Produce by マイナビ介護職 マイナビ介護職

介護の未来ラボ -根を張って未来へ伸びる-

ニュース 医療介護最新ニュース 2020/06/26

医師・長尾先生が解説 COVID-19による介護崩壊を防ごう

no-image.jpg

介護のみらいラボ編集部コメント

長尾クリニックの院長長尾先生が、日本の介護施設で実際に起きた新型コロナウイルス集団感染による混乱を例に挙げ、介護施設へのアドバイスを解説しています。また、実際の感染よりも影響が多いかもしれないコロナ恐怖による「ステイホーム症候群」についても説明しています。

COVID-19は高齢者の問題

6月8日現在、日本のCOVID-19による死亡者は900人強である。死亡者の9割が高齢者であり、40歳未満の死亡者は3人という数字は特記すべき事実であろう。
100年前のスペイン風邪では主に若年者が命を落としたのと対照的である。
「命」という視点から見ると高齢者は若者の100倍以上危険である。
COVID-19は高齢者の問題そのものであり、在宅療養や介護施設における課題である。欧州においても死亡者の半数は高齢者施設という国がある。

しかしマスコミは学校の休校や夜の街での感染拡大や院内感染を熱心に報じる一方、もっとも苦境に立たされている介護現場をあまり報じない。
同じ地域にある介護施設の現状が医療側に共有されていないことは大変残念である。
緊急事態宣言が解除され、やや落ち着きを取り戻した今こそ、医療機関だけでなく介護施設におけるCOVID-19対応を練り直すべき時だろう。

札幌市の社会福祉法人が運営する介護老人保健施設「茨戸アカシアハイツ」におけるCOVID-19の集団感染をご存じだろうか。
入所者と職員の合計92名が施設内感染し、16名が亡くなられた。
感染者を受け入れる病床がひっ迫していたため保健所長が「施設で看取って」という趣旨の指示をしたという。

つまり感染が判明しても医療を受けられず家族に会えないまま亡くなっている。
介護スタッフはほとんど辞め、残ったスタッフは自家用車に寝泊まりしながら奮闘した。1日2食しか提供できず、まさに野戦病院になった介護施設。
ようやく国や北海道が支援に入ったそうだが施設のHPを見ると夜勤の看護師を「一晩8万5000円で急募」とある。
アカシアハイツの事例は日本中どこでも起きる可能性がある。

COVID-19は高齢者の問題

介護施設や地域で暮らす認知症の人のCOVID-19対策はどうあるべきか。
マスクとソーシャルディスタンス、三密を避けよと言われるが介護施設においては困難な部分が大きい。
認知症の人にマスクをさせるのは難しく、スタッフのマスクを怖がる人もいる。療養環境の急激な変化に適応できない人もいる。
そもそも介護施設にはマスクやフェースシールド、ガウンなどの個人防護具(PPE)の備蓄がない。仮に少しあっても使い捨てにできない。

PPEの配布は病院優先で開業医や在宅医にすら届いていない。
そんな介護スタッフにPPEや施設内のゾーニングを指導する職種は同じ地域の医療者しかいない。
医療・介護スタッフが「かからない、持ち込まない」が大切だ。
だから医療スタッフだけでなく、介護スタッフも定期的にPCR検査や抗原検査、抗体検査を受けられるような体制づくりが急がれる。
介護施設や在宅におけるCOVID-19対策の実践的指針がないことから様々な混乱が起きている。
認知症の人の尊厳や幸福を考えた時、臨機応変にできる範囲で行うしかないのか。

介護施設の経営者は平時から雇用をはじめとする事業運営に大きな不安を抱えている。
そんな介護施設でCOVID-19感染が疑われた時、誰に相談するべきか。
保健所や医療機関との速やかな情報共有が大切である。
しかし介護現場は人的資源もPPEもひっ迫している。
不足している介護スタッフは外出や会食を制限されていてストレスが大きい。
偏見や差別で逃げ出すスタッフもいる。
医療崩壊が強調されているが、医療資源が乏しい高齢者施設における介護崩壊にも目を向けるべきである。
介護崩壊は医療崩壊よりも「連鎖」しやすい。
利用者が日替わりでデイサービスやショートステイなどの複数のサービスを行き来するので、発熱情報がリアルタイムで共有されにくい。

その結果、複数の施設でクラスターが発生してしまう。
感染者が一人でも出たらデイサービスやショートステイは閉鎖となる。
すると認知症の人が行き場を失い居宅介護の需要が高まるが、そこも人材不足である。
介護崩壊の連鎖は必ず医療に波及する。
そんな悪循環を防ぐためにも、介護スタッフが極端に不足した場合は地域の社会福祉法人や医療法人に迷わず応援を求めるべきだ。
行政や医師会がその仲介をすることで流れはスムースになる。
そのような「助け合い」システムで介護崩壊を防げる。
このような連携も「地域包括ケアシステム」の一部ではないだろうか。

ステイホーム症候群

在宅患者さんはどうだろう。
COVID-19を必要以上に怖がりデイサービスやショートステイを拒否する要介護者や家族が少なからずいる。
マスコミが有名人のCOVID-19死を煽りすぎたため、不安が引き起こすストレス病の方が圧倒的に多くなっている。
院内感染の恐怖から医療機関に入ることができない人も多い。
2カ月間も自宅に閉じこもることはすさまじいストレスである。

その結果、副腎からアドレナリンやコルチゾールが出て免疫力は低下する。
交感神経の緊張状態が続くと、微熱、倦怠感、過換気症候群、咳、うつ、不安、不眠、フレイル、帯状疱疹など様々な症状が出る。
筆者はこれらを「ステイホーム症候群」と呼んでいる。
高齢者のステイホームは身体機能と認知機能の低下を引き起こす。

多くの介護施設は2カ月間以上、外出禁止だけでなく家族の面会謝絶を続けている。
在宅医や訪問看護師の入館もお断り、という施設もある。
夏まで解除しないなどと公言する施設もある。
万一、感染者が出ると閉鎖になるので入所者の軟禁状態が続いている。
長期間にわたり外出しないと運動機能と認知機能は日増しに低下する。
紫外線を浴びず幽閉すると必ず昼夜逆転が起きる。
イライラや暴言や暴力など認知症の周辺症状が激しくなる。
要介護度が高まり、命を縮める人も多く出る。
高齢者や認知症の人こそ朝日を浴びよう。
紫外線でビタミンDを活性化しよう。
介護スタッフにそう説明してもなかなか実行されない。
ならば実行してもらうために、医療者がCOVID-19に関する医療的知識を地域の介護スタッフに分かり易く教えるべきだ。

介護施設だけでも5類に

COVID-19は2月1日に指定感染症(2類感染症相当)に指定された。
2類には他にSARSやMERSや結核がある。
感染が確認されると保健所の指示で強制的に病院等に隔離されるのが2類である。

しかし介護施設には周辺症状のため入院生活ができない認知症高齢者がいる。
PCR陽性が判明し一旦入院しても、数日後に寝たきりになって戻ってきた超高齢者がいたと聞いた。
超高齢者や認知症の人には強制入院という言葉はなじまない。

もはやCOVID-19そのものよりも感染不安による二次被害の方が大きい。
2類指定という法律の縛りが高齢者施設や在宅医の柔軟な対応を妨げ混乱を起こし、集団感染を増幅していないか。
COVID-19を一日も早くインフルエンザと同じ5類に落とすことを強く望む。
せめて高齢者や介護施設だけでも5類に落とせないものか。
高齢者や介護施設でのCOVID-19対応を考えた時、アカシアハイツのように保健所だけでは対応しきれない。
診療所や施設でPPE下でのPCR検査が可能にならないものか。
早期診断、そして早期隔離、早期治療や病院搬送のトリアージという戦略を練り直すべきだ。

コロナは社会を大きく変えた。
しかし介護は三密が避けられず、変わりたくても変わることができない領域だ。
テレワークでオムツ交換ができるはずがない。
だから私達医療者が地域の介護スタッフにPPEやCOVID-19の知識を伝えることで元気にすべきだ。
第二波、三波では医療崩壊よりも介護崩壊のほうが心配である。
COVID-19による介護崩壊を防ぐのは地域の医療者である。
医療と介護の連携が謳われてきたが、感染症こそ連携が重要である。

【日本全国電話・メール・WEB相談OK】介護職の無料転職サポートに申し込む

出典:Web医事新報

SNSシェア