グループホームの夜勤体制、基準緩和に慎重論相次ぐ 「職員の負担が増す」
《 社保審・介護給付費分科会 9日 》
来年4月の介護報酬改定に向けた協議を重ねている審議会の9日の会合 − 。厚生労働省はグループホームを取り上げ、夜間の職員体制のあり方をどう考えるべきか改めて尋ねた。【青木太志】
経営サイドが要請している人員配置基準の緩和について、多くの委員が否定的な立場を表明。「既存の職員の負担が増す」「サービスの質の低下につながる」などと"副作用"を懸念する声が相次いだ。
厚労省は今後、方針を決定する年末に向けて引き続き調整を進める構えだ。慎重論が大勢を占めるなか、緩和を強行するのは非常に難しいとみられる。担当者は会合後、「今日の議論も踏まえてしっかり検討していきたい」と述べるに留めた。
現行、グループホームの夜勤の人員配置基準は1ユニットごとに1人。以前は2ユニットで1人も認められていたが、火災で悲惨な結果を招いたこともあって2012年度から厳格化された。
これを緩和して欲しいという要請は、深刻な人手不足に苦しむ事業者が主に行っている。日本グループホーム協会は8月の審議会のヒアリングで、以下のように提案した。
「見守り機器の導入やオンコールの緊急対応要員の確保などにより、入居者に支障がなく、安全が図られる場合には、事業所の状況に応じて柔軟に対応できるよう、2ユニットで1人の夜勤も認めて頂きたい」
9日の会合でも、施設の経営者で組織する団体を代表する委員が、「人材確保が非常に厳しく、やむを得ず緩和せざるを得ないような実態がある」と吐露した。
これに対し、「ユニットケアの理念(*)を守るべき」「既存の職員の負担が更に重くなり、離職につながってしまう」といった反対意見が続出。自然災害が増加傾向にあることを念頭に、「利用者の安全を守る観点から緩和すべきでない」との指摘もなされた。
* 厚労省はこの日の資料で、「1人の職員が少数の利用者に関わることによって、その入居者の生い立ちや経歴、生活の糧としているもの、趣味・嗜好に至るまでを把握し、それを前提として個別ケアを行うこと」と説明した。
人手不足を論拠に人員配置基準の緩和を求める主張は、グループホームだけでなくサービス横断的に展開されている。ただ現場の関係者の反発は根強く、次の改定では実行されても一部に留まる公算が大きい。その後も争点としては残る。ロボットやセンサー、ICTなどの活用と絡めて具体化できないかという検討が、来年度以降も政府内で続けられる見通しだ。
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介護のみらいラボ編集部コメント
グループホームの夜勤体制の人員緩和について介護給付分科会で綱引きが続いています。
一部の施設管理者は人員不足を理由に夜中の2ユニットに介護職ひとりの配置で済むように要望しています。しかし1ユニットは最低5人、最大で9人。2ユニット18人の入居者が全員夜ぐっすり寝ていることは考えにくく、サービスが追い付かないことが考えられるほか、火事などが起こった場合も対応はほぼ不可能になります。
既存職員の負担が重くなり、離職につながるとの意見から、反対の声が広がっています。