様子をよく見ることで、その利用者さんの人となりはなんとなく理解できるものです。

パーソン・センタード・ケアに取り組むと、介護の仕事が楽しくなったり、利用者さんとの関係性が向上したりするなど、前向きな効果がたくさんあるため、身構えずに取り入れていただければと考えています。また、パーソン・センタード・ケアの基本については、同ケアの提唱者であるトム・キットウッド氏の著書『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと』にて詳しく解説されています。パーソン・センタード・ケアに興味を持たれた方は、ぜひ一度手にとっていただければ嬉しいです。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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