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ニュース 医療介護最新ニュース 2020/08/20

【結城康博教授解説】介護の派遣会社が儲かっている

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《 淑徳大学総合福祉学部 結城康博教授 》

介護のみらいラボ編集部コメント

介護現場の派遣会社への依存が高まっていることに、介護業界で著名な結城教授が苦言を呈しました。8月18日の介護のみらいラボニュースでもあるように、人手不足を補うため現場、特に訪問看護・介護で派遣料金の支払い率が上がっています。
何が問題なのか、どうしたらいいのかを結城教授が語っています。

最初に言っておきますが、私は派遣会社の悪口を言うつもりは全くありません。彼らは周到にビジネスをしているだけで、人材確保に一定の貢献をしているとも思います。当たり前ですが悪いことは何もしていません。【結城康博】

景気悪化で人が集まる、は過去の話

新型コロナウイルスの影響はやはり大きいですね。介護現場ではスタッフの欠員が出やすくなり、人手不足に拍車がかかっています。元々あった問題がより顕在化した、来たるべき深刻な未来がより早く訪れた、といった感じでしょうか。

7月31日に公表された有効求人倍率をみると、6月は全体で1.11倍(季節調整値)。雇用情勢の悪化が響き、2014年10月以来5年8ヵ月ぶりの低水準となりました。一方、職業別で「介護サービス」をみると4.04倍。昨年よりは少し下がった(▲0.17)ものの、依然として極めて高い水準にあります。

仕事を探している人が入ってきてくれていない − 。この数字は介護業界の厳しい現状を表しています。

確かに、コロナ禍で介護職の重要性が社会的に再認識されたことは事実でしょう。ただ同時に、多くの人が「リスクのある大変な仕事だ」と改めて思い知ることにもなりました。

景気が悪くなれば人は集まる、というセオリーも今や過去のもの。給料の低さもあって敬遠する失業者が更に増え、介護職は以前ほど雇用の調整弁として機能しなくなりました。

職員にとっても派遣がお得

こうした状況のなか、派遣会社に依存する事業所が増えているようです。

昨年の介護労働実態調査によると、派遣労働者を受け入れている事業所の割合は前年(13.4%)より0.9ポイント高い14.3%。これら受け入れ事業所では、介護事業収入に占める派遣料金の割合が平均で8.6%にのぼっており、訪問介護や訪問看護、通所介護では10%を超えています。かなりの規模だと言えるのではないでしょうか。

しかもこれはコロナ禍が起きる前の昨年10月のデータです。今は派遣会社に頼らざるを得ない事業所が更に増えたと推察されます。

そこで私は複数の派遣会社の関係者に話を聞きました。やはりニーズが一段と高まっているようです。問い合わせも増えており、かなり活況を呈しているとの実感を伺ってきました。

介護現場に関わりたいと思っている人も、派遣会社に登録している人が非常に多いのが実情です。要するに派遣の方が"お得"なんですよね。社員より柔軟に働けるし、重い責任を負わされることもありません。嫌になったらすぐ辞めて、他の事業所を探せばいいんです。高齢者から感謝される仕事のやりがいは同じですし、給料もそこまで大きく変わりません。はっきり言って良いことだらけでしょう。

経営者も人員配置基準を満たさなければいけないので、とにかく派遣に頼りがちとなります。結果、プロパーの職員に負担が重くのしかかることになりました。派遣に任せられない重要な業務や責任を彼らが抱え込み、疲弊して辞めていくという悪循環が一部で拡がりつつあります。

入職の呼び水の拡充を

私はこの動きに強い懸念を表明させて頂きたい。高齢者の尊厳を守る質の高いサービスを提供していくためには、プロパーの現場リーダーやサ責らをしっかりと確保、養成していける環境の整備が欠かせません。派遣はあくまでも補完。責任を持って仕事に向き合う職員がやはりどうしても必要なんです。

職員の頭数さえ揃えればいい − 。そう考えている経営者がもしいるならば、それは問題だと言わざるを得ません。派遣会社を使うこと自体はやむを得ないとしても、プロパーを育てることの重要性も考慮した運営を是非お願いしたい。

国も何らかの手を打つべきです。新たに介護職に就いた人に、例えば30万円を給付するのはどうでしょう。今も似たような呼び水があります(再就職準備金)が、それを思い切って拡充する案です。

これで求人広告の見栄えはぐっと良くなり、事業所は自らの採用力を高めることが可能となります。派遣会社も同様のことを行っているので、それを参考に制度を設計するのが得策でしょう。介護報酬が派遣会社に流れる構図を少し変えられるし、プロパーの職員を養成することにもつながっていきます。

コロナ禍で新たな職を探している人がいるのですから、彼らを積極的に受け入れる施策を講じない手はありません。もちろん、介護職全体の処遇改善に引き続き力を入れることも非常に重要となるでしょう。

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出典:介護のニュースサイトJOINT

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