Produce by マイナビ介護職 マイナビ介護職

介護の未来ラボ -根を張って未来へ伸びる-

ニュース 医療介護最新ニュース 2020/11/11

肩関節脱臼[私の治療]

no-image.jpg

介護のみらいラボ編集部コメント

介護施設でもよくあるけがのひとつが脱臼。高齢者は転倒した際に脱臼を起こすことがあります。何度か脱臼した場合には筋力トレーニングは脱臼予防にならず、手術が必要、脱臼した時に医師は通常どういう治療をするかなど、肩関節脱臼の基礎知識を東北大学の山本宣幸先生が解説します。

▶肩関節脱臼とは

肩関節は人体の中で最も脱臼しやすい関節であり,98%は前方脱臼である。ひとたび脱臼すると高率(66~94%)に再脱臼する。発生頻度は二峰性で,10歳代,20歳代の若年者と50歳代,60歳代の中高齢者である。若年者はスポーツ中の受傷が多く,中高齢者は転倒が多い。

▶診断のポイント

初回脱臼では,通常明らかな外傷機転(転倒,ラグビーでタックルされたなど)がある。反復性脱臼では外傷で発症する場合と,外傷なく日常生活動作(服の着替えや寝返り動作など)で発症する場合がある。脱臼の確認は単純X線像で容易である。

▶私の治療方針

脱臼の整復方法には様々ある。我々は整復操作が簡単で,かつ整復時の痛みが少ない挙上法や外旋法を好んで用いている。初回脱臼と反復性脱臼では治療が異なる。初回脱臼患者に対しては,①外旋固定,②脱臼予防装具,③手術の3つの選択肢があり,患者とよく相談して治療方法を選択する。反復性脱臼患者に対しては,手術のみが唯一の根治的治療となる。手術は大きく鏡視下Bankart修復術と,烏口突起移行術(Latarjet法やBristow法)の2つにわけられる。高齢者で大きな腱板断裂を合併している反復性脱臼患者に対しては,手術方法が異なり,Bankart修復ではなく,腱板修復を行う。両者を同時に行うと拘縮が生じることが知られている。

▶治療の実際

【脱臼整復】
基本的に無麻酔下で行うが,痛みの訴えが強い場合は関節内に局所麻酔薬を注射したり,斜角筋ブロックを行ってから整復する。高齢者では骨折のリスクがあるので,整復操作を暴力的に行わないように注意が必要である。

一手目 :〈挙上法〉患者を仰臥位にし,他動挙上を行う
二手目 :〈外旋法〉患者を仰臥位にし,5~10分かけてゆっくり他動外旋を行う
三手目 :〈透視下での挙上法〉X線透視をみながら挙上法を行い,挙上の際にもう片方の手で骨頭を関節窩へ誘導するように後上方へ押し込んで整復する
四手目 :〈麻酔下での挙上法〉鎮静をかけて行う。必要があれば筋弛緩薬を用いる

【整復後の外固定】
初回脱臼で外旋固定を選択しなかった場合や,反復性脱臼で痛みが改善するまでの1~2週間,安静を保つ意味で三角巾固定を行う。

▶合併症への対応

初回脱臼では,腋窩神経麻痺を見逃さないようにする。合併頻度は20~30%である。肩外側部の知覚低下がないか,三角筋の収縮があるかどうか確認する。ほとんどは数カ月以内に回復する軽度の麻痺である。整復まで時間を要した場合には,時に腕神経叢麻痺を合併することもある。上肢の運動・知覚麻痺がないかもチェックする。中高齢者では腱板断裂が30~90%に合併すると言われているので,整復後に超音波検査やMRIで腱板の状態をチェックする。

▶非典型例への対応

3週間以上整復されず経過した脱臼は,陳旧性脱臼と呼ばれ整復困難になる。骨頭や関節窩に大きな骨欠損を合併することが多く,外科的な治療が必要になる。

【初回脱臼】
3つの選択肢(外旋固定,脱臼予防装具,手術)を患者に提示し,その利点,欠点を考慮した上で治療法を選択してもらう。

外旋固定の適応は,整復後3日以内の初回脱臼である。手術を希望せず保存治療を希望する患者が対象となる。市販の外旋固定装具を3週間装着する。外旋固定によって再脱臼を半分に減らすことができる。スポーツ復帰は,手術を行った場合と同様に6カ月後となる。

脱臼予防装具は,シーズン中の選手や手術までの一時的な脱臼予防として装着する。Bankart損傷の治癒を期待して装着するわけではない。いくつかのメーカーから市販されているが,いずれも肩の外転を制限するような仕組みの装具である。完全に再脱臼を防ぐことはできないが,シーズン中の選手がすぐに練習に復帰したり試合に参加できる利点がある。

手術は,3つの選択肢の中では再脱臼率の点で最も成績がよい。もうこれ以上脱臼を経験したくない,しっかり治して今後プレーに専念できるようにしたい,という患者に適応がある。すべての初回脱臼患者が反復性に移行するわけではないので,適応をしっかり定める必要がある。

これら3つの選択肢はそれぞれ利点,欠点があり,患者にはそれらを説明した上で最終的にどの治療方法にするか選択してもらう。3つの選択肢は互いに競合する選択肢ではないことを強調したい。脱臼予防として,患者には脱臼の生じやすい肢位を極力とらないようにすることを指導する。いわゆる脱臼肢位(90°外転90°外旋位)はもちろん,後ろの座席の物を取ろうとしたり(水平伸展位),高いところの物を取ろうとしたり(挙上位)する動作は脱臼の危険肢位である。

【反復性脱臼】
脱臼を繰り返す場合に根治的な治療は手術である。筋力トレーニングなどのリハビリテーションは,再脱臼予防にはならない。特に服の着替えで脱臼したり,寝返りで脱臼するなど日常生活動作で脱臼する場合は,早めの手術を勧める。脱臼回数が多くなると,関節窩骨欠損やHill-Sachs損傷が大きくなるからである。反復性脱臼に対する標準的な手術は,鏡視下Bankart修復術であり,我々も反復性脱臼の約9割に鏡視下Bankart修復術を行っている。ただし,大きな関節窩骨欠損やHill-Sachs損傷を合併する症例,コンタクト・コリジョンスポーツ(ラグビーやアメリカンフットボールなど)の選手に対しては,烏口突起移行術であるLatarjet法を行っている。入院は数日,術後の外固定は3週間,スポーツ復帰は6カ月後としている。

山本宣幸(東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座整形外科学分野講師)

介護の仕事・スキルの記事はこちら

【日本全国電話・メール・WEB相談OK】介護職の無料転職サポートに申し込む

出典:Web医事新報

SNSシェア